シェフ型ビジネスにおける社内ベンチャーの有効性

 林(2016)によると、大手化学メーカーは自動車・電機メーカーなどの大口顧客の要望に応じた素材・技術を供給するスタンスをとるのが一般的であるが、三井化学は大量発注を見込みづらいベンチャー企業に自らアプローチをかけている。このように、三井化学が目指す戦略の転換は「農場型研究からシェフ型研究」への転換と言われている(林2016)。これは、樹脂やゴムなどの部品を開発するだけではなく、顧客との複数回のやりとりを行い、好みに合わせて改良し、提供することである。そして、三井化学は自ら企業にアプローチをかけて製品の開発や技術の提供を行い、一般の化学メーカーがあまり取引しない業界の相手が訪れる見本市に出展するなどの活動を行っている。
 
 私は、このように三井化学がベンチャー企業に自らアプローチをかけていく戦略には賛成である。その理由は2点ある。1点目はトップの強いリーダーシップ、2点目は今後発展が見込める市場を対象とした事業展開である。ベンチャー企業は大企業と比べると簡素な組織で意思決定が迅速に行われる(経済産業省2008)。このようなベンチャー企業のスピード感によって、シェフ型研究を行っている1つのプロジェクトに対する時間の削減が見込まれる。また、大企業は規模が大きい市場で事業を展開していることが多く、収益の見込みづらい規模が小さい市場では事業を展開しにくい。その点、ベンチャー企業は、規模の小さな市場でも収益を上げやすい。従って、三井化学にとってベンチャー企業と協同することは、規模は小さいが成長の見込まれるような市場において、仮に大企業が参入して来た際、競合他社よりも先に供給先としての権利を得やすくなると考える。

 また、ベンチャー企業の側から考えても、豊富な資源を保有する三井化学と組むことができれば、経営資源の不足というベンチャー企業の弱み(経済産業省2008)を解消することができる。さらに、林(2016)で挙げられているように、三井化学のシェフ型ビジネスは、顧客であるベンチャー企業の要望に応えて部品・製品開発を行うので、ベンチャー企業が抱えている技術面の問題を大企業の豊富な経営資源を用いて解決することができる。そして、三井化学と共同で開発することができれば、ベンチャー企業自身のブランドだけでなく、共同で開発した三井化学のブランドも用いることができる。このことにより、商品の信頼度を向上させることができ、商品を展開していく際にプラスに働くと考える。これらの理由から、ベンチャー企業も三井化学と共同で開発するメリットがあると考える。

 しかし、三井化学はベンチャー企業と組むことで、必ずしも安定的な収益を上げられるというわけではない。なぜならば、ベンチャー企業は大企業と比べて規模や生産高の面で劣るので、大口顧客のような安定した供給先には成りえないからである。では、三井化学はどのようにして収益を獲得していけなければならないのだろうか。

 そこで、私は三井化学がベンチャー企業だけではなく、大企業の社内ベンチャーに積極的にアプローチをかけていくことを提案したい。なぜなら、ベンチャー企業にない強みを社内ベンチャーが保持しているからである。ベンチャー企業にはない社内ベンチャーの強みとは、大企業の一部であることのブランド力、資源の豊富さ、研究開発の面でのリスクの小ささ(原山・氏家・出川2009)である。例を挙げると、大企業の社内ベンチャーはベンチャー企業よりも経営資源が豊富であり、このことは三井化学にとって有利に働くと考える。仮に共同開発した製品の需要が高まった時、ベンチャー企業では資金調達に時間がかかるが、大企業の社内ベンチャーであれば、迅速に投資を受け市場の需要に合わせて製品を生産できる可能性が高い。このことから、三井化学は社内ベンチャーと組むことで、ビジネスのチャンスを拡大できる可能性が高まるのではないだろうか。

 加えて、三井化学は大企業の社内ベンチャーと協同で研究・開発をすることで、単独のベンチャー企業と行うよりも、より多くの販売先を確保できる可能性が高まると考える。ベンチャー企業と開発を行った場合、販売先と成り得るのはベンチャー企業単独になることが多く、販売先を広げるのは困難だ。しかし、大企業の社内ベンチャーと開発を行った場合、開発した素材の販売先として、大企業の社内ベンチャーだけでなく、その大企業と取引をしている企業も販売先として見込むことができるのではないだろうか。これによって、シェフ型研究の問題である、収益の確保が困難である点を解決することができるだろう。

 そして、この提案は三井化学だけでなく開発系のメーカーにもメリットになると考えている。仮に、開発系のメーカーが安定した供給先を確保していたとしても、それは成長ではなく、顧客の維持にすぎない。企業が長期的に成長していくためには、新規事業で収益を確保していく仕組みを作っていかなければならないのである。私はその手段として、オープンイノベーションを活用することが適していると考える。なぜなら、イノベーションを起こすのに役に立つ知識は広く分散(Chesbrough,Vanhaverbeke,West 2008)しており、社外にあるその知識を利用することはイノベーションを起こして新規事業を生み出していく上で有効であるからである。

 このように、自社だけでなく社外にも重きを置いている点はシェフ型ビジネスとオープンイノベーションの考え方双方が類似している。しかし、シェフ型ビジネスはオープンイノベーションと比べて自らアプローチをする点で積極的である。自ら社外にアプローチをしていくことで、受け身の姿勢でいるよりも多くの社外のリソースを活用する機会が増加し、新規事業の獲得につながると考える。そのため、シェフ型ビジネスを活用することは、三井化学だけでなく開発系のメーカーにとっても企業の長期的な成長と新規事業の獲得の点で有効な手段になるだろう。実際に、日本企業は今、「外」に活路を求め、従来の殻を打ち破る必要がある(日本経済新聞 2014)と言われており、研究解発にもかつてないほどのスピードが求められている(星野 2015)。今後、開発系のメーカーにとって、資源が豊富でスピード感溢れる大企業の社内ベンチャーへシェフ型ビジネスの様に自ら積極的にアプローチをしていくことが必要になってくるのではないだろうか。

【参考文献】
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林英樹 (2016) 「三井科学 素材を「発明の友」に」『日経ビジネス』1850, 58-62
Henry Chesbrough,Wim Vanhaverbeke,Joel West (2006).Open Innovation : Reserching a New Paradigm 邦訳,長尾高弘 (2008) 『オープンイノベーション;組織を超えたネットワークが成長を加速する』 英治出版
星野達也 (2015) 「研究開発の自前主義に訪れた限界」 『日経テクノロジーonline』
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20150701/425842/?P=1 2017年4月5日閲覧
経済産業省(2008)「ベンチャー企業と既存企業<現状と課題>」
http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g80318b03j.pdf 2016年08月15日閲覧
三井化学株式会社(2016a) 「R&D方針・戦略」
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三井化学株式会社 (2016b) 「社員紹介」
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日本経済新聞 (2014) 「社内ベンチャー、成功に導くのは『スマートな野武士』
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO76005580S4A820C1000000/ 2017年2月12日閲覧
日本経済新聞 (2017) 「三井化学・東ソー、純利益を上方修正 17年3月期」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD02H77_S7A200C1DTB000/ 2017年2月5日閲覧

のきぐち(3年)

現在の教育現場にロボットは必要か

 最近、企業の受付で人型ロボットのペッパーを見かけることが多々ある。斉藤(2016)によると、2015年6月にソフトバンクグループから誕生したペッパーは、感情認識ロボットである。収集したデータにより自律的学習を行い、声や表情に反応して、自身の感情や対応を変えることができる。そしてこの感情は胸にあるパネルに色で表示される。これまでもiPhoneやiPadに対応していたが、2016年5月には米グーグルと組んで「アンドロイド」に対応させると発表した。これにより、iPhoneだけでなくアンドロイド向けのアプリがペッパーでも使えたり、個人や企業によるアプリの提供を促すことができるようになった。この結果アプリが増加し、ペッパーのできる可能性が広がるので、より人間に身近な存在になると期待されている。

 そんなペッパーの活用として、2016年3月に豪州のクイーンズランド州政府と了解覚書を締結した。これによりクイーンズランド州の小学校など教育の現場にペッパーを導入することなどが想定されている。つまり教育現場にロボットが進出してきているのである。

