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コンビニの人手不足解消に向けて

 千葉・内藤(2017)によると、厚生労働省が発表した2017年4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.48倍であり、これはバブル期の1990年7月に記録した1.46倍を超える高水準である。これは、労働需給のギャップが有効求人倍率を押し上げ、人手不足感が強まっているということだ。それはコンビニも同様である。和気・伊沢・新宅(2017)によると、ファミリーマートで加盟店の8割が人手不足を訴えている。そのため、留学生の採用に注力しており、全国約20万人のアルバイトのうち約1万人が外国籍となっている。

 これに対して、コストを抑えて店舗の作業を減らす切り札として、電子タグを使う方式が有望視されている(杉原・藤村, 2017)。実際、2017年4月に経済産業省とコンビニ大手5社は、2025年までの目標として「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を公表した。これは、店舗で取り扱う年間1000億点の商品すべてにRFIDという電子タグを取り付けるというものだ。RFIDは無線通信技術に対応しており、バーコードを読み取らなくても金額が計算できる仕組みである。メリットとして、レジ打ち要員が不要となること、在庫状況も即座に把握できるようになること、品出しや棚卸しの負担を減らすことが挙げられる。

 以上のように言われているが、電子タグの導入は本当にコンビニの人手不足解消につながるのだろうか。私は現在のところはつながらないと考える。理由は2つある。1つ目は電子タグの実現可能性である。杉原・藤村(2017)によると、現在、パッケージに直接印刷するタイプのタグは存在しないので、シール状のタグを1枚ずつ手作業で付けなければならないといった課題がある。これを解決するためには、商品を作っているメーカーが多額の開発・設備投資を行わなければならない。しかし、電子タグの導入により、人手不足解消などのメリットを享受できるのは小売りであるコンビニである。メーカーにとって協力するメリットが少なすぎるので、現実的ではないと考える。また、単価が安い商品にもタグを付けるので、現時点で電子タグが1枚10円程度であることを考えると、コスト面でも問題が残る。

 2つ目は、電子タグのメリットであるレジの無人化についてである。コンビニでは商品の購入だけでなく、公共料金の支払いや宅配便の受け取りなどのレジ打ち以外の業務もある。また、切手やタバコ、ライブのチケットなど店頭に置いていない商品、おでんや肉まん、フライドチキンなどタグを付けられない商品もある。これらのことから、タグを導入したとしても、結局はレジに人手が必要なことに変わりはないため、タグのメリットがあまり活かせないと考える。よってコンビニに電子タグを導入しても、人手不足は解消されないのではないのだろうか。

 さらに最近、電子タグとは違う方法で無人レジを実現するものとして、「Amazon Go」が注目されている。加谷(2016)によると、これはスマホに専用アプリをダウンロードしておくと、店内で手に取った商品が自動的にアプリの買い物カゴに入り、そのまま店を出ればアマゾンのアカウントで課金されるという仕組みである。しかし、これはアマゾンがコンビニ業界に進出するという話であるため、現在問題になっている既存のコンビニの人手不足解消にはつながらない。

 では、コンビニの人手不足を解消するにはどうすればよいのだろうか。私は、従来のバーコードを用いたセルフレジの導入とAI(人工知能)・ロボットの導入の2つを用いて、この問題に取り組むべきだと考える。まずは、セルフレジの導入について考えてみる。セルフレジとは、顧客が自分で商品のバーコードをスキャンし、会計を済ませる仕組みだ(川又, 2008)。これは、既存のバーコードで利用できるので、セルフレジ用の機械を導入するだけで済む。つまり、電子タグの導入と比べてコストがあまりかからない。また、電子タグのセルフレジにも当てはまることだが、レジが複数あったとしても、レジ打ち以外の仕事をする店員が1人いれば十分だと考えられる。セルフレジなのでレジ打ち要員は不要であり、常に複数台のレジが使われているわけでもなく、またレジ打ち以外の業務がいつもあるわけでもないからだ。よって、レジ前の人手を削減することができる。セルフレジは、コンビニ業界ではすでにNewDaysが導入しているので、他のコンビニ各社も続くべきだ。

 もう1つの解決策のAI・ロボットの導入についても考えてみる。島津・武田・小笠原・山崎(2017)によると、ローソンが2015年10月までに発注業務をAIで支援する「セミオート発注システム」を導入したそうだ。これは各店舗の販売実績や天候、顧客情報などを基にAIが分析し、発注すべき品目と商品数を算出するものである。これにより廃棄ロスの削減だけでなく、業務時間の短縮につながるので、人手不足を解消する一手となるだろう。さらに日本経済新聞(2017)によると、産業技術総合研究所は、AIとロボットを駆使したコンビニエンスストア向けのシステムを開発している。AIが購買履歴から売れ筋商品を発注して管理する。一方で、商品の補充や陳列棚への配置などの作業をロボットが担うというものだ。AIはセンサーやカメラを使って店内の様子や客の行動を学習し、ロボットが効率的に動くルートなども探す。2018年までに実証実験し、改良を進めて20年の東京五輪で披露する計画である。これによって、発注業務の短縮だけでなく品出しの仕事がなくなり、人手を削減できる。

