プラットフォーム企業のグローバル戦略(第9章 結び P339~371)


【要約】
 本書は、いままで明確に研究されていなかったグローバル・エコシステムにおけるプラットフォーム企業の競争戦略に焦点をあて、そのようなプラットフォーム企業の台頭が国際的な産業構造にどのような影響を与えるのかを事例分析・実証分析を通じて明らかにした。
 アカデミックな貢献として次のことが挙げられる。プラットフォーム企業は、エコシステムを成立させるためにたびたび戦略的標準化を行う。また、グローバル・エコシステムのハブにポジショニングすることによって、複数のコミュニティを仲介しながら競争力を拡大する。
 ビジネスインプリケーションとして次の3点が挙げられる。1つ目は、プラットフォーム企業は、その戦略のトリガーとして戦略的標準化を行う。2つ目は、プラットフォーム戦略を競争戦略として立案しようと考えている実務家にとって、「戦略的標準化」「ハブへの位置取り」「分業マネジメント」といった戦略レバーを提示したことである。3つ目は、実務家および政策立案者にとってプラットフォーム戦略と産業構造転換との関係を明らかにしたことである。


【ディスカッション】
 本書を通じて、プラットフォーム企業の競争戦略について理解を深めてきた。そこで、今回のディスカッションでは、過去に実際に起きた事例を用いてディスカッションを行った。その事例は、アメリカのスマートフォン市場における、Black BerryとiPhoneの競争である。
 Black Berryは、1996年に携帯情報端末を発売し、2002年より音声通話やウェブサイトの閲覧に対応した端末を発売している。Black Berryは信頼性とセキュリティー、そして画期的なキーボードが支持されて、スマートフォンの代名詞になった。この時代、各メーカーは、自社開発の独自OSで主に企業向けのスマートフォンを開発しており、スマートフォンは、一般消費者に全く普及しておらず、利用するのはビジネスマンくらいであった。ビジネスユーザーにとって、Black Berryはマストアイテムとなり、ポップカルチャーでも広く目につくようになった。
 世界の大統領、CEO、セレブが愛用し、「ブラックベリー中毒」という意味の「クラックベリー」という造語まで登場した。2006年末までに、Black Berryはアメリカのスマートフォン市場で40%近いシェアを握っていた。そこに、2007年、iPhoneが登場した。iPhoneは従来のキーボードの画面とは異なり、タッチパネルの画面を搭載しており、そのデザイン性やスティーブジョブズ氏によるiPhoneに関するプレゼンテーションは世の中で話題になった。
 これらの情報に基づいて、2007年にiPhoneが登場した時代にタイムスリップしたと仮定し、「Black Berryはシェアを維持するために、今後どのような戦略を実行すればよいのだろうか?」というディスカッションポイントで議論を行った。


 議論ではさまざまな意見が出たが、大きく三つに分けることができた。一つ目は、既存の戦略に基づいて製品を改良していくというものだ。例えば、「ブラックベリーは、市場シェアも高く既存のユーザーに好まれているから、このまま製品をよりよく磨いて、新シリーズのスマホを発売する。」「企業向けはセキュリティが重要であり、iPhoneのようにセキュリティが弱いスマホを企業が使うことは考えられないため、気にせず製品を改良していく。」
「シェアを維持できている今、基本設計をかえるなどコストをかけてまでiPhoneを意識した製品を新たにつくる必要はない。」という意見がでた。
 二つ目は、iPhoneを意識した製品開発を行うというものだ。これは、iPhoneを脅威とみなし、早めに対策を打つべきだと考える人の意見である。例えば、「タッチパネルを搭載した新たなスマートフォンを開発し発売する。」「iPhoneの対策として、一般消費者が使いやすいスマートフォンを開発する。」という意見が出た。
 三つ目は、プラットフォーム戦略を行うというものだ。例えば、「従来の閉鎖的なOSをやめ、OSの標準規格をつくり、他社に無償で提供する。」「独自のOSに基づいて閉鎖的にアプリ開発を行うのでなく、ユーザー企業や個人が自由にアプリ開発をできるソフトウェアプラットフォームをつくる。」「ブラックベリーでしか利用できないメッセンジャーアプリを、他社のスマートフォンでも利用できるようにする。」という意見がでた。


 これらの意見が出る中で、Black BerryのOSをオープンにして、企業や個人が自由にアプリ開発をできるようにしたほうがよいのか。という点に関して議論が白熱した。オープンにした方が良いと考える人は、「一般消費者のユーザーを増やすためには、ユーザーがアプリ開発に参加できるようにしたほうが良い。」「アプリ開発のプラットフォームをつくり、企業や個人を含めた共存企業やユーザー企業を増やすべき。」という意見が出た。
 一方、クローズの状態を維持した方が良いと考える人は、「ブラックベリーの強みであるセキュリティの高さを維持するために、クローズにすべき。」「一般消費者や企業の信頼を維持するために、従来通りブラックベリーが認めた企業のみにアプリ開発を任せる。」という意見が出た。


 議論の結論として、Black Berryの戦略は、既存ユーザーのニーズを満たすことを優先し、従来通りのキーボードを搭載したスマートフォンの開発を継続したまま、セキュリティや使いやすさを磨いていくという意見でまとまった。また、オープン化に関しては、政府機関や軍事機関、企業を主要顧客にしているため、セキュリティを第一に考え、従来通り独自のOSで閉鎖的にアプリ開発を行うという結論が出た。


やまもと (4年)

プラットフォーム企業のグローバル戦略(第8章 p291~337)

【要約】

 本章では、今まで見てきた事例研究を踏まえて本書の問いであった4つの下位命題の検証を行っている。最初3つの命題については支持されたものの、最後の1つは条件付きでの結論となった。本研究では、一概にはどちらとも言えなかったのである。

