世界標準の経営理論(第37, 第38章 pp686-721)

【要約】
 第37章では、アントレプレナーシップ領域が取り上げられている。一般に、「スタートアップ」「起業」「ベンチャー」「アントレプレナーシップ」といった言葉は、ほぼ同義に解釈されがちである。しかし、学術的にアントレプレナーシップはより広い意味を持ち、スタートアップ、起業、ベンチャーはその一部に過ぎない。新時代のアントレプレナーシップ領域として、4つの新たなアントレ領域が顕在化してきている。ICTの発展により急速な国際化が可能になったことによる「国際アントレ」、社会的・公共的な目的をスタートアップ企業による「社会アントレ」、政府機関が取り組むべき制度改革を市井の民間人が行う「制度アントレ」、大企業内で起業家を育てる「イントラプレナーシップ」である。また、アントレプレナーシップ領域において「事業機会は見つけるものか、つくり出すものか」という論争が生じている。事業発見型は「事業機会は起業家の存在とは独立して何かの外的な環境変化により生じる」という立場を取り、事業創造型は「事業機会とは企業家が行動を起こすことで起業家によってつくられ、後になって認知される」という立場を取る。近年は、創造型の思考の軸となりうる理論群を学校教育などで伝えることが注目されている。
 第38章では「企業組織の在り方」について述べられている。企業組織の存在範囲を規定する、5つのドライビングフォースが存在する。それは、取引費用の大きさが企業と市場の境界線を決める「効率性」、企業固有のリソースを持つ範囲が存在範囲を決める「コンピタンス」、他組織との相対的な力関係で存在範囲を決める「パワー」、アイデンティティの確立の度合いによって存在範囲を決める「アイデンティティ」、個人が持つ様々なつながりによって存在範囲を決める「ネットワーク」である。時代とともに、組織のあるべき姿は変化してきた。これから、今以上に組織を越えた人の流動化が進み、人が多様につながる。ネットワークに中心はなくなり、その中で人が自律分散的に動く組織(=ティール組織)になっていく可能性がある。

【ディスカッション】
 今回は当初予定していたDPを変更し、「東洋大学の講義は創造型の思考を高められているのか」というテーマで議論した。本書では、創造型は「ビジョンを熱く語る」「人を腹落ちさせる」など、極めて属人的・暗黙知的であり、学校教育や社内研修で伝えることが容易ではないと述べられていた。では実際に、東洋大学では創造型を育てる講義が行えているのかという問題意識を持ちこのテーマを選定した。
 この問いに対して、フロアーから上がった意見の大半が創造型の思考を高める取り組みが機能していないというものであった。その理由は以下の通りである。
・経営学特別講義(本書で述べられているような、企業家を招き経験談等を聞く講義)やソーシャルビジネス実習講義などの比較的創造型の思考を高めうる講義を受講している人でさえ、企業に向けたアクションを取っている人が周りにいないから。
・他学部の講義などはインプットばかりで、知の探索・深化になっていない。アイディアを育む講義が少ないから。
・インプットがゴールになっていて、そもそもアウトプットしようというマインドになっていないから。
・ゼミ内で読んだ教科書などから、創造型の視点は得られたが、行動を起こすには至っていないから。
 このように、多くの講義がインプット面ばかりに注力しておらず、アウトプットの機会が少ないことや、得た知識を実践で活かす場面が少ないことなどが理由として挙げられた。

 次に、どのようにしたら東洋大学の講義が創造型を高める講義として機能しうるのかについて話し合った。フロアからは様々な意見が上がった。
・様々な学部の生徒を集めて、お互いの知識を活かして議論することで、知の探索・深化を行うことができる。
・実際にアイディアを形にする講義をもっと設ける(美術や和歌の講義であれば、インプットだけでなく手を使って美術作品や和歌を創る)。
・カリキュラムとして実際にビジネスをやるなど、アウトプットの機会をより増やす。
・起業家を輩出するためのプログラムや学部を新たに作る。
・経営学特別講義などの講義で、経験談を聞いたり、感想を書くだけではなく、企業家の話し方や振る舞いをロールプレイング形式で実践する。
・大学内で完結するのではなく、実際に企業に飛び込む(インターンへの参加等)ことに単位を付与する仕組みづくり
 このように、さらなるアウトプットの機会を講義の中に組み込むことによって、創造型の思考が高められるといった意見が多く見受けられた。また、企業との連携や企業家のスキルの吸収など、実践形式の講義を設けることが改善策になりうるといった意見もあがった。