 教育現場には大きく2つの問題点があると私は考える。1つ目は集団教育についてである。集団教育のデメリットについて、文部科学省(2016)は教師が生徒の学習・行動把握することの難しさを指摘している。学習把握について私の経験では、勉強に追いついていけず分からないままの状態が続き、テストをカンニングすることによって理解度をごまかす生徒が周りにいた。また行動把握については、先生が問題のある子に関して構い過ぎてしまい、それ以外の子に目が届かず、不登校の生徒を生み出してしまった。教師からは、生徒の理解度のばらつきが大きいのでどの層を中心に教えれば良いのか分からないといった声や、子供1人に使える時間が少ないので、生徒の家での様子など把握できないという声もある。このように教師が学習把握や行動把握の難しい状況が続いては、文部科学省の期待する教育の質の向上は出来ないのではないだろうか。2つ目は人件費についての問題である。学校法人が経営破綻に陥る原因として、学校法人活性化・再生研究会(2007)は、経営費用が多く掛かってしまうことを挙げている。経営費用の中で大きな比率を占めているのは人件費である。まず精神疾患による休職者は、文部科学省のデータによると年々増加傾向にある。要因として、生徒指導の際に生徒が話を聞かない、またその指導に関して保護者が苦情を言うといった生徒と保護者の多様化が一番に挙げられている。これにより教師の負担が増加し、場合によっては精神疾患になってしまうというのだ。教師の中でも高齢になるほど休職者の人数の割合は多い(文部科学省,2014)。給料が高い高齢の教師が精神疾患になることによって、休業せざるを得ない状況にある高給教師への費用負担と、代替の新任教師を探さなければならない費用の二重負担が生まれてしまう。これでは人件費を削減することは出来ない。

 ではロボットが教育現場に進出すればこの2つの問題は解決できるのだろうか。例えばペッパーで解決することを考えてみたい。

 まず1つ目の集団教育についてである。学習把握については、ペッパーがインターネットとつながっているため、人間よりも多くの情報を収集し、その妥当性を高めながら教えることができる。また生徒が分からなかった問題を人工知能で把握し分析することによって、生徒個々に合った課題の作成をすることができる。行動把握については、感情認識の機能がついているため、生徒の表情によって理解度や日々の態度の変化についても把握することができると考えられる。2つ目については、ペッパーを導入することで人件費を削減することができる。ペッパーの本体価格が約20万円。メンテナンス費用が年に30万円で、通信費用などが年に約50万円。合計で年に100万円である。一方高校教師の年収は約706万円で、ペッパーを7体購入できるのだ。

 これらのことより、私はペッパーの教育現場への進出を推奨したい。しかし、教師の行うこと全てをペッパーで代替することは出来ないと考える。その理由は3つある。1つ目は、ペッパーはその場の表情や行動から感情認識するため、因果関係などを理解できないからである。人間は物事の因果関係などを理解して感情を認識する。しかし、ペッパーはその時の情報しか分からないため、感情認識の方法が一方的である。実際にペッパーが感情認識を行う際には、「相手によって千差万別、定量化やパターン化が十分にはなされていない。たくさん会話をして、相手が笑ったり怒ったり落ち込んだりするのを認識・分析する」(神崎,2015)。つまり、初対面の人に対して反応したり、急に感情が変わることに対応したりすることができない。これは人間にある洞察力と傾聴力が不足しているということだ。2つ目は、即時対応ができないからである。実際に新宿のSoftBankでペッパーと会話をしてみたところ、プログラミングされているような内容には対応できるが、子供の「抱きついてほしい」という要望には答えられなかった。また、私が話しかけても返事が返ってくるのに時間が掛かってしまった。つまり、急な行動の変化に現在のペッパーの情報処理能力では対応できないのである。3つ目は、同時認識に限界があるからである。ペッパーが同時に認識可能な人数は10人程度である。そのため、集団教育で1クラス40人程度の場合、ペッパー1体が全員を同時に認識することは不可能だ。以上よりペッパーが教育全部を担当するというのは難しいことと私は考える。

 それではどのようにペッパーを教育現場で利用するのが良いのだろうか。私は、教科担当補助としての利用が望ましいと考える。なぜならば、ペッパーは学習の多様性に対応できるからである。例えば数学の因数分解で考えてみよう。因数分解は公式が多く、また解き方も多様である。そのため現状の集団教育では生徒1人1人の理解度に対応できないため、途中で分からなくなってしまう生徒と分かる生徒の理解度の差が広がる。しかし、ペッパーは人工知能により生徒が以前解いた問題から間違えの傾向を割り出すことができるし、生徒個人の苦手を認識できる。したがって生徒1人1人に解き方についてのヒントを提示することができる。このように学習把握をペッパーに行わせることによって、問題のある子に対して教師がかけられる時間が多くなり、行動把握を行えるようになる。しかも、人件費を考えてもペッパーが三体いた方が教師を1人雇うよりも安価である。これによって現状で行えていなかった教育の質の向上につながるのではないだろうか。

 現在の集団教育が行われている状況では、保護者と生徒の多様化により教師の負担が大きく、教育の質の向上を求めることは難しい。しかし、ロボットを導入すれば、即時に情報収集を行ったり、生徒1人1人の理解度を把握したりして対応することができる。その分人間は、ロボットが対応できない人間関係の構築や心情の問題に対応する時間を確保できる。このように両者が得意なことを行い、教育現場で助け合っていけばお互いに足りない部分を補完することができるようになる。つまり教育現場にロボットは必要なのである。

【参考文献】
神崎洋治(2015) 「Pepperの衝撃!パーソナルロボットが変える社会とビジネス」http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20150604/1065043/ 2017年1月15日閲覧.
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http://www.estat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_xlsDownload_&fileId=000006448772&releaseCount=4 2016年7月11日閲覧.
文部科学省(2012)「病気休職者の学校種別・年代別・性別・職種別(教員職員)」『平成24年度公立学校教職員の人事行政状況調査について』http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2013/12/18/1342544_04_1.pdf
文部科学省 (2011)「高校教員の勤務実態」『調査(高等学校)報告書 教員勤務実態調査 (高等学校) 報告書 教員勤務実態調査(高等学校)報告書 』http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/07/05/1308071_2.pdf 2016年7月18日閲覧.
文部科学省(2010)「資料14 病気休職者数等の推移(平成13年度〜平成22年度)」『平成22年度 教育職員に係る懲戒処分等の状況について』http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/12/22/1314343_14.pdf 2016年12月22日閲覧.
日本私立学校振興・共済事業団 学校法人活性化・再生研究会(2007)「私立学校の経営革新と経営困難への対応」 http://www.shigaku.go.jp/s_center_saisei.pdf 2016年9月4日閲覧.
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SoftBank「ペッパーの感情」http://www.softbank.jp/robot/consumer/products/emotion/ 2016年06月13日閲覧.
斉藤美保(2016)「脱ガラパゴスへ、海を渡るペッパー」『日経ビジネス』1843,16.

おの(2年)

日本自動車メーカーの将来に向けて

 清水(2016)によると、トヨタ自動車やGMといった世界の大手自動車メーカーやグーグルやアップルなどの自動運転車の製造に取り組んでいる企業は、自動運転車に必要不可欠なAIやロボットに関する優秀な技術者の囲い込みを行っているという。また、斉藤(2016)は、日本の企業から、AIやロボットに関する優秀な人材が世界の企業に引き抜かれているという。その要因として、日本の雇用形態や報酬制度を挙げている。

 島津(2016)によると、トヨタ自動車は米国でAI技術の研究・開発を行うトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)を設立し、CEOにAI分野で「米国の至宝」とまで言われているギル・プラット氏を採用することで、次々に著名なAI研究者の引き抜きに成功しているという。さらに、島津(2016)によると、プラット氏は「トヨタは製造業では世界トップ。カイゼン文化やトヨタ生産方式などの宝物を持っている。ただし、ソフトウェアの開発には別のプロセスが必要。トヨタはそれに気付き、より迅速に動ける子会社(TRI)を作った。ソフトウェアの開発に必要な、迅速な文化を採用したのだ」と述べているという。トヨタ自動車は、グーグルやマイクロソフトなどの大手IT企業が優秀なIT人材の囲い込みを行っているなか、豊富な資源と業界内の地位を活かして優秀な人材を獲得していたのである。また、日本の雇用形態や報酬制度の問題を、アメリカに子会社をおくことで解決していた。

 一方、スバルやスズキなどの日本の自動車メーカーは、ギル・プラット氏の言うようなAI技術のみを扱うような海外子会社を持っていない。したがって、自動運転化の流れに迅速に対応できるプロセスといった環境は整っていないのである。一般に大規模なソフトウェア開発はアウトソーシングで行われているといわれる。しかし、将来自動運転化が進むなかで、ソフトウェア開発というコア・コンピタンスとなりうる部分を他社に委託してしまっては、現在のような業績を得ることは難しくなるだろう。以上のことから、スバルやスズキなども優秀なIT人材を確保していかなければならない。

 ところが、トヨタ自動車のような企業に比べて経営資源の少ない自動車メーカーが、優秀な人材を確保していくことは難しい。なぜなら、トヨタ自動車と同じようにアメリカに子会社を置きソフトウェア開発の環境づくりをしようとしても、報酬の面で経営資源の差が顕在化してしまうからである。しかも、トヨタ自動車のような自動車メーカーだけでなくグーグルなどのソフトウェアの研究開発を専門とする企業に対して人材の確保の競争で優位に立つことは難しい。世界中の優秀なIT人材が最先端の技術を持つアメリカに流れている中、アメリカで人材の確保ができないということは自社の競争力の低下になりかねない事態である。しかしながら、このままソフトウェア開発に向けての環境づくりをせずにいると、優秀なIT人材の確保だけでなくIT人材自体の確保にも苦しむことになってしまうと考える。なぜなら、「2030年には国内のIT人材数が85.7万人なのに対し、不足数は78.9万人に上ると予測している」(経済産業省 2016)というからだ。したがって、なにも行動を起こさないままでいると、トヨタ自動車に比べて経営資源の少ない自動車メーカーは衰退の一途をたどりかねない。

