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世界標準の経営理論(第30, 31, 32章 pp.556-605)

【要約】
 今回は理論編の締めくくりとして、3つの社会学ディシプリンの経営理論を扱った。まず組織エコロジー理論は、ビジネスという生態系で、個体である企業の生死のメカニズムを探る。前提としているのは企業の本質が変化しない点・企業の多様化→自然環境による淘汰選択・超長期視点である。同理論から示唆されるポイントは、事業ポートフォリオを入れ替えることが重要な点である。一方で日本企業はメリハリのないポートフォリオ構成のまま低い利益率を維持してしまっている。その対策に欧州企業が取り入れているメガトレンドの視点がある。

 次にエコロジーベースの進化理論は、組織が変化しにくいことを前提に組織内部のメカニズムを紐解く。企業は多様化→選択→維持→苦闘のフェーズを経、これをVSRSメカニズムと呼ぶ。企業の創業初期には多様な人材が集まりやすく、一方で人は同質の人を好むホモフィリーという性質があるため企業の成長に伴い人材は同質化しやすい。他方で戦略には多様な情報が重要であり、そのために例えば共進化のダイナミズムの取り入れが有効である。

 最後にレッドクイーン理論は、企業の共進化のメカニズムを解き明かす。本来企業は競争を避けるべきと言われてきたが、同理論は企業間の生存競争が進化の源泉の一部であることを主張する。切磋琢磨によりサーチがなされるからである。しかし競争が目的になるとコンピテンシートラップに陥るリスクがあると、新レッドクイーン理論が提唱した。逆説的だが環境が大きく変化するほど目的を競争にすべきでなく、自社のヴィジョンを目指すことがポイントとなる。


【ディスカッション】
 組織エコロジー理論より、「事業ポートフォリオを入れ替え生態系を渡り歩くことが重要だが、日本企業の多くがメリハリのないポートフォリオ構成のまま低い利益率を維持している」と筆者は述べる。そこで今回のディスカッションポイントを

  •  なぜ日本企業はメリハリのないポートフォリオ構成のまま低い利益率を維持しているか
  • また,陵由に対してどのようにすれば、日本企業のポートフォリオ構成にメリハリをもたせることができるか

とし、以上2点について大企業の経営者の視点から、さらに本書の理論の締めくくりとしてこれまでの内容を踏まえて、と設定し議論してもらった。なお、メリハリのないポートフォリオ構成の定義を、抱える事業の多くが成長性のない市場に位置し、それらの事業を手放せず、さらに知の探索を怠り知の深化に傾倒していることとした。

 まず,砲弔い撞鵑った意見は、日本企業がボンディング型のネットワークが強く、古い事業を切り捨てられないという意見が挙がった。また社長の人気が短くリスク回避的になりがちという、エージェンシー問題が起こっている点、不確実性を許容できなく保守的すぎる点やコンピテンシートラップに陥っている点、株主に新規事業を理解してもらえない点、人材に流動性がない点が挙げられた。さらに模倣的圧力が働いて、戦略をコンサルに丸投げしてしまったり、戦略を入れ替えにくくなったりしている、一方で前者に対して外部の視点を取り入れたほうがよい戦略を実行できると反論も出た。またセンスメイキングをする力が経営者になく変革を説得できないという意見が挙がった一方で、日本の企業の経営者は労働者から地続きだからこそ労働者の考えを優先するのではという指摘があった。

 次に△任蓮⊆卍垢稜ごが短い点について長くすればいいと意見が出たが、そのように簡単にできるとは限らないと反論が出た。次に全体的にリスク回避的な傾向や保守的な組織体制に対して、リスクに寛容な組織づくりをすることが重要と言われ、そのために撤退オプションの利用や、年功序列・終身雇用の廃止が必要、それらを達成するためにストーリーテリングを通して意思共有を図ることが有効という意見が挙げられた。ただし急に年功序列・終身雇用を廃止することは困難で、撤退オプションの利用も海外では日本より難しい点で注意が必要なのも事実である。他にはメガトレンドを考える部門を作り意識を高めることについて、経営者が考えるからこそメガトレンドの勝ちがある指摘、加えてTFL×SLを実行して組織全体で方針を決める点、人材を社外に出し知の探索を行わせる点が挙げられた。

 ディスカッションのまとめとして、日本企業は保守的でそれを変革する十分な力がないという意見が主として挙がり、それに対して本書の内容を踏まえた様々な解決方法が挙げられた。ただし、今回のディスカッションポイントに対し、ただポートフォリオを入れ替えればいいのではない点が指摘された。いずれにせよ今後はDXなどにより環境の変化が更に激化する時代であり、その流れにはどの業界であれ飲み込まれるのが確実だ。だからこそ長期的視点で渡り歩く生態系を見極めることも重要となってくるのではないだろうか。

 

【おわりに】
 今回は本書で経営理論を紹介する最後の章であった。経営理論を思考の軸とすることが本書の主眼の一つであり、最初の輪読でもどのようにすれば経営理論を思考の軸にするかについて議論した。しかし蓋を開けてみると、経営理論を思考の軸としてディスカッションをしている様子があまり見受けられず、その点に問題意識を持った。そこで経営理論を思考の軸とするべくいくつか工夫をした。まず経営理論を援用しやすくするため、ディスカッションポイントを抽象的に設定し、さらに今までの内容を踏まえというヒントを出した。結果、様々な章の知見を援用し日本企業の現状について議論できていたと思われる。このようにディスカッションやその他様々な活動を通して、人類の英知を思考の軸とすることができれば、それすなわち自身の最大の武器となりうるのではないだろうか。最後にドイツの鉄血宰相と呼ばれたオットー・フォン・ビスマルク(1815-1898)が残した言葉を紹介して締めとする。


−愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ−

 

すみた(3年)


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