【まとめ】
 今回のディスカッションから、創造型の思考を高める取り組みとして東洋大学の講義は機能していないと学生側は認識していることがわかった。その最も大きな要因は、アウトプットの機会が少ないということであった。プログラムの中にアイディアを創造する試みを組み込むことや、身体を使って実戦形式でスキルを身に着けるような講義の必要性が再確認された。
 しかし、本ディスカッションでは詰めきれていない点がいくつかある。一点目は、「機能している」状態をどこに設定するかということである。今回上がった改善策は、自ら行動して実践形式で学んでいくことや、アイディアを実際に形にしていくという点で、創造型思考を育む講義として機能しうると考えられる。しかし、機能している状態を、アントレプレナーシップ領域の観点から「起業に向けた何かしらの行動をとっている」とした場合、果たして今回の改善案で本当にそのような学生が育成できるのかという疑念が残る。
 二点目は、評価基準の問題である。例えば実戦形式の講義が導入されたとして、何をもって評価を決めるのかが定かではないということだ。さらに、学生が評価し得るだけの成果を出せるのかといった問題も生じる。これらの点が、本ディスカッションの限界である。
 結局、創造型の思考を身に着けるためには「まずはやってみる」というマインドを持つことが重要なのは間違いない。今回の解決案によって創造型の思考が伸びる可能性はあるが、やはりまずは自分で行動し、実践の場に飛び込むというマインドを持つことが一番の近道なのかもしれない。

しんみ(4年)

世界標準の経営理論(第39章, 40章 pp722-763)

【要約】
 39章ではビジネスに焦点を当て、なぜビジネスを経営理論では説明できないのかについて述べられている。ビジネスというのはビジネスプラン、ビジネスモデル、ビジネスの3つの側面がある。ビジネスプランニングとは、戦略を策定するプロセスを研究対象とする分野である。このプランニングの分野は、厳密に計画を事前に立てるか、それともあまり計画は立てずに行動しながら決めていくのかという研究が長年なされている。前者を計画派、後者を行動派と呼ぶがこの2つを十分に説明できる経営理論は今のところない。なぜなら、ビジネスプランニングが目指すべき成果、つまりビジネスモデルというものが、定義があいまいで構成要素を説明する理論の前提がバラバラなため、経営理論では説明しづらいからである。そして、そもそもビジネスの目的が統一されたないこともビジネスを経営理論が説明できない要因となっている。しかし、近年「ウェル・ビーイング」というのがビジネスの目的なのではないかということが言われ始めている。これが本当にビジネスの目的かどうかは定かではないが、ビジネスの目的が明確になれば経営理論の発展に大きく貢献するだろう。

 40章では、経営理論の組み立て方について説明されている。我々は誰もが経営理論っぽい会話を日頃からしている。しかし、理論構築の仕方を知らないがために建設的な議論が出来てない。そこで、理論構築の仕方を理解することで論理的思考を鍛えることができるのだ。理論構築には2つのレベルがある。広範に、さまざまな人・組織などに通用する普遍的な理論を作り出す一般理論と、一般理論を活用し、独自の理論的な法則を組み立てる理論的記述である。ビジネスパーソンの関心があるのは後者の方である。その構築のステップは1現実の観察→2抽象化と分類→3関係性の描写→4提示された理論の修正・改善である。それを構成する要素として、ユニット、関係性、バウンダリーコンディション、システムステイツ、命題と仮説の5つがある。また、経営学においてはwhyを徹底的に分析することが決定的に重要であり、優れた指導者や経営者は「人とは何か」についての独自の考えを持っている。私たちはそのような考えをもっていないので、whyを徹底的に突き詰めた経営理論を利用することで言動に一貫性を持たせることができる。

