ソニーフィナンシャルホールディングスの介護事業戦略

 ウォークマンやポータブルラジオなどで一世を風靡したソニーが、生命保険、損害保険、銀行に続き、介護事業に参入した。宗像(2015)によると、ソニーが60%出資する金融持ち株会社ソニーフィナンシャルホールディングス(以下ソニーFH)は、2013年に神奈川県横浜市にあるぴあハート藤が丘という介護施設を買収し、介護事業への本格的な参入を表明した。さらに2015年に老人ホームなどを運営するゆうあいホールディングスへ資本参加し、2016年に東京都世田谷区に介護付き有料老人ホーム「ソナーレ祖師ヶ谷大蔵」をオープンしているといった形で、介護事業の拡大を進めている。

 ソニーFHは新たに展開している介護事業を生命保険、損害保険、銀行に次ぐ「第4の柱」と位置づけ、まずは10〜15年をかけ銀行事業と同等の規模にする見込みである。

 ソニーFHは新事業を展開する際に、既存事業者では出来ない古い慣習の打破を試みている。ソニーFHが行う介護事業では2つの点で新たな試みが行われている、と宗像(2015)は指摘をしている。まず一点目に、「ソニーらしい介護」として高品質、安心感を提供していること。二つ目に、介護施設に必要なケアマネージャーに加え、「ライフマネージャー」と呼ばれる役職の人材を配置することである。これは既存の介護施設にはない、入居した老人のライフプランを考える専任人材のことであり、彼らのサポートによって、入居者に対しより充実した生活を送ってもらうことが狙いとしている。

 私はソニーFHの介護事業参入に対して経営戦略の面から賛成である。賛成の理由は2点ある。まず1点目の理由は、他社にはない新たな試みを行っていることである。また、2点目の理由として、金融事業とのシナジーを生み出せることである。まず、1点目の新たな試みの点としては、ソニーFHは独自の「ライフマネージャー」という役職を配置している点である。将来何が起こるのかわからない不安と戦う入居者にとって、一般の介護施設にはケアマネージャーしかいないが、ソニーFHの介護施設に入居すればともに今後のライフプランを考え、有意義な老後人生を送るために頼るべき存在である「ライフマネージャー」がいるのである。彼らの存在によって、資産面などでも安心感をもたらすことが出来る。

 また、他社にはない新たな試みの重要なポイントとして、「ソニーらしい介護」がある。ソニーFHのHPによると、生活面においては、入居者の一人一人に合わせた居室を設計するというものである。例えばトイレやベッドの位置など身体状況に応じて入居者に合った居室を提供し、ドアは遮音性が高いなど睡眠やプライバシーにも配慮している。食事も入居者の方が時間を自由に選択でき、入浴も個浴なのか大浴場で他の方と入るのかが選択できるシステムになっている。また、入居者の方の体を配慮し、腰痛予防としてリフト等の福祉機器を導入し、「持ち上げない介護」を推進している。ケアの面においても、上記の「ライフマネージャー」に加え、看護職の24時間常駐体制を採用している。このような取り組みによって、医療依存度が高くなっても安心して長期間住み続けられる「終の住居」として、他社の介護施設よりも選択される可能性が高まるだろう。

 上記のように他の介護施設にはない高品質な製品・サービスを取り入れることで、便利さや快適さを入居者の方に提供することが出来る。これらの「ライフマネージャー」の存在や、「ソニーらしい介護」といった高品質なサービスを提供することによって、顧客の需要をしっかりと満たし、また他社との差別化が図れるのではないだろうか。
 2点目の理由として、介護事業がソニーFHの強みである金融事業とのシナジーを生み出せる、ということが挙げられる。ソニーFHのコア事業は金融である。したがって、介護事業は一見全く関係のない非関連多角化ではないか、と消費者は疑問を抱くかもしれない。しかし、介護事業は他の事業としっかりとした繋がりを持っている、と私は考える。ソニーFHが狙う顧客層は、生命保険、損害保険、銀行などの金融事業すべてに渡り富裕層である。生命文化センター(2012)によると、実際に介護を受けたことがある人の月々の介護における支出は、平均7.7万円である。それと比較し、ソニーFHが展開する「ソナーレ祖師谷大蔵」は、前払い約1500万円に加え、月々の利用料が約23万円となっている。全国の支出平均を3倍以上も上回っていることから、ソニーFHが狙う介護事業の顧客が富裕層であることが明らかであろう。従って、介護事業を展開し、ソニーFHが運営する介護施設に老人が入居した際に、入居者の方、もしくはその家族が富裕層である可能性は高い。その場合、ソニーFHとして比較的高価格帯の介護保険の加入などを、本人だけでなく家族などに対しても勧められるだろう。つまり、入居している老人だけではなくその家族に対しても、グループサービスである生保・損保の加入を勧めることが出来るのである。このように、介護事業を起点に顧客に提案する商品を増やすことが出来るので、グループ全体の売り上げを上げることにつながるのではないか。

 では、今後ソニーFHにおける介護事業の発展には何が必要か。私は、金融事業以外の事業とのシナジーの創出が必要であると考える。その中で私は、ソニーグループ全体として介護事業と美容事業のシナジーに注目した。なぜなら、松崎(2013)によると、「企業グループの最大の目的は、グループシナジーの創出であり、単体や関連のない事業の集合体ではなく、企業全体に付加価値を与える事業を連結しなければならない。」とあるからだ。一見、美容と介護はシナジーが起きないと思うかもしれない。一般に高齢者は介護施設に入居することで、美意識が低下したり美しさを保てなくなったりというイメージをもたれているが、現在では老人の家に直接出向いて散髪する訪問美容師という職業や、またそれを専門とする企業も存在する。そこで、介護施設で高齢者の美容のニーズを満たすビジネスを展開することで、介護事業と美容事業のシナジーが創出できるのではないだろうか。

 そのシナジーとは何か。それは双方の事業の需要拡大である。例えばソニーの美容事業では、小型肌測定器を製造・販売している。これはソニー本体が強みをもつ画像解析技術を用いているので、他社製品と比較し高品質であり、使い方もシンプルでわかりやすい。これをソニーFHが開設している介護施設に導入するのである。そうすることで、ソニーFHの介護施設の入居者は、毎日自分の肌が若返るのを感じることによって、楽しみを持つ事が出来るのではないだろうか。また、それを見える化することで、美しくなろうという気持ちをもち、体を動かしたりといった機能の向上にも繋がる可能性がある。このようなことで、入居者の満足度を高められるのではないだろうか。また、このような測定器を導入することによって、介護と美容という一見何の関係もないものを同時に行なう取り組みが、メディアなどの注目を浴び、ソニー自体のブランドイメージが上がり、介護や美容の認知度も向上することにつながる。そうすると、ソニー本体の美容事業の認知度も高まるので、化粧品店やエステ店といった新たなに販路を拡大することができる。これらの取り組みにより、多くのサンプルデータを蓄積することが出来るので、新たな肌測定器の開発にも役立つだろう。

 近年、介護事業に多くの企業が参入してきている。その中で、ソニーFHの介護施設をより多くの人が利用し、利益を拡大していくためには、現在取り組んでいる新たな試みや金融事業とのシナジーを求めることが必要である。しかし、更なる事業の展開のためには、グループ本体の他事業とのシナジーも創出することが求められるだろう。一般的に、うまくいかないとされる非関連多角化の中で、どうシナジーを創出するのかが、事業の成功につながる可能性を秘めている。その意味で私はソニーFHの介護事業の展開に期待したい。

参考文献
松崎和久 (2013) 『グループ経営論 その有効性とシナジーに向けて』 同文館出版
宗像誠之 (2015)「ソニーフィナンシャルホールディングス 介護参入にソニー魂」『日経ビジネス』1841 70-74
日経テレコン (2016)「ソニー系の老人ホーム、4月から入居募集、月額利用料23万円」https://t21-nikkei-co-jp.stri.toyo.ac.jp/g3/CMNDF11.do 2016年7月1日閲覧
生命文化センター (2012)「生命保険に関する全国実態調査」http://www.jili.or.jp/press/2012/pdf/h24_zenkoku.pdf 2016年7月1日閲覧
ソニー株式会社HP http://www.sony.co.jp/Products/felica/business/solution/healthcare.html 2016年2月12日閲覧
ソニー株式会社HP 「ニュースリリース」 http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201502/15-010/ 2016年3月5日閲覧
ソニーフィナンシャルホールディングスHP「プレスリリース」http://www.sonylifecare.co.jp/news/pdf/release20150928.pdf,2015年11月23日閲覧