【ディスカッション】

 私たちは、本研究では一概な答えは出ず、条件付きの結論となった下位命題4に注目した。そもそも、ユーザー企業の産業で「参入規制が存在する」もしくは「いち早く新規企業・既存企業の転換が起きる」場合、ユーザー企業産業では国際的な産業構造転換は発生しない。その場合、共存企業の産業に国際的な産業構造転換の圧力が集中し、より深刻な国際的な産業構造転換が発生するとはどういう状況なのだろうか。これを噛み砕いて考えると、なんらかの影響を受けてユーザー産業が先進国企業で埋め尽くされた場合、ユーザー産業では国際構造転換は起こらない。これらの先進国企業は一定程度差別化が終わり、もはやコストで戦うしか手がなくなってきてしまっている企業である。そうなると、必然的により安い仕入先を求める為、共存産業は新興国企業で埋め尽くされるのである。その場合は、共存産業では国際構造転換が激しく起こるのである。これらの本書の状況を考えると、逆にユーザー産業に一定程度新興国企業がいた場合は、共存産業の中で一定程度先進国を選ぶ企業がいると推測できる。これが、「より深刻な」の状態であるからだ。では、なぜユーザー産業の新興国は、共存産業にコストが高いと予想される先進国を選ぶのだろうか。これらの問いについては私たちファシリテーター、及びフロアから、大企業という信頼性、自社のイメージアップ、技術蓄積、仕事の拡張可能性、などという意見が出た。

 ここまでを踏まえると、ユーザー企業においては先進国、新興国という立場の違いから共存企業にどのような企業を選ぶのか分かれることがわかった。ここで私たち担当者は、現在の日本であったらどちらを選択すれば良いのかという疑問を抱いた。というのも、本書では先進国と新興国という両極端の企業側の視点しか描かれていなかったが、先進国ではあるものの国際競争力は低下し、販路も限られるような日本中小メーカーは一概に本書における先進国と位置付けられないのではないかと考えたからだ。自社を先進国と置くか、新興国と置くかによって選択は変わるが、どちらのメリットデメリットも踏まえた上で、今後も生き残っていく為にはどちらの選択をするべきなのかを今回のディスカッションテーマとし、話し合った。

 議論は、先進国を選ぶ人、新興国を選ぶ人とほぼ半々に分かれた。まずは、先進国を選ぶという主張である。これは、経験のあるところの方がリスクが少ない、技術的な差別化ができる、技術によって資金を得ることができる、同じユーザー産業の先進国が強いから、などという意見が出た。対して新興国を選ぶという意見では、同じ製品なら安い方がいい、交渉力の強さ、共存の先進国は相手にしてくれないのではないか、候補企業の多さ、共存企業の競争力の高さなどの理由が挙げられた。議論が進むにつれて、新興国寄りになったが、完全に傾くことはなかった。

 これらの議論をまとめると、ゼミ生の間では日本の現在の状況を先進国であると考える人は一定数いないと言える。しかし、先生の見解ではやはりどんな状況でも新興国と組む方が良いとのことだった。コストの問題は大きく、メリットが大きいからだ。これから私たちが社会に出ていく中で、規模の大小はあれど、このような状況に直面することは想定できる。プラットフォームの波が現れ、先進国、新興国の動きが激しくなっていく中で、自社は将来を見据えてどの企業と組むべきなのか考えなければならない。そのようなことを踏まえて、今回のディスカッションが少しでもその助けとなれば幸いである。


さわだ(4年)

プラットフォーム企業のグローバル戦略(6章:P223〜248)

【要約】
 本章ではエコシステム拡大のために最も重要な「共存企業との分業ネットワーク」のマネジメントを扱っている。事例としてプラットフォーム企業のインテルと共存企業の台湾マザーボード(MB)企業を取り上げ、最新CPUに対応したMBの開発プロセスを分析している。

 分析の結果、プラットフォーム企業であるインテルは共存企業との複数の関係性を利用して、リファレンス・デザインを開発し提供することで、知識スコープとタスクスコープのアラインメントを実現していた。そして新規参入を担保するようなオープン性を維持することで、分業ネットワークのコア・ネットワーク化を防いでいることがわかった。


【ディスカッション】
本章では、インテルが成功した要因はプラットフォームに参加した企業が新興国企業であったからと述べられている。しかし今回の事例において、台湾MB企業は世界需要の約90%を生産しているという事実があり、私たちはこの事実もインテルの成功要因に関係しているのではないかと考えた。つまり、プラットフォーム参加企業が新興国企業であるだけでなく、その新興国の当該シェアが高いこともプラットフォーム企業がオープン・ネットワークを構築する上では必要なのではないかと考えた。

そこで今回のディスカッションでは、MB企業の分布が1つの国に固まるのではなくバラバラだった場合に、インテルはどのようにしてリファレンス・デザインを開発・提供しプラットフォームを構築するのかということをテーマにした。実際の事例でインテルは、A社とB社の2社とそれぞれ知識共有を行いリファレンス・デザインを開発・提供していたため、今回の状況下ではどのようにA社やB社を選択するのかということを議論した。今回の設定としては、MBのシェアが4カ国にだいたい25%ずつに分かれているとし、それぞれの国に今回のA〜D社の当てはまるような企業があるとした。また、それぞれの国では距離が離れているため、調達できる部品が国によって異なるとした。

このような状況下ではインテルは2つの選択肢があると考え、1つの国内でA社・B社を選ぶのか、別の国からA社・B社を選ぶのかを議論した。1つの国内で選ぶ意見としては、産業集積のメリットや人的資源の確保のしやすさ、言語の壁がないことなどによる情報交流の容易さ、部品調達コストの低さが理由として挙げられた。総じて人、モノ、情報の流通しやすさやスピード感がメリットとして考えられた。

一方で別の国から選ぶ意見としては、国を越えているため汎用性が高まること、1つの国でうまくいかなかった場合のリスクヘッジ、市場全体で見たときに複数国にアプローチしているのでの確保できる可能性のあるシェアの規模が大きいこと、より多くの経営資源を入手できる可能性があることが理由として挙げられた。

しかしながら、同じ国か別の国かということよりもシェアが大きいところにアプローチする方が妥当ではないかという意見が多数出た。では、シェアが大きいという理由で別の国にアプローチすると想定して、実際のインテルが台湾1カ国だったことと比較してどのようなデメリットがあるか、さらにそれはどのように解決できるかという議論へと発展させた。

