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チャオパニックが若者に選ばれるには

 津久井(2018)によると、新規開店した衣料・雑貨店「ベースヤードトーキョー」はこれまでの店舗と趣が全く異なるものだという。「ベースヤードトーキョー」ではとがったデザインや落ち着いた色合いなど印象が違う5つのブランドがゾーンを区切って商品を並べている。その中でチャオパニックが目立つ。このブランドはもともとオリジナルブランドを6〜7割、仕入商品3〜4割を扱っている。そんな中、ベースヤードトーキョーに限っては仕入れ商品とオリジナルブランドの割合を逆転させた。なぜならSPAにより売れ筋商品に偏りが生まれ、商品が均質化してしまった結果、他社との違いを出しづらくなっているからだ、と津久井は述べている。

 そこで仕入れ商品とオリジナルブランドの割合を逆転させたことによる変化を確認するために、私は通常のチャオパニックの店舗であるチャオパニック海老名店とベースヤードトーキョーに出店するチャオパニックにと足を運んだ。チャオパニック海老名店では仕入れ商品とオリジナル商品が店内に分けられることなく配置されている。また店を見渡し商品を確認したところ、オリジナルブランドの割合は全体の6割程度といったところだ。さらに、海老名店が出店しているららぽーと海老名にある他のアパレル店舗と比較したところ、チャオパニックと似たようなテイストの商品が並んでいるように見えた。次にベースヤードトーキョーである。こちらでも仕入れ商品とオリジナルブランドが分けられることなく配置されている。店を見渡し商品を確認したところ、仕入れ商品の割合は全体の7割程度といったところだ。加えて、ベースヤードトーキョーにおいてのみオリジナル商品と仕入れ商品の割合を逆転させた理由は、他社との差別化というよりチャオパニック内で差別化する意図があった、とチャオパニックの店員さんが述べていた。つまり、商品の割合を元に戻すと、ベースヤードトーキョーに出店するチャオパニックと一般のチャオパニックが同質化してしまうことになるのである。

 ではチャオパニックは他社と差別化をするために、ベースヤードトーキョー以外の店舗でもオリジナルブランドと仕入れ商品の割合を逆転させるべきだろうか。私は逆転させるべきではないと考える。理由は二つある。

 一つ目は、利益率が落ちるからだ。チャオパニックはベースヤードトーキョー以外の店舗においては、オリジナルブランドの比率が高い。オリジナルブランドはSPAで展開されているので、コストダウンが見込まれる。対して、仕入れ商品は他社から買い取っている分オリジナルブランドと比較してコストがかかる。一方、オリジナルブランドは売れ筋商品を中心に製造するので比較的売れやすい。また、自社で生産することで規模の経済によるコストダウンが見込まれる。つまり、売れれば売れるほど仕入れ商品より多くの利益を生み出すことができる。したがって、利益を確保するためにSPAの体制維持は不可欠である。

 二つ目は、仕入れ商品に頼らずとも同程度の品質の製品を提供できるからだ。井上(2008)によると、オリジナルブランドを作るために素材の調達から小売りまでを自社で行うことで、仕入れ商品をはじめとする一般商品と同じ質を維持することができるという。また、チャオパニックであれば更なるメリットも見込める。商業界オンライン(2018)によると、パルグループは2016年に生産プラットフォーム室という部署を設けている。これは素材の共通化などにより、製品の質を上げようとしている試みである。例えば、パルグループ内のチャオパニック以外のブランドが優れた素材を使おうとした時に、チャオパニックもその同じ素材を使うことができる。このように、ブランド毎で仕入れたときに発生する単価を抑え、各ブランドの探索コストの削減を行うことができる。したがって、仕入れ商品と同程度、また仕入れ商品より優れた質の製品を販売するために、仕入れ商品とオリジナルブランドの比率は維持するべきである。