さとう(3年)

地域における図書館の役割とは


 本、CDやDVDを貸し出しているTSUTAYAを運営しているCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が新しい形の図書館を展開している。CCCのホームページの情報によると、最初は2013年に佐賀県武雄市が、「武雄市という5万人の町に、『代官山 蔦屋書店』を持ってきてほしい」という依頼をしたことがきっかけである。さらに、2015年に神奈川県海老名市にもオープンしている。そして、山下(2015)によると、今回新たに愛知県小牧市の駅前にもツタヤ図書館を建設しようとしている。小牧市に新図書館を建設する目的として、老朽化した図書館を駅前に移転新築することで小牧市の賑わいを創出することが挙げられている。また、駅前に図書館をただ新しく建設しただけではこれまで図書館を利用してもらえなかった人々に来てもらうことができないと考え、従来のように静かに本を読む場所ではなく、お茶を飲みながら本を読んだりコミュニケーションをとったりというような、新しい図書館の使い方を提案したいと考えていた。そのため、今回CCCに指定管理者を委任したのである。しかし、2015年10月14日に小牧市で住民投票を行なったところ、建設反対が過半数を占める結果になり、CCCとの新図書館計画が事実上白紙になった。

 その要因として、市民の考えと市の意向がすれ違ってしまったことが挙げられる。日経アーキテクチュア(2016)によると、2013年4月13日に行なわれた山下市長と市民とのタウンミーティングで図書館計画については「まだ白紙である」と市長が発言していたにもかかわらず、その二週間後には、新図書館を駅前に新築し連携民間事業を公募型プロポーザルで選定する方針であることが、中日新聞によって報道された。このことがきっかけで、市長の提案は市民に強い不信感を与えることになった。そして、急ピッチに図書館計画を進める市に対しての不信感は次第に肥大化し、結果として住民投票での賛成票を十分獲得することができなかったのである。

 私も現状のまま図書館を建設することに反対である。理由は、市民の意見を十分に取り入れずに計画を進めてしまったやり方を見直すべきであるからだ。上記で触れた要因を踏まえた上でも、まずは市民が小牧市に対して抱いている不信感を払拭し、市民の意見や考えをもっと取り入れていく姿勢を市は整えるべきである。小牧市に図書館を建設した時一番利用するのは市民であり、その市民が不信を抱くような図書館を建設すべきではない。

 また、市民が抱える不安は、小牧市のやり方だけでなくCCCに指定管理者を委任することにもある。例えば、すでに運営をしているツタヤ図書館での追加で購入した書籍が古本であったことや、コアなニーズにしかないような余分な本を追加購入しているという選書問題だ。小牧市でツタヤ図書館を建設した際にも、このような問題が浮き彫りになり、小牧市の図書館のイメージが悪くなるならば、CCCに指定管理者を委任したくない、と考える市民も少なくないだろう。さらには、CCCの提案する図書館は公共施設としての役割を逸脱する恐れもある。彼らが提案する図書館は、書架が階段状にセットバックし吹き抜けるというつくりである。確かに魅力的な空間であるが、小さい子どもや体が不自由な人が本をとりづらくなり、転落や事故の原因にもなりかねない。本来、図書館は特定の市民にとってではなく、あらゆる市民にとって快適な空間とサービスを提供することを目指さなければならない。そのため、特定の人にとってよい施設であっても、それによって一部の人が不便に感じるような施設は作るべきではないと私は考える。したがって、上記のように問題や懸念点が多く生じるならば、CCCに委任する必要性がないと考える。

 しかし、山下(2015)が述べていたように、今までのやり方通り図書館をただ新しく建設しただけでは、これまで図書館を利用してもらえなかった人々を集客できず、賑わい創出につなげることができないのも確かである。また、CCC(2015)によると、すでに運営されている武雄市のツタヤ図書館は、2013年4月からの2年半ほどで図書館の来館者数は延べ200万人を超え、9月の調査では利用者の85%が「大いに満足」「満足」と回答している。このことから、CCCが提案するカフェのような居心地のよい空間やサービスのやり方は、これまで図書館に魅力を感じていなかった人々を呼び込み、新たな利用者を開拓しているのも事実である。

 ただし、新しい形の図書館を建設する際にも考慮しなければならないことは、図書館の本質的な役割であると私は考える。永浜(2016)によると、慶応大学文学部糸賀教授は、公共図書館が担う本質的役割とは利用者が問題や課題を解決し、社会的な価値を得る学びの場であると述べている。また、図書館法によると、図書館とは図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査、研究、レクリエーションに資することを目的とする施設である。つまり、地域の発展と住民の暮らしを支えるために基本的な業務を努め、住民の学びを後押しし、人々が趣味などを楽しんだり問題を解決できたりできるような情報を提供する必要がある。確かに地域の賑わい創出をするために新たな利用者を獲得しなければならないことはもちろんであるが、今まで図書館を利用していた人々が図書館から離れてしまっては意味がない。本来の図書館の役割やサービスを重視した上で、更なる利用者を獲得する努力をしていかなければならないのだ。よって、CCCのように既存の図書館から大きく飛躍する提案ではなく、本来の役割を果たした上で新たな来館者を獲得することを目指した図書館を建設すべきであると私は考える。

 その点既存の小牧市図書館は、本の収集や整理、保存などの基本的な役割をきちんと果たせていたと考える。小牧市(2006)によると、所蔵している本の内容に満足している人(61%)や本の探しやすさに満足している人(67%)は多い。このことから、利用者の満足度は比較的高いことがわかる。よって、新しい図書館を建設した際にも今まで通り基本的な業務をしっかりこなすことができれば、既存の利用者は満足すると考える。一方小牧市(2006)によると、これからの図書館がどうあって欲しいかという問いに対して、「趣味に関する知識を得る場」(40%)「教養を身につける場」(37%)「いろいろな情報の収集や発信の拠点」(36%)が上位に挙げられている。つまり、既存の小牧図書館は学びや問題解決を後押しできるような情報を提供する役割を十分に果たせていないことがわかる。これを解決するためには、上記のための情報を提供することが必要であるのではないだろうか。

 そこで私は、小牧市図書館に子育て世代に対して上記が可能になるような場や機会をつくることを提案する。小牧市の人口の変化に注目してみると、年々高齢化率が上がっていることのほかに、小牧駅周辺2キロ圏内の年齢別人口は25歳〜35歳及び0歳〜4歳つまり、子育て世代の人口比率が愛知県全体に比べて高くなっていることがわかる(小牧駅周辺整備計画作成協議会,2009)。さらに、内閣府(2015)によると、子育てをする人にとって「地域」が重要であると回答するものは、9割を占めている。その内容として、「子育ての悩みについて気軽に相談できる人や場があること」(58.1%)、「子育てをする親同士で話ができる仲間作りの場があること」(54.5%)が上位に挙がっている。これらのことからも、小牧市において人口比率が高まっている子育て世代に対して悩みや考えを共有できる場や機会を提供することで新たな来館者を獲得することができるのではないだろうか。

 ではなぜこのような場や機会が図書館に必要なのだろうか。それは、図書館自体がすでに無意識的に子育て支援を行なっているからである。一般的に図書館では子どもを対象に定期的に絵本や紙芝居を読み聞かせるおはなし会を開催していたり、児童図書以外にも育児書や子育てに役立つ書籍が所蔵されていたりと専門的知識や情報はすでに揃っているはずである。もともと図書館が行っていた子育て支援の土台を活かしたうえで、意識的に子育て世代に対する支援の場や機会を提供することができれば、彼らが抱えている問題や課題に対して図書館がいろんなアプローチの解決策を提示することができるのではないか。
 
 ただし、単発的ではなく、継続的に子育て世代に対する支援の場や機会を提供することが重要であると私は考える。例えば、保育士といったような専門家を「育児コンシェルジュ」として雇い、その人を中心に子育て世代がちょっとした悩みの相談や会話ができるコミュニケーションの機会を定期的に提供するサービスを実施する。そうすることで、一度きりの開催ではなかなか見えてこなかった子育て世代の抱えている問題を一定程度解決することができるのではないだろうか。しかし、図書館は情報を収集する面では優れているものの、人々を集客するような仕組みづくりや実施・運営に関するノウハウが足りない。だからこそ、そのような部分においては民間企業のノウハウを活用することが必要なのではないだろうか。このように、子育て世代を集客することで地域の核となるような新たな図書館をつくることができるのではないかと考える。