出た意見としては、デメリットとして異なる国の人材を使うことによる情報交流の難しさや意思決定の困難さが挙げられた。これらの解決策として、教育などによって組織間のマネジメントを強化することや組織間のコミュニケーションを高めること、それぞれの国の現地の情報をより集めることなどが挙げられた。また、プラットフォームを構築するにあたってそもそも意思決定を急ぐ必要はないので、丁寧に意思決定を行なって確実にやる、丁寧な意思決定の例として、現地化をすることが有効なのではないかという意見が出た。

 以上のディスカッションより、MB企業の分布が1つの国に固まるのではなくバラバラだった場合、インテルはシェアの高い企業を狙ってアプローチすることが有効だという結論に至った。私たちは国の占めるシェアがプラットフォーム構築の成功に関わる一つの要因になるのではないかと考えていた。しかし今回の議論からそうとは言い切れず、また実際は1つの国とはいっても実際の生産工場は別の国にあったり、市場環境や国同士の距離などの条件が入ってくると状況が変わるため、一概には言えない。さらにプラットフォームの構築においては、どこの国でやるかということよりも企業の技術レベルやコントロールのしやすさという部分も関わってくると考えられるので、インテルの成功要因を明らかにするためにはさらなる議論も必要なのかもしれない。

ことう(4年)

プラット・フォーム企業のグローバル戦略(第7章:P249〜288)

【要約】
 本章では、ミクロ的視点から共存企業と同様に重要とされている、ユーザー企業との関係マネジメントについて扱っている。ここでは、自動車の中核部品であるエンジンECUに焦点を当てながら、中核部品企業2社(ボッシュとデンソー)の中国市場での企業行動を比較事例分析している。

 その結果、プラットフォーム企業に近い戦略をとっているボッシュは、簡明アプローチの企業間関係構築を行うことで、民族系自動車メーカーを含む広範なユーザー企業層を形成し、高い市場成果をあげていることが分かった。


【ディスカッション】
 本章では、ユーザー企業との関係マネジメントとして、2つのコミュニケーション・パターンが挙げられていた。それは、簡明アプローチ型と濃密アプローチ型である。簡明アプローチ型とは、国際的なオープン標準の頻繁な形成が背景としての産業環境変化である。これは、本章の中でボッシュが対象企業であり、プラットフォーム企業に近い。一方で、濃密アプローチ型とは、旧社会主義国や海外直接投資の自由化が産業環境変化として背景にあり、デンソーが対象企業となっている。このコミュニケーション・パターンは、製品企業(製品重視の戦略)に近い。

 これらの2つが企業間関係として、挙げられていた。しかし、これらはあくまで企業間でのコミュニケーションであり、細分化された1対1のコミュニケーションまでは議論されていなかった。簡明アプローチ型であれば、戦略としての形式上、プラットフォームを形成し易くはなる。しかし、この形でコミュニケーションを行った場合個人としてのコミュニケーションにはどのような影響が出るのか、私は、ディスカッションする意義があると考えた。

 そこで、ディスカッションポイントを就職活動を行う上で、簡明アプローチ型と濃密アプローチ型のどちらを取れば、業界を絞ることができるのだろうか、とした。ディスカッションを行う上で、大学3年生の1月初旬と仮定し、2月初旬までに業界を定めたいケースを想定した。また、今回はコミュニケーションをする場として、インターンシップを想定した。その内容とは、10時から18時まで行われるインターンシップであり、6人でグループワークを行う内容となっている。さらに、インターンシップは週3回行くと仮定し、設けた期間中である5週間に15回行くことを想定してディスカッションを行った。具体的なイメージとしては、簡明アプローチ型は、学部、目指している業界などの情報を収集することができ、当日中でしかコミュニケーションは行われない。割合としては、6人中3.4人とコミュニケーションが取れると想定した。一方で、濃密アプローチ型は、連絡先を交換し、インターンシップ後も連絡を取り合う関係性を指している。割合としては、6人中1人とコミュニケーションをすることができる。ディスカッション上、簡明アプローチ型か濃密アプローチ型かどちらかのアプローチしか取ることができないとする。

 ディスカッションを行う前に、フロアの意見を集計した。簡明アプローチ型は、17名、濃密アプローチ型は、10名であった。

 続いて、フロアの意見をそれぞれ挙げていく。簡明アプローチ型は、幅広い情報を得ることができ、数をたくさん得ることで自分なりに就活生目線での統計をえるこもができるという意見が目立った。そこから、資料やインターネットを通じて自分で情報を深めていくやり方が業界を定めるためには有効であるという意見である。さらに、濃密アプローチ型のデメリットとしては、個人個人のバイアスがかかってしまい情報に信頼性がなくなってしまうが、簡明アプローチ型であれば、そのようなことはなくなり、バイアスが少ない状況で情報を収集することができる。

 一方で、濃密アプローチ型は、情報の質が高く、業界を定めるための的確な情報を得ることができるという意見が多かった。また、業界を定めるプロセスとして、浅く広い情報を自分で収集した上で、インターンシップで就活生の情報を得た方が自分が収集したいことを収集したい人に聞くことができ、業界を絞るためには有効であるとの意見もあった。

 このようなディスカッションを行った上で、再度フロアの意見を集計し直した。すると、簡明アプローチ型は、17名から11名に減少し、濃密アプローチ型は、10名から16名に増えた。

 以上のディスカッションを踏まえ、本章のまとめを行う。今回のディスカッションでは、まだ就職活動を経験していない2年生と既に就職活動を終えている4年生が混在した議論が行われており、学年での差異が見られるのではないかと考えていた。しかし、経験に基づいた差異は特に見られず、個人のスタイルによって就職活動に対する考え方は異なるという示唆が得られた。また、情報を自分で収集してからフェイストゥフェイスで情報を得るのか、フェイストゥフェイスで情報を得てから取捨選択するのか、業界を定める上で2パターンの考え方があることも分かった。

 最後に、ディスカッションとして、学生とのコミュニケーションではなく、企業の人事というインターフェイスにすればより、より深く違う示唆があったと考えられる。しかし、このような議論は、インターンシップやその企業の質によって依存してしまうことは否定できない。つまり、その企業のインターンシップに参加する上で、何を得るのか目的を自分の中で設定して、達成できるよう主体的に動かなければいけないのである。


きむら(4年)

プラット・フォーム企業のグローバル戦略(第5章:P177〜221)

