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「フェースマスクは毎日使える」を常識に

 島津(2016)によると、グライド•エンタープライズの販売するスキンケア用フェースマスク「ルルルン」シリーズは2016年、発売から5年目にして累計販売が3億万枚を超えた。2011年、あまり需要がなかったフェースマスクという商品に目を付けた同社社長山口道元氏は、もっと手ごろな価格の商品があれば一般消費者向けにさらに売れると考え、低コストで生産できる委託先を探した。結果、フェースマスク本体とそれに浸す化粧水を作る工場に生産を委託することができ、42枚入りで1,500円(税別)、1枚あたり36円という安さで発売することが可能となった。

 ここでフェースマスクの利点を挙げていこう。最も大きな利点は、長時間肌の上に浸透させることである。フェースマスクは顔の形に切り抜かれており、通常洗顔をし、化粧水をつけた後に型に沿って顔に貼り、10〜15分使用する。これによって肌の角質をふやかすことにより、成分の肌なじみがよくなるので、ただ化粧水や美容液を塗るよりも浸透しやすい状態を作り上げることが出来るのである。

 同社のフェースマスクが人気を誇る理由は2つあると島津(2016)は指摘している。1つは市場そのものを拡大させる戦略を掲げたことである。市場拡大戦略に関しては、フェースマスクを毎日使ってもらえることを目的とし、購入する1回目を大切にした。価格が安価であることはその1回目を大切にするための戦略である。その結果、市場拡大は成功し、コーセーやクラシエホームプロダクツなどといった大手化粧品メーカーも同種製品の発売を開始している。もう1つの理由は、ギフト需要を発掘したことである。一般にスキンケア商品はこだわりが強いので、ギフトには適さないとされてきた。しかし、フェースマスクに関してはまだ商品も少なく、嗜好性はそこまで強くない。そこでギフト用として地域限定商品等を展開したのである。その結果、旅行者の心をつかみ、グライド・エンタープライズの売上高の12%を占めるまでになった。

 このように島津(2016)は、上記の2つをフェースマスクが人気を上げた理由としている。しかし私は、日常生活の中で使用することを重視していない「ギフト需要」よりも、「市場拡大」をしたことが大きな理由だと考える。当初から発売されている「ルルルン」は、毎日使えるように基礎化粧品として考えられ作られている。つまり、安価な価格で毎日使うことのできる基礎化粧品として市場拡大をしていったことが、人気を上げた理由ではないだろうか。

 実際に私自身、2015年からルルルンのフェースマスクを使用している。ルルルンを購入した一番の決め手は、値段の安さであった。仮に肌に合わなかったとしても許容範囲内だろうと思ったのだ。また、例え1枚当たりの値段が500円以上するフェースマスクで良い効能が出たとしても、本当に特別な時にしか使用ができない。しかし、ルルルンは1枚あたり40円前後といった値段設定がされており、価格が抑えられている。

 だが、「フェースマスクが毎日使えるもの」ということはあまり認知されていない。そこで私は、「毎日使えるフェースマスク」という新常識を当たり前のことにし、化粧品を使う多くの人に広げるため、商品をより手に取りやすくすることを提案したい。

 まず、「値段が高くフェースマスクに手を出しにくい」という常識をなくすため、1,500円(税別)の42枚入りよりも300円(税別)の「ルルルン7枚入り」シリーズを増加させる。現状、42枚入りで1,500円(税別)、1枚あたり36円という驚愕の値段で購入、使用することができるのは確かだ。しかし、自分の肌の状態に対し良い効能があるのか分からず、場合によっては肌を痛めてしまう可能性がある商品に、この商品のターゲットだと思われる女子大学生やOLなどが、いきなり1,500円(税別)を費やすだろうか。実際私は、初めてルルルンを買う前まで、フェースマスクには抵抗があった。その原因は4年ほど前の失敗が大きく関わっている。当時、興味本位から試しに1枚入りのフェースマスクを購入し、使用した。「肌が潤い、多少美白になる効能がある」と記載があったので期待していたのだが、付け始めて1分経ったかというくらいで肌に沁みてきてしまったのだ。これがきっかけで、1枚しか封入されていないのにもかかわらず、500円以上もし、しかも自分の肌に合わないものがフェースマスクだと決めつけてしまったために、もうフェースマスクは買わないと思ったことを覚えている。

 だからこそ7枚300円(税別)という手を出しやすい値段、枚数で販売することが重要となってくる。この手を出しやすい価格で7枚、つまり1日1枚なら1週間試して使えることが、次のルルルンシリーズ商品への購入動機となるのである。結果、手を出しやすい状態になったルルルンは、今までのフェースマスクとはさらに異なる、安価で毎日使うことのできる点を顧客へ伝えることができる。

 フェースマスクのように、肌に合うかどうかが重要になってくる商品を長期にわたって消費者が購入する時は、一か八かであることが多い。例えばシャンプーは、購入時に試すことが出来るわけではない。実際に使ってから頭皮に合う、合わないが分かるものである。実際に合わなかった時には、頭皮へのダメージや髪自体へのダメージが大きくなってしまう。このように肌に使うものを長期にわたって使用してもらうには、試供品のように一度きりで使い切ってしまうものではなく、お試し期間として効果が出る期間分用の商品を手に取って使ってもらうことが重要となる。そうすることにより、消費者にとっては商品の効き目が出るまでの期間を安価に試せること、企業にとってはまず商品を手に取ってもらうことで、将来の購入にも繋げることができるため、お互いに不利益を被ることが少なくなる。肌に使う商品をまとまって販売するだけではなく、効用が出る期間分を少量に分けて販売することで、手に取りやすくする。それこそが、肌に用いる商品にとって大切な1回目の購入動機を顧客に抱かせるうえで重要なものであると私は考える。

【参考文献】
グライド・エンタープライズ(2016) 「商品一覧」『フェイスマスクルルルン公式サイト』 http://lululun.com/product/ 2016年8月16日閲覧
グライド・エンタープライズ(2016) 「ルルルンの化粧水のお話」『フェイスマスクルルルン公式サイト』 http://lululun.com/labo/?p=106 2016年8月31日閲覧
島津翔(2016)「3億万枚売れた美顏マスク」『日経ビジネス』1850,68-69.


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