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再生可能エネルギーを普及させるために

 日本創成会議(2014)によると、日本における地方の人口減少の抑止剤として再生可能エネルギーが注目されているという。縦に長い日本列島はその地域ごとにさまざまな再生可能エネルギーに恵まれている。火山国であるため地熱資源量は世界第3位であり温泉熱が豊富な上、北海道・東北などでは風力に恵まれ、資源は豊富なのだ。  
 
 そもそも再生可能エネルギーを利用することのメリットは何なのであろうか。資源エネルギー庁HPによると、再生可能エネルギーは太陽光や風力など自然界に存在するエネルギーであるため永久に枯渇することがない。また、発電時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しないため、環境にとても優しいのである。日本はエネルギーの8割以上を石油や石炭などの化石燃料に頼っており、さらにそれらの多くは海外からの輸入に頼っているため、先進国でありながらエネルギー自給率は極めて低い。このような状況の中で、資源の枯渇の心配がなく環境への負荷が少ない再生可能エネルギーの導入は、いち早く進められるべきことなのである。

 しかし、国内の再生可能エネルギー普及率はまだまだ低い。倉阪(2017)によると、都道府県単位での再生可能エネルギー自給率を見てみると、1位は温泉熱を利用した大分県であるが32.2%にとどまっている。また、再生可能エネルギーによるエネルギー自給率(地域社会が消費する電気や熱などのエネルギーを、地域内で作った再生可能エネルギーで賄う割合)が100%以上の市区町村は約4%であり、再生可能エネルギーはまだまだ浸透していないことがわかる。

 では、再生可能エネルギーの普及率はなぜ上がらないのだろうか。資源エネルギー庁HPは再生可能エネルギー導入の課題として、設備価格の高さ、供給電力の不安定さ、余剰電力処理の難しさや発電コストの高さを挙げている。これらの問題点により、再生可能エネルギーは売る側も作る側もなかなか事業者が集まらなかった。そこで、2012年7月より政府主導で「固定価格買取制度」が実施された。この制度は、経済産業大臣に認定された再生可能エネルギー事業会社は、電力会社に固定された価格で電力を売ることができるという仕組みである。高価格である再生可能エネルギーは、電力会社になかなか取り扱ってもらえなかったが、この制度の導入により取引量が多くなることが期待された。しかし、結果としてエネルギーの中で再生可能エネルギーが占める割合は、2011年から2014年にかけて1.4%から3.2%に増加するものの、大きく変化しなかった。

 「固定価格買取制度」を導入したのにも関わらず、普及率があまり上がらなかったのはなぜであろうか。最も大きな問題は賦課金の負担が大きかったことであると考える。賦課金とは、「固定価格買取制度」によって電力の買取りに要した費用を、使用料に応じて顧客に負担させるものである。この賦課金は年々上昇傾向にあり、2012年には1kWhあたり0.22円であったのに対し、2017年には2.64円と、約12倍に跳ね上がっていることが分かる。これらの数値は今後、上がることはあっても下がることはなさそうである。この賦課金を下げることはできないのであろうか。朝野(2017)によると、賦課金額を下げることは極めて困難であるという。理由としては、「固定価格買取制度」は20年間などの長期固定で買い取ることが法律で定められているからだ。価格は1年ごとに見直されてはいるが、その新しい価格が適用されるのは翌年以降に認定された設備のみとなっている。この制度では、認定された時点での価格が固定されるため、一度認定された事業者は、少なくとも20年間は賦課金額が下がることはない。現在、太陽光発電における買い取り総額58.6兆円のうち賦課金額は44.1兆円と買い取り総額の大半を企業や個人が負担している。この状況では再生可能エネルギーの普及率を上げることは難しいのである。

 同様の賦課金問題を抱えている国として、ドイツがある。ここでも日本同様に、賦課金増大で国民の不満が高まっていた。資源エネルギー庁(2014)は、その背景として、買取価格の高い太陽光発電の導入拡大に加え、大規模需要家を対象とした費用負担免除によるその他需要家の賦課金の増額、再生可能エネルギー電気の増加に伴う卸電力取引市場価格の低下を挙げている。具体的には、それまで順調に伸ばしてきた新規再生可能エネルギー導入量が、2010年以降爆発的に伸びてしまった。これにより、賦課金額が増大してしまったのである。また、ドイツでは電力多消費産業であるため賦課金減免制度というものが存在する。これは、大規模需要家に対しては賦課金を減免するというもので、その分は他の需要化が負担しており、これも問題になっていた。さらにドイツでは、電源は北部に多く存在するのに対して、需要は南部に多い。そのため、電気をスムーズに運ぶためのインフラ整備が課題となっていたのだ(新エネルギー小委員会 2014)。