【要約】
 前章まではオープン標準化を用いてグローバル・エコシステムを形成し複数市場を仲介するハブになる事例を取り上げていた。本章では、意図的に周辺市場へ参入することによりエコシステムを形成する事例としてインテルを取り上げる。
 CPUをコア事業とするインテルがPentiumシリーズのCPUを市場へ拡大させるために、その周辺の市場にあたるチップセット市場への参入とマザーボード市場への参入を積極的に行った。この2つの市場参入の意図は周辺市場の囲い込みのためではなく、周辺市場の刺激のためである。
 この戦略を実現するにあたり、インテルはコア事業と周辺市場事業を1つの事業部として組織統合を行った。結果として、インテルの意図通り周辺市場は刺激され、新興国企業による生産が活性化し、自社CPUにとって優位に働く規格を普及させバーゲニング・パワーを得ることができた。
 
【ディスカッション】
 本章では、「プラットフォーム企業のインテルは、戦略的標準化を行い、パソコンの製品アーキテクチャをオープン領域とクローズ領域に二分した。これにより、パソコンのエコシステムが拡大するに従って、自社に付加価値が獲得できる仕組みが完成した。」(P.220,L.25-27)とあった。実際にインテルではコア領域のCPU事業に対応する周辺市場への参入を通じて周辺領域をオープン化し、パソコン製品の標準化を戦略的にすすめ、自社のコア領域であるCPUに付加価値を獲得する仕組みを作ることに成功した。私たちはこれに対し、インテル以外の企業でも同じような事がいえるのだろうかと考えた。オープン・クローズ戦略において、オープン化させる事が必ずしもメリットにつながるとは限らず、模倣・盗用・代替の恐れや周辺特許を取得される等々のデメリットも考えられる。この事から、本章に対して「オープン化するタイミングはどのようなタイミングであるか、オープン化する相手はどのように選ぶか、そして自社の技術をどこまでオープン化するのか」を疑問に思った。
 この疑問を解消すべく、私たちはディスカッションを行うにあたり、日本企業を事例としてあげた。経済産業省によると、日本は特許大国とされており、2013年時点で日本の企業が特許取得数1位でありながら、日本企業の課題として戦略的な知的財産マネジメントが必要とされており、日本企業は世界に比べて遅れをとっているとされている。知的財産をマネジメントする方法としてオープン・クローズ戦略が提唱されているが、日本企業は知的財産を生かしきれていない。ではなぜ日本企業はこの知的財産を生かしきれていないのか、その原因をフロアから考えうる限り募った。‘探と標準化というポイントで下記のような意見が上がった。
 ‘探の意見としてそもそも特許は技術者に対するものであり、知財部門が独立してしまっているのではないか。特許を取った技術に投資した分を回収するためには自社のみで外部を頼らず、その技術を使用してしまっているのではないか。その技術自体に対して特許をとってしまっていて、もはや取得が目的となってしまっているなどの意見が上がった。
 △良現牴修琉娶として、そもそもオープン化するやり方がわからず、探り探りになってしまっているのではないか。差別化が図りにくくなってしまうのではないかなどの意見が上がった。

 本章に挙げられるエコシステム形成の戦略や、上記のフロアから挙げられた原因をふまえ、『先進国企業である日本企業が抱える特許に関する問題を解決するには、外部(周辺市場)と内部(組織統合)のどちらを優先すべきか』をディスカッションポイントを立てた。
 外部を優先すべきとする意見では、周辺市場のうまくいっている企業と協力する、周囲にコア技術を見せる等々を行い、自社製品や技術そのものではなく、周辺市場で特許を取るべきだという意見が上がった。また、内部で戦略を調整するには時間がかかってしまう・統合しきれないと考えることから、死蔵特許となってしまう可能性や、考慮した上で技術を生かしてもうまく行くとは限らない、試作として技術を出し反応をみて修正を行うことが出来るという意見が上がった。
 内部を優先すべきとする意見では、内部での具体的な検討なしに戦略を取るということは根本の解決にはならず、自社内で知識の共有をすべきであり、知財部門の独立を解消すべきであるという意見が上がった。その場しのぎの外部を優先するよりも、内部の知識共有に時間を費やすべきだという意見が上がった。また、外部を優先するにも内部の統合が必要であるという意見が上がった。
 また、内・外部の議論とは別に、特許をうまく活かす術を持たない企業はむやみに特許を取ることを行わないべきだという意見も上がった。

 議論のまとめとしては、日本企業が知財マネジメントを行えていない原因として、特許を取る事が目的になってしまっていること、技術自体に特許を取ってしまっていること、知財部門が独立してしまっているため外部との協力が取れていないこと、知財に付加価値を獲得するための標準化をすすめていくオープン化のノウハウがないことが考えられる。このような日本企業における特許の問題を解消するためには、内部における調整を行うよりもスピードを優先させることができるという理由から、外部も重要であるが、スピード重視で無意味となってしまうことを防ぐためにも、内部を統制し知識や情報を共有する上で戦略を検討することも重視すべきであるという結論に至った。また2択という形式にしなければ、特許を取ってもうまく生かせないのであれば取らないという結論に至ったかもしれない。

いとう・たん(4年)

プラットフォーム企業のグローバル戦略(第4章後半 P149〜173)

【要約】
 第4章後半部分では、プラットフォーム競争戦略の有効性について、ネットワーク分析の手法を用いて説明されている。ネットワーク分析の結果として、事例となっている半導体産業でオープン標準化が起きたことで、ネットワークに3つの変化が生じていることがわかった。まず、複数のコミュニティを媒介するハブ・ノードが継続的に発生した。そしてハブ・ノードのバーゲニング・パワーにより、コネクタノードが周辺ノードに押しやられ、よりハブ・ノードに媒介機能が集約された。そのため、コミュニティ間の紐帯が小さくなり、ネットワークのモジュラー化が進んだ。