 そこで、私は将来のIT人材の確保を見据えて、トヨタ自動車以外の日本自動車メーカーに、ソフトウェア研究・開発専門の子会社をインドに設立することを提案したい。

 インドである理由は4つある。1つ目は圧倒的に人件費が安いからである。インド日本商工会(2012)によると、インド人上級エンジニアの平均月給は38,142ルピーだという。これを日本円に換算すると(2016年10月3日14時現在1ルピー=1.52円)約5万円である。DODA(2015)によると、日本の社内エンジニアの平均年収が512万円であり、単純に計算すると彼らの平均月収は約42万円となる。したがって、インド人上流エンジニアと日本の一般エンジニアを比べたときに報酬にかなりの差があるといえる。さらに今回獲得しようとするインドの一般エンジニアを考えた場合、彼らを雇用するには上記に記載した上級クラスの報酬よりもずっと少なくなると考えられる。

 2つ目は、日本よりもインドのほうが圧倒的にIT人材の数が多いからだ。IPA(2010)によると2009年時点でインドには約145万人のIT人材がいるのに対し日本には約75万人しかいない。近年のインドのIT産業のすさまじい発展と日本のIT産業の現状を見ると、2016年現在ではもっと人数の差は開いているだろう。ここに他社よりも早く進出しておくことで、将来足りなくなってしまうエンジニア自体の確保を先に行うことができるだろう。

 3つ目は、報酬形態を日本型のものから変えやすいからである。現在日本では年功序列型の賃金形態が一般的であり、国内で急に変えることは難しいと考えられる。一方、これから需要の高まっていくIT人材を獲得するうえで人件費の高騰が予想されるが、日本型の報酬形態のままでは若く優秀なインド人を高額で獲得するのは難しい。しかし、日本ではなくインドに子会社を置くことで、そのような人件費の高騰に対応可能な報酬形態を採用しやすいといえるだろう。また、為替も現在ルピーに対して円高であることから、日本企業は現地で高額な報酬でも払いやすいだろう。

 4つ目は、雇用形態を日本型のものから変化させやすいからだ。濱口(2013)によると、日本の雇用形態の特徴は「職務も労働時間も勤務場所も契約で限定されておらず、無限定、すなわち使用者の命令でいくらでも変えられてしまう」メンバーシップ型であり、異動や転勤が多い。しかし、研究者に異動や転勤をさせてしまっては、それまでの知識やノウハウをその研究から奪ってしまうことになるこれでは専門性の高いソフトウェア技術の研究・開発の遅れが出てしまうという弊害をもたらすこととなる。これでは、急速に進むソフトウェア研究・開発の中で遅れをとってしまうことになるのではないだろうか。そこでインドに子会社を置き、メンバーシップ型とは異なった雇用形態を採用することで、研究・開発をスムーズに行うことができるのではないだろうか。

 最後にソフトウェア研究・開発専門である理由だ。IPA(2010)によると、インドはオフショア市場が発達したため、ソフトウェア開発技術に長けているという。また、スズキやスバルといった企業群は、すでに製造に関わる拠点をインドに持っている。子会社を独立させてしまうと最後にはソフトウェアとハードウェアの接合部分で問題が起きることもある。しかし、すでに生産拠点を持っていれば幾分か研究・開発のフロントローディングを可能にし、生産コスト削減につながるのではないだろうか。

 IPA(2016)によると、「近年、ソフトウェアの大規模化と複雑化、急変な社会環境変化に伴う開発期間の短縮化、さらには社会システムの役割の増大により、ソフトウェア開発の信頼性、生産向上に対するニーズはますます高まっている」という。このような状況下において開発期間を短縮化し、なおかつ生産性を向上するためには、限られた優秀な人材よりも、一定程度以上の人員の確保が必要となるはずだ。なぜならば、ソフトウェア開発は人が行うものであり、人間の生産性には限界があるからだ。したがって、「自動車」の時代から「自動運転車」の時代に変わっていく中で、歴史のある日本の自動車メーカーが経営資源の差を補い業界内の競争に加わり続けていくために、インドでソフトウェア開発専門の子会社を設立し安価な労働力を確保することが1つの手段になると私は考える。

【参考文献】
IPA(2010) 「グローバル化を支えるIT人材確保・育成施策に関する調査」
http://www.ipa.go.jp/jinzai/jigyou/global-report.html 
インド日本商工会 (2012)
http://www.jccii.in/Docs/0406_12_6th_salary_survey_(summary).pdf  
2016年10月3日閲覧
DODA (2016) 「平均年収ランキング2015職種別」
https://doda.jp/guide/heikin/2015/syokusyu/ 2016年10月3日閲覧
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http://www.meti.go.jp/press/2016/06/20160610002/20160610002.pdf 
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濱口桂一郎(2013)「「ジョブ型正社員」と日本型雇用システム」『nippon.com』
http://www.nippon.com/ja/currents/d00088/2016年12月22日閲覧
IPA(2016)「ソフトウェア開発データ白書2016-2017」の発行〜「業種編3種(金融・保険業、情報通信業、製造中心業)」も同時発行〜
https://www.ipa.go.jp/sec/reports/20161012.html 2017年2月1日閲覧
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http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/45354 2016年8月9日閲覧
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島津翔 (2016)「トヨタ、米国でAI人材を70人獲得」『日経ビジネス』 1849 ,17
清水憲司 (2016)「人工知能開発へ技術者確保競争 米国内で」『毎日新聞』http://mainichi.jp/articles/20160314/k00/00m/020/066000c 2016年8月9日閲覧

みかだ(2年)

空き家ゼロの未来に

 林(2016)によると、2033年には、日本の住居人のいない空き家が総住宅数の30%を占めるようになると予測されている。国土交通省(2013)によると、ここ20年で空き家は倍増している。空き家にも、売却用の住宅、賃貸用の住宅、二次的住宅、その他の住宅の4つの分類がある。この中でも、賃貸または売却の予定がなく、別荘等でもない「その他の住宅」が増加している。その他の住宅は、使い道がないので、管理が不十分になってしまう。このように空き家の管理が不十分となると、倒壊、屋根・外壁の落下、火災発生のおそれなどの防災性の低下、犯罪の誘発などの防犯性の低下、ゴミの不法投棄、衛生の悪化、風景、景観の悪化などの外部不経済が生まれる。
 
 これに対して国も対策をしていないわけではない。その目玉の一つが、空き家の物件情報を提供する「空き家バンク一元化」である。空き家バンクとは、空き家の賃借・売却を希望する人から申し込みを受けた情報を、空き家の賃貸や購入を希望する人に紹介する制度である。これまで、この空き家バンクは自治体ごとに運営されてきたが、新たに民間の不動産情報提供会社と提携することで、ネット上で一か所に空き家情報を集約することになった。これにより住宅購入希望者とのマッチングを強化する狙いがある。
 
 しかし、空き家バンク一元化だけでは不十分だと私は考える。なぜなら、空き家というのは中古住宅になるのだが、そもそも中古住宅の購入を考えていない人が多いからである。実際、平成23年から24年にかけての中古住宅の成約件数が約1万件(公益財団法人東日本不動産流通機構 2016)なのに対して、同年の新築住宅着工数が約84万件(国土交通省 2011)。すなわち、日本では中古住宅市場というのは活性化していないと言える。したがって、空き家バンク一元化をしても空き家問題は解決されないのだ。さらに、2013年の総住宅数は6063万戸、既に総世帯数の5245万戸(総務省統計局 2013)を大幅に上回っている。加えて、年90万戸の住宅が新たに造られ続けている。このような供給過剰問題を解消しない限り、空き家問題を解決に導くことは出来ないのだ。
 
 では、この空き家問題をどのように解決していけばいいのだろうか。私は空き家になれば、その家屋は解体するべきだと考える。その理由は、中古住宅市場が活性化していないからである。住宅を売ろうと思っても中古住宅の購入を考えている人は少なく、売却が難しい。そのため、空き家が増えてしまう。
 
 しかも、空き家の解体は高額だ。通常は解体代を自分で支払うが、払えない人がいる。このような時に行う行政代執行では、法律上は行政が所有者に解体費用を請求できるが、多くの対象者は支払い能力を持たないので、現実的には支払われることがない。このように、今の日本の制度では解体費用が回収出来ない場合、個人の所有物を解体するために税金が使われている。つまり、自分で解体をする人が損をしている状況にある。これでは不公平感があるので、解体が進んでいないのではないか。
 