【ディスカッション】
 今回は本書のP724 L19「PDCA」サイクルを厳密にしっかり回すべきという主張がある一方で、 P724 L21 行動派は「事前の厳密な計画に意味がない」と主張されていることから、企業はどの程度までプランニングの完成度を高めればいいのだろうという疑問を抱き、【企業は戦略を立てる際に、どこまで厳密に計画を立てるべきか】というディスカッションポイントを設定した。

 今回話し合う中で、とあるIT業界の大企業Aが新規事業の「スマートめがね」がうまくいっていない中でコンサルタントとしてどこまで厳密な戦略プランニングを提示するか、という前提を置いた。A社は資本金2000億円、従業員数7000人、事業内容は検索エンジン・オンライン広告・クラウドコンピューティング・ソフトウェア・ハードウェアを取り扱っている。そして、2011 年 4 月に新規事業である「スマートめがね」に着手し始め、現在 1 年が経過しており、今までの投資額は 1 億円、しかし売上が伸びずこのままでは撤退を余儀なくされる。そこでなんとか新規事業を形にし、投資額を回収したい A 社の社長は、コンサルタント を雇い現状分析とそこからの新たなビジネスモデルの提案を依頼したと仮定した。外部環境としては、資本金1000万円、従業員数50人でソフトウェアを扱うベンチャー企業T社と、資本金1900万円、従業員7000人、事業内容はA社と同様のB社が存在している。この 2 社も現状では売り上げを伸ばすことができていないが、撤退する様子はなくこのビジネスを形にしたいと考えている。時代としては2012年を想定し、失敗しそうな要因としては、・スマートめがねでしかできない機能の欠如・使い道、デザイン性の無さ・内蔵カメラによるプライバシー問題・CEO と技術者の対立 ・使用するとすぐ熱くなる・バッテリーが1~2 時間しかもたない、のようなことが分析済みである。そしてプランニングの段階として、1 ターゲット絞り込み…調査によって変わる→2 ニーズに対して機能をつける→3 技術的に完成度を上げる…マイナス要因を払拭する4 大体不可能な技術をつける→スマートめがねにしかできないことをつける→5 既存機能のアップデート…デザインを良くする、カメラの画質を上げる等の+αをする、の5段階を設定し、どの段階がベストかゼミ生に話し合ってもらった。
意見として、3の段階までプランニングをするのが最適なのではないかというものが1番多く出た。その理由としては、撤退しそうな理由を解消しないと顧客に受け入れられない、市場が確立していない中で4までやるのはオーバースペックでイノベーションのジレンマに落ち入るし技術や時間等のコストがかかる、まず商品の認知をしてもらい、その後に機能を追加するのが効果的、等の意見が挙がった。

 それに対してまず、2の段階までで充分であるという意見が出た。その理由は、技術を完成させている間にコストや時間がかかるため、2を出してみて市場を作ってから徐々にアップデートしていけば先行者優位を獲得しつつ顧客のニーズも拾えるからである。この意見に対して3の段階の意見に賛成の人からは、一度市場に出して失敗しているという状況があるため、その段階よりも技術的に完成度を高めなければ消費者に受け入れられなくて、結局状況はあまり変わらないのではないかという反論が挙がった。

 次に4まで行った方がいいという意見も出た。理由として挙がったのが、現状から他の機能をつけなければ意味ないから最低限コンサルとして撤退理由を見つけたのにすべて改善しないのはおかしいのでは 、5まで行くとコストがかかる、現状の機能がアップデートするイメージがつかない 、代替不可能な技術で十分にインパクトつけ、話題性を高めてより多くの人に認知させたほうが売り上げに貢献できる、などの意見である。この4の段階までプランニングを行ったほうがいいという意見に対して、3の段階のほうが良いという意見を持つ人は、オーバースペックの問題が解決されていない、いきなり多くの消費者に手に取ってもらうよりは、まずアーリーアダプターに商品を手にとってもらい、そこからニーズを深堀してスマートめがねにおける代替不可能な機能を探していくほうが顧客の求める機能を付与することができるため、3の段階までのプランニングをまずすべきであるという意見が出た。