【ディスカッション】
 本書には、「プラットフォーム戦略では、コミュニティ間の媒介機能がハブに位置取りしたプラットフォーム企業に集約されていく一方、従前はコミュニティ間の媒介していたコネクタノードは、周辺ノードに追いやられてしまう。」(P.162,L.13-17)とあった。 実際にP.150-151の図を確認すると、AMATがハブに位置取りしたことでニコンはコネクタノードから周辺ノードへと変化している。そこで、ニコンが今後ハブノードになるためには、コミュニティ内取引とコミュニティ間取引のどちらを増加させるべきかを今回のディスカッションのテーマとした。議論を行うにあたって、次の条件であるという設定を行った。1つめは、ニコンの現状として主力事業が衰退しており資金難に陥っている。ニコンのなかで事業シェアの低い半導体事業には多くの資金を投資できない。そのため、コミュニティ間取引かコミュニティ内取引のどちらかにしか注力できないようだ。2つめは、半導体装置市場の現状は、1位が台湾、2位が韓国、3位日本、4位中国、5位シンガポールとした。3つめは、半導体業界は比較的変化が激しい業界であるため、3年間ほどの中期的な戦略となる。4つめはハブに位置取るメリットが「情報アクセス優位性」「情報コントロール優位性」であり、このメリットを得るためにハブに位置取ろうとしている。

 コミュニティ内を重視する意見とコミュニティ間を重視する意見に分かれた。まず、コミュニティ内の意見を重視する意見としては、ハブノードになるためには、現在のコミュニティ間取引は充分ではないが、足りているため、コミュニティ内の取引を進めていくことによってハブノードに近づくという意見があった。また、過去のネットワークポジションを確認すると、ニコンがコミュニティ間取引に力を入れていたことが感じられる。しかし、ハブには位置取りできていない事実がある。よって、コミュニティ間取引に力を入れてもプラットフォームのハブとなる数値には近づくことができないため、コミュニティ内取引を重視すべきとの意見があった。また、AMATに情報が集約されているため、コミュニティ間取引に注力しても、新たに多くの情報を取ることができないとの意見もあった。このように、コミュニティ内取引を重視する意見が序盤は多かった。しかし、2003年以降にオープン化標準した事実に注目し始めると、コミュニティ間取引の意見が出始めた。具体的には、ハブノードに位置するためには、新興国企業に販売を行うことが重要であるという4章前半の実証実験の結果を踏まえて、新興国に販売することがハブに近づくということだ。さらにコミュニティ間取引である市場には新規参入企業が増えてきているため、今後も市場として成長していくことが見込まれる。よって、AMATがハブに位置取っているが、参入して新規顧客を獲得する可能性があるとの意見もあった。また、標準化によって、日本の半導体装置産業は技術的優位が下がっているため、新興国と取引すべきとの意見もあった。結果、オープン標準した際のプラットフォームの戦略として本書で述べられている通り、新興国産業に販売率を高めることを重視する人が多く、コミュニティ間取引を進める流れとなった。

 では、AMATがハブに位置取りする台湾半導体市場においてコミュニティ間取引を進めていくには、ニコンはどのような取り組みをしていけば良いのだろうか。具体的な案を話し合った。すると、次のような意見が出た。AMATがまだ取引を行っていない場所に新しいコミュニティを作る。AMATの下についてAMATが手掛けなかったところをもらい情報を集め、いずれは自社のみで取引をできるようにする。台湾半導体市場のTELと手を組み、情報を得るといったことだ。

 今回のディスカッションでは、設定した条件下において、ニコンはコミュニティ間取引を重視すべきという結論になった。実際のニコンの戦略を見てみると、コミュニティ内取引に重きを置いていた。すると、同じ露光機メーカーであるASMLが徐々に拡大してきた。結果、2000年以前はニコンがASMLを上回っていたが、2010年頃の露光機市場においてASMLがシェア約8割、ニコンが約2割とシェアが逆転した。もし、ニコンが新興国に向けて販売し、今回のディスカッションで出てきた工夫を行ったら、現在とは異なる結果がでてきたかもしれない。

くまざき・まさや(4年)

プラットフォーム企業のグローバル戦略(第4章:P117〜148)

【要約】
 本章では、プラットフォーム企業の競争戦略の有効性について、半導体製造装置企業の取引データを用いて実証分析を行った結果が示されている。半導体製造装置産業は、以前は製品の品質等での差別化を図る戦略がとられていたが、2000年前後の300mmオープン標準化をきっかけに、プラットフォーム戦略を取る企業が出現するようになった。本章では、その300mm標準化前後の取引データをもとに、「ハブ=媒介中心性の高いポジションへの位置取り」「オープン標準対応製品の販売率」「新興国市場向け販売比率」といった戦略間の関係について定量的な実証分析が行われた。

 その結果、「ハブへの位置取り」「オープン標準対応製品の販売率」「新興国市場向け販売比率」は強い交互作用を持っており、「新興国市場向け販売比率」が一定以上高くなければ、グローバルエコシステムでプラットフォーム戦略が効果を発揮しないことがわかった。

【ディスカッション】
 P119では「300mm標準は、ウェーハ口径・形状のような材料の標準化にとどまらず、自動輸送システムの標準化、ファクトリーデザインの標準化、CIMソフトウェアの標準化など生産工場に関して広範な標準化が行われた」と書かれていた。しかし、3章でプラットフォーム企業は、オープン領域とクローズ領域を決め、クローズ領域の部分で他社との差別化を行っていくとも書かれていた。そこで、今回私たちは「オープン標準化している中で、標準化に対応する企業は、どのようにすれば持続的競争優位をえることができるのか」というディスカッションポイントを立てた。
 このディスカッションを行うために、私たちは架空の事例を設定した。今回は国内シェア2位(18%)の半導体製造装置企業を事例にし、この企業をBとして戦略を考えていくことにした。他の国内企業はシェア1位のA(20%)、シェア3位のC(15%)とその他(48%)を想定した。この市場は半導体製造装置の部品の中でもっとも重要な部品を取り扱っている部品であり、最近標準化したばかりである。また、標準化してからまだ日が浅く、取引先の半導体企業は、このタイミングで今までの取引先とは違う企業も試してみたいと思っている。さらに、AとBはほぼ同時に標準化しており、Cとその他は少し遅れて標準化したということにする。そして、違う半導体製造装置の部品の市場でシェア3位の企業に自社の社長の幼馴染がいるという設定にした。これに加えて、企業の規模も設計した。Aは従業員数100人で資本金5億円、Bは従業員数90人の資本金4億円、Cも従業員数90人の資本金4億円とした。また、扱っている製品は、各社とも対象の半導体製造装置の部品のみとした