 新しい図書館を建設しようと奮闘した小牧市であったが、市民の意見を十分に取り入れることができず結果的にCCCの提案する新図書館は事実上白紙になってしまった。確かに、地域の賑わいを創出し、地域を盛り上げるためには今までにない図書館を提案することも一定程度必要なことかもしれない。しかし、既存の図書館に求められていた本質的な役割を疎かにしてまで変革を行なうことが果たして必要なのだろうか。むしろ、小牧市が抱えている現状を見つめ直し、どうすれば小牧市の賑わい創出に繋がるのか、目の前の問題から考え検討することが必要であると考える。小牧市に限らず、全国の図書館がその地域に密着し、市民に求められている役割が何であるか考え直し、地域の核になるような図書館を目指してほしいと私は願っている。

参考文献
CCCHP「武雄図書館」http://www.ccc.co.jp/showcase/sc_004056.html?cat=life 2015年11月18日検索
CCC (2015)「武雄市図書館・歴史資料館の利用状況について 」2016年5月16日検索
http://www.ccc.co.jp/news/pdf/20151001_ccc_takeo.pdf 
小牧駅周辺整備計画作成協議会(2009)「小牧駅周辺整備計画」2016年5月16日検索
https://www.city.komaki.aichi.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/003/330/keikaku1.pdf
小牧市(2006)「図書館に関するアンケート調査報告書」 2016年5月2日検索
http://www.city.komaki.aichi.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/016/247/sanko1-1h18anketo.pdf
小牧市(2012) 「小牧市における都市交通の問題と課題」2016年5月16日検索
https://www.city.komaki.aichi.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/003/151/03-1mondai_kadai.pdf
宮沢洋,江村英哲(2016)「『住民投票』という突然の審判 戦術にたけた反対派、建設者は『なすすべなし』」
『日経アーキテクチュア』2016/2/25,40-45.
永浜敬子(2016) 「『TUTAYA』参入で波紋…あり方が問われる新しい図書館」
『日経TRENDY』 2016/02, 134-137.
山下史守朗(2015)「『ツタヤ図書館』否決も諦めず」『日経ビジネス』 1815, 138-139.

わだ(3年)

ソイレントがより多くの顧客に受け入れられるためには

 2013年創業の米国企業ローザ・ラブスは、「ソイレント」という完全食品を販売している。完全食品とは、それだけで一食分に必要な栄養素を摂取可能な食品のことである。開発したのは同社の社長であるロブ・ラインハート氏で、自らの仕事に明け暮れた生活において食事の無駄を省こうと考えたことがきっかけであった。青木(2014)によると、彼は元々シリコンバレーの地で仕事に没頭していたが、その際食事を安く済まそうとハンバーガーやピザを食べ続けるも一週間で挫折。このことから彼は栄養について勉強し、試行錯誤の末液状完全食品ソイレントを完成させた。

 Economist(2015)によると、ソイレントはかつてニッチ市場に向けて販売されていたという。消費者の時間と金を節約するという狙いの通り、食事を用意するコストと煩わしさを嫌う仕事中毒者達や、作業を止めたくても止められない環境に置かれたビジネスパーソンがソイレントの主な購買層となり、予約待ちという状況が続いていた。しかし、2015年1月時点で2000万ドルの出資金を受けた結果、製造ラインを50倍にすることとなり、その状況も解消されてきている(Temperton, 2015)。また、ソイレントは粉末から液体へと変化したことで味と風味が改良され、現在ではアメリカの一般消費者にまで受け入れられ始めている(Mims, 2015) 。つまり、かつてニッチなものであったローザ・ラブス社の獲得している市場は、今日一般消費者にまで広がったのである。

 しかし、ローザ・ラブス社の市場における期待を踏まえると、ソイレントの現状の受け入れられ方はまだまだ不充分であると私は考える。なぜならば、同社存続のためのリスクヘッジを考えなければならないためである。現在は順調なローザ・ラブス社であるが、他の競合企業がいつ追随してくるかわからない。そこで、よりアメリカの一般消費者にソイレントを受け入れてもらうために、彼らに対し新たなアプローチをかけることが必要であると私は考える。

 では、どのようなアプローチをかければアメリカの一般消費者によりソイレントを受け入れてもらえるだろうか。私は、ソイレントを非常食として売り込むことを提案したい。ソイレント2.0が非常食に適する理由は2点ある。1点目は、栄養を過不足なく摂れることである。災害発生から物資や炊き出しを手にするまでに3日かかるとして、その間たんぱく質や脂質以外の栄養素が摂れないことは健康上非常に望ましくない。体力や気力の面でも、健康な食事をとることは大切である。ソイレントは1本(約400ml)で一食分の栄養素を補うことが可能であるため、誰でも簡単に栄養補給ができる。

 2点目は、道具などを用いず容易に摂取できることである。現在販売されている非常食の中には、水を入れて調理しなければならないものや缶切りを用いて開封しなければならないものが数多くある。しかし突然の災害に見舞われてしまったら、これらの非常食が使えなくなってしまう可能性も低くない。水を持ち出せず缶切りを用意できなかったとしても、ソイレント2.0はキャップをあけるだけで栄養を摂取することができるため、災害時において効果的であると私は考える。

 このように、ソイレントを非常食として販売していくことはその完全食品という特徴を活かすことができる。また、非常食として販売したとしても、新たな製品改良は必要ないためローザ・ラブス社にとってもコスト面の負担は大きくない。先程挙げた他の競合製品にはない特徴を活かし、非常食として販売していくことで、ソイレントは現在より多くの顧客に受け入れられるのではないだろうか。

【参考文献】
青木薫 (2014) 「完全食品ソイレントが突きつけるもの 」『現代ビジネス』講談社 2015年 10月13日 閲覧 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40076
lchistoper Mims (2015) The End of Food Is Here, Finally http://www.wsj.com/articles/the-end-of-food-is-here-finally-1454302860 2016年3月7日 閲覧
James Temperton (2015) Soylent just raised $20 million The Wall Street Journal http://www.wired.co.uk/news/archive/2015-01/15/soylent-funding 2016年3月7日 閲覧
Rosa Labs, LLC (2015) soylent.com -free your body- https://www.soylent.com/ 2015年10月13日 閲覧
The Economist (2015) Food technology Liquid lunch http://www.economist.com/news/business/21665068-startup-called-soylent-wants-change-way-people-consume-calories-liquid-lunch?fsrc=scn/fb/wl/pe/st/liquidlunch 2015年10月13日閲覧参照, 訳 日経ビジネス (2015) 「注目浴びる完全食品―ソイレント」『日経ビジネス』 1809,124.

いたがき(3年)

メキシコの新車にインセンティブを

 篠原(2015)によると、世界の各自動車メーカーによるメキシコへの工場進出が増加している。トヨタ自動車は、約10億ドル(約1200億円)を投じて、年20万台を生産できる規模の工場建設を予定している。なぜメキシコにおいて自動車産業の集積が加速しているのであろうか。篠原(2015)によると、その理由は2つ存在する。1つ目は、自動車における世界最大の市場である米国に隣接しているという地理的なメリットである。米国とは陸続きであるため、航路だけではなく、鉄道やトラックといった陸路による自動車輸送も可能である。そのため、アジアやヨーロッパなどの他地域から輸入する場合に比べて、輸送日数を圧倒的に短くできるのだ。2つ目は、安価な労働力の獲得が容易であることだ。メキシコは製造業労働コストが非常に低い。ブラジルの半分程度であり、ハンガリーやポーランドなどの東欧諸国をも下回る。また賃金の上昇率も低く、上昇しても国内のインフレ分程度のものである。IMF(2015)によると、2000年代に入りメキシコのインフレ率は安定していて、2015年のインフレ率は2.5%であった。そして、労働者の平均年齢が29.9歳と若年労働力が豊富なことも魅力である。

 このように、メキシコは自動車の生産国として最適な国の一つであり、今後も大幅な成長が予想されているが、私がこの記事で注目したことは、自動車産業の集積が加速しているにも関わらずメキシコ国内における新車販売台数が少ないことである。Asociación Mexicana de la Industria Automotríz(2015)によると、2014年のメキシコの自動車生産台数は322万台であり、そのうちの265万台が北米・アジア地域に輸出された。つまり国内向けの生産台数は20%未満に過ぎない。このことから、自動車工場の進出はあくまでも北米市場をカバーするための輸出拠点という位置付けが鮮明であることがわかる。