 そこで私は、すべての人から解体費用を回収するために、住宅を建てた時とその後毎年、地方税として解体費用を所有者から回収するという方法を提案したい。その仕組みとしては、まず住宅を新築する際、その住宅の建築確認時に解体費用の一部を徴収する。また、残りの解体費用として毎年一定額を徴収する。もちろん、家の造りによって解体費用は異なるので、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート、長期優良住宅など、その造りに合わせた税率でお金を徴収することになる。そして、徴収した税金は地方自治体が管理し、空き家となった際には解体代金として用いることになるのだ。徴収した税金で解体費用がまかなえない場合、不足額については、他の空き家の解体の際に余ったお金で補う形にするのである。これによって新築の建物は個人費用を用いることなく解体できる。
 
 また、税金の徴収方法としては、賦課方式で行いたいと考える。なぜなら、賦課方式は納める税金が経済状況に応じたものなので、解体費用が高額になったとしても対応することが出来る。反対に積立方式は、将来の解体のために現時点で一定の額を積み立てておいても、急激なインフレや給与水準の上昇があると、その額の価値が減少してしまう可能性がある。(厚生労働省 2014)この税金は空き家を全て解体するということ目的としているため、価値が減少し空き家を解体することが出来ないというような積立方式のリスクを無視することは出来ない。そのため、賦課方式で徴収する方が望ましいと考える。

 では、既存の6063万戸の解体はどうすればよいのだろうか。私は、これらについても税金を徴収してまかなうべきだと考える。その理由としては、既に建てられている住宅なので、これから建てられる新築よりも早く空き家になる可能性が高い。そのため、先に既存の住宅を解体できるだけの費用は回収しなければならないからである。既にある住宅に対しては、建築年数の記録は地方自治体に残っているので、建築年数に応じた税率で金額を法律制定以降回収すれば、その住宅の解体費用も回収することが出来る。また、賦課方式で税金を徴収するため、あと数年で解体するような家屋でも不足額は賄うことが出来る。そして、今空き家となっているところをこの税金の回収のタイミングで一掃することが出来る。

 今後さらに問題となっていくであろう空き家問題。国が対策として行っている空き家バンクの一元化だけでは、問題を解決するには限界がある。解体費用をあらかじめ徴収しておけば、その住宅がもし空き家となったとしても解体できる。このように、空き家となったら徴収した税金で解体する、この提案が空き家問題の根本解決につながるのではないかと私は考える。
 
 〔参考文献〕
林英樹 (2016)「空転する国交省の空き家対策」『日経ビジネス』1846, 10-11.
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http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/pdf/nihon01-1.pdf 2016年12月5日閲覧

つばき(2年)

ターゲット別コマーシャル戦略

 日清食品の販売するカップヌードルは、「ブランド・ジャパン」2016において2015年の24位から7位へと大幅に順位を上げた。岩野(2015)によると、日清食品の調査ではカップヌードルを一番食べない世代が18〜22歳であり、この理由として、「自分達の商品だと思っていないからではないか」と社長が述べている(水野・河原・松浦・染原, 2016)。このように、日清食品の社内では「カップヌードルが時代と共に年を取ってしまい、今の若者には自分たちのブランドという認識がなくなってきている」という危機感が広がっている。そういった危機感から、日清食品は橋本環菜をテレビコマーシャルのモデルに起用するなど若者向けのコマーシャルを開始した。日清食品のズナイデン取締役は、「大人には理解できなくても、若者の心に響くコマーシャルを作れば支持されると思った」(水野・河原・松浦・染原, 2016)と述べている。特に最近の橋本環菜が出演しているテレビコマーシャルは、本人が制服を着た姿で出演しており、学校の教室のような場所で撮影がされている。つまり、明らかにその世代の人々をターゲットとしていることがわかる。

 このような若者向けのコマーシャルが成功する前提として、コマーシャルが良いものでなければならないと私は考える。良いコマーシャルとは他のコマーシャルとの間に差異が存在するもの(土田, 2007)であり、また、効果のある広告である(百瀬, 2009)。効果のある広告とは、キャンペーンを通して訴求対象にメッセージが理解され、好感をもたれることによって売上増に結びつき、利益の拡大に貢献する広告のことである(百瀬, 2009)。当たり前のことだが、他のコマーシャルと似たようなものになってしまっては、差別化ができず消費者に対してインパクトが残せない。また、そのコマーシャルが消費者から好意を抱いてもらえることも重要である。仁科・田中・丸岡(2007)によると、コマーシャルへの好意度は、ブランドへの好意度・消費者の感情喚起・ブランドへの購買意欲と相関関係があるという。つまり、若者に好感を抱かれたカップヌードルのコマーシャルは、ブランドへの好意度やカップヌードルを購買しようという意欲にも影響を及ぼすことができるのである。日清食品のカップヌードルのコマーシャルにおいては、若者という対象に「カップヌードルは自分たちの世代も食べる商品だ」というメッセージを伝えるために、若者に人気のあるタレントを用いた。そのことによってその世代の人々にカップヌードルが自分達の身の回りにある商品だという好意を抱かれた。その結果、若者の購買意欲の向上、さらに売り上げの増加にもつながったと考えられる。したがって「効果のある広告」、つまり良い広告であったと言えるだろう。

 私は、このような若者にターゲットを絞り、そのターゲットに人気のある人物を用い、その人々の生活とリンクした環境を設定したコマーシャルの戦略は有効であると考える。なぜなら、若者がそうした人気のあるタレントも自分達と同じような環境に置かれていると感じれば、親近感が沸き、ブランドや商品に対して好感を抱くと考えるからである。この結果、自分達の身の周りにない商品だと感じていた人たちが、その商品を身近にある商品だと認知することによって、購買行動時におけるその商品の選択可能性が高められると私は考える。

 実際、消費者は自分達がほとんど知らないような商品の安全性や品質に、不安を抱くこともある。このように、商品やサービスに対する良いイメージであったり、悪いイメージとしての認知が広まることにより、消費者はそれらに対して「態度」を持つようになる(杉本, 1997)。その態度は「なんとなく嫌だ」といったような気分的なものや、「理屈じゃなく、目にすると買ってしまう」という行動的要素も含んでおり、消費者の購買行動にも関係するものである。このことから、その商品に対する「態度」が良い方向へ形成されれば、消費者は商品に好感を抱くのだ。つまり、商品に好感を抱いてもらうことによって、消費者の購買意欲を向上させることができるのである。

 しかし、本当に若者向けに作成したコマーシャルの影響のみでこの戦略が成功したのであろうか。私は、コマーシャルの影響に加えてSNSの影響が強くあったのではないかと考える。総務省(2015)によると、20代以下のフェイスブック利用率が49.3%、ツイッターが52.8%であり、おおよそ2人に1人がSNSを活用しているということになる。若者向けのインパクトある広告を打ち出し、それがSNSによって急速に広まる。この流れにうまく乗ることができたからこそ、日清食品のコマーシャルは成功したのだと私は考える。実際にツイッターのツイートを調べてみたところ、橋本環奈が出演していたコマーシャルの反響は大きく、「橋本環奈が出ているカップヌードルのCMかわいい」「カップヌードルの橋本環奈のCMマジで癒される」などといったものが数多くツイートされていた。この事例のように若者に人気のあるタレントを用いることによって、そのコマーシャルの話題性は上昇し、さらにそれがSNSを通してコマーシャルを見ていない同世代の若者へ認知されていったのである。確かに、最近若者はあまりテレビを見ないと言われているが、その状況の中でもSNSという媒体を通してコマーシャルを見た人々の感想が広まっていくのだ。

 これらのことから日清食品のコマーシャルが成功した理由を3点にまとめた。1点目は日清食品がターゲットを絞ったことである。若者にターゲットを絞ったことによって、その世代の人々に理解されるコマーシャルを作成することができた。2点目は日清食品が良いコマーシャルを作ったことである。橋本環奈を用いることにより、ターゲットの世代に好感を抱かれ、幅広く認知された結果、売上の増加につながった。3点目はそのコマーシャルを見た消費者たちがSNSで話題にし、同世代の共感を得たことである。SNSにおいて、橋本環奈の出演するコマーシャルについての感想が話題となり、同世代の人々から注目を集めた。この3つの条件がそろったからこそ、日清食品は商品の認知を上げ、「ブランド・ジャパン」において昨年よりも大幅に順位を上げることができ、売上も向上させることに成功したのだと私は考える。

 以上のように、ターゲティングを行い、そのターゲットに効果のあるコマーシャルを作り、SNSで反響を呼ぶという日清食品が行った戦略は、他の日用消耗品を取り扱う企業においても用いることができると考える。「ターゲットを絞る」と「良いコマーシャルを作る」は、どの世代に向けても実行可能である。そのターゲットに好感を抱いてもらえるような撮影環境の整備や、その世代の人々に人気のあるタレントを用いて、売上の増加につながるコマーシャルを作成すればよい。しかし、SNSにおいて反響を呼ぶというのは必ずしもすべての世代において成功するとは限らない。そこで、若者以外のターゲットの場合にはどのような形で反響を呼ぶことができるのだろうか。

