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10月14日 経営戦略の思考法 第3章 創発戦略学派

 3章では、創発戦略について紹介されている。
 従来、事前に明示的に戦略計画を策定し、トップダウンで現場へ落とし込む手法が暗黙の措定とされていた。しかし、1970年頃、実態は計画通りに物事が進められていない点、さらに大規模企業において、環境適応が可能なことが明らかになり、戦略に対して新たな見解が指摘された。戦略とは、事前にトップや戦略スタッフが詳細に策定したものではなく、ミドル・マネジメントが日々環境に適応し、新しいビジネス・チャンスをものにしていくプロセスの結果として、事後的に創発するパターンのことであるという考え方である。この見解により、ミドルの努力の結果として、企業の経営資源と環境の機会・脅威のマッチングが何らかのパターンとして創発するという考え方を創発戦略と捉え、これを重視する立場を創発戦略学派と呼んだのだ。

 創発戦略学派は以下の2点を主張した。
〇実として、企業が環境との間に示す戦略は、事前に本社スタッフや経営トップが策定したものとは異なる。
∋後的に創発する戦略は、実は「良いもの」である。
 もし、良いものでなかった場合、実務者の立場では、実務者の選択はイニシアティブではなく、怠慢やミスになってしまうので、現場で実行した逸脱は、事前計画以上の成果をもたらすものであるという前提で創発戦略は主著されるのだ。
 また、経営学者の立場では、創発戦略が良いものでなかった場合、この研究から生み出された知見が戦略計画学派を正当化するものになってしまい、「いかにして戦略計画学派の主張から現場が逸脱しないように統制するか」という追求のみになってしまうことを指摘し、創発戦略は良いものである主張した。

 以上のような見解が創発戦略であるが、創発戦略をより理解するために、本書では、3M社のヘルスケア事業への事業拡大の事例が挙げられている。3M社は、社内ベンチャー制度を積極的に運用し、ミドルやロワーからのアイデアを取り入れていたのだ。アイデアを持った人間はまずインフォーマルに自分のアイデアの商品化を目指し、「15%ポリシー(就業時間の15%を自分のために使ってよいという制度)」によって、就業時間やプライベートの時間を使い、密造を始める。そして、アイデア所有者は自分のアイデアを上司に売り込んだり、他の事業部に売り込んだり、研究所や社長に直接売り込むなどして、事業を拡大していったのだ。

 近年の実態としてはいかがなものだろうか。
 近年の戦略策定プロセスでは、本社の集権的なコントロールから事業分野に自由度を持たせ、創発を許容するという手法に移行した。
 しかし、このように創発的な試みが重視されている一方で、日本はかつて創発が得意であったが、近年その勢いは弱まっている。その要因は、バブル崩壊後、新規事業への多角化ではなく撤退を重視するようになった点、また、現代の多くの日本企業がミドルのイニシアティブのみでは調整が難しい重い組織の症状を呈してきた点による。ゆえに、このような局面ではトップの決断が必要になり、創発の勢いが弱まっているのだ。
 ただ、「創発は過去のものであり、原理的に間違っている」とは考えてはいけない。創発戦略によって引き起こされる問題が解決されれば、創発戦略の持つポテンシャルが再浮上してくる可能性が高いからである。

 創発戦略学派は、学問的にも、実務的にもその考え方によって、他の学派や実務者に貢献している。
 まず、学問的貢献においては、トップマネジメントの役割は、現場から生み出された新事業を、事後的に大きなテーマに統合し、新たな方向を打ち出していくという考え方と、企業変革の際は、ロワーの動きや内部の政治的情勢を活用し、徐々に組織変革していくべきという考え方わ、生み出した点。さらには、戦略計画学派の過度な合理性信仰への解毒剤としての有効性、そして、経営戦略と組織行動の相互作用を実証研究で明らかにしていく流れの創出という、主に4点において貢献したといえる。
 実務的貢献においては、トップや戦略スタッフに、組織設計と人材育成が戦略創発上重要であることを指摘した点が貢献といえよう。
 しかし、創発戦略にも問題点が2点ある。第一に、自然な多角化である。自ら積極的に立ち上げた事業を自ら中断しようと思う人は多くないため撤退は難しく、儲からない事業を抱えつつ、次々と事業拡大していくことが起こりうるのだ。第二に、組織や人材育成の具体策に関する議論の希薄さである。こうすれば良い戦略の創発ができるという主張を始めたら、戦略計画学派の主張と区別できなくなってしまう。ゆえに、どうすれば良いという具体的な示唆ができないのだ。

 以上が、本章の内容である。また、私達は本章の石油メジャーの創発戦略の事例を参考に、以下の議題について話し合った。ミドルのイニシアティブとトップの決断力の境界はいかなるものかという議題である。例えば、新規事業を行うにしても、ミドルの権限はどこまで通用し、トップはどの範囲まで現場に自由にやらせるのかということについてで議論した。議論の結果、トップは事業の継続、撤退を決断する立場にあり、ミドルは現場で自由に動くべきだという結論に至った。

 本章において、私達が享受すべき点は、目まぐるしく環境が変化する中で、新しくビジネスを始める場合、その多くは計画通りなど進まず、現実的に創発的な試みが行われているという点を理解しておくべきだということである。


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