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京都市が財政難を脱却するには〜富裕層の呼び込みを強めるバックパッカーの役割〜

 京都は現在、米国で発行されている観光雑誌の一つ『Travel+Leisure』で観光人気都市世界1位を2年連続で獲得するなど、外国人観光客に人気である。京都市(2014a)によると、「平成26年の(外国人観光客の)宿泊客数は、前年より70万人増え、183万人となった。日本全体の宿泊客数が1,341万人なので、7人に1人が京都に宿泊している。」という計算になる。
 
 この結果から分かるように、現在、京都の観光はとても活況である。しかし、これほど観光が活況なのにも関わらず、京都市の税収は伸びていない。その理由として、飯田(2016)は、「宿泊施設や飲食店といった観光業で働く人の75%が非正規雇用であることが無関係ではない。」と指摘している。そこで京都市では正規雇用者を増やすため、観光客の中でも富裕層をターゲットにする戦略を考えている。実際に2014年には高級ホテルのザ・リッツ・カールトンがオープンし、2016年の秋には、フォーシーズンホテルなどのオープンも予定されている。その理由として、門川(2016)は、「一泊5万〜100万という高級ホテルや旅館があったとする。従業員は付加価値の高いサービス提供を求められますが、その見返りとして正社員として雇われたり、高い収入が増えたりします。こうした施設が増え、正規雇用者も増え、回りまわって市の税収増にもつながる。」ということを挙げている。そもそも、なぜ高級ホテルを増やし、正規雇用者が増加すると、京都市の税収は増えるのか。京都市の市税の中には個人市民税というものが存在する。この税の仕組みに所得金額×6%の金額を税金とする所得割という制度があるので、所得が増えれば増えるほど税収入も増えるのである。このように、高級ホテルを誘致することで市の税収を増やす、というのが京都市の戦略である。

 わたしはこの戦略が有効であると考える。現在、京都にはたくさんの文化財が存在する。また、京都市内には橋が2900ヵ所あり、その99%を市が管理していて耐震補強もしなければならない(飯田2016)。したがって、これらを保護し維持していくためには莫大な資金が必要である。実際に京都市(2015)は、「本市の大都市特例事務に係る経費は170億円、一方これに対応する税制上の措置済額は51億円で、措置不定額は、実に119億円である。」と述べている。このように京都市は財政難なのである。これを解消するためには、富裕層をターゲットにした観光客の増加により税収入を増やすことが必要である、と私は考える。

 しかし、私は観光客の中でも富裕層だけに目を向けるのではなく、バックパッカーのような観光客にも目を向ける必要があると考える。なぜなら、バックパッカーにはSNSを通した情報拡散力があるからである。新井(2013)は、「バックパッカーのスマホ所持率は約8割と高い割合である。そして、スマホ利用のメインとなっているのはSNSの使用である。」という。なぜ、彼らはSNSを利用するのだろうか。バックパッカーのSNSの利用意識について、新井(2013)は4つの象限があるという。第1象限は必要情報の受信・発信である。これは、グーグルで検索を行ったり、ブログをアップして他者に情報を発信することである。第2象限は情報消費(情報へのアクセス)である。いわゆる暇つぶしのように情報にアクセスすること自体を利用目的とすることである。第3象限は表出コミュニケーション(特定他者へのアクセス)である。これは、Twitterなどで他者との場の共有やコミュニケーションを目的とすることである。第4象限は伝達コミュニケーションである。これは、第3象限と似ているが、違う点としてはメールのやり取りなど他人に公開されずに身内との情報交換などを行うことである。今回、私はバックパッカーの情報拡散力を考えたうえで、第1・3象限に注目した。なぜこの二つに注目したかというと、バックパッカーは旅行に行く際、あらかじめ情報を得るために他のバックパッカーのブログを閲覧するだろう。また、バックパッカーは比較的長期に滞在をするため、メジャーな観光地だけでなくマイナーな場所に訪れる可能性がある。そのような場所はInstgramなどのSNSで写真がアップされることによって、それが拡散していき話題となる可能性が上がると考えるからである。それは単にバックパッカー内だけの拡散ではない。そのような場所がNile’s NILEやAgoraのような富裕層向けの雑誌に取り上げられることで、さらにそれらの雑誌を見た富裕層にも情報が拡散していく。そして、他の観光客がまだあまり行ってない中で、そのようなマイナーな場所に自分は行ったぞという優越感を得たい富裕層が京都に訪れるのである。そうして、多くの富裕層が来京し、彼らが京都にお金を落とすことで、税収が増え、回りまわって京都市の税収が増え、財政難脱却につながっていく。これが京都市にバックパッカーも呼び込む必要があると考えた理由である。

