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いきなり!ステーキ既存ロードサイド店の新規顧客獲得のためには

 「分厚いステーキをリーズナブルな価格で立ち食いする」という新しいスタイルで成長してきた人気チェーン「いきなり!ステーキ」の既存店売上高が1年以上前年度割れを続けている(吉岡, 2019)。ペッパーフードサービス(2019a)は、店舗同士の競合による大幅な売上の低下から、2019年度の出店店舗数を210店舗から115店舗に見直すと発表した。吉岡(2019)は、値上げや競合他社の出現だけではなく、業績失速に3点の要因を挙げている。1点目はロードサイドへの過剰出店による自社同士のカニバリゼーション、2点目は新たな顧客獲得の失敗、3点目は人材育成不足だ。そこでペッパーフードサービスは業績復活のために、ロードサイドへの進出の緩和、以前より来店の少ないファミリー層やシニア層などの顧客獲得、オペレーションの向上によるクレーム削減を行うことで改善を進めている。実際、人材育成不足に関しては研修施設なるものを設置し、ベテラントレーナーの指導を受ける等の対策を取ることで改善が進んでいる(吉岡, 2019)。

 しかしいきなり!ステーキは、2019年度8月時点においても、全体として約80店舗ほど新規出店していた(ペッパーフードサービス, 2019b)。更に吉岡(2019)において、一瀬社長は「シニア層等の様々なニーズを取り込むためにもロードサイドへ出店を続けていく」「成長のペースを落としてでも、実のある出店を増やし、持続的な成長が出来る基礎体力をつけるため退店計画はしていない」と述べている。このような中で、いきなり!ステーキはこれ以上ロードサイドへの出店を続ける必要はあるのか。

 私はロードサイドへこれ以上出店する必要はないと考える。理由は2点ある。1点目は、これ以上の出店を続けると更なるカニバリゼーションが起きると考えるからだ。吉岡(2019)が述べているように、いきなり!ステーキでは既にロードサイドの店舗でカニバリゼーションが起こっている。株式会社船井総合研究所流通業活性化プロジェクト(2017)は、レストランの商圏がドライブタイムで約20分と述べている。しかし、いきなり!ステーキは元々駅前出店を主としていたため、ロードサイドでの新たな商圏設定がうまく出来なかった。実際に和歌山県には、和歌山岩出店、永穂店、和歌山国体道路店のように、ドライブタイムで20分以内に建ち並んでいるところがあった。このようにこれ以上出店をつづけると、更なるカニバリゼーションが起きてしまうと考える。また、ペッパーフードサービス(2019b)は、同じペッパーフードサービスのペッパーランチも、ロードサイドへの進出を強化すると発表した。ペッパーランチでは、人気No,1メニューであるビーフペッパーランチがいきなり!ステーキで取り入れられているだけでなく、品質は異なるがより安価なステーキを提供している。従って、今後ペッパーランチがいきなり!ステーキ店舗の商圏に出店してしまうと、ペッパーフードサービス内でのカニバリゼーションを誘発してしまうと考える。これらのことから、更なる出店をつづけると、いきなり!ステーキ内でもペッパーフードサービス内でもカニバリゼーションが起こるのではないか。

 2点目は、ロードサイドにはすでにファミリーレストランや回転寿司などのファミリー層向けのチェーン店が拡大しており、いきなり!ステーキがロードサイドでの競争に勝っていくのは難しいからだ。上記のチェーン店と比べると、いきなり!ステーキのメニューは、ファミリー層が店選びをする際の選択肢に入らないと考える。いきなり!ステーキでは、200グラム以上でないと大抵のステーキをオーダーすることが出来ない。少量のステーキをより安価に提供する他のファミリーレストランと比べると、量が多い分高価格になってしまう。またそれだけでなく、いきなり!ステーキには他ステーキ店と比べて、スープやサラダ、デザートなどのサイドメニューが少ない。これでは、家族の誰かがステーキの気分でないときに、いきなり!ステーキは店選びの選択肢に入らなくなってしまう。つまり、いきなり!ステーキのメニューは、ファミリー層の多様なニーズに応えられていないと言える。このままでは、いきなり!ステーキがファミリーレストラン等から顧客を奪い、ロードサイドでの競争に勝つことは難しいのではないだろうか。

 現在いきなり!ステーキは、ロードサイドへの新規出店を控えている。それだけでなく、先ほど述べたロードサイド店舗である和歌山県永穂店を2020年1月に閉店するなど、2020年に入り駅前、ロードサイド併せて74店舗もの店舗を閉店することも発表している(日本経済新聞, 2020)。しかし、新規出店を辞めても既存のロードサイド店舗の売上を上げていかなければならない。そこでいきなり!ステーキは、ランチタイムのお得なセットや安価な値段でのステーキの導入、牡蠣などの新メニューの導入を行った(神田, 2020)ものの、結果は伴っていない。このように店舗の商圏の重なりが少なくなっても、様々な施策がうまくいかない中で、今顧客の少ないロードサイド店の既存店舗が一番に取り組むべきことは、ランチやディナーの時間帯に外から覗いても客がいる状態にすることである。そのためには何が必要なのであろうか。