 ところが、従来通りチャオパニックにおいてオリジナルブランドと仕入れ商品の比率を維持すると、どうしても他社と似たような商品ラインナップになってしまう。そうすると、チャオパニックではなく他社で購買してもいいと考える消費者が増えてしまう。そこで私は、従来通りのラインナップを維持しつつ他社でなく自社で買ってもらえる施策が必要であると考える。その理由は、チャオパニックのオリジナルブランドには需要があると考えるからである。繊維流通研究会(2014)によると、チャオパニックは数年前から20代を中心とする若者をターゲットにしている。加えて、30歳未満の人々の洋服への支出が減少傾向にあることが明らかになっている(総務省, 2014)。これらのことから、チャオパニックの狙う顧客層はオリジナルブランドのような比較的安価かつ品質の良い商品を購買すると考える。そのため今後もオリジナルブランド中心の商品構成にする必要があるのだ。

 では、その中でチャオパニックが自社の商品を若者に選んでもらうためにはどうすればよいだろうか。私は、店内に商品のコーディネートやこだわり部分などの詳細が分かるように、QRコードを配置することを提案する。このQRコードを読み取ると、その商品のコーディネートやこだわりポイントを見ることができるだけでなく、店員がチャオパニックの服を日常で着ている写真も見えるようにする。本提案のように、商品にQRコードをつけ詳細を分かりやすくするという仕組みは、海外では実施されているようであるが、日本のアパレルでは現状この仕組みはない。

 この提案の特徴は消費者に対してコーディネートのイメージを提供できる点である。通常店内では店員が商品について話すことで顧客に情報を伝達してくれる。しかし、その商品を着用した全体像や、畳んであるだけの服と自分の家にある服との組み合わせは、店員の説明を聞いているだけではわかりづらい。そこで、本提案のように視覚的に分かる仕組みによってこそ、顧客は商品をイメージしやすくなると考える。また、本提案は雑誌等よりも顧客に商品の良さや組み合わせを訴求できると考える。店内にファッション雑誌などを置いている店があるように、雑誌が服を選ぶときの判断材料の一つになるのは間違いない。しかし、雑誌の多くはプロのモデルが写っていることがほとんどであり、彼らはどんな服でも着こなしてしまう。これでは、服やコーディネートよりもモデルの素質に目が向き、参考になりづらい。一方、この提案では店員がチャオパニックのオリジナルブランドを日常で着用している姿がアップされる。こうすることで、スタイルが良いモデルだから似合うという印象を払拭でき、決してスタイルが良くない一般人でも自分に合ったコーディネーションを見つけやすくなるのである。こうすることで、顧客は自分に似合う商品を購買しやすくなるのではないか。

 繊研新聞(2016)によると、海外ファストファッションなど大型SPAの台頭に象徴されるように、市場にはモノがあふれ、商品の同質化も進んだ。今後も多くのアパレル企業が利益率の高い自社製品に頼ることになるだろう。一方で、セレクトショップがオリジナルブランド中心で仕入れ商品を少し販売する流れもまだ続くと予測される。その中で、チャオパニックが顧客に選ばれるためには、消費者により近い存在である店員のコーディネーションによって自社の商品をアピールすることで、オリジナルブランドについて消費者に伝えやすくなると考える。その結果、顧客は他社ブランドでなく、チャオパニックでの購買を選択し、自分に似合った商品を手に取ることができるのだ。

【参考文献】
井上近子 (2008)「経営改善に対応した売場リニューアルの実証分析―セレクトショップを中心としてー」『目白大学短期大学研究紀要』44, 239-253.
繊研新聞 (2016)「今アパレルビジネスに求められること」『繊研新聞』2016年5月13日,1.
繊維流通研究会 (2014)「来年からライフスタイル提案型の取り組みも強化」2019年12月12日閲覧. http://www.apparel-mag.com/abm/article/business/530
総務省 (2014)「平成26年度全国消費実態調査」https://www.stat.go.jp/data/zensho/2014/pdf/gaiyo2.pdf
商業界オンライン (2018)『パルグループHD 井上英隆会長の「これからの経営」』2019年12月12日閲覧. http://shogyokai.jp/articles/-/674?page=2
津久井悠太(2018)「いつも「新鮮な店」追求」『日経ビジネス』1963, 50-54.

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