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プラットフォーム企業のグローバル戦略(第9章 結び P339~371)


【要約】
 本書は、いままで明確に研究されていなかったグローバル・エコシステムにおけるプラットフォーム企業の競争戦略に焦点をあて、そのようなプラットフォーム企業の台頭が国際的な産業構造にどのような影響を与えるのかを事例分析・実証分析を通じて明らかにした。
 アカデミックな貢献として次のことが挙げられる。プラットフォーム企業は、エコシステムを成立させるためにたびたび戦略的標準化を行う。また、グローバル・エコシステムのハブにポジショニングすることによって、複数のコミュニティを仲介しながら競争力を拡大する。
 ビジネスインプリケーションとして次の3点が挙げられる。1つ目は、プラットフォーム企業は、その戦略のトリガーとして戦略的標準化を行う。2つ目は、プラットフォーム戦略を競争戦略として立案しようと考えている実務家にとって、「戦略的標準化」「ハブへの位置取り」「分業マネジメント」といった戦略レバーを提示したことである。3つ目は、実務家および政策立案者にとってプラットフォーム戦略と産業構造転換との関係を明らかにしたことである。


【ディスカッション】
 本書を通じて、プラットフォーム企業の競争戦略について理解を深めてきた。そこで、今回のディスカッションでは、過去に実際に起きた事例を用いてディスカッションを行った。その事例は、アメリカのスマートフォン市場における、Black BerryとiPhoneの競争である。
 Black Berryは、1996年に携帯情報端末を発売し、2002年より音声通話やウェブサイトの閲覧に対応した端末を発売している。Black Berryは信頼性とセキュリティー、そして画期的なキーボードが支持されて、スマートフォンの代名詞になった。この時代、各メーカーは、自社開発の独自OSで主に企業向けのスマートフォンを開発しており、スマートフォンは、一般消費者に全く普及しておらず、利用するのはビジネスマンくらいであった。ビジネスユーザーにとって、Black Berryはマストアイテムとなり、ポップカルチャーでも広く目につくようになった。
 世界の大統領、CEO、セレブが愛用し、「ブラックベリー中毒」という意味の「クラックベリー」という造語まで登場した。2006年末までに、Black Berryはアメリカのスマートフォン市場で40%近いシェアを握っていた。そこに、2007年、iPhoneが登場した。iPhoneは従来のキーボードの画面とは異なり、タッチパネルの画面を搭載しており、そのデザイン性やスティーブジョブズ氏によるiPhoneに関するプレゼンテーションは世の中で話題になった。
 これらの情報に基づいて、2007年にiPhoneが登場した時代にタイムスリップしたと仮定し、「Black Berryはシェアを維持するために、今後どのような戦略を実行すればよいのだろうか?」というディスカッションポイントで議論を行った。


 議論ではさまざまな意見が出たが、大きく三つに分けることができた。一つ目は、既存の戦略に基づいて製品を改良していくというものだ。例えば、「ブラックベリーは、市場シェアも高く既存のユーザーに好まれているから、このまま製品をよりよく磨いて、新シリーズのスマホを発売する。」「企業向けはセキュリティが重要であり、iPhoneのようにセキュリティが弱いスマホを企業が使うことは考えられないため、気にせず製品を改良していく。」
「シェアを維持できている今、基本設計をかえるなどコストをかけてまでiPhoneを意識した製品を新たにつくる必要はない。」という意見がでた。
 二つ目は、iPhoneを意識した製品開発を行うというものだ。これは、iPhoneを脅威とみなし、早めに対策を打つべきだと考える人の意見である。例えば、「タッチパネルを搭載した新たなスマートフォンを開発し発売する。」「iPhoneの対策として、一般消費者が使いやすいスマートフォンを開発する。」という意見が出た。
 三つ目は、プラットフォーム戦略を行うというものだ。例えば、「従来の閉鎖的なOSをやめ、OSの標準規格をつくり、他社に無償で提供する。」「独自のOSに基づいて閉鎖的にアプリ開発を行うのでなく、ユーザー企業や個人が自由にアプリ開発をできるソフトウェアプラットフォームをつくる。」「ブラックベリーでしか利用できないメッセンジャーアプリを、他社のスマートフォンでも利用できるようにする。」という意見がでた。


 これらの意見が出る中で、Black BerryのOSをオープンにして、企業や個人が自由にアプリ開発をできるようにしたほうがよいのか。という点に関して議論が白熱した。オープンにした方が良いと考える人は、「一般消費者のユーザーを増やすためには、ユーザーがアプリ開発に参加できるようにしたほうが良い。」「アプリ開発のプラットフォームをつくり、企業や個人を含めた共存企業やユーザー企業を増やすべき。」という意見が出た。
 一方、クローズの状態を維持した方が良いと考える人は、「ブラックベリーの強みであるセキュリティの高さを維持するために、クローズにすべき。」「一般消費者や企業の信頼を維持するために、従来通りブラックベリーが認めた企業のみにアプリ開発を任せる。」という意見が出た。


 議論の結論として、Black Berryの戦略は、既存ユーザーのニーズを満たすことを優先し、従来通りのキーボードを搭載したスマートフォンの開発を継続したまま、セキュリティや使いやすさを磨いていくという意見でまとまった。また、オープン化に関しては、政府機関や軍事機関、企業を主要顧客にしているため、セキュリティを第一に考え、従来通り独自のOSで閉鎖的にアプリ開発を行うという結論が出た。


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