 外務省(2015)によると、メキシコの人口は1億2233万人と日本の人口に迫る勢いである。着実な成長を遂げているにも関わらず、なぜ自動車メーカー各社はメキシコを一大市場と位置付けないのであろうか。その原因の一つは所得格差であると考えた。

 ここで、メキシコの社会階級構造に着目してみよう。苑(2009)は、「メキシコ社会の階級構造をみると、5%が上流階級、30%が中流階級、60%以上が下流階級となっており上流階級がメキシコの経済を牛耳っている」と述べている。また、OECD(2015)によると、メキシコの最低賃金は62Pesos/日(日本円で500円程度)でありOECD諸国の中でも格段に低い水準である。このため、いくら働いても下流階級にとどまったままになってしまうのだ。そのような階級層が果たして新車を購入することは可能なのであろうか。

 日産自動車がメキシコで販売している大衆車「ツル」の新車販売価格はおよそ80万円(日産自動車HPより)ほどである。対して、「ツル」の中古車は20万〜40万円ほどで取引されている。このことから下流階級の人々にとって、新車の購入は難しく、中古車を購入することがやっとの状況であることがわかる。しかし、所得格差の是正を行ったとしても新車販売台数の増加は難しい。なぜなら、メキシコにはアメリカから大量の中古車が流入してくるという問題があるからである。メキシコの中古車サイトを見てみると、比較的年式が新しい車種も、かなりの低価格で売られているため、わざわざ新車を買う必要がない状況なのである。日本自動車工業会(2013)によると、メキシコにおける2012年の新車台数が98万7,747台であったのに対して、中古車販売台数は45万8,114台に上っており、これに対して新車市場の関係者からは市場を圧迫しているという警戒の声があがっている。

 そこで、新車の販売台数を増加させるためにはどうすれば良いのであろうか。私はメキシコにおいて日本のような車検制度を導入し、製造から経過した年数に応じて車検頻度を増加させていくことを提案する。例えば、製造から10年未満は2年に1回、10年以上は1年に1回などというような規則を制定する。新車を購入すれば、製造年数は0から始まるので車検頻度も高くない。しかし、中古車を購入した場合、その車が製造から10年が経過していれば年に1回の車検義務が発生するという仕組みである。この政策を導入することで、中古車所有に対する負担を重くし、新車購入のインセンティブ向上を図ることができる。

 しかし、これらの方法には課題点も存在する。それは中古車への負担が増加したことにより、中古車しか手が出せない下流階級の人々は自動車の所有自体が困難になることである。上記の提案は、販売価格や維持費などのトータルコストの乖離を防ぐものであり、所有そのものを阻害することとなれば本末転倒になりかねない。この課題を解決するためにも、車検費用は一律に定めるのではなく、所得水準に応じて累進的に徴収する必要があると考える。つまり低所得者には安価に、高所得者には比較的高い車検費用を負担させるということだ。このような仕組みを構築できれば、中古車を使用している低所得者に対しても一定の負担をかけ、将来的な新車購入に対するインセンティブを付与することができる。また、これまで新車を購入し続けてきた高所得者に対しても、車検費用の増加は短いサイクルでの新車購入を促進するのではないだろうか。

 加えて、上記のような車検の実施は、単に新車購入のみを目的とするものではない。これはメキシコ国内で問題化している交通環境の向上にもつながるものである。日本の法律では通常、自動車は2年に1回車検を受けることが義務付けられており、エンジンルームや灯火類などについて保安基準に沿った検査が行われる。車検を受けなければ無車検車運行と判断され、道路運送車両法の規定により6ヶ月の以下の懲役または30万円以下の罰金という厳しい罰則がある。一方でメキシコには車検は存在しない。自動車の検査といえば排気ガスの検査くらいであり、これも忠実に行われているかは不透明である。そのため、耐用年数を大幅に超えた自動車や整備不良の自動車が町中を走っているという状況が必然的に作り出されている。このままの状況では、交通事故の増加や排気ガスによる大気汚染の深刻化が拡大してしまう。車検を義務化することで、走行可能と認められた自動車だけを公道で走らせることが可能となり、交通環境の向上にもつながるのではないか。

 メキシコは自動車工場の集積によって急成長を遂げてきた。しかし、その工場で作られたはずの新車のほとんどは国外向けのものである。肝心の国内市場で強い地位を保っているものは中古車であり、新車販売に対して大きな弊害をもたらしていることは確かである。
よってこのような状況を改善するためには、新車購入に対するインセンティブを車検という仕組みで付与していくことで、国内新車販売台数を増加させていくことが必要である。この取組みにより単に新車購入を促進することだけではなく、メキシコ国内の交通環境を改善し、所得による新車保有の差をも埋めていくことが可能なのではないだろうか。


【参考文献】
Asociación Mexicana de la Industria Automotríz (2015)「VENTA AL PUBLICO」http://www.amia.com.mx/ventasp.html 2015年11月19日閲覧
International Monetary Fund(2015)「World Economic Outlook Databases」http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2015/02/weodata/index.aspx 2015年11月26日閲覧
外務省(2015)「メキシコ合衆国 基礎データ」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/mexico/data.html 2015年11月12日閲覧
OECD(2015)「Focus on Minimum Wages after the crisis 」 www.oecd.org/.../Focus-on-Minimum-Wages-after-the-crisis-2015.pdf 2015年12月10日閲覧
篠原匡(2015)「仮面国家 メキシコ」『日経ビジネス』1812, 26-37.
総務省統計局(2015)「人口推計(平成27年(2015年)5月確定値,平成27年10月概算値)」http://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.htm 2015年11月12日閲覧
日本自動車工業会(2014)「メキシコの自動車産業政策と市場」『JAMAGAZINE』2014.August#48,2-23 2015年11月19日閲覧
日産自動車HP(2016)http://nissan.com.mx/promociones/tsuru/?utm_source=PromocionTsuru&utm_medium=PromocionesDesdeHome&utm_term=PromoTsuruDesdeHome&utm_campaign=PromocionesTsuru 2016年1月14日閲覧
苑志佳(2009)「連載 フィールド・アイ メキシコからー」『日本労働研究雑誌』.592 112-113 http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2009/11/pdf/112-113.pdf 
2015年11月19日閲覧



 ささき(3年)

都心に進出するニトリ

 河野・須永・武田・杉原・大竹(2015)によると、これまで郊外で成長してきた家具チェーン最大手のニトリが、現在、都心への出店を加速させている。その理由は都市へ人口が流入していること、脱デフレの兆しが見え始めたこと、所得水準が地方と比べて都市の方が高いこと、などが挙げられる。実際、ニトリは値下げにより、年収200〜500万円が主な顧客層になってしまっている。これはこれまでの中核顧客層の平均年収よりも300万円も下がっている。そこでこれまでよりも所得水準の高い顧客層を狙うために、ニトリは都心進出を行っている。

 都心進出の足掛かりに、以前、ニトリは試験的にデコホームという従来とは異なるタイプの店舗を出店したが、その際に二つの失敗をした(河野・須永・武田・杉原・大竹,2015)。第一にニトリの表示がなかったので消費者の混乱を招いてしまったこと、第二に陳列する商品の幅を広げたために品ぞろえが中途半端になってしまったことである。

 その失敗を踏まえ、ニトリは2015年4月にプランタン銀座店をオープンした。プランタン銀座店ではオーダーカーテンなどを求める顧客でにぎわい、売上高も予想を上回っている。さらに、ニトリは2015年から2016年にかけて、大田区や江戸川区、足立区での出店を計画していた(河野・須永・武田・杉原・大竹,2015)。また、単価を上げるために、NITORI QUARITY LINEという価格が少し高めで使い心地のよさと上質感を追求した雑貨などを扱うブランドも立ち上げた。

 私はニトリが都心に進出することには賛成である。河野・須永・武田・杉原・大竹(2015)の挙げている理由にもあるように、人口が地方から都心に流れていること、脱デフレの兆しが見え始めたこと、都心の所得水準が高いことなどの理由に加えて、今までニトリをCMでしか見たことのなかった消費者が足を運びやすくなることも理由であると考える。実際に私の家の近くにはニトリがなく、テレビのCMを見ることがあるだけであった。そのため、家具や日用品を購入するときには、島忠ホームズや無印良品といった店に出かけることがほとんどであった。ニトリが都心にも出店することで、私のような今までニトリを訪れる機会がなかった都心の顧客に訴求することができるのではないか。

