<< 第10章 単一事例研究の用い方 | main | 役職定年制導入に伴うモチベーション低下の解決方法 >>

イノベーションの資源動員と技術進化:カネカの太陽電池事業の事例

 本稿は、イノベーションの実現プロセスにおいて「知識創造」と「資源動員」がどのように関わり成果に結びつくのかを、特定事例の詳細な研究を通して浮き彫りにし、この二つの側面を考慮したイノベーションのプロセスに関する新たな仮説を得ることを目的としている。カネカの太陽電池事業の事例は、技術シーズとその用途が複数存在しあうイノベーションのプロセスであり、カネカにとっては技術を応用すべき製品と顧客の探索を含むイノベーションである。この事例から、イノベーションの推進に寄与する四つの知見をえることができた。一つ目は、新たな知識を創造するだけでなく、それがより確実な未来の提示につながる必要があるということ。二つ目は、短期的なサイクルで技術開発をしてイノベーションを成し遂げることが、長期的な目標のための資源動員を助けるということ。三つ目は、短期的なイノベーションを乗り越えるには、補完技術を柔軟に活用できる能力が必要だということ。最後は、資源動員の側面から、長期のイノベーションと短期のイノベーションでは、発揮すべき能力が異なるという知見を得ることができた。


 本稿の最後に、カネカの事例を通して示した仮説は単一事例にもとづいており、その一般可能性については慎重に検討する必要があると書かれている。これに対して、「カネカの事例を一般化するにはどうすればいいのか」という質問が挙げられた。他にも、「カネカの事例を単一事例研究として選択した理由はなにか」という質問があげられ、それについて多くの意見が交わされた。具体的には、既存の研究で言われている理論や仮説に対して、「反証の事例として本研究が用いられており、新しい仮説を構築するためではないか」という意見や、「新たな仮説を構築するまではいかないが、既存の理論を改善するための新しい見方を加えることではないか」といった意見があげられた。このように、一人の質問に対して多くの意見があがったことで、予定の時間を超えた議論にまで発展した。


 カネカの事例では、想定外のイノベーションが当初の目的である野心的なイノベーションに結実したため、想定外のイノベーションの重要性が強調されている。一方、資源に恵まれた組織は狙った用途に向けた技術開発に適している反面、試行が進まないために想定外のイノベーションが生まれる可能性は低くなると述べられている。そこで、狙った用途に向けて一直線に技術開発をし、イノベーションを推進できる資源に恵まれた組織は、当初の目的とは違った不確実性の高い想定外のイノベーションが生まれる可能性が現れたときに、資源を動員するべきなのか、という疑問を抱き下記のディスカッションテーマを選択した。


 それは、「資源に恵まれた組織は、想定外のイノベーションを生み出す必要があるのだろうか」というものだ。しかし、イノベーションを生み出す必要があるのだろうか、という言葉に対して、イノベーションとはそもそも狙って起こすのではなく、想定外に起こるものではないかという質問をいただいた。確かにイノベーションとは、最初から狙って起こせるものではないが、本稿ではあえて当初の狙いと突然現れたものを区別するために、イノベーションと想定外のイノベーションという言葉が分けられて用いられていた。私たちは、本稿の内容にもとづいてディスカッションテーマを定めたのだが、その意図がうまく伝わらず、最初に思い描いていた議論を展開することができなかった。議論が上手くできなかった理由として、発表側と聞き手側の論文の理解度の差、意図を端的に伝えることができない低い文章力が考えられる。このことから、相手に想いを伝えるためには、相手の立場に立って初見でも理解しやすい文章を書き、誤解を招かない丁寧な説明が必要だということを改めて学ぶことができた。


やまもと(3年)

calendar
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< August 2018 >>
selected entries
categories
archives
links
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM