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第10章 単一事例研究の用い方

 因果効果の確認を単一の観察に基づいて行う方法として、決定的事例研究が挙げられている。しかしキング=コヘイン=ヴァーバは、このような逸脱事例によって理論を検証するアプローチを2つの理由から批判している。1つ目は、観察が1つでは確定的なことは言えないからという理由で、2つ目は観察には誤差が生じるからという理由である。しかし決定的事例研究は、理論仮説の検証ではなく仮説の構築や改善に用いられるものだと筆者は述べている。たしかに観察事例が1つでは、理論を検証してもそこから決定的な確証を得ることや反証することは難しいだろう。しかしながら、単一事例で理論仮説の改善すらも行ってよいのかという点に疑問を感じ、今回のディスカッションテーマとした。

 しかし、理論仮説の改善について行ってよいかという問いでは、すでに行われているため適切ではないという意見が出たため、改善すべきかどうかというテーマでディスカッションを行うこととした。また、これだけでは議論が難しいと考えたため、実際の例として「資源の呪い」理論をベネズエラの事例を用いて改善したダニングと、経済成長と民主化の関係について中国やインドを用いた事例を取り上げた。意見としては、改善すべきという立場がほとんどであった。その理由として、改善しているというよりも既存の理論にプラスアルファで追加しているイメージだからや、新しいデータとして理論に含めるべき、なぜ逸脱事例であるのかを論理的に説明できるのであれば改善してもよい、といった意見が出た。逆に改善すべきではないという立場の人からは、複数事例ならば改善してもよいが単一では難しいのではないかや、その事例が外れ値であったら改善すべきではないという意見が出た。

 今回は、逸脱事例と外れ値の事例についての区別が自分でも明確にできていなかったため、改善すべきという意見に議論が偏ってしまった。私個人としては、単一であるからこそ簡単に改善してはいけないと考えていたので、もう少し意見にばらつきが出ると考えていた。しかしながら、単一事例研究は単一であるからこそ、その事例を選んだ理由や、その事例が既存理論に対してどのような役割を果たすのかを考えて研究する必要がある。その点を考える上では、今回の議論は意味のあるものであったと思いたい。

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