【まとめ】
 今回のディスカッションは2012年に発売されたグーグルグラスなどに代表される「スマートグラス」という製品の市場で実際に多くの企業が一度その市場から撤退したことを例に行った。ディスカッションにおいて設定した「撤退しそうな理由」も実際にスマートグラスの失敗要因として考えられるものである。今回最も多く出た意見は「3 技術的に完成度を上げる→マイナス要因を払拭する」というものであり、やはり一度市場への投入を失敗している場合、そこでの失敗の要因、特に消費者の不満にダイレクトにつながる技術的なマイナス要因というのは取り除いてから再度市場に投入すべきであるというのが多くのゼミ生の考えであった。それに加えて機能面でもその商品でしかできない機能を追加するべきであるという意見も出たが、それではオーバースペックになり、イノベーションのジレンマに陥ってしまう。やはり、市場が不完全な状態ならば、顧客が手に取り問題なく使えるレベル、つまり大きな欠点をなくしてから市場に投入し、アーリーアダプターにまずは認知を広めていくことが得策ではあるというのが今回のディスカッションポイントに対するアンサーとなった。

とみざわ(4年)

世界標準の経営理論(第33,34章 pp608-642)

【要約】

 第1部から第4部までは経済学、心理学、社会学などそれぞれのディシプリンに基づいた理論が解説されてきた。しかし、実際のビジネスの世界では現象に焦点があてられる。そこで、第5部では、思考の軸となる経営理論を見つけやすくするためそれぞれの現象に相性の良い理論を整理する。 33章で対象とする領域は戦略。戦略の研究領域は大きく分けて、戦略コンテンツ(競争戦略、企業戦略)と戦略プランニングに分かれて、応用される理論が異なる。競争戦略は経済学ディシプリンSCP理論やRBVが応用されてきた。しかし、環境変化の激しい現代では持続的な競争力に着目してこれらの理論ではなく、認知心理学のダイナミックケイパビリティを応用する見方も台頭してきた。企業戦略ではRBVを含む経済学ディシプリンや取引費用論を内包する社会学ディシプリンなど、さまざまな理論が応用されてきた。一方、戦略プランニングの研究は現在、下火になっている。しかし、もともとは「計画派」と「学習派」といった派閥に分けられ、戦略論として学習されていた。

 このような特徴のある戦略だが、最近では、連続する変化への対応からイノベーション分野との融合が前提となってきている。そのため、心理学ディシプリンのイノベーション理論が重要視されるようになった。実務の世界で考えると、経済学ベースのSCPで戦略をとって得た資金を使って、認知心理学ベースの視点で新たな分野に投資していく、このように複数の競争の型と経営戦略を組み合わせ、そこで事業と資金を循環させる企業がこれからのグローバル社会では生き残っていける。

 33章で対象とする領域は組織行動と人的資源管理(OB&HRM)。これらは理論との関係においてユニークな点を3点ほど持つ。[琉茲細かい、多くの分野に分化されている。現象分野ごとに独自の理論があることが多い。M論がミクロ心理学に集中している。このような特徴を持つOB&HRMは個人、チーム、組織の三階層に分けることができる。また、階層ごとに様々な理論が応用されているが、全体的にミクロ心理学の理論が特に使われている。

