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ブラックスワンの経営学(第6章)

【要約】
 NHKスペシャルの過去を追跡して「不思議」 を解き明かしていく方法は事例研究に似ており、とても参考になる。本書ではその中の「女と男」という作品を紹介している。この作品は男と女のそれぞれの立場から、恋愛において何を相手に求めるのかを解き明かした作品である。男と女は一見、相思相愛であっても、男は容姿で相手を決めるのに対し、女は中身で相手を決めており、男性と女性では視点が全く異なるというのである。

 このように、異なる立場に着目し、過程を追跡しながら、不思議が発生するメカニズムを解き明かした論文がある。それは、テキサス大学准教授メリッサ・グラブナーによるベンチャー企業のM&Aにおける売却/買収の意思決定のプロセスを調査した論文である。グラブナーは、1999年から2000年代にかけてのインターネットバブルの時代のM&Aの事例8個を対象にした。その8つの事例のうち6つについてはリアルタイムで情報取集を行い、残りの2つについても交渉成立の6か月以内に情報を聞き出した。また、グラブナーは売却/買収のプロセスを売り手と買い手、双方の視点から調査を行った。調査の結果、売却/買収のプロセスは5つのフェーズに分かれており、それぞれのフェーズにおいて、売り手の経営者と買い手の経営者とでは信頼の重みの認識が基本的にちがうということが判明したのである。M&Aの際、基本的に売り手は買い手が信頼できるかどうかを最重要視し、信頼できるのではあれば、本来やるべきはずの確認や準備を怠ってしまっていた。一方の買い手は売り手が信頼できるかどうかはほとんど気にしていないため、入念に確認や準備を行い、自分が有利になるように交渉をすすめていった。さらに、その信頼の認識に対するずれは双方にとって想定外の結末をもたらすということまで明らかとなったのである。買い手は、売り手が自分たちのことを信頼している利用し、交渉の際、欺きを活発に行う傾向がみられたのである。その欺きが明るみにでると、売り手は相手に裏切られたと思い、その会社を去って行ってしまった。その後、買い手は重要な資産を失ったことに気づいたのである。

 この研究から私たちが学べることは何だろうか。それは、ある事象の過程をリアルタイムで様々な視点から追跡することで、その事象が発生した本当の原因を探ることができることではないだろうか。事例研究で陥りがちなバイアスが3つある。それは、^貶的な視点からにバイアス⊃兇衒屬蠅離丱ぅ▲広M尭嚇な質問から生じるバイアスである。グラブナーは、売り手と買い手双方の企業に入り込み、リアルタイムで情報収集をした。このことにより、,鉢△離丱ぅ▲垢鯣鬚韻襪海箸棒功している。しかし、全ての調査対象をリアルタイムで追跡することはコストもリスクもあるので難しい。そこで、著者は「リアルとレトロの組み合わせ」を提案している。このやりかたは、結果がわかっている事例をうまく活用することで、調査方法を適切に決めることができ、また、重要なポイントだけをインタビューできるため、効率的である。

【ディスカッション】
 本章では、M&Aの際、買い手は売り手のことを入念に調べると述べられていた。つまり、買い手は誰よりも売り手のことを理解しているはずである。しかし、買い手は売り手の経営陣の価値については失うまでは気づかなかったと本章では述べれられていた。また、グラブナーの論文にも、技術系のベンチャー企業におけるM&Aでは従業員と経営陣の関係性は非常に重要であり、経営陣が従業員のモチベーションになっているとも述べられていた。しかし、買い手は売り手の経営陣の価値については失うまでは気づかなかったと本章では述べれられていた。そこで、私たちは「なぜ、買い手の企業のリーダーは売り手の経営陣が去る前に、その経営陣の価値に気づけないのか」というテーマでディスカッションを行った。

前提条件

    買い手(大企業) 売り手(ベンチャー企業)
創業年数  60年      3年
従業員数  1500人  50人
経営陣の人数  5人      3人
経営者の特徴 雇われ経営者  若い(20代)

・技術系(ネットのソフトウェア)のM&A
・買い手はシナジー効果を見込んで買収に取り掛かっている
・M&Aの価格は400億円
・売り手の従業員のほとんどが創業メンバー
・M&A後、重大な欺きが明るみに出て、まず経営陣が去り、その後従業員の過半数が去ってしまった。
・本章の5つフェーズを追ってM&Aが行われた

 議論の中ででた意見としては、売り手を技術や売り上げなどの数字でしか見ていない、売り手側の従業員の働く要因(経営陣のビジョン、人柄など)を買い手側が理解できなかった、売り手側の経営陣と従業員の関係性を軽視した、重大な欺き➡買い手側の交渉力が高いので、自分に有利になるように交渉を進めた結果、利益などを追い求めすぎた、技術が欲しくて焦った、などの意見が出た。

 このディスカッションをまとめると、買い手側がM&Aの際、売り手の経営陣の価値に気づくことを阻害する要因というのは、主に3つあると考えられる。それは、’磴ぜ蠅技術や売り上げなどの数字しか見ていない⊇抄醗と経営陣の関係性を軽視した8鮠栂呂売り手より高まっていた、である。さらに、今回の議論ではこの3つの中でもっとも根源的な要因は,任△襪箸いΨ誅世忙蠅辰拭なぜなら、利益や技術ばかりを追い求める結果、経営陣と従業員との関係性が見えなくなったり、利益や技術を追い求めるために買い手は交渉力を高めようとするからである。つまり、本ディスカッションの結論は、なぜ、M&Aの際、、買い手の企業のリーダーは売り手の経営陣が去る前に、その経営陣の価値に気づけないのかというと、買い手のリーダーが利益や技術などの数字で判断できる部分しか重要視していなかったからであるということとなった。

 私たちは今後、様々な場面で、企業にとってのM&Aのような重要な決断を下さなければいけない時があるだろう。そのときに、買い手のようにある側面だけをみて判断を下すと後々後悔することになる。そのようなときは多面的に物事を捉えて判断を下さなければならない。このことがわかっていただければ、本ディスカッションは意義のあるものになったのではないのだろうか。

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