 ここでは一例として、高齢者世代をターゲットとした場合を考える。NHK(2015)によると、50歳以上の人々は休日になれば9割もの人が一日に4時間以上もテレビを見ている。そのため高齢者にとってのTVコマーシャルは、他の世代よりも高い効果が得られる。高齢者世代をターゲットとしたコマーシャルは、その世代特有の体の悩みや生活習慣病などを解消できるということをアピールし、その世代に人気のあるタレントを用いて作成することで、好意を抱いてもらえる可能性がある。消費者にとって体の悩みが解消されることはもちろん好ましいことである。それに加えて、高齢者世代に人気のあるタレントがその商品を宣伝していれば、あの人が使っているなら私も使ってみようという気を消費者に起こすことができ、さらに好意を抱いてもらえる可能性があると私は考えた。高齢者の間で反響を呼ぶためには、会話の中でそのコマーシャルが話題とならなければならない。そういった会話が、高齢者の集まる場、例えば病院などの場所で行われることにより、反響を呼ぶことにつながる。つまり、その場が若者の利用しているSNSと同様の効果をもたらすのである。

 ここで、ただただ商品名を連呼したり、商品の機能だけを伝えるコマーシャルでは、反響を呼ぶことは難しいと私は考える。なぜなら、どの世代においても自分自身の体に不自由を感じている場合、そのことを他人には話そうとはしないと私自身考えているからである。たとえ他人に話すことがあっても、それはごく一部の信頼できる人であり、大勢に打ち明けることはないだろう。したがって、普通では話題に出しづらいようなテーマを重苦しくなく話すことができるように、綾小路きみまろのようなタレントを用いたコマーシャルにすることを提案する。彼の芸風である、あえて高齢者世代特有の体の不自由な点を皮肉り、笑いにつながるような言い方をすることにより、話にくさの軽減につながる。その結果、高齢者の集まる場においてそのコマーシャルの内容についての会話を行う可能性が上がると私は考えた。

 このように、年代別にセグメントを分け、その世代をよく把握し好感を抱かせるような昔から利用されているマーケティングの手法は、どのように反響を呼べるのかを考え実行すれば、現在でも利用可能である。ただし、世代ごとに反響を呼ぶ手段は異なっていることを忘れてはならない。作成者が、消費者の反響を呼ぶ手段を理解した上で、消費者がその内容を周囲に広げたくなるようなコマーシャルを作ることができれば、それはどの世代においても売り上げを上昇することができるような、よい広告となるのである。全ての年代において反響を呼ぶ手段が理解できれば、どんな日用消耗品でも消費者にアプローチすることができ、企業全体の売り上げを増加させることにつながるのである。

【参考文献】
岩野孝祐 (2016) 「カップヌードル、6年ぶり「なぞ肉」復活で若者開拓』日本経済新聞. http://www.nikkei.com/article/DGXMZO86181750X20C15A4000000/ 2016年5月25日閲覧.
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百瀬伸夫 (2009) 『良い広告とは何か』 ファーストプレス.
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水野孝彦,河野紀子,松浦龍夫,染原睦美 (2016) 「サービスの進化と深化でアマゾンが初の首位」『日経ビジネス』. 1837, 50-55.
仁科貞文,田中洋,丸岡吉人 (2007) 『広告心理』 電通.
日清食品 (2016) 「連結財務データ 連結業績の推移」 https://www.nissin.com/jp/ir/financial/consolidated/ 2016年6月1日閲覧.
杉本徹雄 (1997) 『消費者のための心理学』 福本出版.
総務省 (2015) 「ソーシャルメディアの普及がもたらす変化」『情報通信白書 平成27年度版』 194-214. http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/pdf/n4200000.pdf 2016年5月25日閲覧.
土田米一 (2007) 『効告。 企画をヒットさせるために広告クリエイターたちが考えること』 インプレスジャパン.

はらざき (2年)

「フェースマスクは毎日使える」を常識に

 島津(2016)によると、グライド•エンタープライズの販売するスキンケア用フェースマスク「ルルルン」シリーズは2016年、発売から5年目にして累計販売が3億万枚を超えた。2011年、あまり需要がなかったフェースマスクという商品に目を付けた同社社長山口道元氏は、もっと手ごろな価格の商品があれば一般消費者向けにさらに売れると考え、低コストで生産できる委託先を探した。結果、フェースマスク本体とそれに浸す化粧水を作る工場に生産を委託することができ、42枚入りで1,500円(税別)、1枚あたり36円という安さで発売することが可能となった。

 ここでフェースマスクの利点を挙げていこう。最も大きな利点は、長時間肌の上に浸透させることである。フェースマスクは顔の形に切り抜かれており、通常洗顔をし、化粧水をつけた後に型に沿って顔に貼り、10〜15分使用する。これによって肌の角質をふやかすことにより、成分の肌なじみがよくなるので、ただ化粧水や美容液を塗るよりも浸透しやすい状態を作り上げることが出来るのである。

 同社のフェースマスクが人気を誇る理由は2つあると島津(2016)は指摘している。1つは市場そのものを拡大させる戦略を掲げたことである。市場拡大戦略に関しては、フェースマスクを毎日使ってもらえることを目的とし、購入する1回目を大切にした。価格が安価であることはその1回目を大切にするための戦略である。その結果、市場拡大は成功し、コーセーやクラシエホームプロダクツなどといった大手化粧品メーカーも同種製品の発売を開始している。もう1つの理由は、ギフト需要を発掘したことである。一般にスキンケア商品はこだわりが強いので、ギフトには適さないとされてきた。しかし、フェースマスクに関してはまだ商品も少なく、嗜好性はそこまで強くない。そこでギフト用として地域限定商品等を展開したのである。その結果、旅行者の心をつかみ、グライド・エンタープライズの売上高の12%を占めるまでになった。

 このように島津(2016)は、上記の2つをフェースマスクが人気を上げた理由としている。しかし私は、日常生活の中で使用することを重視していない「ギフト需要」よりも、「市場拡大」をしたことが大きな理由だと考える。当初から発売されている「ルルルン」は、毎日使えるように基礎化粧品として考えられ作られている。つまり、安価な価格で毎日使うことのできる基礎化粧品として市場拡大をしていったことが、人気を上げた理由ではないだろうか。

 実際に私自身、2015年からルルルンのフェースマスクを使用している。ルルルンを購入した一番の決め手は、値段の安さであった。仮に肌に合わなかったとしても許容範囲内だろうと思ったのだ。また、例え1枚当たりの値段が500円以上するフェースマスクで良い効能が出たとしても、本当に特別な時にしか使用ができない。しかし、ルルルンは1枚あたり40円前後といった値段設定がされており、価格が抑えられている。

 だが、「フェースマスクが毎日使えるもの」ということはあまり認知されていない。そこで私は、「毎日使えるフェースマスク」という新常識を当たり前のことにし、化粧品を使う多くの人に広げるため、商品をより手に取りやすくすることを提案したい。

 まず、「値段が高くフェースマスクに手を出しにくい」という常識をなくすため、1,500円(税別)の42枚入りよりも300円(税別)の「ルルルン7枚入り」シリーズを増加させる。現状、42枚入りで1,500円(税別)、1枚あたり36円という驚愕の値段で購入、使用することができるのは確かだ。しかし、自分の肌の状態に対し良い効能があるのか分からず、場合によっては肌を痛めてしまう可能性がある商品に、この商品のターゲットだと思われる女子大学生やOLなどが、いきなり1,500円(税別)を費やすだろうか。実際私は、初めてルルルンを買う前まで、フェースマスクには抵抗があった。その原因は4年ほど前の失敗が大きく関わっている。当時、興味本位から試しに1枚入りのフェースマスクを購入し、使用した。「肌が潤い、多少美白になる効能がある」と記載があったので期待していたのだが、付け始めて1分経ったかというくらいで肌に沁みてきてしまったのだ。これがきっかけで、1枚しか封入されていないのにもかかわらず、500円以上もし、しかも自分の肌に合わないものがフェースマスクだと決めつけてしまったために、もうフェースマスクは買わないと思ったことを覚えている。

 だからこそ7枚300円(税別)という手を出しやすい値段、枚数で販売することが重要となってくる。この手を出しやすい価格で7枚、つまり1日1枚なら1週間試して使えることが、次のルルルンシリーズ商品への購入動機となるのである。結果、手を出しやすい状態になったルルルンは、今までのフェースマスクとはさらに異なる、安価で毎日使うことのできる点を顧客へ伝えることができる。