 しかし、筆者はそんなOB&HRMが今後大きな転換を迎えるはずと予想していて、特に、HRM(人事)が変わると述べている。ここでは、.ぅ離戞璽轡腑麝論との融合▲咼奪データとAIの浸透7从儚悗箸僚伝慍臭ぜ匆餝悗箸僚伝慍臭ゥ潺ロ心理学理論の質的の五つが挙げられている。これはつまり、従来はミクロ心理学中心だったHRM部門において、マクロ心理学ディシプリン、経済学ディシプリン、社会学ディシプリンのあらゆる理論を応用する未来が来るということである。

 

【ディスカッション】

 本章において、筆者は、「経済学ベースのSCPで戦略をとって得た資金を使って、認知心理学ベースの視点で新たな分野に投資していく、このように複数の競争の型と経営戦略を組み合わせ、そこで事業と資金を循環させる企業がこれからのグローバル社会では生き残っていける。」と主張していた。しかし、そこには、すでに企業の事業活動がSCPによって持続的な競争力を獲得している前提があった。そこで、私たちは、まだ持続的な競争力を獲得できていない企業を前提に置いたときには、SCPで資金を増やすのが先か、今ある資金で新規事業を行うのが先かを議論することにした。

 今回話し合う上では、例として国内市場6位のシェアを誇る自動車会社を設定し、そこの社長という立場で、どのような事業に力を入れていくのかについかを話し合った。また、現在取り組んでいるのが、電気自動車やガソリン車、AI技術であり、企業の現状のタイプは市場の型はチェンバレン型で戦略はRBVを基本にしているというのを設定。その他、1〜5位企業の動きについても設定した。また、共通認識のもと話し合うためにも、既存事業を行う場合は今持っているリソースを生かして海外シェアを獲得しに行く。新規事業の場合は完全自動運転やMaasを行うということで設定した。

 実際に議論をしていく中で最初は、新規事業を行うのがいいという意見が多かった。その理由としては、現在6位ということで新規事業を行うための資金もあり、それならば、先発者優位の獲得を目指した方がいいという意見のためである。しかし、中には法律などの強制的圧力を懸念して、先発者ではコストがかかりすぎてしまうといった理由や、後発者優位を考える理由での反対意見もあった。ここから議論は、既存事業に力を入れる意見が多くなった。理由としては、やはり新規事業をやってもうまくいくのかどうかわからず、今あるリソースを生かして既存事業に力を入れて海外のシェアを取りに行く方が、確実性が高いという意見が多かった。やはり、みんなの中で新規事業をやる際には不確実性が高いのが、大きな懸念点となっていた。そこで、後半からは議論のテーマを変え、新規事業を行う際に不確実性を少しでも減らすためにはどうしたらいいのかを話し合った。その中で出た意見としては、本書で学んだオプション理論を活用して失敗したときのリスクを減らしたうえで取り組み、とにかくサイクルを回していくという意見や、強制的圧力に対抗するために、非市場戦略に取り組むという意見があった。

【まとめ】

 今回の議論では、結果的に不確実性の問題から既存事業を進めていくという結論に収束した。この結論はテキストで書いてあるものと一致しており、やはりテキストのようにまずは既存事業に取り組み、資金を獲得した方がいいという意見に至った。しかし、それだけでは終わらせず、新規事業を少しでもやりやすくするための意見を出すことによって、少しでも学びを生かせるようにした。しかし、今回の議論では既存事業で海外進出をすればシェアが取れるという暗黙の認識があり、もっと具体的に考えるためにも自社のもつリソースで本当に戦えるのか、海外の外部環境はどのようになっているのかをもっと考える必要性があった。また、新規事業を行うにしても本当に6位の資金力でやっていけるのかという問題があり、現実的に考えたときにはかなり厳しい。したがって、今回の議論の中では出なかったが、自社だけで本当に行うのか、アライアンスの可能性や事業売却の可能性なども考えられた。本章は今まで学んできた理論を実際に実務に生かすというのがテーマとしてあった。そのため、このような今までの知識を生かせる議論を設定した。結果として、その狙いに沿った意見なども出ており、インプットした知識をアウトプットする場として少しは力になったと考える。

やざわ(4年)


世界標準の経営理論(第35,36章 pp643-685) 

