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12月9日『経営戦略の思考法』 第10章「顧客ダイナミクス」

 筆者は経営戦略において「顧客が変化していく」という顧客ダイナミクスが十分に取り入れられていない状況を主張している。多くの教科書レベルの経営戦略はある一時点での経営戦略となっているのである。その例として、マーケティングの4Pが最も顕著である。4P(マーケティングミックス)とは、ある製品やサービスのマーケティングを決定する際に、顧客をセグメントごとに分類し、それらに対して最も適切なPrice, Product, Place, Promotionを決定するという戦略である。しかしながら、この4Pはある一時点での顧客の特徴にしか注目していないのである。
 では、顧客の変化とは一体何か。本書が挙げる顧客の変化には大きく分けて2つ存在する。第1に「加齢」である。人々は年齢を重ね、消費傾向も特性も変わっていくという当たり前の事実を経営戦略にうまく取り入れることが出来ていないのである。この「加齢」をうまく経営戦略に盛り込んだフルタ製菓のチョコエッグの例は非常に興味深い。子供というセグメントに対してはおもちゃとチョコを同時に買い与える親を元に「収集癖」を身に付け始める。また、その親というセグメントに対しては、おもちゃの内容を恐竜などに設定することで教育にも利用できるメリットを与えた。ここで一番興味深いのは、収集癖を覚えた子供が「加齢」をすると、収集癖のある大人へと成長し、一つの製品でフルライン戦略が完成するのである。
 第2の変化は「学習」である。顧客は最初に製品を手にしたときにはその製品の入門者である。しかしながら、その製品を使いこなしていくうちに、彼らは高度なユーザーへと進化する。これが顧客の「学習」である。この「学習」をうまく経営戦略に取り入れているケースとしてパソコンが挙げられる。あるパソコンを顧客が使いこなしていくうちに、キーボードの位置や、操作性まですべてに慣れて学習する。それがそのパソコンメーカーにとってはスイッチングコストとなり、消費者を捉えることが可能である。
 しかしながら、ネガティブな「学習」も存在することを忘れてはならない。インクジェットプリンター(IJP)は、家庭でも写真が印刷できる大きなヒット商品であるが、そこには落とし穴が存在していた。顧客がIJPを使いこなしていくうちに、インク交換の面倒や家庭での写真プリントの必要性を「学習」してしまうのである。このネガティブな「学習」に関しては、手入れの面倒さ、代替可能性が高いことが原因とされている。
 以上が第10章のまとめである。ゼミ内ではこの2つの顧客ダイナミクスに関するディベートを行った。あるカード会社を想定し以下のような設定で行った。
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Discussion
 現在、中野カード株式会社は、ビジネスマン向けの中野スタンダードにより多くの顧客を獲得してきた。ある日のことであった。我々戦略企画室は上司からの宿題であった「経営戦略の思考法」を読むことになった。そこで、「人々は加齢により変化する」という事実を再認識し、戦略と製品ラインナップの再考が求められた。なぜなら、多くの競合他社もスタンダードカードを展開しているため、革新的な戦略が中野カードには求められているからである。翌週、戦略企画室では2つの新カード案が挙げられた。
A中野ビギナーズカードとC中野レジェンドカードの2つである。
A中野ビギナーズカード
・18歳から25歳対象
・入会費無料
・年会費無料
・選べるカードデザイン
・アミューズメント施設での割引
・ポイントにより特典
B スタンダードカード
・30代から40代向け
・入会費1000円
・初年度年会費無料
・主張時ビジネスホテル割引
・加盟店での飲食代割引
・ポイントにより特典
C レジェンドカード
・40代から60代
・入会費5000円
・年会費10000円
・高級感のあるデザイン
・旅行保険やホテルの充実
・ポイントにより豪華特典
しかしながら、我々中野カード株式会社は2つのカードを同時に展開させる資源を有していない。そこで、どちらのカードを新製品として打ち出すのか、以下のデータを参考に君たち戦略企画室で決定してもらいたい。また参考資料として年齢別総人口と年齢別カード保有率を使用して良い。
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 このディスカッションには「顧客ダイナミクスに注目した際に求められる判断要素とは何かを明らかにする」という意味が存在していた。ディスカッションの結果、「収益性」「確実性」「スイッチングコスト」が挙げられた。つまり、経営戦略において「加齢」と「学習」という2つの顧客ダイナミクスを採用する際には、以上の3つの要素について考える必要がある。本書で挙げられたフルタ製菓のチョコエッグはこれらの3要素を見事にクリアしていることは間違いない。
 今週のディスカッションの成果は顧客ダイナミクスにおける新たな3つの要素を発見できたことである。

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