<< ドーナツの潜在ニーズとは | main | 認証保育園のすすめ >>

チェーン店のタッチパネル方式導入を〜人手不足解消のために〜

 最近、大手外食チェーンで客数が減少し、店舗の閉鎖が相次いでいる。その原因として、河野・武田・須永・水野(2016)は、チェーン店が抱える「3大疾病」を挙げている。1つ目は、検索サイトの普及で個店の勢力が拡大し、「つまらない」、「楽しみがない」という理由で客足が遠のいている点だ。客は、飲食店の情報が気軽に手に入るようになったので、それまで足を踏み入れたことのない個店などを利用することへの心理的なハードルが一挙に低下した。その結果、客自身飽きが来ないように様々な場所に行く機会が増えたので、チェーン店の「どこへ行っても同じメニューで同じ味である」という安心感が相対的に低下してきた。さらに、チェーン店では店舗の画一化により、店づくりの個性や創造性を発揮できなくなった。その結果、客離れを招いたのだ。2つ目は、店舗拡大に伴い原材料の調達量を増やし、それによるスケールメリットによってコスト比率を下げる、というチェーン店が追求してきた成功の方程式が通用しなくなった点だ。例えば、牛肉のショートプレートの例でいうと、かつての大口顧客といえば日本だけだったが、最近では、中国や東南アジアでそれを上回るスケールの買い手が現れてきている、という。その結果、高い値段で牛肉を買うようになった中国や東南アジアの買い手に競り負けたり、思うような値段で牛肉を調達できなかったりする事態が起きている。3つ目は、労働環境の悪化や採用難によって働き手が確保しづらくなり、人手不足に陥った点が挙げられる。例えばすき家では、深夜帯を1人の従業員で切り盛りする「ワンオペ」のような過重労働が問題化し、一時は6割の店舗が深夜営業停止に追い込まれた。このように過重労働がメディアに取り上げられたことによってチェーン店の印象が悪化したので、バイトなどの応募が激減するようになったのだ。
 
 この3つの問題の中でも、私は人手不足が一番深刻だと考える。「メニューに新鮮味がない」「どこへ行っても同じでつまらない」という消費者の意見は、メニューの改善によってある程度解決することができるだろう。また、チェーンの成功の方程式が通用しなくなったことは、ゼンショーグループのように異業態会社をM&Aすることによって、自社で規模を拡大したり、機能を拡充したりできる(河野,2016)ので、ある程度改善できるだろう。しかし、人手不足は、その結果として営業時間を短縮させるので売上が減少するだけでなく、それを補うために行う時給の上昇が商品値上げに繋がるので、消費者のチェーン店離れをさらに引き起こすのだ。そして、この問題は飲食店業界全体の問題ではなく、チェーン店固有のものである。リクルートジョブズ(2016)によると、ファーストフードの平均時給は935円で、これはフード全体の平均時給954円と比べて低い。つまり、チェーン店は一般の飲食店と比べて時給が低いので人材が集まらないのである。

 それでは、この人手不足を解決するためにはどのようにしたらよいのか。私は、タッチパネルを用いたオーダー機器の導入を提案する。タッチパネルの導入には、確かに初期費用が掛かる。しかし、人を雇うよりもランニングコストは安価なので、人件費削減に加えトータルコストも低くなるからだ。このタッチパネル導入によって、人が少なくても店が回せたり、面倒な注文やレジ打ちの作業がなくなったり、オーダーミスがなくなったり、人が直接お金を扱わないので衛生的であったり、店員もオーダー以外の別の仕事に専念できる、といったメリットが生まれるのである。

 例えば日本のマクドナルドにタッチパネルを導入するというケースを考えてみよう。常盤(2015)によると、マクドナルドは、異物混入騒動などでブランドイメージや業績の悪化により人材確保が難しくなったことを一要因として大量閉店に追い込まれている、という。そこで、アメリカやフランスなど世界各国で導入されているタッチパネル方式を、日本のマクドナルドでも導入することを提案したい。Horovitz(2014)によると、アメリカのマクドナルドでは、もちろん普通のハンバーガーやドリンクの注文も出来るが、その目玉はマクドナルドが打ち出している自分の好みのバーガーが作れる事である。つまり、バンズ、チーズ、野菜の種類などを自由に選ぶ事が出来るのだ。このように、日本のマクドナルドにもタッチパネル方式を導入することによって、人件費削減だけでなく、自分でカスタマイズしてハンバーガーを作れるという楽しさも付加することができる。これにより、メニューに新鮮味がない、という理由でこれまで足が遠のいていた客を、リピーターにすることも可能かもしれない。また、Martin(2016)によると、アメリカのマクドナルドにおけるタッチパネル導入のコストは、一時的な費用はかさむものの1台3万5,000ドルとなっている。これは、時給15ドルを従業員に支払う場合と比べて1年1ヶ月で回収できる導入コストに過ぎない。以上のように、タッチパネル方式を導入すれば、人手不足解消に加え、将来的な人件費削減にもつながり、客へ新たな楽しさも付加することができるのではないか。

 確かに、誤入力や客と従業員のコミュニケーションが少なくなるというタッチパネル導入のデメリットもある。しかし、誤入力は、最後に確認画面を設けるなどの工夫で解消できるだろう。また、客と従業員とのコミュニケーション不足については、タッチパネルの近くに従業員を配置して、客の分からないことや要望に応えられるようにすれば解消できるだろう。

 このように、チェーン店が人手不足を解消するためには、オーダーの際、タッチパネル方式を導入することも1つの策である。人が少なくても店が回せ、人件費も削減できるので、最大の問題である人手不足解決に繋がる。また、タッチパネルの導入は、メニューのカスタマイズの可能性を高めるので、リピーターに新鮮さ、楽しさを与えられることもできる。人手不足を解決せず工夫も行わなければ、チェーン店は崩壊し続けていくに違いない。タッチパネル方式の導入による人手不足解消が、チェーン店再生の第一歩に繋がるのではないだろうか。


[参考文献]
河野紀子 (2016)「ゼンショー小川社長が語った今後の成長と後継者」『日経ビジネスONLINE』 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/281481/062400021/ 2016年8月16日検索.
河野紀子・武田安恵・須永太一朗・水野孝彦(2016) 「賞味期限のチェーン店 外食崩壊」『日経ビジネス』1841, 28-47.
Martin.H (2016) Fmr. McDonald's USA CEO: $35K robots cheaper than hiring at $15 per hour, Fox Business, 2016年5月31日検索. http://www.foxbusiness.com/features/2016/05/24/fmr-mcdonalds-usa-ceo-35k-robots-cheaper-than-hiring-at-15-per-hour.html. 邦訳, H・マーティン(2016)「マクドナルド元CEO、時給15ドルへの最低賃金引き上げが行われた場合には人間を雇うよりロボットを導入した方が安上がり」『Bussinese newsline』 http://business.newsln.jp/news/201605251022020000.html 2016年5月31日検索.
Horovitz, B. (2014) McDonald's expands custom sandwich option. USA TODAY, 2016年6月5日検索. http://www.usatoday.com/story/money/business/2014/12/07/mcdonalds-fast-food-restaurants-create-your-taste-millennials/19943987/
リクルートジョブズ (2016)「2016年5月度 アルバイト・パート募集時平均時給調査」 http://www.recruitjobs.co.jp/info/pdf/pr201606171516.pdf 2016年6月27日検索.
常盤有未 (2015) 「大量閉店で消えたマック、次に打つ手は何か」『東洋経済オンライン』 http://toyokeizai.net/artices/-/105925 2016年5月26日検索.


ほそだ(2年)