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うどんチェーン店に顧客予測システムを導入すると廃棄したものが減らせるか?

 ローソンは2015年10月までに、全店舗でセミオート発注システムを導入した。このシステムは、弁当や総菜などの発注業務を人工知能(AI)で支援するものである。島津・武田・小笠・山崎(2017)によると、各店舗の販売実績や天候、ポイントカードで把握した顧客属性など、約100項目のデータを基に分析するので、発注すべき品目と商品数を算出できる。この支援によって、業務時間が短くなったり、賞味期限が短い食品を最適な数量で仕入れたり、機会損失と廃棄ロスを削減したりすることができるようになった。実際、対応商品に関しては、全店舗平均で売り上げが3%、粗利益率が2ポイント向上したということだ。

 もしこのようなAIを用いた顧客予測システムをうどんチェーン店に導入すると、機会損失が減らせるし、廃棄ロスを削減することもできるだろう。農林水産省(2015)によると,食品産業全体の食品廃棄物等の年間発生量は20,096千トンであり、前年に比べて2.9%の増加となった。このうち、外食産業は1,995千トンであると推計されている。これにはうどんチェーン店の廃棄物も含まれている。それでは、実際にうどんチェーン店ではどのように廃棄ロスが出るのだろうか?私が働いていたうどんチェーン店を例にして考えてみよう。そのうどんチェーン店ではうどんを茹でる量を管理するのはシフトリーダーの役目である。彼らは基本的にマニュアルの通りに茹でる量を管理していたが、客の来るタイミングを正確に測るのはなかなか難しいようだった。その結果、冷凍のうどんを茹ですぎて、廃棄ロスを出すこともあった。例えば、ある店で午後3時に10名顧客が来ると予測したとしよう。マニュアルに従えば、店員は11名分のうどんを事前に茹でておくことになる。しかし、実際には顧客5名しか来なければ、残りの6人分のうどんは、賞味期限を過ぎれば捨てることになる。これが廃棄ロスを生む原因なのである。ここでもしAIを用いた顧客予測システムを導入すれば、人間の性向や行動などが分析できるようになり、シフトリーダーの予測よりも正確にタイミングが分かるようになるので、最適な数量のうどんを茹でることができるようになるだろう。このように、顧客予測システムをうどんチェーン店に導入することによって、廃棄ロスは今までより減少するはずである。

 しかし、このようにうどんチェーン店に顧客予測システムを導入することに全く問題はないのであろうか? 私は2つの問題があると考える。第一に、そもそもファストフード店に届く食材は冷凍されているものがほとんどという点である。つまり、それを一度でも温めない限りは廃棄ロスにはならないのだ。したがって、発注に関する予測の必要性はあまりないのである。第二に、顧客予測システムの導入に多額のコストがかかる点である。シフトリーダーがきちんとマニュアルを理解してさえいえば、一定程度の顧客の予測は現在でも行われている。通常の顧客予測システムを導入するコストに比べれば、現状のうどん廃棄コストは圧倒的に低い。したがって、各企業が顧客予測システムを導入するのはなかなか現実的でないのである。

 しかし、シフトリーダーがきちんとマニュアルの通りにうどんを茹でたとしても廃棄ロスは必ず出てしまう。残念ながら、うどんチェーン店の廃棄ロス自体はなかなか減らすことができない。では、うどんチェーン店の食品廃棄物を安価に再利用することはできないだろうか?一つの方法として、 うどんのリサイクルが考えられる。実際に香川県ではうどんまるごと循環プロジェクトというコンソーシアムでリサイクルに取り組んでいる。角田(2014)によると、回収した廃棄うどんを発酵装置でバイオエタノールとして再生し、それを燃料にしてうどん店は茹でる。また、バイオエタノール抽出後に生成される残渣に生ごみを混ぜて生成されるバイオガスを用い、それを燃焼させて発電を行うというものである。
 
 このような、うどんリサイクルという取り組みをチェーン店で実現するためには、多額のコストがかかる。しかし、農林水産省が実施している食品リサイクルループ構築支援の補助金(農林水産省2017)を用いれば、ある程度のお金がかかるものの安価に実現できるだろう。では、チェーン店でうどんリサイクルを実現することでどのようなメリットがあるだろうか?まず、取組に対する努力をアピールすることができる。また、 バイオマス燃料を作る量が多ければ多いほど、 発酵装置システムを設置するコストは上がるが、 バイオマス燃料を作る一単位あたりのコストは安くなる(Combined Heat And Power Partnership,2007)。したがって、チェーン店の廃棄うどん量が多ければ多いほど、 一単位あたりのコストはどんどん安くなるだろう。このように、チェーン店は個別うどん店では実現できないコスト削減方法で、より高い費用対効果を得ることができる。

 うどんチェーン店に顧客予測システムを導入しても、廃棄ロス自体はなかなか減らせない。しかし、今までのように廃棄ロスを出せば、食品廃棄物自体は減少させることができない。前述のように、うどんチェーン店が廃棄したうどんをそのまま捨てるのではなく、リサイクルすることができれば、新たなエネルギー資源を生み出すことができる。つまり、廃棄したものを無駄にせず、活用することができるのである。

<参考文献>
Combined Heat And Power Partnership(2007) Biomass Combined Heat and Power Catalog of Technologies,2007;41 2017年11月06日閲覧。
https://www.epa.gov/sites/production/files/2015-07/documents/biomass_combined_heat_and_power_catalog_of_technologies_v.1.1.pdf
島津翔、武田健太郎、小笠原啓、山崎良兵(2017)『AI世界制覇の攻防』『日経ビジネス』1892. 39。 
農林水産省(2015)『平成27年度食品廃棄物等の年間発生量及び食品循環資源の再生利用等実施率』2017年6月29日閲覧。http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syokuhin/attach/pdf/kouhyou-9.pdf 
農林水産省(2017)『食品リサイクルループ(メタン化事業)』2017年11月28日閲覧。
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_8-3.pdf
角田富雄(2014)『うどんづくしの循環で、ゼロ・エミッション』『Life and Environment』59(7)、58−60  2017年7月06日閲覧。
Https://docs.wixstatic.com/ugd/b742d0_e1ceaaf85df0499e8be57273a289c1a2.pdf

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