【要約】  

 

 第35章では企業ガバナンスの経営理論について説明されている。企業ガバナンスは取締役会や株主構成など企業内部におけるガバナンス分野、そして法制度や外部の監査機関といった外部のガバナンス分野が存在する。本章ではこの企業ガバナンスを説明する上で、本書でも今まで扱ってきたエージェンシー理論は必修理論であると言われている。エージェンシー理論を用いることで株主の経営陣の関係や、経営陣へのインセンティブ付けの在り方などを説明することができる。またエージェンシー理論とは対極に位置するスチュワードシップ理論での説明もされている。これら2大理論では企業ガバナンスの難しさ、複雑さを示唆している。つまり企業ガバナンスの在り方は必ずしも一様ではなく、経営者を始め企業を取り巻く当事者たちが世界をどう見ているかが企業ガバナンスを構成する上で重要なのである。

 

 第36章ではグローバル経営と経営理論について説明されている。グローバル経営において企業が海外に進出する際の「進出タイミング」「進出先の選択」「進出形態」を説明するために独自の「理論のようなもの」が存在する。それはOLIパラダイムとウプサラモデルである。前者では企業が固有に持つ強みをまず理解し、その強みを活かせる進出先を選択、そして企業内で「内部化」する構造をつくるという3つの要素を考慮して海外進出に関して説明されている。後者のウプサラモデルでは、「企業の学習」がベースとなっており、どの企業も始めは距離的に近い国、進出形態としてはライセシングといったような形態をとり徐々に拡大していくという説明がされる。この2つの理論は意思決定を異なる視点で説明しているが今まで本書で扱ってきた理論を用いて説明ができただの応用にすぎないものである。またこれらは「理論のようなもの」であり、グローバル経営において「独自の理論」は存在しない。それは「国境」が大きく関係してくる。従来は「国境を超えること」=「グローバル経営」と捉えられてきたが、実際は「ビジネス環境が異なること」=「グローバル経営」であると筆者は主張しており、このように考えるとビジネス環境が異なる際には今まで扱ってきた理論を応用することで十分に説明することができるのである。つまり今後は「国境とは何か」を深く考えることが企業にとって重要なのである。

 

 【ディスカッション】

 

 今回のディスカッションではグローバル経営の今後の展望についての部分に着目した。本書では今後取引コストが下がればスタートアップ企業(中でも創業間もなくグローバル展開を行うボーングローバル企業)が台頭すると言われていた。では同様に取引コストが下がれば大企業もグローバル展開を行うことができるのかということについて議論を行った。しかし今回初めに持ってきたディスカッションでは「できる」「できない」という形でフロアに投げかけてしまったため、議論の進展がすぐには見られなかった。そこで「大企業はグローバル展開ができない」と仮定し「グローバル展開できない」理由をまずは挙げてもらった。その挙がった意見に対し、では「グローバル展開するためにはどうするか」について再度議論する流れとなった。グローバル展開ができない理由としては、意思決定のスピードが遅いであったり、リスクを取りたがらない、社内で反対意見が出てくるなどの意見が挙がった。そこで対策としては、スタートアップ企業や進出先の企業を買収を行ったり、国内で今まで取引してきた繋がりを利用する、海外にまずは現地調査を行い検証するなどといった意見が見られた。

 

 これらディスカッションをまとめると、取引コストが下がればスタートアップ企業と同じように大企業がグローバル展開を行えるのではなく、実際にグローバル展開を行うかどうかの意思決定のスピードがスタートアップ企業と比べ遅かったり、また現状シェアが国内で高ければリスクをとることに社内で反発が起きるなどの障壁も存在する。このような障壁を乗り越えるためにソーシャルキャピタル理論で説明されていたように、国内で取引していた今までの繋がりを通じて進出先の企業との繋がりを見つけたり、センスメイキング理論で説明されていたように経営者がビジョンを示しリスクを取ることを社員に納得させるなどといった施策が必要となる。以上が本ディスカッションの結論である。

 

