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役職定年制導入に伴うモチベーション低下の解決方法

西(2017)によると、成果主義の定着や役割定年制¹の導入に伴い、年下の上司を持つミドルが増えている。役職定年制とは、役職者が一定年齢に達した場合、ライン系の管理職ポストをはずれて、非ライン系等の専門職などに移動する人事制度である(水谷, 2015)。この制度は、長期雇用慣行のもとで人事費抑制や若手の育成、従業員のモチベーション向上を狙いとしている。

 私は企業側の視点に立った時、役職定年制に賛成である。理由は3つ挙げられる。1つ目は、若手を育成することができる点である。役職に定年を設ければ、比較的に早い段階で次の世代に役職業務を任せることになり、早い段階で役職者となった若手の従業員にとっては成長の機会を得ることができる。このように、若手を育成することで組織の新陳代謝を促し、さらに企業が成長していくことが可能となる。2つ目は、人件費を抑えることができる点である。長期雇用慣行の下では、年齢を重ねるごとに役職が上がっていき、その分給料も増えていく。しかし、役職から外すことで役職手当が無くなり、その分の人件費を抑えることが可能となる。3つ目は従業員のモチベーションを上げられることである。ここでは若手の従業員とする。役職者の定年を設けることにより、若手の従業員が早めに役職に就くことができる可能性があるため、仕事に対するモチベーションを上げることができる。

 しかし、役職定年制導入によって従業員側に生じるデメリットが3つ考えられる。1つ目は、役職から外された従業員 の社内のキャリア形成が阻害されてしまう点である。年功序列制度下では途中で役職が下がることはない。しかし、役職定年制が導入されたことにより、一定年齢に達すると役職から外されてしまう。つまり、役職定年制導入前に役職者が考えていた社内のキャリアが阻害されてしまうのだ。2つ目は、役職から外された従業員の賃金が下がってしまう点である。年功序列制度下では年齢や勤続年数が上がるにつれて収入が上がっていく。しかし、役職定年制を導入したことによって、役職手当が無くなるため、その分の賃金が低下してしまうのだ。3つ目は役職から外された従業員のモチベーションが低下してしまう点である。Hackman&Oldman(1975)によると、仕事がもつ人を動機づける要素には技能多様性・タスク完結性・タスク重要性・自律性・フィードバックという5つの中核的職務次元があり、これらの要素を多くもつ仕事ほど内発的動機づけが高まると言われている。しかし、現場での活動では、HackmanとOldmanが述べていたタスク完結性、タスク重要性、自律性は役職についていた時よりも低下してしまうと考えられる。まず、タスク完結性が低下してしまう理由は、役職についていた時は管理職として会社全体を管理していたが、現場での仕事となったことで全体の一部分のみにしか関与することができなくなってしまうからである。次に、タスク重要性が低下する理由については、現場での仕事は役職についていた時よりも会社全体に与える影響が少なくなるから、と考えられる。最後に、自律性が低下する理由は、現場での仕事は既にマニュアルなどで定められていることが多いからである。臨機応変に対応しなくてはならない役職者の仕事に比べて、自律性は低下してしまうだろう。以上のことから、役職を外れた後、タスク完結性、タスク重要性、自律性が低下してしまうため、仕事に対するモチベーションも低下してしまうと言える。
 
 このように、役職定年制導入によるデメリットは存在するが、私は役職定年制を導入すべきだと考える。少子高齢化によって現場に入ってくる若手の人数が減少し、現場の労働力が減少してしまっている。そこで、役職定年制を導入することで、人の集まり過ぎている役職から現場へ人員移動をして、役職で持て余していた人材を現場で新たな労働力として使うことができる。そうすることで、役職手当の抑制と現場の労働力の増加が見込めるため、企業にとって導入すべきであると考える。

 しかし、デメリットで挙げたように、役職を外された従業員のモチベーションが低下してしまう場合がある。それでは、役職を外された従業員にたいしてどのような対策をすべきなのか。私は、役職を外された従業員同士の売上を比較し競争させることで、仕事に対するモチベーションを維持することができるのではないかと考える。例えば、現場が人員不足とされている飲食業界では、役職定年制導入によって役職を外された従業員が店長として店舗へつき、前年度からの売上高の伸び率を比較し、それに応じて報酬を定める方法である。

 これによって、Hackman&Oldman(1975)が述べていた5つの中核的職務次元のうち、タスク重要性、タスク完結性、自律性、フィードバックを得ることができると考える。第一に、タスク重要性を得る理由については、その店舗のトップとして配置されるため、自分の仕事がその店舗全体に大きな影響を与えるからである。第二に、タスク完結性を得る理由は、接客業務といった一部の仕事だけでなく、仕入れやシフト作成といったすべての仕事を最初から最後までマネジメントするからだ。第三に、自律性を得る理由については、店長として配置し、仕事に関する権限が与えられることで、自分の考えで進めることができるからである。第四に、フィードバックを得る理由は、売上の伸び率について比較をしているため、仕事の結果を目に見える形で評価されるからだ。以上のことから、タスク重要性、タスク完結性、自律性に加えてフィードバックも得ることができるため、役職を外された従業員のモチベーションを維持することができると考える。

 上記の提案は飲食業界に限らず、自社で店舗をもつ業界ならば適応することができると考える。なぜなら、店舗ごとに前年度からの売上の伸び率を比較することができれば、競争させることが可能となるからだ。ただ、役職を外された従業員の仕事に対するモチベーションを維持するためには、仕事において競争させる必要がある。つまり、自社で店舗を持つ業界に役職定年制を導入する際には、現場において役職を外された従業員が相手と競争できる環境を整えなくてはならないのだ。

やくら(3年)

【参考文献】
Hackman, J.R. and Oldman, G.R.(1975). Development of theJob Diagnostic Survey. Jornal of Applied Psychology, 60(2), 159-170.
水谷英夫 (2015) 『労働者+使用者側 Q&A新リストラと労働法 ―PIPリストラ、ロックアウト解雇、追い出し部屋、ハラスメント、有期使用、成果主義、役職定年制―』日本加除出版.
西雄大 (2017) 「全国3000万ミドルの新・処世術 年下上司のなつかせ方」『日経ビジネス』1898, 44-49.

¹役職定年制のことだと思われる。

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