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マニーがより多くの市場で競争優位を確立するために

 武田・藤村・高槻・広岡(2018)によると、大企業に負けない隠れ高収益企業の利益率の源泉の一つとして、ニッチを貫き通す点があげられている。その一つの例として、栃木県宇都宮市の医療機器メーカー、マニーがある。マニーは1956年に創業され、2018年8月期の売上高は200億円、営業利益は50億円である(マニー, 2018)。マニーは経営方針として、ニッチ市場(年間世界市場5,000億円程度以下)以外に参入しないことを挙げており、武田 他(2018)はその利点としてライバルの持っている技術を研究し尽くしていることを挙げる。

 その具体例が、マニーの品質へのこだわり(マニー, 2019)である。マニーは製品の特性毎に、常に「世界一の品質」を保持した製品であるかを検証することを業務の中核に据え、年2回「世界一か否か会議」を開催している。この会議ではマニー製品および競合他社製品を市場から入手し、製品の特性毎に試験を行い、マニー製品の品質を確認する。「世界一の品質」を逃した特性に対しては世界一を奪還できるようにアクションプログラムを作成し、次回までに執念を持って改良に取り掛かる。約一年の改良を続けても世界一にならなければ「撤退もやむなし」と判断する決まりがある。

 しかし、約一年間の改良を行っても世界一の品質にならなかったからという理由のみで、撤退を決めるべきであろうか。

 私は、この決まりのみで撤退を決めるべきではなく、現在のように約一年間の改良期間を経た上で、マニー製品の品質の向上具合が競合他社のなかで一番であれば今後も改良を続け、一番でなければ撤退を決めるべきであると考える。なぜなら、品質の向上具合が競合他社よりも勝っていれば、確実にどこよりも成長していることを意味し、今後マニーが世界一を奪還できる可能性が高いと考えるからである。逆に、品質が向上していない、あるいは向上具合が他社に比べて劣っている場合は、今後世界一になる可能性が低いと考えるため、撤退するべきであると考える。現在のマニーは、改良期間後の一時点で世界一でないのならば撤退を決める。しかしこれでは、どんなに品質が向上したとしても世界一でないのならば撤退することになるので、近い将来世界一を奪還できる可能性のある製品でさえも撤退してしまう可能性が高くなる。従って、一定期間内での品質の向上具合を見て撤退するか否かを決める必要があると考える。

 このとき、再度改良を続けることを決めた製品は、撤退せずに今後も研究を行っていくため、マニーが抱える開発製品数が増え、研究開発コストが増加してしまうのではないかという懸念がある。確かに、製品数が増えるとコストは増加するだろう。しかし増加分のコストは、大量生産を行い、規模の経済や経験効果がうまれることで補うことができると考える。顧客にとってマニーの取り扱う小物医療用消耗品は一度にたくさん必要であるため、マニーは大量生産をする必要がある。加えて、マニーの売上高は平成26年から平成30年にかけて海外での販売を強化したことにより増加傾向である。また、製品の増産が軌道に乗ったことで営業利益が増加している。医療機器業界においては、先進医療の導入が進み、新興国では人口の増加及び経済発展に伴う医療インフラの整備が進んでいるため、全体としては引き続き市場の拡大を見込んでいる(マニー, 2018)。このことから、今後もマニー製品の需要は伸びていくと考えられるため、大量生産することになる。大量生産をすることで、研究開発費や設備費などの固定費的な支出に関して1個当たりのコストが下がり、規模の経済がうまれる。また、製品を多く作ることにより、生産ノウハウが蓄積され、製造コストが下がることによって経験効果がうまれる(和田, 2011)。故に、増加分の研究開発コストは、規模の経済や経験効果がうまれることで補うことができると考える。

 このように、従来のように改良期間後の一時点で世界一か否かを判断してしまうと、今後世界一になる可能性のあるものも撤退を決めてしまうかもしれないので、マニーは「世界一か否か会議」において、改良期間内の品質の向上具合をみるべきであると考える。改良期間内の品質の向上具合をみることで、マニーは今までよりも多くの世界一の製品を開発していくことができるだろう。つまり、マニーがより多くの市場で競争優位を確立するためには、多数の世界一の製品を持つことが必要だ。

【参考文献】
マニー株式会社 (2018) 「2018年8月期有価証券報告書」 https://ssl4.eir-parts.net/doc/7730/yuho_pdf/S100EMX4/00.pdf 2019年7月7日閲覧.
マニー株式会社 (2019) 「品質へのこだわり」http://www.mani.co.jp/research/quality.html 2019年1月15日閲覧.
武田健太郎, 藤村広平, 高槻芳, 広岡延隆 (2018) 「隠れ高収益企業」 『日経ビジネス』 1959, 22-39.
和田剛明 (2011) 『よくわかる経営管理』 詐, ミネルヴァ書房.

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