 以上の設定を踏まえたうえでディスカッションを進めていった。意見としては主に3種類の意見が出てきた
‖召糧焼蛎寮渋ち置の部品とのバンドリングを行う
 標準化すると製品での差別化は難しいという点で、他の半導体製造装置の部品とのバンドリングをして自社の製品に付加価値つければ、差別化ができるという意見が出た。この意見には、自社で自社の取り扱っている部品と関連性の高い部品を手掛けるか、関連性は薄いものの、社長の幼馴染がいて交友のある別の半導体製造装置部品企業と提携してバンドリングするかの2つの意見が出てきた。その中でも自社は資本金も少ないので、自分たちですべて手掛けるよりは、他社と協力したほうがいいという意見から、関連性は薄いが交友のある企業と提携してセット売りするという方法が有効なのではないかと考えられた。
工場の稼働率を上げ、大量生産し、コストを下げる
 標準化してからまだ日も浅く、取引先の半導体企業は、このタイミングで今までの取引先とは違う企業も試してみたいと思っているということから、取引先に付け入るスキがあるため、ひたすら生産して習熟度をあげてコストを下げ、どんどん営業をかけて販売していくというものである。こうすることで主にその他の48%の企業の取り引き先を奪うことができ、圧倒的なネットワークを構築できるので、他社との差別化ができるのではないかと考えられる。
自社の信頼、安心、イメージを向上させる
 製品で差別化できないのならば、サービスや売り方を工夫して、自社のイメージを向上させることができれば差別化できるのではないかという考えである。具体的にはアフターサービスを行って信頼や安心感を取引先に感じてもらうという意見や、まず国内ではなく新興国に向けて製品をうり、世界的な企業であるということをアピールするという意見が出た。これらができれば、企業の信頼にもつながり、差別化ができるのではないかという意見である。

 以上のような意見が出たが、議論のまとめとしては、コストを下げるという面では,鉢△篭δ未靴討い襪、△和腓な投資が必要で、資本金4億円の企業ではできることが限られてしまうという点から、他社と提携してバンドリングし、セット価格で半導体企業に提供する策が、コストを下げるなら有効なのではないのかという意見に集約された。次に、,鉢のどちらが有効か比較検討した。その結果、イメージを向上させて信頼を獲得する施策は時間を要するので、できたころには他の企業にシェアを奪われているのではないかということで、より早い段階で着手でき、効果も見込めそうな,痢関連性は薄いが交友のある企業と提携してセット売りするという方法が今回の議論では1番有効な方法であるという結論に至った。

とみざわ(3年)

プラットフォーム企業のグローバル戦略(第2章:p34〜)

【要約】
 本章では、ネットワーク効果を利用したプラットフォーム企業の戦略である、「二面市場戦略」と「バンドリング戦略」について説明をしている。一般的な企業はネットワーク効果の直接効果のみ戦略的に利用可能だが、プラットフォーム企業は「2つの市場の両方と取引を行う企業」であるので、ネットワークの直接効果と間接効果の双方を戦略的に利用することができる。この特性を利用した戦略が「二面市場戦略」である。次に「バンドリング戦略」とは、自社製品と補完財をセットにして売ることでネットワーク効果を独り占めし、自社の競争力を拡大する戦略である。
さらに本章では、既存のプラットフォーム企業研究の問題点について言及している。欧米の研究では国際競争力や国際分業を分析の範囲としていないこと、そして日本の研究ではプラットフォーム競争戦略の理論とは関連づけられていないことなどが問題点として挙げられている。3章以降、これらの問題点を明らかにしていくために、事例研究をもとに議論を進めていく。

【ディスカッション】
 今回のディスカッションは、「ある市場においてバンドリング戦略を行っているライバル企業に対してプラットフォーム企業はどのようにシェアを奪えばよいのか」を議論した。なぜなら、本書では、バンドリングアタックやディフェンシブバンドリングについて説明する際にライバル企業を単品販売企業だと設定しているが、実際はライバル企業もバンドリングを行っていると考えたため、その中でどのような戦略をとっていくべきかを明らかにしたいと考えたからだ。そして、すでにバンドリングを行っているライバル企業と自社がバンドリングをしている製品は価格も製品もほとんど同じものとする。

 議論の中で出た意見としては、新しい市場もしくはサービスとバンドリングを行う、広告宣伝や顧客との接触を増やす、知名度や企業のイメージアップを目指す、他社との連携を行う、顧客の囲い込みを行う、機種変更の際の割引を行う、流行に沿ったプランを考え出すといったものがあった。すでにバンドリングをしている企業が存在しており、バンドリング製品の価格も製品もほぼ同じという条件があるため、それ以外の部分で勝負していかなくてはならない、そうなったときに、CMや広告などを活用して幅広く認知してもらい、イメージの向上をしていくことが多く挙げられた。例に挙げると、少し前にauが行っていた昔話をモチーフにしたCMが当てはまる。宣伝効果としては、昔話をモチーフにして物語を展開していくなかでプランの説明などを行うことで、人々の目を引き付け、さらにプランの内容を知ってもらうことができることが見込まれる。また、他社との連携も戦略の一つとして挙げられた。他社と連携をして自社だけでは付けることのできない付加価値をつけることで、シェアの拡大や競合他社との競争に勝つことを目指すことができるだろう。そのほかにも実際に現在取られていた戦略として、機種変更の際の割引を行うことが挙げられた。これは、携帯会社に限定されるものだが、すでに使用している携帯から違う機種に変更する際に大幅に割引をするものである。そうすることで、機種変更を促し、全体としての売上を上げることができるのだ。

 議論のまとめとしては、プラットフォーム企業が行う戦略として、知名度を上げていくことと他社との連携をうまくとっていくことが重要であるということがわかった。現在、バンドリングを行っているプラットフォーム企業は多数存在している。そのような状況の中で、価格や製品ではなかなか差別化できないという状況に陥る可能性もあるだろう。そのような状況の中で、新たに広告宣伝を行うことで知名度を向上させて顧客にイメージをつけるこや、他社と連携することで新たに付加価値をつけることができ、顧客の満足度を向上させることが重要なのだ。ただ今回の議論では、プラットフォーム企業であるためにとれる戦略であるという部分が弱くなってしまったところが反省点である。今後の議論においては、プラットフォーム企業が取るべき戦略としての話し合いをしていくことが望まれる。