 フェースマスクのように、肌に合うかどうかが重要になってくる商品を長期にわたって消費者が購入する時は、一か八かであることが多い。例えばシャンプーは、購入時に試すことが出来るわけではない。実際に使ってから頭皮に合う、合わないが分かるものである。実際に合わなかった時には、頭皮へのダメージや髪自体へのダメージが大きくなってしまう。このように肌に使うものを長期にわたって使用してもらうには、試供品のように一度きりで使い切ってしまうものではなく、お試し期間として効果が出る期間分用の商品を手に取って使ってもらうことが重要となる。そうすることにより、消費者にとっては商品の効き目が出るまでの期間を安価に試せること、企業にとってはまず商品を手に取ってもらうことで、将来の購入にも繋げることができるため、お互いに不利益を被ることが少なくなる。肌に使う商品をまとまって販売するだけではなく、効用が出る期間分を少量に分けて販売することで、手に取りやすくする。それこそが、肌に用いる商品にとって大切な1回目の購入動機を顧客に抱かせるうえで重要なものであると私は考える。

【参考文献】
グライド・エンタープライズ(2016) 「商品一覧」『フェイスマスクルルルン公式サイト』 http://lululun.com/product/ 2016年8月16日閲覧
グライド・エンタープライズ(2016) 「ルルルンの化粧水のお話」『フェイスマスクルルルン公式サイト』 http://lululun.com/labo/?p=106 2016年8月31日閲覧
島津翔(2016)「3億万枚売れた美顏マスク」『日経ビジネス』1850,68-69.


いいむら(2年)

認証保育園のすすめ

 「保育園落ちた日本死ね!!!」。最近、このようなタイトルで始まる、子供を保育園に入れられなかった女性が書いたブログが話題となり、待機児童問題が注目されるようになった。厚生労働省(2015)によると、2015年4月現在、認可保育園に入れていない待機児童が2万3167人おり、さらに潜在的待機児童という保育園に入れないだろうと最初から諦めている児童数を含めると170万人もいるとされている。

 日本の保育園には、認可保育園と認可外保育園が存在する。認可保育園とは、国によって定められた施設の広さや職員数などの設置基準を満たした保育園のことである。対して認可外保育園とは、設置基準を満たしていない保育園のことである。認可外保育園に入園させることは認可保育園よりも容易であるが、多くは民間で運営されているため金銭面や安全面では不安が残る。そのため保護者は子供を認可保育園に入れたがることにより、待機児童問題が起きているのである。

 これまで、待機児童問題の対策が全くされてこなかったわけではない。水野・広岡(2016)によると、2015年4月時点の認可保育園(幼保連携型認定こども園含む)の数は、前年同月比4.3%増の2万5464カ所で、利用児童数も2.8%増の6万3845人と、どちらも増加していることがわかる。しかし、このような新たな保育園の開設は、結婚や出産を理由に一度仕事を辞した若い女性の就労意欲を向上させる。その結果、保育園への申し込みが増加し、再び待機児童が増加するという循環に陥っているのである。

 しかし、人口が集中し広い土地の確保が困難な首都圏等においては、認可保育園の開設は容易ではない。それでは、首都圏等ではどのようにして保育園を増やせばよいのだろうか。私は、東京都が独自に定めた設置基準である認証保育園を増加させるべきであると考える。

 東京都福祉保健局(2016)によると、東京都の待機児童数は8466人と全国の中で最も多い。東京都に待機児童数が多い原因は、人口の一極集中によるものである。しかし、東京都区部では国の設置基準を満たせる大きさの保育園が設置できるような土地を確保することは困難である。したがって、独自に新たな設置基準を設けたのである。例えば認可保育園では0歳児・1歳児一人につき3.3屬量明僂必要であるが、認証保育園では2.5屬泙粘墨造靴討い襦このように認可保育園ほど厳しくはないが、安全面を十分に考慮した設置基準を満たしている保育園が認証保育園である。満員のため認可保育園に入れない児童を認証保育園が受け入れれば、待機児童問題は緩和するだろう。

 しかし、認証保育園にも問題点は存在する。その問題点とは、保育料が高額だということである。認証保育園の保育料は保育園側が自由に設定できるため、園によっては家賃以上の保育料がかかるなど高額になりがちである。したがって、保護者は認証保育園を敬遠してしまう。しかし、認証保育園には認可保育園にはないメリットが主に二つある。一つ目は13時間以上の開所が義務付けられているということ、二つ目は事務的ではない自由な保育が行われていることである。一つ目の開所時間は、認可保育園では保護者の就労時間によって利用可能時間が11時間または8時間と定められているが、認証保育園では保護者の就労時間にかかわらず13時間以上の開所が定められている。このような開所時間の差は、働く保護者にとっては大きな差となる。例えば急に長時間預ける必要が出た時には、認可保育園よりも融通が利きやすい。また二つ目の事務的ではない保育に関しては、認可保育園は公営で行われているのに対して、認証保育園は民営なので、自由な保育を行うことができるのである。例えば、パン作りや絵を描くことなどの保育を行うことで、子供に様々なものを触れさせ、豊かな感性を育むことができる。このようなメリットが保護者に伝わると、保育料が安くなりさえすれば入園させたいと考える人も出てくるであろう。

 では保育料の問題をどのように解消していくべきか。私は、認可保育園の保育料に充てられている補助金の一部を、認証保育園に給付するということを提案する。現在、認可保育園に対しては国や都道府県などの自治体から保育料として補助金が給付されている。一方で、認証保育園や認可外保育園に対しては一部自治体から多少の補助金が給付されてはいるものの、それだけでは運営費を全て賄うことは不可能である。そのため、認証保育園や認可外保育園の保育料は自然と高額になってしまうのである。認証保育園の場合は、土地の広さという点では認可保育園に劣るが、広さ以外の点では認可保育園にも劣らないため、国や自治体からの補助金を認可保育園同様受け取るべきであると考える。

 しかし、国や自治体の予算にも限界がある。そこで、世帯年収によって補助金の額に差をつけることを提案する。現在、国の定めにより世帯年収に応じて保育料の徴収額は異なる。しかし、東京都などの一部自治体は独自に補助金を給付し、保育料の上限を抑えているというのが実態だ。例えば、世帯年収が1130万円以上の高所得世帯からは月額10万円程度徴収することが国により定められているが、自治体からの補助金があるため、実際は月額4〜5万円程度に抑えられている。この認可保育園に通う高所得世帯への補助金を六割程度減額し、その分を認証保育園に通う低所得者層に給付するべきである。こうすることで、認可保育園と認証保育園の実質的な金銭負担の差が少なくなるため、認証保育園に通わせやすくなるだろう。

 今までは認可保育園の保育料だけが異様に安かったため入園の希望が殺到していたが、この提案によって保育料に縛られずに多くの保育園から希望を選べるようになるため、認可保育園のみに希望が偏ることもなくなる。したがって、認証保育園に入園させたいと考える保護者も出るため、うまく双方に分散されるのではないか。

 東京都などの人口過密地域を中心に待機児童問題が起こっている昨今の日本において、東京都では認可保育園の数を増やすにも土地が不足しているため限度がある。しかし、上記の提案によって認可保育園と認証保育園の金銭的負担を実質的に縮めることによって、入園させたい子供の認可保育園への集中を緩和できるようになるのではないか。補助金負担の軽減による認証保育園と認可保育園の両立こそ、待機児童問題の緩和に一役買うと私は考える。


[参考文献]
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きたはら(2年)

チェーン店のタッチパネル方式導入を〜人手不足解消のために〜

 最近、大手外食チェーンで客数が減少し、店舗の閉鎖が相次いでいる。その原因として、河野・武田・須永・水野(2016)は、チェーン店が抱える「3大疾病」を挙げている。1つ目は、検索サイトの普及で個店の勢力が拡大し、「つまらない」、「楽しみがない」という理由で客足が遠のいている点だ。客は、飲食店の情報が気軽に手に入るようになったので、それまで足を踏み入れたことのない個店などを利用することへの心理的なハードルが一挙に低下した。その結果、客自身飽きが来ないように様々な場所に行く機会が増えたので、チェーン店の「どこへ行っても同じメニューで同じ味である」という安心感が相対的に低下してきた。さらに、チェーン店では店舗の画一化により、店づくりの個性や創造性を発揮できなくなった。その結果、客離れを招いたのだ。2つ目は、店舗拡大に伴い原材料の調達量を増やし、それによるスケールメリットによってコスト比率を下げる、というチェーン店が追求してきた成功の方程式が通用しなくなった点だ。例えば、牛肉のショートプレートの例でいうと、かつての大口顧客といえば日本だけだったが、最近では、中国や東南アジアでそれを上回るスケールの買い手が現れてきている、という。その結果、高い値段で牛肉を買うようになった中国や東南アジアの買い手に競り負けたり、思うような値段で牛肉を調達できなかったりする事態が起きている。3つ目は、労働環境の悪化や採用難によって働き手が確保しづらくなり、人手不足に陥った点が挙げられる。例えばすき家では、深夜帯を1人の従業員で切り盛りする「ワンオペ」のような過重労働が問題化し、一時は6割の店舗が深夜営業停止に追い込まれた。このように過重労働がメディアに取り上げられたことによってチェーン店の印象が悪化したので、バイトなどの応募が激減するようになったのだ。
 
