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「栃木i37号」の知名度を上げるために

 奥平(2019)によると、イチゴ市場は、1980年代後半から2000年代前半にかけて、東日本で栽培される「女峰」と西日本で栽培される「とよのか」とで、シェアを半分ずつ分け合う状況が続いていた。しかし、産経新聞(2018)によると、1995年産の生産額で「とよのか」はトップの座から引きずり落とされた。その原因は、栃木県を代表する「とちおとめ」の誕生だ。この誕生により、「とよのか」は特売用に回されることが増えたのである。奥平(2019)によると、この状況に触発されて2005年に誕生した福岡県の「博多あまおう」は、その後首都圏で定着した。これにより、相対的に県産イチゴの評価が下がることを危惧した栃木県は、2014年に高級志向の「スカイベリー」を開発して対抗を試みた。しかし、現状として「スカイベリー」は知名度が低く、「博多あまおう」への対抗は難航している。

 では、なぜ「スカイベリー」の知名度は低いのだろうか。私は、「スカイベリー」のチャネルが非常に限られているからだと考える。

 「博多あまおう」は、全国の量販店や高級果物店においてイチゴの定番商品となっている。同じ「博多あまおう」であっても、比較的グレードが低いものは量販店にて低価格で販売し、比較的グレードが高いものは高級果物店にて高価格で販売することによって、チャネルによる商品の平均価格の差にも対応している。また、普段量販店でイチゴを購入する消費者のほとんどは、高級果物店ではイチゴを購入しない。同様に、普段高級果物店でイチゴを購入する消費者のほとんどは、量販店ではイチゴを購入しない。そのため、量販店と高級果物店とで「博多あまおう」のグレードに違いがあっても、消費者が不満を持つことは少ない。したがって、量販店と高級果物店というそれぞれの領域において、それぞれの消費者から「博多あまおう」は認知されているのである。

 一方、「スカイベリー」は、関東以外では販売されていない。また、関東であっても、量販店ではほとんど販売されていない。つまり、「スカイベリー」を認知する消費者は、高級果物店を利用する人を中心としたごく一部に限られてしまっている。だから知名度が低いのだ。確かに、栽培数量を少なくしてチャネルを高級果物店に限定することは、「スカイベリー」という高級志向のブランドを維持していくためには有効かもしれない。しかし、消費者が存在を知らなければ、たとえ味が良いイチゴであったとしてもそのイチゴは購買対象にならない。そして、実際に消費者がそのイチゴを購買して食べる機会がなければ、味の良さには気づくことが出来ないのである。そのため、多くの消費者は既に認知している「博多あまおう」を選択することとなり、栃木県産イチゴの評価を下げないという「スカイベリー」開発本来の目的を達成できていないのではないだろうか。

 しかし現在、栃木県は知名度の高いイチゴを生み出す好機にある。「栃木i37号」という新たなイチゴが開発されたのだ。この「栃木i37号」の開発目的はイチゴの消費拡大にある(栃木県, 2019)。つまり、高級果物店よりも量販店で取り扱われやすいイチゴである。また、生産が容易で収量が多いため、価格も抑えやすい。では、どうすればこのような「栃木i37号」の知名度を上げることができるのだろうか。

 私はまず、「栃木i37号」を特定のコンビニチェーンにおいて独占販売することを提案する。なぜなら、「栃木i37号」が最初から「博多あまおう」など既に知名度が高いイチゴに勝てるとは考えにくいからだ。その点コンビニであれば、生鮮食品で複数の銘柄を置くスペースは少ないため、「栃木i37号」を独占的に取り扱ってもらえる可能性が高い。もし独占的に取り扱ってもらうことができれば、他のイチゴと比較されることなく、イチゴとして消費者に「栃木i37号」を手に取ってもらえるだろう。そして、手に取ってもらうことは、実際に「栃木i37号」のおいしさを消費者に認知させることにもつながる。さらに、全国チェーンであれば、「とちおとめ」だけでなく「博多あまおう」など他のイチゴが既に定番となっている地域にも切り込んでいくことができ、「栃木i37号」の知名度向上に役立つだろう。

 具体的には、食べ切りサイズのパック詰めにして販売を行う。スーパーで売られているサイズよりも小さな食べ切りサイズにすることで、コンビニ利用客は「栃木i37号」を手に取りやすくなる。また、鮮度管理の問題に対応するために、パックを複数重ねてもイチゴがつぶれない「クリスタルケース」(山口宇部経済新聞, 2008)を利用することも検討したい。

 まず、生のままパック詰めとすることで、粒の大きさや発色の良さなど、「栃木i37号」自体の鮮度の良さを消費者に直接伝えることができる。この鮮度の良さは、消費者にとって「栃木i37号」を購買する強い動機となるだろう。実際、一般社団法人新日本スーパーマーケット協会(2015)の調査によると、消費者が果物を購買するときに最も重視しているのは鮮度の良さである。そのため、多くの場合、加工品ではなく「果物そのもの」が手に取られているのだ。つまり、コンビニで売られている鮮度の高い「栃木i37号」は手に取られやすいので、そのことに満足を感じる消費者層は増えていくだろう。満足を感じることによってブランドロイヤルティが形成され、「栃木i37号」を再び手に取る消費者が増える。このことによって、「栃木i37号」の知名度が向上することになるのだ。

 このように、「博多あまおう」のような1つの商品における成功が、「スカイベリー」といった他の商品においても通用するとは限らない。そもそも商品が別である上、時代によって消費者のニーズも多様化しているからだ。「栃木i37号」の場合は、イチゴの消費拡大という明確な開発目的があり、コンビニの出店範囲は全国規模に広がっているという時代背景もある。過去の成功例にとらわれず、その商品の開発目的を明確にした上で、時代背景や商品の特徴に合わせたマーケティング、すなわちコンビニでのパック詰め販売が、「栃木i37号」の知名度を上げることにつながると私は考える。

【参考文献】 
一般社団法人 新日本スーパーマーケット協会(2015)「2015年度 スーパーマーケット白書」2020年1月27日閲覧, http://www.super.or.jp/wp-content/uploads/2015/02/supermarket-hakusho2015-3-0924.pdf
奥平力(2019)「成功は一部、競争も激化 曲がり角の特産品開発」『日経ビジネス』1999, 42-45.
産経新聞(2018)「【平成のイチゴはこうして生まれた】あまおう(1)王座奪還へ福岡の総力戦」2020年1月27日閲覧, https://www.sankei.com/smp/region/news/180321/rgn1803210053-s1.html
栃木県(2019)「「栃木i37号」の生産振興方針」2020年1月27日閲覧, http://www.pref.tochigi.lg.jp/g05/itigoyasai/shinhinsyu/documents/i37seisanshinkouhoushin.pdf
山口宇部経済新聞(2008)「重ねても大丈夫なイチゴパックで出荷スタート−防府のイチゴ農園」2020年1月27日閲覧, https://yamaguchi.keizai.biz/headline/518/

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