 今回私たちは初めにケーススタディディスカッションを行おうと考え、パソコン市場を事例にアップルをプラットフォーム企業として戦略を考えていく予定でいた。しかし、ケーススタディ用のデータが不足しており、議論をうまく進めることができなかった。このことを踏まえ、今後理論についての議論を行う場合には本書で挙げられていることは本当なのかどうかといった部分を議論していくことをおススメする。また、ケーススタディ行う際には、事前のデータ集めや資料作成を綿密に行うべきである。

やくら(4年)


プラットフォーム企業のグローバル戦略(第3章)

【要約】
 本章ではプラットフォーム企業の中でも戦略的標準化に着目しながら、プラットフォーム企業の競争戦略がなぜ新興国の成長につながるのかを探る。また、コンセンサス標準化に焦点を当て、産業進化に与える影響を明らかにする。今回はGSM携帯電話システムの中国市場導入を事例にしている。結果として、プラットフォーム企業の戦略的標準化が製品アーキテクチャをオープン領域とクローズ領域に二分してしまうことが分かった。オープン領域では技術情報がオープン標準として広範囲に解放されるため、新興国産業にとっては新規参入の絶好の機会である。一方で、クローズ領域では、このようなメカニズムが働かないため新規参入は進まないが、オープン領域が拡大するにつれて、クローズ領域の市場も拡大していくのだ。このため、クローズ領域向けに製品・サービスを提供しているプラットフォーム企業は高い競争力を維持しながら事業拡大が可能になっていくのである。

【ディスカッション】
 P112ではプラットフォーム企業の戦略的標準化に対して、共存企業・ユーザー企業も対応を迫られるときがある。自社の事業領域が標準化対象のオープン領域になった場合である、と述べられていた。しかし、既存の共存企業・ユーザー企業がどのような対応をとるかまでは述べられていなかった。そこで、私たちはこのような企業がどのような対応をとっていくべきかに疑問を抱き、今回のディスカッションポイントにした。

 今回のディスカッションを行いやすくするために、私たちが仮想の事例を用意した。今回は2017年の携帯端末(アンドロイド)産業におけるユーザー企業A社について議論することにした。A社は1994年に創立した。主な事業内容はプロダクトビジネス(携帯端末の開発や設計)とサービスビジネス(携帯端末の保守や運用)である。A社には携帯端末だけでなく、他の機械製品を作ることができる技術力も持ち合わせている。製品としては7種類の端末(携帯電話も含む)を扱っていて、高齢者層に向けた製品まで取り扱っている。また虹彩認識などの研究開発にも力を入れている。
 さらに、私たちはディスカッションを行いやすくするために時代背景も以下の通りに設定した。2010年におけるA社の国内携帯端末の出荷台数は13.4%であり、国内3位である。一方、2017年のA社の国内携帯端末の出荷台数は5.4%の国内5位に低下した。さらに、2015年より、海外の格安スマホメーカーが台頭してきた。そして国内の格安スマホの2015年の利用率は3.7%であったのに対して、2017年は18%にまで増加した。つまり、海外企業の進出により、格安スマホメーカーの利用率が増加したことにより、携帯端市場はさらに激化したのである。
 しかし、これだけでは設定が少ないという指摘をフロアから受けた。そこで、私たちはA社が今後の利益拡大のためにどのような対応をとるかを考えること。対応については、携帯端末事業を完全にやめる場合は撤退、携帯端末事業に加えて、何か新しい事業を行う場合は事業シフトを行うということにした。
 
以上の設定のもとディスカッションを行った。大きくわけると以下の意見が挙げられた。
‥餌
前提条件から考えると、A社のシェアが10%以上下がっているため、今後の成長が見込めないから。携帯端末事業がPPMで表すとm将来的に負け犬になる可能性があるため、撤退した方がよい。また、完全に撤退するのではなく、どこかの企業に売却してその企業の傘下に入るべき。
∋業シフト
A社は虹彩認識に力を入れているため、既存の事業に加えてこの技術を生かしていくべき。そして、最終的には特許を取れれば利益は拡大できる。現在、IoTデバイスが普及していることから、長年の携帯端末事業のノウハウを生かして、IoTデバイス事業も始めるべき。キャッシュレス化が進んでいるため、携帯端末事業に加えて、キャッシュレスの据え置きを作るべき。
8従維持
前提条件より、A社のシェアは下がってはいるものの業界5位であるため、このまま事業を続けても利益を得ていける。そもそも、新しい事業を始めることはA社にとってリスクなのではないか。A社は高齢層に向けて製品を販売していて、今後高齢化が進んでいくため、A社の製品を買う人が増えると考えるから、現状維持のままではいいのではないか。この意見に対しては、高齢化が進めば、消費者が必ずしも高齢者向け製品を買うかは分からないといった反対意見も多くでた。
す睥霄垳け製品のみを開発し続ける。
今後、高齢化が進み、もし高齢者向け製品が売れるのであれば、それ以外の6種類の製品は撤退してもいいのではないか。そして、その資金と虹彩認識などの技術をもとに新たな事業に取り組んでもいいのではないか。

 ディスカッションを行ったところ、様々な意見が挙げられ、4つの分類に分けることができた。事前準備の際に私たちは主に撤退か事業シフトの意見が出ると考えていた。しかし、ディスカッションを行ってみると、新しい事業を始めずに今までの事業を行う現状維持や一部製品を売り、高齢者向け製品だけを行うなど予想外の意見が挙げられた。その結果、4つの意見が均衡してしまった。これは発表者である私たちが前提条件として、A社の事業内容を詳しく提示したり、A社以外の企業の詳細を提示すれば結果が変わったかもしれない。今回のディスカッションの結論として、意見は均衡してしまったがフロアから出た意見の数を考えると、撤退よりも既存の携帯端末事業と新規事業を行う意見が多く出た。以上より、今回のディスカッションにおいて、A社は今後の利益拡大のために携帯端末事業に加えて、新規事業を行うべきであるという結論に至った。