【まとめ】

 

 今回のディスカッションでは実際にボーングローバル企業と言われている「テラモーターズ」の海外進出の成功事例を基に事例作成を行った。「テラモーターズ」では取引コストの低下が海外進出する上でプラスに働いたこと要素でもあるが、他にも企業の組織構造であったり、リスクを恐れない行動などが影響したとある記事では言われていた。本ディスカッションでもこの部分について少しでも触れることができたのは良かった。実際、中小企業、大企業に就職するゼミ生が多い中、今一度グローバル展開を行う体制がその企業にはあるかどうかを見つめなおすきっかけになったら幸いである。また今回は「できる」か「できない」かの問いの立て方ではなく、グローバル展開を行ったうえで今後活躍していくためにはどうするか、など具体的な部分について問いを立てれていたらフロアからの意見ももう少し出たかもしれない。是非次回はこの反省を活かすようにしていきたい。

 

すずき(4年)


世界標準の経営理論(第28,29章 pp.518-555)

【要約】  28章では、社会学ベースの制度理論について解説されている。人は、「合理性」よりも「正当性」で行動するという特徴がある。そのため、同じフィールド内には常識が存在しており、同質化していくのである。この常識が形成される過程には、強制的・模倣的・規範的圧力が加わる事が関係している。あるフィールド内での常識は、実は他のフィールドでは非常識である場合もあり、それによって国際化をする際などに障壁となりかねない事がある。そこで、この常識に対抗するためには、非市場戦略で制度に働きかける方法やインスティテューショナル・アントレプレナーとして既存の常識を変容させる方法、他のフィードの常識に従う方法などが挙げられる。どの手段を取るのかは自分次第なのである。  29章では、資源依存理論(RDT)についてだ。企業はそれぞれ、取引や交渉の際に自分が相手に及ぼすパワーがある。そのパワーには、材料や情報、金銭、正当性などの資源が大きく関係している。パワーの弱いつまり、資源面で相手への依存度の高い企業は思うような交渉、金額設定、契約が出来ず苦しむ事になる。RDTではこれを外部抑圧という。この外部抑圧に対抗するためには、抑圧の軽減・抑圧の取り込み・抑圧の吸収等の手段がある。しかし、1990年代に入るとこのRDTを研究する流れは沈静化した。なぜなら、これまでの研究はデータ・分析手法の粗さから吸収命題を支持する結果を得ていたが、精巧に分析するとむしろこの命題は支持できないという研究結果が得られたからである。しかし、2000年代に入った現代、理論面と現象面でブレークスルーがもたらされたのである。これによって、再びRDTは注目されるようになったのである。このように、RDTは時に「小」が「大」を活かし、翻弄し、外部抑圧を抑え込んで飛躍する道標となる事を証明しているのである。 【ディスカッション】  今回のディスカッションでは、28章のテーマに注目し、日本というフィールドにおける常識に対抗するためにはどうすれば良いかという事について話し合った。具体的には、現在、日本国内では原付と同じ扱いをされている電動キックボードのシェアリングサービスを展開するベンチャー企業が、そのサービスを全国に普及させるためにはどのような施策を取るべきかについて議論を交わした。  議論では、非市場戦略やインスティテューショナル・アントレプレナーの視点から様々な意見が発せられた。特に多かった意見としては、政府を説得するために自社内の社員が使用したり、消費者に試乗してもらうなどして、電動キックボードの利便さや知名度を挙げていく事が必要であるというものであった。しかし、実際に電動キックボードを利用した事のある生徒からは、日本の狭い行動において誰もが使用する事は危険であり難しいのではないかという意見も出た。この事から、海外では気軽に移動手段として用いられている電動キックボードであるが、日本でも同じように規制なしに利用する事は困難である可能性も考えられる。  電動キックボードは、現在新型コロナウイルスの影響で懸念されている3密避ける移動手段ともなり得る。日本なりに規制を設け、今よりも利用者が増える事が切なる考えである。 きじま(3年)

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