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OXの車いすが選ばれるためには

 吉野(2018)によると、オーエックスエンジニアリング(以下、OX)は、車いすの製造、販売を行っている企業である。特に、競技用車いすにたくさんの投資を行っており、競技用車いすにおいて5割というシェアを獲得するトップメーカーだ。また、OXの日常用車いすに関しては、この競技用車いすの技術を活かして製造されているため、他メーカーの車いすよりも軽量で俊敏性に優れており、小回りの効く製品となっている。そして、剛性にも優れており、「強く軽い車いす」であることが特徴だ。さらに、デザイン性にもこだわっており、スタイリッシュな車いすを販売している。しかし、日常用車椅子においてOXはトップメーカーとは言えない。何故なら、一般財団法人自転車産業振興協会技術研究所(2016)によると、日常用車椅子のシェアの8割はOX以外の4つの大手メーカーが占めているからである。

 車いすの販売方法は少し特殊である。車いすを購入する際、「車いす判定会」というものがある。「車いす判定会」では、医師立ち合いの元、一人一人の顧客にどのような車いすがあっているのかが判定される。また、それぞれの顧客に必要と判定された機能に対しては、国から助成金が出る。そして最終的に顧客がどこのメーカーの車いすを購入するかは、顧客の金銭的な要望などと必要な機能を考慮して、医師が決定するとのことだ。OX関東VIVIT店店長古谷様の話によると、金銭的に助成金内で抑えたいと要望を出す顧客が多いとのことだった。しかし、OXの車いすはどのモデルも高価である。よって、顧客の選択肢の中からはじかれてしまうとのことであった。このように、なかなか顧客の選択肢に入るのが難しい中で、OXは本当にこのまま高価格帯の車いすの販売を貫くべきなのだろうか。

 私は、広く一般の顧客には選ばれない現状ではあるが、工夫した販売促進を行えば、高価格帯の製品を貫いたままでも将来的に顧客を獲得できると考えている。何故ならば、OXの車いすがこだわり消費をもたらす製品であると考えるからだ。

 清水(2007)によると、こだわり消費とは、商品購入に際して、単に価格のみを重視するのではなく、様々な要素を選択条件とし、その中で自らの価値基準に従い、多面的な評価で購買を決定させる消費者行動のことを指す。清水(2007)では、消費者はただ安いものをとにかく購入するのではなく、「こだわり消費」を行う性質があると述べられている。そこで、顧客はOXの車いすにこだわりを持って購入するのではないだろうか。

 OXの車いすは、上記で述べた通り競技用車いすの技術を活かし高い性能を持ち合わせている。まず、フレームなどの車いすの素材にはカーボンプレートを用いている。カーボンプレートとは、鉄に比べて10倍の強度を持ち、それでいて1/4の軽さを特徴に持つ素材だ。この素材を車いすのメインフレームを始めとする各部品に用いることで、従来の車いすよりも軽量且つ剛性に優れた車いすとなっている。次に、「クロスメンバー」という部品を用いていることも特徴の1つだ。これは車いすの左右のメインフレームを繋ぐことによって剛性をさらに強くする補強部品である。この部品があることによって、操作する力が最大限に路面へと伝えられ、軽く漕ぐことが出来るようになる。さらに、メインフレームが安定し、うねりや起伏を感じさせない乗り心地を実現させるのだ。このように、上記の素材や部品は、剛性や操作性と言った面で高い性能をもたらしており、車いす利用者の毎日の移動をより快適にしているのである。さらに、他メーカーの車いすよりも軽量であるため、長時間の移動で腕が疲れるといったようなことはなくタイヤを俊敏に動かすことが出来る。加えて小回りも効くため、自分の行きたい方向へ素早く移動することが可能である。つまり、車いすを自分で漕ぐ際に、より体への負担を減らし、楽に動かすことが出来るようになるのだ。

 また、従来の車いすは細いパイプで直線的に作られているが、OXの車いすは太いパイプで曲線を描いた作りになっており、他メーカーよりも見た目にこだわっている。このようなスタイリッシュな車いすを利用することによって前向きな気持ちになれる顧客が一定数いるのではないかと考えられる。それは、通常の車いすでは気分が上がらず、「カッコ悪い車いすでは出掛けたくない」と考える顧客である。そのような顧客は、OXの車いすを利用することによって、積極的に外へ出掛けたいという気持ちを抱くことが出来るのではないだろうか。

 このように、OXの車いすを選べば他メーカーの車いすでは得られないような操作性やスタイリッシュさを毎日享受することが出来る。従って、消費者は、機能性とデザイン性を追求しているOXの車いすにこだわりを持って購入するはずだ。しかし現状として、多くの顧客は車いすの購入にこだわりを持たず、判定会の時点で「安価な車いすで十分だ」と思ってしまっている。そのため、こだわりを持っているからこそ高価格でも購入したいと考える消費者はまだ少ない。重要なのは、この判定会より前に顧客へOXの車いすの優れた機能性やデザイン性を訴えかけ、車いすにこだわりを持つ顧客を多く獲得していくことではないだろうか。

 そこで私は、OXの車いすの特別な乗り心地に気づいてもらうために、病院での試乗イベントの実施を提案したい。その際には、様々なメーカーの車いすと比較して試乗させる。何故なら、顧客は、OXの車いすと他メーカーの車いすの両者に乗り比較することで、OXの車いすが「圧倒的に機能性や乗り心地に優れており、他メーカーよりもスタイリッシュで外に出かけたくなるデザイン」ということに気づくことができるからだ。特に機能性に関しては、顧客は乗って試してみてこそ、他メーカーよりも頑丈で尚且つ小回りが効くということを感じられる。乗り心地の違いに気づけば、元々は安価な車いすで良いと思っていた消費者であっても、車いすにこだわりを持つことの重要性を感じるのではないだろうか。また、このイベントは、病院の中、もしくは入り口付近で開催することを提案する。何故なら、車いすの購入を検討している人々にとって、少しでも遠いところへわざわざ出向くのは負担となるからだ。イベントに足を運ばせるのではなく、通院のついでに立ち寄れる場所で開催することによって、車いすの購入を検討している方が少しでも参加しやすいイベントとなり、より多くの顧客が車いすにこだわるようになるきっかけを作ることが出来るのである。

 このように判定会前に顧客へアプローチをかけて、特別な乗り心地に気づいてもらうことが出来るとすれば、車いすの購入にこだわりを持つ顧客は多くなり、結果的にOXの車いすを選ぶ人が増えると考えられる。そのためにも、コストをかけてでも他メーカーにない優れた機能性やデザイン性を捨てることなく追求していくべきだ。たとえ高価格帯の車いすの販売を貫いても、機能性やデザイン性を追求しそれらを顧客に感じてもらうことが出来れば、こだわって選んでくれる顧客を増やすことが可能ではないだろうか。よって私は、OXは高価格帯の車いすの販売を貫くべきだと考える。


【参考文献】
一般財団法人自転車産業振興協会技術研究所(2016)「車いす技術課題調査 報告書」
http://www.jbpi.or.jp/report_pdf/2016_1.pdf 
オーエックスエンジニアリングHP「製品紹介」http://www.oxgroup.co.jp/wc/products/products_syudou.html 
清水英範 (2007)「生活者の意識から「こだわり消費」を考える」『情報誌CEL』52,66-77.
吉野次郎(2018)「五輪に挑む車いすのフェラーリ」『日経ビジネス』1953, 62-63.

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