 ただし、都心への進出にあたって問題もあるだろう。例えば、これまでの郊外の店舗と比べて地価が上がり、賃料が格段に高くなるため、単価を上げるなどの工夫がなければ店舗単位で存続することが難しくなる。郊外の店舗よりも多くの売り上げを上げなければ利益につながらないので、これまでの薄利多売では難しい部分がある。したがって、所得に余裕のある層に単価の高い商品を売らなければならない。このことから、私も今までの顧客層よりも年収の高い層をターゲットとするべきであるという考えに賛成だ。

 しかし、単価を上げるためにニトリが始めた施策であるNITORI QUARITY LINEには現段階で不十分な部分があると考える。なぜなら、NITORI QUARITY LINEの売り場面積はとても狭く、商品数も少ないからだ。実際にプランタン銀座のニトリでも、NITORI QUARITY LINEの売り場面積はエスカレーターの横のみととても狭く、店頭に並んでいた商品数も花瓶やクッションなど数種類しかなかった。これではわざわざ新たなブランドを立ち上げた意味がないのではないか。

 そこで私は従来のニトリとはまた別に、高齢者をターゲットとするNITORI QUARITY LINEの専門店を、従来のニトリの隣に設けることを提案したい。なぜ従来のニトリの隣に出店するのが良いかというと、前述したデコホーム出店の際に起きた、ニトリの表示がないことで消費者の混乱を招いてしまったという問題を解決することができると考えるからである。従来のニトリの隣に出店することで、ニトリと関連している店舗であると消費者に認識させることができるので、消費者に混乱を与えず、その結果、以前の失敗を回避することができるのではないか。

 次に、なぜ高齢者をターゲットにするかというと、「国民生活基礎調査」において、児童のいる世代の34%が生活が「普通」あるいは「ゆとりがある」と回答したのに対し、高齢者世代では47%も「普通」あるいは「ゆとりがある」と回答している(厚生労働省, 2011)からである。また同調査によれば、「生活が苦しい」と回答したのも高齢者世帯の方が割合が小さかった。このことから、NITORI QUARITY LINEのような少し価格が高いものは、児童のいる世代よりも高齢者世代の方がターゲットにふさわしいと考える。ターゲットを明確にすることによって、コンセプトを明確に設定することができるだろう。

 そして、この専門店化はニトリにとってもさらにメリットが生まれると考えられる。なぜなら、スペースにゆとりを持たせることができるからである。販売面積はとても狭く、商品数も少なければ、十分に顧客に訴求できないのではないか。そこで、スペースにゆとりを持たせることによって、販売面積が広くなり、フルラインアップで展示することができる。さらに、通路を広くしたり、棚を低くしたり、商品の説明の文字を大きくしたりといった店構えにすることによって、ターゲットである高齢者が従来の店舗と比べて買い物がしやすいというメリットも生まれるだろう。

 しかも、NITORI QUARITY LINEが取り扱う商品については、デコホームでの失敗を踏まえ、ニトリと関連の深い家具や日用雑貨といったものに限定するべきである。そして、ベッドを低く設計したり、和室にも合う机と椅子のセットを作ったりといったターゲット顧客のニーズに合わせた商品を展開することで、従来のニトリとも差別化した高価格帯の商品を展開できるのではないか。

 人口が都心に流入していることや車の保有率が低下していることから、都心の店舗は小売業者にとって将来的に重要な役割を果たすと言われている(河野・須永・武田・杉原・大竹,2015)。そこで、ターゲットを明確に設定し、そのニーズに合った店構えや商品といったコンセプトを統一し展開することが、都心進出の成功のために重要になる。ニトリが都心進出を成功させるためには、従来の主な顧客層よりも生活に余裕のある高齢者をターゲットとし、そのターゲットのニーズに合った商品展開や店構えを設定し、十分な商品数の確保やスペースを十分に確保することが重要になのである。

参考文献
河野紀子,須永太一朗,武田安恵,杉原淳一,大竹剛(2015)「ニトリ、銀座へ 始まった都心争奪戦」『日経ビジネス』1799, 28-31.
内匠功(2012)「高齢者世帯の経済的余力を検証-社会保障と税の一体改革を進めるに当たって-」『生活福祉研究』18, 1-13. http://www.myilw.co.jp/life/publication/quartly/pdf/82_04.pdf 2015年11月5日検索
厚生労働省(2011)「II 各種世帯の所得等の状況」『国民生活基礎調査』http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/index.html 2015年11月5日検索

にしだ(3年)

ダイヤモンドダイニングの今後の戦略

 創業以来、100店舗100業態という個店主義で幅広い店舗を開発してきたダイヤモンドダイニング。ダイヤモンドダイニングのHPの情報によると、現在、山手線沿線を中心に173店舗を出店している。河野(2015)によると、ダイヤモンドダイニングは新たな戦略として、個店とチェーン店の強みを融合したマルチブランド戦略を行っている。ダイヤモンドダイニングが行っているマルチブランド戦略の主な内容としては、多店舗展開ブランド、少数展開ブランド、個店の3種類を行っていくというものである。単価4000円未満の商品を取り揃え、幅広い顧客層・用途に対応している多店舗展開ブランド、単価は3000円程度でコンセプトや世界観を重視した店舗があり、10代〜40代をターゲットとしている少数展開ブランド、完全紹介制で厳選食材を提供しており、単価は4000円以上と高めな個店である(ダイヤモンドダイニングHP)。

 私は、ダイヤモンドダイニングがマルチブランド戦略を行っていくことには賛成である。その理由は2つある。一つ目はダイヤモンドダイニングのマルチブランド化により、ブランド毎に顧客層を変えることによって、ドミナント出店を行ったとしても顧客の奪い合いを回避できることにある。なぜなら、他社チェーン店より1店舗ごとの差別化がされていることや、前述のとおりターゲット層や用途をそれぞれのブランドで変えているために、カニバリゼーションの回避が可能となっているからである。二つ目は、少数展開ブランドや個店の弱みをカバーできるからである。少数展開ブランドや個店では、他社チェーン店よりどうしても一店舗当たりのコストが嵩んでしまう。しかし、多店舗展開ブランドでは少数展開ブランドや個店よりもスケールメリットの追及が可能となるため、比較的高収益を安定的に確保できると考えられる。それぞれのブランドのコスト面における強みと弱みを補っていくことが、この戦略をとることで可能になるのだ。

 確かに、マルチブランド戦略にもデメリットは存在する。第一に物流などの非効率性である。同じメニューを多くの店舗で提供するチェーン店とは異なり、複数のブランドを抱えることで、それだけ様々な材料を各店舗が調達しなければならない。この懸念点に関しては、もともと個店主義で顧客の獲得を行ってきたダイヤモンドダイニングにおいては問題ではない、と私は考える。むしろ、従来の手法に加え、マルチブランド化しスケールメリットを追求することで、コスト面においてより優位となるのではないか。そして、居抜き出店や立地に合わせた流行りのメニューの導入といった個店主義で培ってきた物流などの知識やノウハウを、チェーン展開のみを行ってきた企業にはない更なる強みとしていくことができるのではないだろうか。

 第二のデメリットは、自社内でのブランドの違いが曖昧となり、結果として顧客がブランド離れをしてしまうという問題である。残念ながら、これについてはダイヤモンドダイニングにも十分に起こりうることだと考える。ブランドの追加を安易に行ってしまうと、自社内ブランドの違いが曖昧となり、結果としてブランドの短命化などが起こり得るからである。

 このようなデメリット解決の糸口とダイヤモンドダイニングの更なる業績向上へ向け、私は多店舗展開ブランドと少数展開ブランドの中価格帯の居酒屋を、政令指定都市へと地方展開をしていくべきではないかと考える。

 まず、なぜ政令指定都市なのかということについてだが、それは、今までダイヤモンドダイニングが出店してきた都心と環境や条件が類似しているからである。都心は交通網がかなり発達しており、そのためターミナル駅も数多く存在している。ターミナル駅には、会社帰りのサラリーマンから休暇を楽しむ女性、さらには学生といったように、幅広い年齢層の人々が行き来している。ダイヤモンドダイニングはこのような駅周辺を中心に出店しているので、都心と類似した顧客が見込める政令指定都市であれば、今まで培ってきたデータやノウハウを十分に活かすことができるのではないかと私は考える。
 
