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マナボが教育の地域格差解消に貢献する

 スマートフォンなどを用いた教育ビジネスを行っているマナボという会社がある。西(2017)によると、マナボのサービスは、これらの機器を介しているので時間や場所の制限がなく、いつでもどこでも必要なときに指導を受けられるという家庭教師サービスだ。授業は、生徒が分からない問題を質問し、先生がその問題を解説するというものである。先生には、東京大学や一橋大学など難関大学の学生2500人が登録しており、24時間365日体制で質問を受け付けている。つまり、勉強をしていて分からない問題にぶつかってしまったその瞬間に好きな先生から解説を受けられ、解決できるのが特徴だ。

 小林・榎戸・戸田・築家(2016)によると、首都圏には多くの予備校や難関大学の受験経験を持つ家庭教師が多くいるが、地方では予備校や家庭教師が不足していてまだまだ手に届くところにない。さらに東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策研究センター(2009)によると、子どもの受ける教育や進学率が、親の所得差によって影響され、「教育格差」につながっていることが明らかになっている。上記のようなサービスで、マナボは地域格差と所得格差の課題を解決し、学習機会の均等化を目指しているが、今のビジネスモデルで本当に地域格差と所得格差の課題を解決し、学習機会を均等化することはできるのだろうか?

 教育における地域格差は、学習機会の地域格差と所得の地域格差の二つに分けられる。一つ目の学習機会の地域格差については既に解決されている。なぜなら、マナボは周りに予備校や家庭教師が不足している地方の人でも、都心の人と同様にスマホで授業を受けることを可能にしたからである。しかし、所得の地域格差についてはどうだろうか。

 私は、今のマナボのビジネスモデルでは所得の地域格差を解決することはできないと考える。厚生労働省(2013)によると、都道府県平均年収ランキングで1位は東京都の580万円、最下位は沖縄県の333万円という結果が出た。この結果から、住んでいる地域によって大きな所得格差があり、特に地方の人の方が都心の人に比べて平均所得が少ないことがわかる。では、この地域の所得格差は学力となにか関係があるのだろうか。文部科学省(2015)によると、公立学校に通う中学3年生を対象とした通塾率(家庭教師の先生に教わっている場合も含む)の調査を行ったところ、1位は神奈川県の74.1%、最下位は秋田県の30.1%であり、偏差値に関しても全く同じ順位という結果が出ている。つまり、所得の地域格差を解決しない限り、地方の人が都市部の人よりも学力が低いという現状は変わらないのである。
 
 文部科学省(2008)によると、中学生の保護者調査を行ったところ、学習塾に通わせない理由で多かったのが「学習塾の経費が家計を圧迫するから」という意見だった。この調査から、学習塾に通っていない子供たちの中には、通いたいと思っていても家計が苦しいために諦めている者もいるということが考えられる。たとえマナボの授業料金が安価だとしても、塾に通わせる余裕がない家庭の子供たちが利用できないという現状は変わらない。つまり、今のマナボのビジネスモデルでは所得の地域格差を解決できないのである。

 学習塾に通う余裕がない子どもたちを対象に、無料の学習会・キャリア支援活動などの教育支援事業を行っているNPOは多数ある。これらのNPOは、主に学生・社会人などから講師になってくれる人をボランティアで募り、行政や民間の施設を会場にして活動を行っている。しかし、自分の志望する高校・大学に進学するための受験対策を目的とする活動を行っているNPOは少ない。その理由としては、運営資金や人手の不足、そして受験科目の全てを教えられる講師を集めるのが難しいといったことが考えられる。また、地方の町に来てもらう場合、移動の時間が多くかかってしまうので講師の確保が難しいのである。

 では、所得の地域格差がある中で学習機会の均等化を図るにはどうすれば良いのだろうか。私はマナボが教育支援活動を行っているNPOと積極的に提携し、家庭の経済状況などの理由から塾や予備校に通うことができない学生に向けた学習サービスを提供することを提案したい。この学習サービスは、難関大学に合格することを目指して勉強したいが、塾や予備校に通うことができない人に向けた受験対策を目的とするものである。その使用料金については、NPOがマナボに支払い、学生は無料で利用できるものとする。では、どのようにこのサービスを実施していくか説明していこう。まず、NPOはセンター試験や大学入試の過去問題を過去に受験を終えた大学生などから寄付してもらう。次に、行政や民間の施設を会場にして、その集めた大学入試の過去問題を学生に解かせ、解答・解説を見ながら自己採点をさせる。その際、過去問題に付いている解答・解説を見てもわからなかった問題についてはマナボを利用することになる。始めにマナボでその問題に関する解説動画があるかを探す。次に解説動画がある場合はそれを利用し、ない場合にはマナボの講師に直接教えてもらう。

 このようなサービスを行うことは、学生・マナボ・NPOの三者にとってメリットがあると私は考える。まず、家庭の経済状況や住んでいる場所などの理由で塾や予備校に通うことのできなかった学生が、受験校の過去問題の解説授業を無料で利用可能になる点だ。これにより、今までは難しかった志望校の対策を十分にできるようになるのである。次にマナボにとっては、多くのNPOと提携することで、過去問題の解説動画を蓄積することができる点だ。蓄積された動画を有効活用することで、今までは全ての質問に対して先生が答えていたが、先生の介在なしにその動画で指導することが可能になると見込める。そのため、将来的に先生の人件費を削減することができるのである。最後にNPOにとってのメリットは、マナボを利用することで人手不足の問題を解消できる点だ。マナボの使用料を払うことにはなるが、代わりにマナボが講師を集めて授業をしてくれるため、人件費を削減することができる。その結果、NPOが抱える人手不足の問題を解消でき、子供たちに向けて安価に継続的な活動を行うことが可能になると私は考える。

 今の日本は、あらゆる面で様々な格差が広がっている。その中でも、親の所得や住む場所によって子供の教育格差が生まれ、しかも世代を超えて格差が継承されてしまう状況は深刻だ。しかし、マナボの現状のサービスでは、首都圏と地方での教育の地域格差を解消することは非常に難しい。それでも子供たちが夢や目標に向かって自由に勉強できる環境を作るため、マナボがNPOと提携することで、所得や住んでいる地域に関係なく、学習機会を均等化していくことができると私は考える。

[参考文献]
小林雅, 榎戸貴史, 戸田秀成, 築家まき (2016)「”スマホ家庭教師”は教育の地域格差を解決する−注目のベンチャー特集『マナボ』(1)【K16C-MNB #1】」2017年5月17日閲覧,
https://industry-co-creation.com/recommend/6982
厚生労働省 (2013)「平成25年賃金構造基本統計調査」2017年5月24日閲覧, http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2013/
文部科学省 (2008)「子どもの学校外での学習活動に関する実態調査報告について」2017年6月13日閲覧, http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/08/08080710.htm
文部科学省 (2015)「全国学力・学習状況調査」2017年5月24日閲覧, http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/
西雄大 (2017)「いつでもどこでも家庭教師」『日経ビジネス』.1888, 64-65.
東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策研究センター (2009)「高校生の進路と親の年収の関連について」2017年6月7日閲覧, http://ump.p.u-tokyo.ac.jp/crump/resource/crump090731.pdf

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