 冒頭で述べたように、人手不足はコンビニ業界だけでなく小売業界全体の問題だ。私は、今回提案したセルフレジの導入やAI・ロボットの導入は、スーパーマーケットでも可能であると考える。スーパーマーケットはコンビニと同様、多品種・低価格の商品を取り扱っているからだ。そして実際、スーパーマーケットでもセルフレジとAIの導入がすでに始まっている。まずはセルフレジの導入についてだが、こちらはすでにスーパーマーケットではよく見かけられる。だがコンビニと異なる点は、NewDaysが導入しているフルセルフレジだけでなく、会計のみを顧客が行うセミセルフレジを導入している店舗もあるということだ。スーパーマーケットに買い物に来る顧客はコンビニと比べてたくさんの商品を買う場合が多く、バーコードの読み取りで時間がかかりレジが混雑してしまう。そこで、手慣れた従業員が読み取りを行うことで、レジでの混雑を避けることができる。そのため、私はスーパーマーケットではフルセルフレジよりもセミセルフレジの方が良いと考える。次にAIの導入についてだが、こちらも一部のスーパーマーケットでは既に導入されている。IT Search+(2016)によると、広島などでスーパーマーケットを展開するハローズが2016年4月時点で、tdiの需要予測型自動発注ソリューション「SINOPS-R」を70カ所の店舗および物流センターで導入した。スーパーマーケットの発注は、コンビニと比べてバックヤードが広いので発注の頻度は少ない一方で、店舗が広いため発注の量は多い。そのため、1回にかかる発注の時間も長くかかるので、AIの導入によって発注にかかる人手も時間も削減できる。最後にロボットの導入についてだが、店舗の広いスーパーマーケットでは通路も広いので、ロボットが動くスペースも確保しやすいのではないかと考えられる。ロボットを導入すれば、品出しや棚卸しの人手を削減できるだろう。特に、商品の中には重くて人の負担が大きいものもあるので、ロボットで代替したほうがよい場合もあると考える。ロボットはコンビニでもまだ実用段階ではないが、実用化に向けて開発していくべきだ。このように導入していけば、スーパーマーケットでも人手不足解消につながるだろう。

 コンビニでは、レジ打ち、発注、品出しなど、店員のやらなければならない仕事が多い。そのため、仕事量に対して人手が足りていないのが現状だ。この問題を解決するために新技術を導入したとしても、莫大なコストがかかるし、新技術のコストを抑えられるようになるまでも時間がかかる。そこで、従来のバーコードを用いたセルフレジやAI・ロボットを導入すれば、コストを抑えつつ人手や時間を削減できる。人手不足を人以外で補うことも、問題解決の一手となりえるのではないだろうか。

【参考文献】
千葉卓朗、内藤尚志 (2017)「人手不足、各業界が危機感 求人倍率1.48倍、バブル期超え」『朝日新聞』2017年5月31日朝刊,6.
IT Search+ (2016)「スーパーマーケットのハローズ、需要予測型自動発注システムを導入 [事例]」 https://news.mynavi.jp/itsearch/article/bizapp/1451 2017年7月9日閲覧.
川又英紀 (2008)「セルフレジ」『ITpro』http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Keyword/20071026/285626/?rt=nocnt 2017年6月29日閲覧.
加谷珪一 (2016)「アマゾンがコンビニ進出! Amazon Goは小売店の概念を 180度変える」『ニューズウィーク日本版』http://www.newsweekjapan.jp/kaya/2016/12/amazon-go180.php 2017年6月13日閲覧.
日本経済新聞(2017)「AIが発注・ロボが陳列 産総研、コンビニ向けにシステム」 2017年2月26日. http://www.nikkei.com/article/DGXLZO13400200W7A220C1TJM000/ 2017年6月13日閲覧.
島津翔、武田健太郎、小笠原啓、山崎良兵 (2017)「AI世界制覇の攻防」『日経ビジネス』1892,39.
杉原淳一、藤村広平 (2017)「人手不足の救世主、普及に壁」『日経ビジネス』1893,14-15.
和気真也、伊沢友之、新宅あゆみ (2017)「人手不足、各業界が危機感 求人倍率1.48倍、バブル期超え コンビニ、留学生頼み/パナ、介護事業見直し」『朝日新聞』2017年5月31日朝刊,6.

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