 では、ドイツではこの問題をどのように対処したのであろうか。ドイツでは、2017年1月より、「固定価格買取制度」に加え「市場プレミアム制度」を導入した。「市場プレミアム制度」とは、市場で取引される卸価格の変動に応じて、プレミアムが変動するシステムである。太陽光などは、天気によって電力量が左右されてしまい、電力調達が不安定になるため、投資した額を回収できるかは不透明になる。その分の額を補填するのがプレミアムなのである。「固定価格買取制度」では、価格が一定に定められてしまっていたため、市場価格に柔軟に対応することができなかった。そのため市場価格が高い時も国民の負担額は変わらず多く払っていてしまっていたのだ。一方、「市場プレミアム制度」では、市場の価格の変動に応じて賦課金額を変えることができるため国民の負担額を常に一定に保つことができる。この制度を導入することによって、事業者が自由に価格を設定することができるため賦課金額の予算編成がしやすく、結果的に家庭に入ってくる電気料金も下げることができるのだ。

 この制度を日本で導入する際に、事業者からの反発が予想されるのは容易であろう。なぜならば、電力会社は「固定価格買取制度」による単価と回避可能費用の差分を交付金として受け取ることができるが、この制度が導入されることにより、得られる交付金が下がるからだ。再生可能エネルギー事業には、回避可能費用というものがある。回避可能費用とは、電力会社が再生可能エネルギーを買い取ることにより、本来予定していた発電を取りやめ、支出を免れることができた費用のことである。この移行は再生可能発電事業者が電力卸市場価格の変動リスクを負うことになるので、事業者からの強い反対が予想されるのだ(松村 2015)。

 しかし、私は「市場プレミアム制度」を日本でも導入するべきだと考える。現在日本では、賦課金額の高さから、再生可能エネルギー普及率がなかなか上がらない。そこで、この「市場プレミアム制度」を導入することで事業者が価格を自由に決めることができ、結果的に家庭の電気料金も下がることが期待できるのだ。また、松村(2015)は、事業者からの反発による問題は一定程度解決できる理由を4つ挙げている。1つ目に卸市場価格の変動はすべての発電事業者が負う、事業者が当然に負うべきリスクとも考えられること。2つ目にプレミアム分が固定であれば「変動率」は他電源に比して小さくなること。3つ目に将来先物市場が発達すればこのリスクは一定程度回避できること。4つ目に卸市場価格の低下は小売事業者にとっては利益で、発電事業者と小売事業者の相対契約でお互いのリスクを軽減する契約も可能であるということだ。

 では、ドイツで導入されている「市場プレミアム制度」をそのまま日本にも適用することは可能であるのだろうか。私は難しいと考える。なぜならば、日本では「市場プレミアム制度」に移行しても価格競争を起こすことができないと考えたからだ。ドイツでは、総電力に対して再生可能エネルギーが占める割合は、2015年で30%を超えている。対して日本は12.2%にとどまっているのである。このように、市場プレミアム制度を導入すると、普及率の高いドイツでは、再生可能エネルギー事業者同士で、ある程度競争が起こりそうである一方で、普及率の低い日本では、大手事業者の一人勝ち状態になってしまう可能性が否めない。大手事業者の一人勝ち状態になってしまうと、自由競争の市場プレミアム制度下であっても、価格は大手の提示する1択になってしまい、下がらないだろう。市場価格を下げるためには、価格競争を起こさなければならず、その価格競争を起こすためには競合他社が必要なのである。そのため、価格競争が起こらないと市場プレミアム制度を導入する意味は全くなくなってしまうのだ。

