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やよい軒が重視すべき「自社の強み」

 2019年の春、やよい軒は一部店舗でテストマーケティングとしてご飯のおかわり自由を廃止した。代わりに、無料であったおかわりを一杯30円〜100円の有料制にし、十六穀米の大盛をプラス50円にしたのである。山田・広田・白井(2019)によると、今は消費者にとって「0円」ほど強い魅力はなく、「無料」をビジネスモデルに組み込む「フリー戦略」が一般化してきている。しかし、最近はその費用対効果を疑う企業が増えてきたという。やよい軒もそういった企業の1つと言える。やよい軒が今回のおかわり有料化を行った背景には、まず、売上高が前年比0.6パーセント増と堅調な実績を維持しており、その現状は「おかわり自由」がなければ保てないのか、という問題意識を持っていたことが挙げられる。さらに、おかわりをする人の割合がかつての7割から5割強まで減っているという背景もあったからである。また、青木 (2019)では、有料化の理由に、おかわりをしない顧客の不公平感があったからであるといわれている。

 やよい軒は、今回の有料化をあくまでテストマーケティングとして行っており、今後有料化を実際に行うかどうかを検証していくという。この有料化について、メディアでは様々な意見が挙げられている。例えば、山田・広田・白井(2019)では、おかわりする人の割合はそれほど変わらず、顧客離れも起きていないと述べられている。一方、毎日新聞デジタル(2019)によると、SNS等で多くの反感の声がやよい軒の親会社であるプレナスに対して押し寄せた、と記されている。では、やよい軒はおかわりの有料化を全店舗で本導入するべきであろうか。

 私は有料化するべきではないと考える。なぜならば、有料化すると、やよい軒は自社の強みを失い、顧客の不満も解消されず、顧客の離反行動につながると考えるからである。まず、やよい軒の強みはおかわりを自由に出来ることだと私は考える。その理由として、山田・広田・白井(2019)では、やよい軒の顧客の半数以上がおかわりをすると述べられていた。さらに、店舗内外に掲示されているポスターや、テストマーケティング後に放送されているCMでも、おかわりが無料でできることを大々的に伝えている。最近では、ユーリンチー定食がその例であるといえるだろう。こういった、多くの顧客がおかわりをしていることや、大々的にCMやポスターで、無料でおかわりができると伝えていることから、ご飯のおかわりが自由に出来ることはやよい軒の強みであると言える。

では、やよい軒が「おかわり自由」という強みを失うことは、なぜ顧客の不満解消には至らず、結果、顧客離れにつながるのだろうか。まず、今回やよい軒が有料化を行った理由の一つに、青木(2019)で言われていた、おかわりをしない顧客の不公平感からの不満があった。やよい軒は、この非おかわり勢からの不満解消策として、自社の強みである「おかわり自由」を手放したことになる。確かに、こうすることで非おかわり勢の不満は解消されたかもしれない。しかしその結果、「おかわり自由」という強みを失ってしまい、今までおかわりをしていた顧客に不満を抱かせてしまう。つまり、おかわりの有料化は、非おかわり勢の不満を取り除く代わりに、やよい軒にとって重要な、半数以上もの「おかわりをする顧客」から、新たな不満を生み出してしまうという最悪の結果を招いてしまうのである。よって、不満を解消する策であったはずの「おかわり有料化」は、結果として不満を増大させることになるのである。

 さらに、Shampanier, Mazar & Ariely(2007)の研究は、行動経済学の視点から、無料であることは需要を大きく拡大させることを明らかにしている。また、製品内容やサービスの内容が同じにも関わらず、料金が無料から有料に変われば、離反行動が発生することも明らかにしている。やよい軒の半数以上の顧客がおかわりをしている状況にも関わらず有料化を実施すれば、顧客が離反行動を引き起こすので、売上を維持することは困難である。もし、この取り組みによって、新規顧客の増加が見込めるならば売上の維持も考えられるが、有料化をしたことは新規顧客にとって何のメリットもないので、新規顧客の増加につながるとは考えられない。つまり、有料化をすると顧客の数は減少し、売上の維持はできなくなってしまう。よって、山田・広田・白井(2019)で述べられていた「有料化を行っても売上高の維持が可能」とは言えないのである。従って、やよい軒が有料化を行った背景にあった、非おかわり勢からの不公平感は解消されず、さらに売上高に関しては維持するどころか減少させてしまう。このことからやはり、やよい軒はご飯のおかわりを有料化すべきではないと私は考える。

 では、やよい軒はおかわりをしない顧客の不公平感をどのように解消すればよいのだろうか。私は、「おかわり自由」に不公平感を持つ非おかわり勢がおかわりをするようになれば、その不公平感は少なくなると考える。そのために私は、茶碗のサイズを少し小さくし、最初に茶碗に入っているご飯の量を減らせばよいと考える。その理由は、ご飯の量が少なくなる事で、非おかわり勢にもご飯が足りない状態が生まれ、おかわりをする人が増えると考えるからである。そうすれば、有料化の理由であった「おかわりをしないことからの不公平感」は少なくなるだろう。一方、今回の提案では、茶碗のサイズが小さくなってしまうので、これまでおかわりをしていた人に「おかわりに行く回数が増えることを面倒に感じさせてしまう」という懸念がある。しかし、やよい軒は自分でおかわりのご飯を入れることが出来る。従って、茶碗が少し小さくなったとしても、おかわりの際に自分で少し多めに盛れば、こういった懸念は解消されると考える。さらに、おかわりをしていた顧客がおかわりの回数が増えることを面倒に感じ、おかわりの回数が減らすと、ご飯の消費量も減る。それによって結果的に、材料費を抑えられるということも考えられるだろう。以上の理由から、私は「茶碗を小さくし最初に入っているご飯の量を少なくする」という提案をしたい。

 このように自社の「強み」は顧客を獲得するために必要な要素であり、簡単に手放してはならない。たとえ「フリー戦略」のような流行のビジネスモデルがあったとしても、新しく何かに手を出すのではなく、まず自社の強みというものを第一に考えていく事がどの企業にも必要である。その点で、やはりやよい軒はご飯のおかわりを有料化すべきではないだろう。やよい軒にとって、「おかわり自由」は自社の強みであり、たとえ顧客からの不満があったとしても、その強みを活かして手を打つ必要があるといえる。このように「強み」を活かして手を打つことで、既存顧客を逃すことなく新規顧客や問題点に対するアプローチが可能となるのである。どれほど人気のある「流行」や「ビジネスモデル」があったとしても、企業はまず自社の強みに目を向けるべきである、と私は考える。

【参考文献】
青木正典 (2019)「非おかわり勢が不公平と主張?やよい軒おかわり有料テスト導入の理由が明らかに」『J-CASTニュース』2019年10月29日閲覧.
https://www.j-cast.com/2019/04/15355310.html?p=all
毎日新聞デジタル(2019)「定食「やよい軒」、一部店舗で有料化 客から「不公平感」に意見」2019年7月15日閲覧https://mainichi.jp/articles/20190415/k00/00m/020/103000c
Shampanier, K., Mazar, N. & Ariely, D. (2007) Zero as a special price:The true value of free products. Marketing Science,26(6), 742-757.
doi:10.1287/mksc.1060.0254 2019年12月16日閲覧.
山田宏逸, 広田望, 白井咲貴(2019)「新規企業という病」『日経ビジネス』1996, 28-47.

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