 次に、地方展開するブランドについて、なぜ多店舗展開ブランド、少数展開ブランドの中価格帯の居酒屋なのかということについて述べていく。まず、多店舗展開ブランドは比較的収益性も高いので、スケールメリット追求のためにも幅広く展開していくことが有効であると考える。少数展開ブランドの中価格帯の居酒屋に関しても、ドミナント出店を行い物流のコスト等を下げることで利益が見込めるのではないだろうか。

 しかしながら、マルチブランド化と地方展開を行っていくということにも懸念点は存在する。一つ目は他社チェーン店との差別化ができるのかということ、二つ目が先述したデメリットである自社内での差別化の問題である。

 第一の懸念点だが、ダイヤモンドダイニングの多店舗展開ブランドにおいては他社チェーン店との差別化をすることができる、と私は考える。例えば、一般の居酒屋チェーン店においては幅広いメニューを取り揃え、こだわりメニューの開発や珍しい食材の利用といった点で差別化を図る場合がほとんどだ。つまり、食品や食材のみが差別化のポイントなのである。しかしながら、ダイヤモンドダイニングのブランドにおいてはそれだけではない。例えば、「わらやき屋」では顧客と調理場が向かい合わせになっており、名前の通り藁を焼き調理をしているところが見えるようになっている。料理そのものの提供に加え、調理の過程を顧客に見えるようにすることで、顧客に料理を楽しんでもらうことだけに留まらず、空間を楽しんでもらうというサービスを施している。このような方法により、ダイヤモンドダイニングは料理に加え、空間において他社との差別化が可能となっているのである。そのため、地方展開を行っても顧客を獲得することができると私は考える。

 二つ目の懸念点についても、多店舗展開ブランドと少数展開ブランドの中価格帯の居酒屋とでカニバリゼーションは回避できるのではないかと私は考える。多店舗展開ブランドでは、幅広いメニューに加え、空間に工夫を施すことで差別化を行っていた。一方で、少数展開ブランドではメニュー自体にコンセプトがあり、こだわりのメニューが揃っている。例として、「九州黒太鼓」では九州地方の郷土料理を専門に取り扱っていたり、「鳥福」では焼き鳥など鶏料理をメインとしている。このように、店舗ごとに中心となるメニューを変化させ、それぞれの専門性を高めていくことで、顧客層は幅広く想定していても多店舗展開ブランドと少数展開ブランドの中価格帯の居酒屋についての差別化が可能になるのではないかと考えた。

 同様に、自社内各ブランドにおける差別化についても考えなければならない。まず、少数展開ブランドの中でも、モンスターカフェやヴァンパイアカフェといった用途がかなり限られている業態のものに関しては地方には十分に収益が見込めるほどの需要はないので、これまで通り、都内での出店に限定すべきである。出店数を増やすのではなく、今ある店舗でサービス向上やメニューの充実などを行い、リピーターを増やしていく方がダイヤモンドダイニング内の各ブランドの差別化に繋がるのではないだろうか。個店についても同様に、今まで培ってきたマルチコンセプトの強みを活かし、新業態の開発を行って都内中心に完全紹介制や高級志向で他ブランドとの差別化を行うことがよいのではないだろうか。例として「戦国武勇伝」では、店内に入ると「真田幸村」など有名な武将達の特注フィギュアが飾ってある。また、各個室に武将の名前がついていたり、「本能寺地獄変の間」などエリアの名前までもがコンセプトに沿っている。料理に関しても、各武将のイメージに合った名前やデザインを用いていることや、ゆかりの地の郷土料理となっている。このように徹底した店内の空間づくりや、厳選食材を利用しコンセプトを忠実に再現した料理などは、先述したような少数展開ブランドとは異なる顧客層をターゲットとしており価格帯も異なっていることから、少数展開ブランドとの差別化も可能である。こういったブランドについては、継続的な経営を行うためにも、各コンセプトやテーマといったものを十分に追求し、それぞれのブランドを強化していくことが望ましいと考える。こうすることでダイヤモンドダイニング内の各ブランドの区別が明確になるからだ。

 外食業界のセオリーは「チェーン展開」である。現在は都心も地方も見たことのある看板がそこかしこに立ち並んでいる。このような状態に顧客が飽きてしまうのも時間の問題ではないだろうか。そういった中で、ダイヤモンドダイニングはマルチブランド化を行い、さらに都心と地方で出店する店舗を変えていくといった方法で、外食業界に新たな風を吹きこむことができるのではないだろうか。

(参考文献)
ダイヤモンドダイニングHP 「企業活動情報」http://www.diamond-dining.com/news/2015/04/14/2784 2016年1月25日閲覧
河野紀子(2015) 「ダイヤモンドダイニング 個店主義から進化」 『日経ビジネス』 1811, 62-65.
総務省統計局(2010)「地域区分に関する用語」 http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/users-g/word7.htm 2015年11月11日閲覧
総務省(2012) 「指定都市制度の概要」 http://www.soumu.go.jp/main_content/000153149.pdf 2015年12月1日閲覧

やまぎし(2年)

百貨店が生き残る方法

 近年、百貨店は弱体化してきている。市場規模はピーク時であった1991年の9兆円から2013年の6兆円までに縮小し、多くの老舗が生き残るための改革を模索しなければならない状態にある。

 大西(2015a)によると、近年の百貨店弱体化の要因は2点ある。1点目に、他の業態との同質化が進んでしまっていること。2点目に、顧客とコミュニケーションをとる機会が減ったことによる販売力の低下がある。この2つの要因を生み出した理由として、駅ビルやショッピングセンターにも出店しているメーカーなどがあるが、彼らに自社の売り場の品ぞろえを委ねたことが挙げられる。そうしたことで、実際に百貨店の店頭に立つ販売員のうちおよそ9割が取引先のスタッフになり、百貨店従業員の店頭に立つ機会が減ってしまった。

 私は百貨店がこれらの問題を解決し生き残るには、自前で事業多角化を進め、従来よりも幅広い部門の商品とサービスを扱うべきだと考える。そもそも、百貨店に来る顧客というのは他の業態にはない質の高さを求めている。この質の高さをもってして事業を多角化していくことで、他の業態との同質化を防げるのではないか。そして自前で多角化をするということは、新しく販売の場を増やすことにもつながる。その新しい販売場所で、百貨店の従業員が店頭に立てば、社員の顧客とコミュニケーションをとる機会が増加する。そうすることで、販売力の低下の解消につながるかもしれない。

 2008年に経営統合してから百貨店業界のトップを走る三越伊勢丹ホールディングスも多角化を始めている。現在は旅行や人材サービスなどの新規事業を開始し、また医療やブライダル、子供事業への進出を計画している(大西2015b)。実際、現在の旅行事業では高価格ながらターゲットである65歳以上の顧客から多くの高い評価を得ている。このように結婚から出産、育児、そして退職後の旅行事業へと多角化し始めることによって、三越伊勢丹ホールディングスは自社の強みを活かそうとしている。

 三越銀座店を実際に訪れてわかったことだが、百貨店は他の業態に比べ、お金に余裕のありそうな高齢の客が目立っており、そのため接客やサービスに力を入れているようであった。この上質なサービスこそが三越伊勢丹ホールディングスの強みであり、この強みを多角化した事業に活かしていくべきであると私は考える。

 そこで私はこれまでの事業に加えて介護事業への新規参入を提案したい。理由は2つある。1つ目は、三越伊勢丹ホールディングスの顧客の年齢層が高いということである。これまでに百貨店事業での接客で培った高齢者への対応ノウハウを活かすことで、介護事業参入の際も最適なサービスを提供できる。商品を見て迷ったり悩んだりしている高齢者への対応としての百貨店の接客は、介護事業でも悩み事を聞き、入居者の不安を取り除くといった面で介護事業に活かせるのではないか。2つ目は、現在の三越伊勢丹ホールディングスには終末期の事業が欠けているからである。高齢化社会の日本では介護事業への需要は高く、多くの顧客、中でも日ごろから百貨店を利用する富裕層の顧客を獲得することが見込めると私は考える。さらに最近、介護施設での高齢者に向けた暴力が報道されており、一般的な介護施設への不安が高まっている。そこで、従来の介護施設よりも価格を高めに設定する分、入居者一人につく介護士の割合を高くし手厚いサービスを受けられるようにする。そうすることで、介護士側の負担も減り、暴力などの問題も起こりにくくなるだろう。これまで丁寧な接客を行い、上質なサービスを提供してきた三越伊勢丹ホールディングスだからこそ介護事業を展開することで今まで以上の顧客が集まるはずだ。

 このように、事業多角化を成功させるには自社の強みを活かして展開していく必要がある。三越伊勢丹ホールディングスは強みである上質なサービスを再認識し、新規事業の展開を進めていかなければならない。そうすることで、他の業態との同質化や百貨店店員の店頭に立つ機会の減少といった百貨店が抱える弱体化の要因を解消できるのではないか。そして解消後は、新規事業への多角化によって得た若い新規顧客をターゲットとすることによって顧客の年齢層の幅が広がる。これが百貨店の生き残る方法なのではないか。

参考文献
厚生労働省 (2006) 「介護施設等の現状について」 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/09/dl/s0927-8d.pdf 2015年11月17日閲覧.
日本経済新聞 (2014) 「百貨店売上高16年ぶり増 13年、高額品けん引」 http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD170PD_X10C14A1TJ0000/ 2015年9月29日閲覧.
大西洋 (2015a) 「ブランドの核を見極める」『日経ビジネス』 1796, 72-75.
大西洋 (2015b) 「百貨店の壁を超える」『日経ビジネス』 1798, 70-73.