 日本でこの制度を導入する目的は、賦課金額を減らし、価格競争を起こすことによって電気料金を下げることにあると私は考える。しかし、資源が多く、規模も大きい大手事業者に新規の事業者が価格競争を挑むことは無謀であろう。そこで私は利用者があえて新規の事業者を選択したくなるようなサービスを提案する。まず、再生可能エネルギー事業者を選択してくれると予想されるターゲット層は、子育てを終えた、もしくは子供のいない家庭であると私は考える。なぜならば、再生可能エネルギーは他電源と比べ料金が高いため、金銭的に余裕のない家庭はまず選択しないと考えられるからだ。そこで、そのようなターゲット層を獲得するために、通常の電気供給に加え3年に一回の頻度で家のエアコンや換気扇の専門的な掃除を業者が行うというサービスの付加を提案する。エアコンや換気扇は自分ではなかなか掃除がしにくい。しかし、放置するとほこりが溜まってしまい、故障の原因にもなりかねないため、多少値段は張るものの専門業者に依頼する人が多いのだ。一般的にこのような専門的な掃除を頼むと、1回で約4〜8万ほどかかってしまう。そこで、通常の電気料金に少し上乗せをして3年ごとで費用を積み立てると考えれば、金銭的にも無理がないため、主婦層に支持を得られるのではないだろうか。さらに、専門的な掃除をしてくれることで、換気扇やエアコンの中のほこりを取り除くことができ、無駄な電気料金を削減することもできる。これは、利用者にとっても非常に大きなメリットになるだろう。一方、再生可能エネルギー事業者側は、3年後の大よその契約数を事前に把握することができるため、まとまった数の契約を一度に専門業者に依頼することになる。これによって、一般的な価格より安価なサービスの提供を交渉し、その費用を抑えられる可能性が高くなるのである。さらに、顧客は3年毎にサービスを見直すなど、比較的長期の契約を見込めるので、今後の需給の見通しが立てやすくなるのである。

 現在の日本では、太陽光発電事業者の倒産が相次ぎ、再生可能エネルギーは儲からないというイメージが拭えない。そのため、多少再生可能エネルギーに着手している大手事業者も、力を入れているとは言えないのが現状である。しかし、まだまだ未開の再生可能エネルギー消費者を開拓していくためには、事業者同士で価格競争を起こし、価格を下げなければならない。そのためには大手事業者に張り合うような競合他社の存在が必要なのである。現状では、価格面で大手事業者と戦うのは難しい。そこで、本提案のように、再生可能エネルギーを選択してくれるような層にメリットとなるようなサービスを付加し、利用してもらえるように工夫を凝らした事業者が必要なのである。日本で再生可能エネルギーが普及するためには、このような事業者の増加と価格競争が求められるのである。

さわだ(3年)

【参考文献】
・朝野賢司(2017)「2030年までに国民負担は44兆円 日本版FITは最悪の失敗政策」『日経ビジネス』1917.80−81.
・関西電力HP「再生可能エネルギー発電促進賦課金」  
https://kepco.jp/ryokin/kaitori/re_energy1 2017年11月20日閲覧.
・経済産業省資源エネルギー庁HP「なっとく!再生可能エネルギー」
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/family/index.html 2017年10月22日閲覧.
・経済産業省HP「お知らせ」
http://www.meti.go.jp/press/2015/03/20160318003/20160318003.html 2017年11月13日閲覧.
・倉坂秀史(2017)「地域存続の貴重な財源に 専門家による自治体支援を」『日経ビジネス』1899.78−79.
・諸富徹(2015)「再生可能エネルギー政策の「市場化」―2014年ドイツ再生可能エネルギー改正法をめぐって―」『経済学論叢(同志社大学)』第67巻第3号、pp.149-174
・松村敏弘(2015)「再エネ普及を妨げる回避可能費用の問題点」『EPREPORT』1824.2017年12月23日閲覧.
・資源エネルギー庁(2014)「再生可能エネルギーを巡る現状と課題」
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/shin_ene/pdf/001_03_00.pdf2017年10月22日閲覧.
・資源エネルギー庁(2015)「再生可能エネルギーの導入促進に係る制度の現状と課題」『総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 第20回会合 資料3』
・新エネルギー小委員会(2014)「欧州調査」
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/shin_ene/pdf/002_01_00.pdf 2018年1月23日閲覧.

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