 この3つの問題の中でも、私は人手不足が一番深刻だと考える。「メニューに新鮮味がない」「どこへ行っても同じでつまらない」という消費者の意見は、メニューの改善によってある程度解決することができるだろう。また、チェーンの成功の方程式が通用しなくなったことは、ゼンショーグループのように異業態会社をM&Aすることによって、自社で規模を拡大したり、機能を拡充したりできる(河野,2016)ので、ある程度改善できるだろう。しかし、人手不足は、その結果として営業時間を短縮させるので売上が減少するだけでなく、それを補うために行う時給の上昇が商品値上げに繋がるので、消費者のチェーン店離れをさらに引き起こすのだ。そして、この問題は飲食店業界全体の問題ではなく、チェーン店固有のものである。リクルートジョブズ(2016)によると、ファーストフードの平均時給は935円で、これはフード全体の平均時給954円と比べて低い。つまり、チェーン店は一般の飲食店と比べて時給が低いので人材が集まらないのである。

 それでは、この人手不足を解決するためにはどのようにしたらよいのか。私は、タッチパネルを用いたオーダー機器の導入を提案する。タッチパネルの導入には、確かに初期費用が掛かる。しかし、人を雇うよりもランニングコストは安価なので、人件費削減に加えトータルコストも低くなるからだ。このタッチパネル導入によって、人が少なくても店が回せたり、面倒な注文やレジ打ちの作業がなくなったり、オーダーミスがなくなったり、人が直接お金を扱わないので衛生的であったり、店員もオーダー以外の別の仕事に専念できる、といったメリットが生まれるのである。

 例えば日本のマクドナルドにタッチパネルを導入するというケースを考えてみよう。常盤(2015)によると、マクドナルドは、異物混入騒動などでブランドイメージや業績の悪化により人材確保が難しくなったことを一要因として大量閉店に追い込まれている、という。そこで、アメリカやフランスなど世界各国で導入されているタッチパネル方式を、日本のマクドナルドでも導入することを提案したい。Horovitz(2014)によると、アメリカのマクドナルドでは、もちろん普通のハンバーガーやドリンクの注文も出来るが、その目玉はマクドナルドが打ち出している自分の好みのバーガーが作れる事である。つまり、バンズ、チーズ、野菜の種類などを自由に選ぶ事が出来るのだ。このように、日本のマクドナルドにもタッチパネル方式を導入することによって、人件費削減だけでなく、自分でカスタマイズしてハンバーガーを作れるという楽しさも付加することができる。これにより、メニューに新鮮味がない、という理由でこれまで足が遠のいていた客を、リピーターにすることも可能かもしれない。また、Martin(2016)によると、アメリカのマクドナルドにおけるタッチパネル導入のコストは、一時的な費用はかさむものの1台3万5,000ドルとなっている。これは、時給15ドルを従業員に支払う場合と比べて1年1ヶ月で回収できる導入コストに過ぎない。以上のように、タッチパネル方式を導入すれば、人手不足解消に加え、将来的な人件費削減にもつながり、客へ新たな楽しさも付加することができるのではないか。

 確かに、誤入力や客と従業員のコミュニケーションが少なくなるというタッチパネル導入のデメリットもある。しかし、誤入力は、最後に確認画面を設けるなどの工夫で解消できるだろう。また、客と従業員とのコミュニケーション不足については、タッチパネルの近くに従業員を配置して、客の分からないことや要望に応えられるようにすれば解消できるだろう。

 このように、チェーン店が人手不足を解消するためには、オーダーの際、タッチパネル方式を導入することも1つの策である。人が少なくても店が回せ、人件費も削減できるので、最大の問題である人手不足解決に繋がる。また、タッチパネルの導入は、メニューのカスタマイズの可能性を高めるので、リピーターに新鮮さ、楽しさを与えられることもできる。人手不足を解決せず工夫も行わなければ、チェーン店は崩壊し続けていくに違いない。タッチパネル方式の導入による人手不足解消が、チェーン店再生の第一歩に繋がるのではないだろうか。


[参考文献]
河野紀子 (2016)「ゼンショー小川社長が語った今後の成長と後継者」『日経ビジネスONLINE』 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/281481/062400021/ 2016年8月16日検索.
河野紀子・武田安恵・須永太一朗・水野孝彦(2016) 「賞味期限のチェーン店 外食崩壊」『日経ビジネス』1841, 28-47.
Martin.H (2016) Fmr. McDonald's USA CEO: $35K robots cheaper than hiring at $15 per hour, Fox Business, 2016年5月31日検索. http://www.foxbusiness.com/features/2016/05/24/fmr-mcdonalds-usa-ceo-35k-robots-cheaper-than-hiring-at-15-per-hour.html. 邦訳, H・マーティン(2016)「マクドナルド元CEO、時給15ドルへの最低賃金引き上げが行われた場合には人間を雇うよりロボットを導入した方が安上がり」『Bussinese newsline』 http://business.newsln.jp/news/201605251022020000.html 2016年5月31日検索.
Horovitz, B. (2014) McDonald's expands custom sandwich option. USA TODAY, 2016年6月5日検索. http://www.usatoday.com/story/money/business/2014/12/07/mcdonalds-fast-food-restaurants-create-your-taste-millennials/19943987/
リクルートジョブズ (2016)「2016年5月度 アルバイト・パート募集時平均時給調査」 http://www.recruitjobs.co.jp/info/pdf/pr201606171516.pdf 2016年6月27日検索.
常盤有未 (2015) 「大量閉店で消えたマック、次に打つ手は何か」『東洋経済オンライン』 http://toyokeizai.net/artices/-/105925 2016年5月26日検索.


ほそだ(2年)

ドーナツの潜在ニーズとは

 クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン(以下クリスピー・ドーナツ)は現在、運営の抜本的な改革を行っている。岡本(2016)によると、多店舗化の結果、立地や人材の問題により現状全ての店舗において、顧客に「かわいく、おいしい商品を、温かみのある接客を受けくつろげる店舗空間で食べてもらう」という「Joy」の価値を創造するという使命が実現できていない。そこで、各店舗の質向上と運営効率の向上を目的とした、店舗エリアの集約と店舗の閉店、リニューアルを行っている。

 そこで、私は実際どのように運営の抜本的な改革が行われているか、2016年7月12日にリニューアルオープンされたクリスピー・ドーナツ北千住ルミネ店のリニューアル前とリニューアル後に客として行ってみた。確かに、くつろげる店舗空間の構築ということで、一人掛け用の座席がポール形状の腰が痛くなるタイプから、人一人がゆったりと座ることのできる通常のものに変わっていた。しかし、複数人で座るための机や座席は変化を見て取ることはできず、内装などの色彩や雰囲気を変更しているわけでもなかった。また、レジ前での会計の並び方などにも変化は見られなかった。

 このように運営の抜本的な改革といっても、客として見た場合あまり変化を感じることのできないものであるならば、私は岡本氏の戦略よりも優先してやるべきことがあると考える。有馬(2016)は、なぜクリスピー・ドーナツが不振になったかについて、甘すぎる味がネックとなり、顧客が魅力を見出せなくなったと指摘している。多店舗化を行う前のクリスピー・ドーナツは、店舗数が少なかったため並ばなくてはならず、現在より簡単に購買することができなかった。たまにしかお目にかかることのできないドーナツであったため、ある意味その甘さがプレミア感の証であったのだ。しかし、多店舗化によって比較的購買しやすくなった現在ではそのプレミア感が薄れてしまった。むしろ、顧客はチェーン店を選ぶ際、メニュー、料理の内容を最も重視している(河野・武田・須永・水野 2016)ので、その甘さが、「甘すぎる、くどい」などといった顧客の飽きを引き起こしてしまったのではないだろうか。

 では離れてしまった顧客をどのようにして再び引きつければよいのか。確かに、運営の抜本的な改革も重要なプロセスではあるが、私は甘さ控えめなドーナツの提供を提案したい。なぜなら、現在、顧客のドーナツへの「潜在ニーズ」として、甘さ控えめなドーナツが求められていると考えるからだ。

 ここで、日本とクリスピー・ドーナツの生まれ故郷であるアメリカの砂糖消費量を比べてみよう。2013〜15年度の両国の年間砂糖消費量の平均は、日本が2,157トンで、アメリカの平均が10,882トン(農畜産業振興機構 2016a)と、日本はアメリカの砂糖消費量の約5分の1である。これは、アメリカの人口が日本の人口の約2.5倍ということを加味しても少ない。さらに、2015〜2016年の日本人の年間砂糖消費量予測は17.2kg /人で、アメリカ人の年間砂糖消費量予測は33.0kg /人(農畜産業振興機構 2016b)である。つまり、日本人の砂糖消費量はアメリカ人に比べると少なく、甘いものを消費していないことが分かる。したがって、既存の甘いドーナツを販売していても多くの日本人の好みに合わないのではないだろうか。