ひらつか(2年)

学割プランで顧客争奪戦を勝ち抜け!

 林(2015a)によると、2016年4月に電力小売りで全面自由化が行われることが決定された。これまで高電圧だけであった自由化が低圧の家庭まで全ての範囲で行われる。そこで東京電力などの大手電力企業は、様々な異業種企業と提携を進めている。また「新電力」と呼ばれる新規事業者は、自社が持つ小規模な火力発電や太陽光発電を使った余剰の電気を小売りに回す手段や、大手電力会社から調達した電力で家庭用に販売する方法をとっている。その結果、電力業界では顧客争奪戦がまさに今始まっている。

 資源エネルギー庁(2014)によると、新規事業者のシェアは、小売自由化を開始して以降増加してきており、特に東日本大震災後の増加が顕著である。平成25年10月の時点で特定規模電気事業の届出を行っている新電力は、109社となっている。これは自由化部門の需要の3.5%、全需要の2.2%にとどまっている。ただし地域別でみると、東京電力と関西電力の供給区域内において、新電力の販売電力量の占めるシェアが相対的に高く、その他電力会社の供給区域内では低くなっている。実際、東京電力エリアでは倍近い6.5%を超えるシェアを新電力が獲得している。このように2000年以降、東京電力が失った契約電力量は原発6基分に相当する合計620万kWを超えている。つまり、現状において東京電力は顧客の減少に直面しているのだ。

 しかし、東京電力は新電力に対して手をこまねいているわけではない。全面自由化に向けて、ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を展開するロイヤリティマーケティング(三菱商事系)とリクルートとの間に、電気料金支払いでポイントが貯まるサービスの提供や、住まい全般にかかわるWebサービスの開発に向けた業務提携を結んだ。また「Tポイント」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブとも手を組んだ。さらに、電力と通信のセット割引販売や、スマホを使った電力消費量の「見える化サービス」提供などを視野に、移動体通信のソフトバンクと全国規模での提携に向けた交渉を開始している。これらの策はすべて既存の顧客に向けた対策になっているが、東京電力の顧客が新電力に奪われているという現状は変わらない。このように既存の市場では競争が激しいため、新しい市場を開拓して新規の顧客に目を向けていくべきであると考えた。

 そこで私は、新規顧客獲得のために対象を一人暮らしの学生に絞った『学割プラン』を提案する。現状新規顧客に目を向けた策が不十分であること、自由化が来年4月から始まることを合わせると、新入生をメインとした学生に一番需要があると考えられるからだ。

 では、なぜ学生にターゲットを絞るのか。東京電力(2014)によると、2014年度末の家庭用に使われる低圧電力の契約口数は、約158万である。それに対して、総務省(2013)によると、全国の大学生数約300万のうち、約4割が一人暮らしをしている。また、関東圏にいる学生は126万いることから、東京電力が学生の獲得に力を入れることは十分必要性があることだと考えられる。さらに、現在の4年生に対しても適用し保証をすることで、新社会人の需要も確保できる。携帯電話会社でも『学割プラン』を25歳まで適用しているということから、電力についても効果が見込まれるのではないだろうか。

 提案の内容としては、一人暮らしの可能性がある16歳から25歳までにターゲットを絞り、一般消費者よりも3割引で電力を提供する。また、最低3年契約をしてもらい、引っ越しの際にも引き続き移ってもらう形とする。現状一人暮らしかどうかや年齢の確認をする点で難しい面もあるが、全面自由化によって「見える化サービス」が導入されることにより、おおよそ一人分の消費量に応じたプランを設定できる。設定の範囲内で電力を使ってもらい、超えた部分は定価で支払ってもらう形にすることで、一人暮らし偽装の防衛策がとれると考えられる。

 東京電力としては、この『学割プラン』をまず知ってもらうことが重要である。一度契約してしまえば先が長いため、来年四月までが勝負である。まず認知度を上げるためにも、具体的に二つのアプローチをしていくことが必要であると考える。一つ目は不動産会社に営業をし、受験期を終える1月から3月に時期を絞って代行営業をしてもらうことで、顧客を囲い込むというアプローチである。学生が一人暮らしをする際、まず物件を探すのに訪れるのが不動産会社である。不動産会社から物件の特徴に合わせて学割プランの概要を説明してもらうことで、他社との競争をする前に一早く顧客を囲い込むことができる。二つ目のアプローチとしては、学生に早く情報を知ってもらうという面で、生協との提携が望ましいと考えた。学校説明会やオープンキャンパスで、『学割プラン』について説明してもらうことにより、学生に早い段階で東京電力の取り組みを知ってもらう機会が増えるため、新入生、これから1人暮らしをする学生への認知度を上げるためにも有効であると考えられる。

 このように、電力自由化に対して東京電力が顧客争奪戦で生き残るためには、既存の顧客だけではなく新規顧客に目を向けることが重要であると考えられる。来年四月から自由化が始まるため、限られた期間の中で多くの顧客を獲得することが求められる。予想される顧客の減少をくいとめるためには、待っているだけでなく、学生に向けた何らかのプランを提案し、早急に認知度を上げることが、新規顧客の獲得に必要なのではないだろうか。

【参考文献】
・林英樹(2015a)「電力小売り、乱戦の狼煙vol.1」『日経ビジネス』1794,24.
・林英樹,安藤毅(2015)「電力小売り、乱戦の狼煙vol.2」『日経ビジネス』1795,24.
・林英樹(2015b)「電力小売り、乱戦の狼煙vol.5」『日経ビジネス』1798,22.
・経済産業省(2014)「電力小売・市場の自由化について」 http://www.enecho.meti.go.jo/info/statistics/denryoku/result-2.htm 2015年7月22日閲覧
・資源エネルギー庁(2014)「平成24年度総需要速報概要」http://www.enecho.meti.go.jo/info/statistics/denryoku/result-2.htm 2015年9月10日閲覧
・総務省(2013)「日本の統計2013」http://www.stat.go.jp/naruhodo/c1data/19_01_stt.htm 2015年8月23日閲覧
・東京電力(2014)「電気料金・制度」http://www.tepco.co.jp/corporateinfo/illustrated/charge/contract-customers-j.html 2015年8月23日閲覧
・山内弘隆・澤昭祐(2015)『電力システム改革の検証』白桃書房.