 私は、ファミリー層を取込まなければならないと考える。なぜなら、既存顧客はいきなり!ステーキの値上げに不満を持ちすでに離れてしまっているため(吉岡, 2019)、値下げを行わない限り再度取込むことは難しいと考えるからだ。それに加え、元々いきなり!ステーキがメインターゲットとしていたサラリーマンの昼食代は約570円と減少傾向にある(新生銀行グループ, 2018)。このことから、いきなり!ステーキは駅前のサラリーマンなどの顧客を維持するだけでは売上を回復することは出来ないと考える。そこで私は、まだ取込むことの出来ていないファミリー層をターゲットとするのが最善であると考える。ファミリー層の外食支出額は増加傾向にある (日本食糧新聞, 2019)。実際に郊外に多く出店している回転寿司は、ファミリー層を獲得することによって業績を伸ばしている(日刊工業新聞, 2017)。それに加え、いきなり!ステーキはファミリー層向けに店内をリニューアルしており、ステーキ専門店がメインターゲットとしていないファミリー層を獲得しやすいのではないかと考える。

 では、どうすれば既存のロードサイド店はそのような顧客を取り込むことが出来るのか。私は、ファミリー層を取込むためにファミリープレートの開発を提案したい。具体的には、家族で取り分けられる200グラム以上のステーキと、家族の人数分以上のサイドメニューをセットにしたものを、ファミリープレートとして提供する。そしてこのセットのために、子供が好きなスープや揚げ物、ドリンク、女性向けのサラダ、デザートなどの新たなサイドメニューを開発する。このように、サイドメニューが増えることによって、家族それぞれが好きなものを選べるような選択肢が増えるので、ファミリーの多様なニーズを満たすことが可能となる。その上ステーキの取り分けが可能となるため、量が多く冷めて固くなると食べにくいと感じていた女性客や子供も、温かい内においしく食べきることが出来るのではないか。

 この提案によって、ファミリー層が持っていた「立ち食いで家族向けではない」といういきなり!ステーキのイメージは刷新されるだろう。そして、このプレートにより一人あたりの単価を下げることが出来るので家族連れが来店しやすくなる上に、ステーキ専門店のステーキをリーズナブルに食べられることにも繋がる。またステーキの値下げをして利益を圧迫するのではなく、一般的に考えれば原価率が低く利益が出るものが多いサイドメニューと原価率の高いステーキを組み合わせることによって、プレートの値段を安価に設定しても利益を生むことが出来ると考える。

 2020年春現在、飲食業界の市場規模はわずかながら増加傾向にある(ホットペッパー, 2020)。それにも関わらず、いきなり!ステーキの既存ロードサイド店は、カニバリゼーション、新たな顧客獲得の失敗により売上が低下し、苦境に立たされている。今後、競争の激しい飲食業界の中で売上を上げて行くには、「リーズナブルな価格で多様なメニューを頼みたい」ファミリー層を獲得できるかどうかが鍵となる。そのために、ファミリープレートのような新たな施策が必要なのではないか。

【参考文献】
ホットペッパー(2020)「外食市場調査」2020年3月29日閲覧, https://www.hotpepper.jp/ggs/research/article/marketing/202001?doing_wp_cron=1585651469.2870368957519531250000
株式会社ペッパーフードサービス(2019a)「業績予想の修正に関するお知らせ」2019年7月2日閲覧,https://pepper-fs.co.jp/_img/ir/lib/2019/PFS20190628A.pdf
株式会社ペッパーフードサービス(2019b)「ニュース」2019年8月26日閲覧, https://www.pepper-fs.co.jp/news/
神田啓晴(2020)「いきなり!ステーキ、起死回生の一手は「ペッパーランチ」回帰?」2020年3月4日閲覧, https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00100/022600007/
「ファストフード市場、2.5%増の2兆9682億円」 『日刊工業新聞』2017年8月4日
日本経済新聞(2020)「「いきなり!ステーキ」2020年に74店閉店 ペッパー」2020年3月4日閲覧, https://r.nikkei.com/article/DGXMZO56071050W0A220C2HE6A00
日本食糧新聞(2019)「全国外食産業・業務卸特集」2020年3月29日閲覧, https://news.nissyoku.co.jp/news/kinbara20190726050347086 清水伸年 (2016)「「脱チェーンストア」の現状と課題」『マーケティングジャーナル』36(2) 62-77.
新生銀行グループ(2018)「2018年サラリーマンのお小遣い調査」2020年3月29日閲覧, https://www.shinseibank.com/corporate/news/pdf/pdf2018/180628okozukai_j.pdf
吉岡陽 (2019) 「いきなり!転落、復活への苦闘」 『日経ビジネス』1996, 58-62.

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