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中国進出による新たなライバル 〜日本の自動車メーカーの行方〜

 日本の自動車産業の中国への進出について、坂田(2010)をまとめると次のような主張になる。1979年、中国政府は国内自動車産業育成のために、「中国企業との合弁」という条件を満たした外国企業の参入を許可した。これは、利益の半分を中国側に渡さなければならず、しかも技術などが流出する危険もある「不平等条約」であったのだが、外国企業にとって世界最大の人口大国という市場への魅力は大きく、日本の自動車メーカーも次々と中国市場に参入していった。例えば合弁開始前には年間生産台数が1万台にも満たなかった現地企業である広州汽車は、1998年にホンダと合弁事業を開始し、加えて2004年にはトヨタ自動車とも合弁事業を始めることによって、2009年には年間生産台数を61万台にまで増加させた。しかし現在、彼らは合弁会社で得た利益を元にして「広汽乗用車」を設立し、独自ブランドの中国車の生産を始めている。広州汽車は合弁により単に資金だけでなく技術や組織管理力をも獲得しているため、ホンダやトヨタ自動車は自ら強大なライバルを作り上げてしまったといえるのである。

 しかし、それでも私は、ホンダやトヨタ自動車の中国市場参入は正しかったと考える。なぜなら、中国は世界最大の人口大国であると同時に世界最大の市場であり、そこには無限の可能性を秘めているからだ。確かに合弁による外資参入を定めた「中華人民共和国中外合資経営企業法」は紛れもない不平等条約であり、日本企業にとって多大なリスクもあることは間違いない。しかし、新しい市場への迅速な参入は、その市場で確固とした地位を築くために重要である。これから世界の軸となっていく中国市場に参入することは、世界で不動の地位を維持したい日本の自動車企業にとっては必須の条件であり、さらなる利益を追求するチャンスでもある。このような市場に手を出さないのは「もったいない」のではないだろうか。

 しかし中国での競争は簡単ではない。事実、例え現地企業の自動車とデザインや部品が似ていても合弁相手なので訴えにくく (坂田 2010)、新しく技術開発してもすぐにまねされてしまう可能性が高いのが現状である。この状況の中で、中国において日本の自動車メーカーの車を差別化し、現地の人にその良さを印象づけるためには、いったい何が必要なのだろうか。

 私は、技術でどうにもならないのであれば、現地のニーズに徹底的に合った車を作ればよいと提案したい。日本の自動車メーカーの車は高級というイメージが強いので、まずは富裕層に高級車を販売するのである。中国における富裕層はどんどん増加しているので、こういった人たちに高級車を販売することで、日本の自動車メーカーのブランドイメージを崩さずに販売をしていくことができる。その理由として挙げられるのが、日本の高級車は機能性が高く、乗り心地もいいので中国の人たちにも中国の車と同様に気に入ってもらえるということだ。

 その一方で、例えば安価に購入できる軽自動車を販売することも有効だろう。中国では女性の労働化率が高いため、マンションや家庭用電化製品を購入し、次には車を購入しようというOLも増えている(竹内 2004)。彼女たちをターゲットにした小型自動車は、日本よりもより高いニーズがあると考えられる。

 このように、日本の自動車メーカーは高級車を増え続けている富裕層に販売し、安価に購入できる車を働く女性に販売することで、それぞれニーズを満たし、さらに高級という日本の自動車メーカーのブランド力を保ちつつ、多くの現地のニーズを満たすことが出来るのではないだろうか。

参考文献
坂田亮太郎 (2010) 「中国車の真打ち、続々登場」 『日経ビジネス』 1539, 12-13.
竹内宏 (2004) 「一人っ子政策にみる中国経済の行方」『国際交流』26(4), 29-32.

うら(2年)