 議論を終えて、ケーススタディでディスカッションを行うためには、事前準備がいかに重要であるかを学んだ。中途半端な設定をしてしまうと、フロアに混乱を与えて意見が出なくなってしまうからである。次回以降ケーススタディでやる場合、詳細をさらに決めて事前準備をした上でディスカッションに望みたい。

よしかわ(4年)

プラットフォーム企業のグローバル戦略 (第1章&第2章:p3〜p34)

【要約】
 本書は、新しい産業環境下でなぜプラットフォーム企業が抜きん出た競争力を持つことができるのかを解き明かそうとしたものである。そして、そのような驚くべき競争力を持つプラットフォーム企業の台頭が、国際的な産業構造にどのような影響をもたらすのか探ったものである。本書で言う新しい産業環境下とは、「オープン化」のことである。これは企業間で情報を共有することで、「標準化」とも言う。この標準化には3つの種類がある。それが、.妊侫.ト標準化、▲妊献絅衂現牴宗↓コンセンサス標準化である。特に、コンセンサス標準化は欧米や欧州の標準化政策の変化によって生まれた新たな標準化なのだ。また、標準化はしばしばビジネス・エコシステムという概念によって分析が行われている。ビジネス・エコシステムは、産業構造を生態系のアナロジーで捉えたものである。この概念から、産業進化を主導するような企業を「プラットフォーム企業」と呼び、それらを取り巻く補完財企業を「共存企業」と呼んでいる。この2つの関係は運命共同体である。また、プラットフォーム企業の特徴は、複数の市場間を結びつけてネットワークを構築している。そこにはネットワーク効果が発生しており、そのネットワーク効果を用い、複数の市場間の関係を利用して戦略を行うことをプラットフォーム戦略という。この時において、プラットフォーム企業は複数市場の橋渡し役、つまりハブとしての機能を持っており、情報を操作し競争優位を確立することができるのだ。

【ディスカッション】
 今回のディスカッションは「デファクト標準とコンセンサス標準のどちらを選択すれば、自社(A社)が市場において今よりも多く利益を獲得することができるか」を議論した。なぜなら、本書ではオープン標準化には3つの種類が存在すると述べている。その中でも、コンセンサス標準は他のデファクト標準とデジュリ標準を組み合わせたハイブリッド的な標準化であり、他の標準化を選択するよりも、コンセンサス標準を選択した方が市場全体の拡大を促すことが可能である。しかし、私たちは情報の共有を行うことから自分たちが得られる利益は他の標準よりも少ないだろうと考えたからだ。その際のプレイヤーとして、自社(A社)とその子会社a社、a社の競合であるB社がいる。自社(A社)はゲーム用ハードディスクを生産・販売しており、ゲーム業界の中でシェア1位に位置している。また、自社(A社)にはa社というDVDディスクを生産・販売している子会社を抱えている。業界の状況として、自社(A社)は売り上げ強化のため、a社のDVDディスクも使用できるゲーム用ハードを作るため、DVD市場内のDVD規格を変更しようと考えている。つまり、自社(A社)はDVD市場内で、デファクト標準かコンセンサス標準を行うのだ。

 まず、デファクト標準化の意見は、自社で開発・資金繰りができることや特許を取得してフィーを得るなどの意見が出た。一方でコンセンサス標準化の意見では、コンセンサス標準化の利点であるネットワーク効果拡大を生かせるや市場利益拡大ができる、といった市場の拡大が自社利益の拡大に結びつく意見が出た。ここでは、コンセンサス標準化を選択する意見が多かった。しかし、フロアから「市場シェアがどのくらいかによって自社(A社)が取る選択が変わるのではないか」という指摘を受けた。

 そこで、今までの前提に市場シェアを加えて議論を行った。市場シェア率は以下の通りである。ゲーム市場シェアは、自社(A社)が1位(50%)、2位(30%)、その他(20%)とした。市場シェアの情報を加えたことで、デファクト標準化の意見が多く出るかと思ったが、依然コンセンサス標準化有利であった。デファクトの意見は、市場シェア50%ということで根強いファンがいると予想できる。その際に、DVDディスク規格を変更したとしても売り上げが下がることはない、であった。反対に、コンセンサス標準化側からすでにDVDハードの規格があるからわざわざ新たな規格製品を買う必要がないという意見も出た。また、コンセンサス標準化は、DVDディスク規格を統一することで規格が変わったとしても他のDVD規格で使用することができることやDVDシェア1位のB社と同じ規格ならB社の顧客も取り込める可能性があるといった意見が出た。しかし、依然としてコンセンサス標準化優勢のままであった。私達はデファクト標準化の意見をもっと出してもらって議論の活性化を図りたいと考え、新たにDVD市場シェアのデータを加えた。

 DVD市場シェアは、a社30%、B社20%、その他50%とした。DVD市場とゲーム市場のデータを出して状況を細かくしたことで、デファクト標準化に意見が傾くかと考えたが、むしろコンセンサス標準化の意見が多く出た。その中には、自社(A社)だけ規格を変更しても、他の70%は今までの規格によるかもしれないや他の企業も同じ規格にすれば自社(A社)がとるリスクは少なくて済む、失敗する確率が少ないなどがあった。

 以上から、今回のディスカッションにおいてはコンセンサス標準化を選択するほうが望ましいという結果になった。なぜなら、コンセンサス標準化の方が市場拡大を見込めるため、企業の利益もデファクト標準かより得られるという考えがあったからだ。また、他社も同じ行動をとることで、自社が取るリスクを軽減することもできる。しかし、設定条件をより詳細にすることで意見が変わったのではないかと考える。今回の議論では、企業の位置関係しか定義しなかったため、市場内の強さや競合との関わりなども予め設定していればより議論が深まっただろう。また、今回はDVD市場とゲーム市場を例にとってディスカッションを行ったが、フロア側にイメージが伝わり切っていなかったため意見の幅を広げることができなかった。さらに、今回のディスカッションに無かった視点として、市場内のステークホルダーとの関わりが挙げられた。補完財企業でも独自で動いていたり、抱えている著作権や版権が異なる。この補完財企業の行動を議論に加えることができれば、ネットワーク効果での議論を行うことが可能であっただろう。

あらき (4年)

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