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ブラックスワンの経営学(第7章)

【要約】
 第7章の目的は、ここまで紹介してきた受賞論文から、ビジネスの実務に役立つ知的作法として、ケーススタディの方法を学び、いかにして実務に役立てるかというきっかけをつかむことである。実践に生かすというのは、学術の事例研究を実務に応用するということだ。学術の世界と実務の世界の調査には同じ部分と異なる部分があるため、実務の調査であっても「こだわるべき部分」もあれば、実務の調査であるからこそ「わりきってよい部分」もある。

 はじめに、「こだわるべき部分」について述べる。学術の作法の中で「こだわるべき部分」は、事例研究の骨格に関わるところだ。本書で紹介した学会賞受賞論文だと、各章のメインテーマに関わる部分である。各章のメッセージを振り返ると、|碓譴了例であっても分析を工夫することで、十分な示唆を引き出すことができる(第2章)、調査デザインを工夫して、仮説の検証を試みる(第3章)、8従譴剖瓩鼎ことで思いがけない「気づき」を得る(第4章)、と羈喨析の限界を踏まえて追加的な分析を行い、仮説の精度を高める(第5章)、δ敢座仂櫃鯆廟廚靴董因果メカニズムを解きほぐす(第6章)、である。
 
 ,涼碓貉例については、はずれ値という言葉を用いて説明されている。はずれ値は、平均的なパターンを観測する際に邪魔なため、統計分析では集計対象から除外される。しかし、事例研究においては、そのはずれ値が先端事例や逸脱事例である可能性があるため、注目して研究するのだ。△猟敢坤妊競ぅ鵑砲弔い討蓮同一コンテキストにおいて、「ある条件を満たしている事例」と「その条件を満たしていない事例」を選び出して比較することが大切であると述べられている。の現場に近づくというのは、インタビューの際に相手の空間に入り込んで行なうことで、本音を聞き出すことができるようになるということだ。い砲弔い討蓮比較分析には限界があるため、その限界を理解し、必要に応じて比較分析の至らないところを補完するために追加分析を行う必要がある、ということが述べられている。イ蓮調査対象を追跡することで、因果関係を解きほぐすことができるということを述べている。例で挙げられている研究の場合、最初の実験から12年後に追加調査、そして40年後にもさらなる調査が行われている。
 
 次に、「わりきってよい部分」について考えるために、学術調査と実務調査の違いについて述べる。まず、使命と基本前提だ。学術の場合は、より確かな真実の探求と学術世界での新発見であるのに対し、実務の場合は、自社にとっての解決や発見である。次に、調査期間である。学術の場合は時間をかけでも確かな結論が求められるが、実務の場合は、仮説めいた結論でもよいのでスピードを重視する必要とされる。次に、調査体制だ。学術の世界では、学術コミュニティでの蓄積が前提であり、学会の共通言語を用いる必要がある。一方、実務の世界では、社内での蓄積も重要だが、時々の発見が大切である。最後に、知見の汎用性について、学術の場合は一般化志向が強く、抽象的で曖昧でも許容される。しかし、実務の場合は、限定的一般化で十分である。つまり、極論を言うと自社に当てはまれば十分なため、より具体的で明確なものであるほうがよい。

 最後に、事例研究を実務の中で取り入れているKUMONの例を紹介する。KUMONでは、子供から教育者が学ぶという姿勢によって、現場を大切にするという考えのもと事例研究が盛んに行われいている。また、全社をあげての研究として「指導者研究大会」があり、各自の普段の事例研究を通した「自主研究」を全国規模で発表し合っている。これらの取り組みを行う彼らがこだわったのは、教材の名前などを徹底して社内用語を用いるということだ。これにより、大会など大勢が集まる場でも、瞬時に全員が共通で教材のコンテキストを思い浮かべることができるため、議論が活発になる。また、意味をはき違えたり、言葉に振り回されることがなくなるといったメリットもある。

【ディスカッション】
 今回のディスカッションポイントは、「実務であればどのような場合でも、確かさよりスピードが優先されるのか」である。前提となるシチュエーションは、文京区白山にある個人経営のラーメン店だ。ここは、店長(60代)、パート(50代)、アルバイトのあなた(アルバイト歴5年の経営学部生)の5人で運営している。しかし、最近になって客が減り、一日10人になっていしまったため、今後この店をどのように運営していくのか早急に検討する必要があった。そこで、店長は「ラーメン店をやめて今流行りのタピオカ屋をはじめることで売り上げ回復できるのではないか」という仮説を立て、経営学部に通うあなたに判断を委ねている。

 この議論で前提となる「スピード」とは、仮説の正しさを検討した結果、タピオカ屋をはじめた場合の売上が回復する可能性75%であることが明らかになるという状態をさす。「確かさ」とは、仮説の正しさを検討するが、売上が回復するかはわからないという状態である。両者の検討の度合いについては、前者はタピオカの売れている理由を解明できているが、ラーメンが売れない理由は分かっていない状態、後者はタピオカの売れている理由が解明でき、さらにラーメンの売れない理由まで調査するという状態であると定義する。

 議論においては、「スピード」を優先するという意見と「確かさ」を優先するという意見のどちらの主張も多く出た。スピード派の意見としては、今流行しているから、一旦出して改善していくほうがよい、設備投資などあまりかからないためやってみてもいい、追加で検討している間に店がつぶれてしまうから早くやるべき、追加調査にもコストがかかるのでそこにかけるよりは早くやるべき、などの意見が出た。一方、確かさ側の意見は、大学で新規事業をはじめるにはリスクがあるということを学んだので、追加調査をして確実にしてから実行すべきという意見や、ラーメン店失敗の要因によってタピオカが失敗しては意味がないのでしっかり調査するべき、今後何年も店を続けたいという思いでアルバイトの私に相談している店長の気持ちを考えるとスピードよりも確かさを優先してしまうという意見が出た。
 
 今回は、スピード派も確かさ派もどちらにも言い分があり、なかなか決着がつかない平行線のままの議論であった。原因として、この議論は当初、検討の度合いを具体的には示していなかった。そのため、人によって検討期間や内容にばらつきが出てしまい、その段階での議論に多くの時間を使ってしまった。この条件をもっと早い段階で提示できていれば、スピードをとるか確かさをとるかという決着がついていたかもしれない。

たけおか(3年)




 

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