 だが、バックパッカーは比較的長期滞在者が多いため、リッツ・カールトンのような高級ホテルだけでなく、低予算で泊まれる施設も必要である。そこで、低予算でも宿泊できる施設を整えるにはどうしたらよいのだろうか。飯田(2016)は、「現在、京都市には旅館が5000室ある。その内、旅館の稼働率が約7割と、まだ余裕がある。そこで、稼働できていない旅館を利用していく。」と述べている。たしかに旅館を利用していくことも有効だが、旅館の稼働率も約7割とそこまで低くないので、限界がすぐにきてしまうと考えられる。そこで、私はまだあまり使われていない民泊を利用していくべきだと考える。民泊を利用する行政側のメリットとしては、年々増え続ける空き家など使われていない施設や建物を利用できるということが挙げられる。実際に京都市の空き家は、2008年は110,290戸、2013年は114,500戸(Kyotobnb 2014)と5年間で4,210戸増えているという現状がある。そこで、これらの空き家を利用し民泊に使うことで空き家問題の対策にもつながる可能性がある。そしてバックパッカーの民泊を利用することでのメリットとしては、仝獣呂琶襪蕕垢茲Δ並攤澆できる、現地の人や旅人との交流ができる、I當未任惑颪泙譴覆い茲Δ文沈的な場所に泊まれる、じ獣呂梁慮海できる(Travel.jp 2016)ということが挙げられる。しかし、一番のメリットは値段の安さである。大半の民泊では、かつて寮として使われていたものを利用しているため、比較的値段がリーズナブルで低予算でも泊まれるものとなっている。実際に民泊を提供しているAirbnbのサイトを見てみても平均して4000~5000円程度の価格帯となっている。以上のことから、空き家にも活用でき、またバックパッカーにも多くのメリットがあるので、私は民泊の利用を提案したい。

 しかし、民泊にも安全性の問題が存在する。京都新聞(2016)によると、「京都市は(2016年1月16日)に民泊実態調査を行った。最大手の仲介サイトに2542件が登録されているが、所在地を特定できたのは679件にとどまり、その大半が旅館業法に基づく市の許可を受けていない。」という。このような状況があると旅行者は安心して民泊を利用できない可能性がある。そこで京都市は、観光や衛生、消防などの担当職員でプロジェクトチームを作り、2015年12月から8つの仲介サイトに掲載された情報を調査し始めた(波多野 2016)。そして、京都市は認可した民泊の営業だけを認める方針であり、旅館業法上の許可がない違法なケースが見つかった場合は営業を中止させ、悪質な場合は刑事告発も視野に入れる(波多野 2016)という。また、安全性の問題を解決していくためにホームページで市が認可した民泊の情報を掲載し、より安全に宿泊できるための情報を提供している。さらに、通報専用窓口「民泊通報・相談窓口」を開設(2016年7月12日)し、民泊のトラブルに早急に対応できるように備えている。このように着々と民泊の安全性を解決する取り組みが行われ始めているので、バックパッカーのような低予算で旅行を考える観光客も安心して宿泊できるのではないだろうか。

 現在、京都市は財政が厳しい状況である。そこで観光客の中でも富裕層をターゲットにし、京都市の税収を増やしていこうとしている。現在は観光人気都市世界1位だが、いつこの人気が落ちてくるかは分からない。そこで、さらなる観光客を集めるためにはバックパッカーの呼び込みも必要だと考える。バックパッカーの情報拡散力を利用し、世界の富裕層の観光客をさらに呼び込んでいくことで、一人一人の所得が増え、回りまわって京都市の税収も増えていく。このような正のスパイラルを回すことで京都市は財政難から脱却していけるのではないだろうか。

【参考文献】
Airbnb (2016)「京都の民宿を探すなら−現地に溶け込む旅を体験」 https://www.airbnb.jp/s/%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%B8%82--%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%BA%9C/?          af=6968636&c=search_d_jpn_jpn_dom_p2_txt_irep&dclid=CPWQ2YL80s4CFcEcvAodONkDYg&s_tag=XZVzGRXd 2016年8月21日閲覧.
新井克弥 (2013) 「バックパッカーの情報行動」『関東学院大学文学部紀要』129,17-42. http://library.kanto-gakuin.ac.jp/webopac/bdyview.do?bodyid=Nl30000521&elmid=Body&lfname=link/005.pdf 2016年6月22日閲覧.
波多野陽 (2016) 「京都市『民泊110番』開設へ」『朝日新聞』2016年5月25日 http://www.asahi.com/sp/articles/ASJ5S6S09J5SPLZB065.html 2016年6月27日閲覧.
Kyotobnb (2014) 「京都市の空き家が年々増加」http://www.kyoto2.jp/entry/2014/11/25/190048 2016年7月5日閲覧.
京都市 (2010) 「市税収入の確保」 http://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/cmsfiles/contents/0000086/86441/6_siryo3.pdf 2016年5月30日閲覧.
京都市 (2014a) 「京都総合観光調査平成26年」
https://kanko.city.kyoto.lg.jp/chosa/image/kanko_chosa26.pdf 2016年5月16日閲覧.
京都市 (2014b) 「平成25年度決算概況について」
http://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/cmsfiles/contents/0000172/172480/260731kessanngaikyou.pdf 2016年5月30日閲覧.
京都市 (2015) 「門川市長記者会見2015年7月30日」
http://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000186841.html 2016年5月30日閲覧.
京都市 (2016) 「民泊通報・相談窓口」http://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000201777.html 2016年7月18日閲覧.
京都新聞 (2016) 「無許可民泊大半か 京都市調査、サイト登録一万人分」『京都新聞』2016年1月19日
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20160119000017 2016年5月30日閲覧.
飯田展久 (2016) 「文化庁移転を起爆剤に」『日経ビジネス』 1804, 64-67.
Travel.jp (2016) 「民泊のメリット」http://www.travel.co.jp/minpaku/about.html 2016年7月8日閲覧.

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