こばやし(2年)


水素社会実現のために

 島津(2015)によると、東京都知事の舛添要一氏は、日経ビジネスが開催したシンポジウムにおいて、水素社会の実現に向けて都が先導役となることを述べた。実際に、都は2015年度だけで水素関連予算を412億円も投入する。また、自民党の福田議員は、「エネルギーの安全保障を考えるうえでも、国内で調達できる水素の活用は重要」と指摘し、東京都や自民党が水素産業の育成に中長期的に関わっていく、と宣言した。さらに、トヨタ、川崎重工、東芝など水素事業に注力する大手企業も最新動向を発表した。このように、現在水素事業には大手企業が注力しており、都や国もこれらの企業を支援している。

 しかし、このままでは大手企業による市場の独占に至り、水素エネルギーの価格上昇が起こることも想定される。そうなると、水素を使った製品やサービスの普及が妨げられるのではないだろうか。

 例えば、水素ステーションで考えてみよう。田辺(2015)によると、エネルギー事業者10社は平成27年以内に国内100カ所を整備すると発表している。また上記のシンポジウムにて、舛添知事も水素ステーションを2025年までに都内80か所に建設することを目標に掲げている。しかし、全国3万カ所以上ある給油所に比べ水素ステーションの数は圧倒的に少ないのが現状である。しかも、1か所の水素ステーションの整備にかかる金額は、ガソリンスタンドの10倍の約5億円とも言われる。また、水素ステーションを用いる燃料電池車(FCV)は、2014年12月15日にトヨタより最初のモデルが発売されたが、日本においては未だほかの自動車メーカーから発売はされていない。それに、水素ステーションがない地域の顧客に販売しても日常的に使うのは難しいので、トヨタも当面は東京、大阪などステーションの整備が先行する4大都市圏に販売を限定している。ゆえに、水素ステーション事業が大手企業による市場の独占・寡占状態に陥った場合、競争が起こらないために水素燃料の価格上昇が想定される。このように、FCV・水素ステーション共に普及していない現状では、その水素エネルギーの価格の高さから、消費者はFCVを購入・使用しようという考えからさらに遠のいてしまうだろう。大手企業による水素ステーション市場独占の結果として、FCVの普及も妨げられ、水素社会の実現も遠のいてしまう。

 このような状況を解決するには、中小企業が水素エネルギーの確保と水素ステーション整備・運営事業へ参入することが必要だ、と私は考える。比較的優位性のある中小企業が参入し価格競争を仕掛ければ、水素エネルギーの価格低下とともに水素ステーションの整備が進む。水素ステーションの整備が進むことで消費者は利用しやすくなり、FCVの購入可能性も高まるだろう。そして、水素社会の現実的な実現に近づくのではないか。
 
 しかし、中小企業が参入するには財政的問題が発生してくる。この問題には、国や都の支援が必要不可欠である。実際、定置式のステーション設置において、国と都の補助額を合せて大企業は5分の4支給に対し、中小企業の場合は、補助率5分の5で補助金が支給されることが決まっている。5分の4と5分の5という数字は一見すると大差ないかもしれないが、実際の金額にすると非常に大きい。ほかにも整備費の半額を補助する助成事業もある。さらに、トヨタ自動車など自動車会社3社も、水素ステーション運営費を5年程度で最大60億円補助する支援策を実施することが決まっている。これらの財政的支援を使えば、この事業への中小企業の参入は現在よりも容易になるだろう。

 水素社会実現のためには、大手企業による市場独占を回避し市場が正常に機能することが必要である。そのためには、中小企業の水素エネルギー及び水素ステーション整備・運営事業への参入が促進されなければならない。そのためには、国や都による積極的な財政的支援が必要である。これは、水素社会に対する取り組みの小さな一歩かもしれない。しかし、大手企業による市場独占の回避とは、市場発展を妨げる要素を減らし全ての水素事業の円滑な普及への手助けとなるに違いない。よって、中小企業の参入こそ水素社会実現のための重要な要素となるのではないか。

参考文献
環境ビジネスオンライン(2015) 「東京都の中小企業、水素ビジネス参入の大チャンス 水素ステーションに全額補助」http://www.kankyo-business.jp/news/010188.php 2015年9月22日 検索
日経ビジネス(2015)「水素社会へのロードマップ‐トップ企業が語る8兆円産業のビジネスチャンス」『日経ビジネス』, 1799, 73-79
産経フォト(2015)「ミライ生産開始で式典 トヨタ、製造ラインも公開」 http://www.sankei.com/photo/story/news/150224/sty1502240010-n1.html 2015年9月22日 検索
島津翔(2015)「水素社会の実現に官民連携が必須」『日経ビジネス』, 1795, 22.
田辺裕晶(2015)「ホンダよ、待っている 世界初FCV『ミライ』発表会で仇敵ホンダに異例エールを送ったトヨタの“真意”」『産経ニュース』 http://www.sankei.com/premium/news/150112/prm1501120003-n1.html 2015年9月22日 検索


みのしま(2年)

学習塾の人手不足解消のために考えるべきこと

 現在、学習塾は人手不足に陥っている。栄光ゼミナールを運営する栄光ホールディングスは、大学生や大学院生のアルバイト講師に向けて就活支援を始めた(松浦,2015)。その主な内容は、エントリーシートの書き方や面接、グループディスカッションのやり方の指導、そして対面での就活相談やエントリーシートの添削を無制限に行うことである。これらの支援は、毎年就職活動に専念するために大学3年生や4年生の多くのアルバイト講師が辞めてしまうので、その人数を減少させるために開始されたものだ。しかし、このような活動をしている学習塾でさえも、アルバイト講師の人手不足は解消されていない。

 これらの人手不足の原因は、時間外労働といった労働環境の悪さにある。一般的なアルバイト講師では、塾での授業時間以外の準備時間や待機時間は、時給が発生しないか時給単価が安いかである(松浦,2015)。ある塾では、授業終了後の質疑応答について、実際の所要時間にかかわらず一律に100円を支給するだけであった。また、生徒が欠席の際、代わりに事務作業を行わせたが、その金額は地域別最低賃金を下回っていたという塾もあった(厚生労働省基準局長,2015)。このように、授業外の勤務時間に正当な賃金が支払われていないことが問題である。

 それでは、授業時間にはどのくらいの賃金が支払われているのだろうか。ブラック企業対策プロジェクト(2015)によると、全国の時給平均は944円、塾・家庭教師は1217円である。これらから、他の職種と比べて学習塾の賃金は少し高くなっていることがわかるだろう。金銭的な面から考えると、学習塾のアルバイト講師として働くことは一見魅力的なものかもしれない。しかし、賃金未払いを経験した学生の割合は、塾や家庭教師が最多だった。学生アルバイト全国調査において、塾・家庭教師の経験があると答えた276人のうち、「準備や片付けの時間に賃金が支払われていなかった」と答えたのは約3割。約2割は「残業代が時間通りに支払われなかった」と答えた(ブラック企業対策プロジェクト,2015)。このことからも、授業外の勤務時間に正当な賃金が支払われていないことがわかる。

 そこで、上記を含めて現在学習塾が何を一番改善すべきなのだろうか。私は、授業外の勤務時間にもきちんと賃金を支払うべきであると考える。学習塾業界は、労働基準法や最低賃金法の違法事例が目立つとして、厚労省から不適切な労務管理の可能性があると判断されている(高橋・疋田,2015)。このようなことでは、世間の学習塾講師のイメージも悪くなる一方だ。学習塾講師のイメージが今以上に悪くなれば、人手不足は解消できない。したがって、学習塾はまずその悪いイメージを払拭することから始めるべきであると考える。

 賃金がしっかり支払われるようになれば、現在よりも学習塾講師へのイメージが向上する。イメージが向上することによって、学習塾講師として働くことで得られる経験も脚光を浴びるのではないか。それは、社会人にとって必要な力であるプレゼンテーション力と基礎知識の獲得である。学習塾講師は、限られた時間の中でコンパクトに要点をまとめることが求められる。このような日々の授業の経験により、プレゼンテーション力を身につけることができるようになるだろう。また、学習塾で教える内容というのは、社会人になるために必要となるSPIや筆記試験などの基礎知識の獲得に役立つだろう。

 しかし、このようなプレゼンテーション力と基礎知識の獲得というメリットは、学習塾の労働環境の悪さの中に埋没してしまう。例え就職支援を行ったとしても、募集に人が集まらないため人手不足は解消しない。授業外の勤務時間にもきちんと賃金を支払うことにより、例え人件費の増加で一時的な利益が減少しても、これまでの悪いイメージを払拭することによって、将来的な業界の繁栄を得ることができる。賃金の支払いは当たり前のことだが、このようなことから改善していくことによって、学習塾の人手不足は解消していくのではないだろうか。


【参考文献】
ブラック企業対策プロジェクト(2015) 「学生アルバイト全国調査結果(全体版)」 『ブラック企業対策プロジェクト』 http://bktp.org/wp-content/uploads/2014/11/150620------------------------------------------------------.pdf  2015年7月6日検索
厚生労働省労働基準局長(2015) 「学習塾の講師に係る労働時間の適正な把握、賃金の適正な支払等について(要請)」 http://kobetsu-union.com/article/20150327kourousyou 2015年7月26日検索
松浦龍夫 (2015) 「学習塾、バイト就活支援で板挟み」 『日経ビジネス』 1788, 18
高橋未菜,疋田多揚 (2015) 「塾のブラックバイト、厚労省が改善要請 違法な例示す」 『朝日新聞DIGITAL』 http://www.asahi.com/articles/ASH657F6BH65ULFA02J.html?iref=reca 2015年7月22日検索

とりかい(2年)

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