 さらに、Beck & Schatz(2014)によると、アメリカ人のカロリー摂取量も減少し、食生活がやや健康的になってきている。この健康志向の表れを考慮すれば、現在、欧ファンドに身売りするなど決して経営良好ではない(河内 2016)米クリスピー・ドーナツの経営の再建にも、この甘さ控えめなドーナツが一役買うのではないだろうか。なぜなら、アメリカのクリスピー・ドーナツのメニューを見てみると(Krispy Kreme Doughnuts Corporation 2016)、9割以上の商品がカロリーの高そうなトッピングでテカテカになっており、いかにも不健康そうに見える。したがって、健康志向が高まりつつあるアメリカでも、甘さ控えめなドーナツの需要があるのではないか。これは、ゼロカロリーコーラを売り出していながら通常のコーラも売り出しているコカ・コーラの戦略と通ずる部分もある。既存のいかにも不健康そうなドーナツを売り出しつつも、「いつもは甘さ控えめのドーナツも買っているから、たまにはこれ(いかにも不健康そうな既存のドーナツ)も買っていいわよね!」という甘いもの好きの「甘え」を誘発することにつながるのだ。こうすることによって、日本のクリスピー・ドーナツにも、アメリカのクリスピー・ドーナツにもさらなる売上を生み出せるのではないか。そして、仮に甘さ控えめなドーナツのアメリカへの導入が難しいとしても、日本とアメリカ両国間のクリスピー・ドーナツのメニューには違いがあるので、日本独自に甘さ控えめなドーナツを提供することは可能である。
 
 現在クリスピー・ドーナツの顧客は、多店舗化により購買しやすくなったクリスピー・ドーナツに魅力を見出せていない。しかし、潜在ニーズを探りそれにマッチした商品・サービスを提供することで、企業は長期的に競争優位を確立できる(川上 2005)。クリスピー・ドーナツにとって、甘さ控えめなドーナツを提供することは顧客の潜在ニーズに応えることのできる商品だ。甘さ控えめなドーナツがマスコミに取り上げられることで、顧客に再びクリスピー・ドーナツに関心を持ってもらい来店してもらう。甘さ控えめなドーナツに加え、既存のドーナツもついでに購買してもらうことでさらなる売上を生み出すことにもつながるだろう。そこで、甘さ控えめなドーナツの提供により競合他社に対して競争優位を確立できれば、クリスピー・ドーナツは再び日本に根付いていくことができるはずだ。


【参考文献】
有馬賢治 (2016) 「クリスピードーナツ、なぜ客離れで閉店の嵐?甘すぎ&割高感が浸透した戦略の失敗?」 『Business Journal』http://biz-journal.jp/2016/05/post_15173_2.html 2016年7月6日閲覧
Beck, M & Schatz, A (2014) Americans' eating habits take a healthier turn, study finds .
The Wall Street Journal,2016年7月6日閲覧 http://healthyamericans.org/newsroom/news/?newsid=2790 邦訳,
メリンダ・ベック&アミー・シュワルツ (2014) 「米国民のカロリー摂取量が減少―健康志向を反映」 『ウォール・ストリート・ジャーナル日本版』2016年7月6日閲覧
http://jp.wsj.com/articles/SB10001424052702303919304579326051275469682
川上智子 (2005) 『顧客志向の新製品開発 マーケティングと技術のインタフェイス』 有斐閣.
河内真帆 (2016) 「米クリスピー・ドーナツが身売り 欧ファンドに」『日本経済新聞』
http://mw.nikkei.com/sp/#!/article/DGXLASGM10H1K_Q6A510C1FF2000/
2016年6月15日閲覧
クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン株式会社 (2016) 「メニュー」 http://krispykreme.jp/menu/doughnut/ 2016年8月7日閲覧
Krispy Kreme Doughnuts Corporation (2016) MENU. http://www.krispykreme.com/menu/Doughnuts 2016年8月7日閲覧
河野紀子, 武田安恵, 須永太一朗, 水野孝彦 (2016) 「賞味期限切れのチェーン店 外食崩壊」
『日経ビジネス』 1841, 26-47
農畜産業振興機構 (2016a) 「主要国の1人当たりの砂糖消費(09/10~15/16年度)」
http://sugar.alic.go.jp/world/data/wd_data.html 2016年7月6日閲覧
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http://sugar.alic.go.jp/world/data/wd_data.html  2016年6月1日閲覧
岡本光太郎 (2016) 「大量閉店は再挑戦への布石」 『日経ビジネス』1839, 88-89.


ちば (2年)

京都市が財政難を脱却するには〜富裕層の呼び込みを強めるバックパッカーの役割〜

 京都は現在、米国で発行されている観光雑誌の一つ『Travel+Leisure』で観光人気都市世界1位を2年連続で獲得するなど、外国人観光客に人気である。京都市(2014a)によると、「平成26年の(外国人観光客の)宿泊客数は、前年より70万人増え、183万人となった。日本全体の宿泊客数が1,341万人なので、7人に1人が京都に宿泊している。」という計算になる。
 
 この結果から分かるように、現在、京都の観光はとても活況である。しかし、これほど観光が活況なのにも関わらず、京都市の税収は伸びていない。その理由として、飯田(2016)は、「宿泊施設や飲食店といった観光業で働く人の75%が非正規雇用であることが無関係ではない。」と指摘している。そこで京都市では正規雇用者を増やすため、観光客の中でも富裕層をターゲットにする戦略を考えている。実際に2014年には高級ホテルのザ・リッツ・カールトンがオープンし、2016年の秋には、フォーシーズンホテルなどのオープンも予定されている。その理由として、門川(2016)は、「一泊5万〜100万という高級ホテルや旅館があったとする。従業員は付加価値の高いサービス提供を求められますが、その見返りとして正社員として雇われたり、高い収入が増えたりします。こうした施設が増え、正規雇用者も増え、回りまわって市の税収増にもつながる。」ということを挙げている。そもそも、なぜ高級ホテルを増やし、正規雇用者が増加すると、京都市の税収は増えるのか。京都市の市税の中には個人市民税というものが存在する。この税の仕組みに所得金額×6%の金額を税金とする所得割という制度があるので、所得が増えれば増えるほど税収入も増えるのである。このように、高級ホテルを誘致することで市の税収を増やす、というのが京都市の戦略である。

 わたしはこの戦略が有効であると考える。現在、京都にはたくさんの文化財が存在する。また、京都市内には橋が2900ヵ所あり、その99%を市が管理していて耐震補強もしなければならない(飯田2016)。したがって、これらを保護し維持していくためには莫大な資金が必要である。実際に京都市(2015)は、「本市の大都市特例事務に係る経費は170億円、一方これに対応する税制上の措置済額は51億円で、措置不定額は、実に119億円である。」と述べている。このように京都市は財政難なのである。これを解消するためには、富裕層をターゲットにした観光客の増加により税収入を増やすことが必要である、と私は考える。

 しかし、私は観光客の中でも富裕層だけに目を向けるのではなく、バックパッカーのような観光客にも目を向ける必要があると考える。なぜなら、バックパッカーにはSNSを通した情報拡散力があるからである。新井(2013)は、「バックパッカーのスマホ所持率は約8割と高い割合である。そして、スマホ利用のメインとなっているのはSNSの使用である。」という。なぜ、彼らはSNSを利用するのだろうか。バックパッカーのSNSの利用意識について、新井(2013)は4つの象限があるという。第1象限は必要情報の受信・発信である。これは、グーグルで検索を行ったり、ブログをアップして他者に情報を発信することである。第2象限は情報消費(情報へのアクセス)である。いわゆる暇つぶしのように情報にアクセスすること自体を利用目的とすることである。第3象限は表出コミュニケーション(特定他者へのアクセス)である。これは、Twitterなどで他者との場の共有やコミュニケーションを目的とすることである。第4象限は伝達コミュニケーションである。これは、第3象限と似ているが、違う点としてはメールのやり取りなど他人に公開されずに身内との情報交換などを行うことである。今回、私はバックパッカーの情報拡散力を考えたうえで、第1・3象限に注目した。なぜこの二つに注目したかというと、バックパッカーは旅行に行く際、あらかじめ情報を得るために他のバックパッカーのブログを閲覧するだろう。また、バックパッカーは比較的長期に滞在をするため、メジャーな観光地だけでなくマイナーな場所に訪れる可能性がある。そのような場所はInstgramなどのSNSで写真がアップされることによって、それが拡散していき話題となる可能性が上がると考えるからである。それは単にバックパッカー内だけの拡散ではない。そのような場所がNile’s NILEやAgoraのような富裕層向けの雑誌に取り上げられることで、さらにそれらの雑誌を見た富裕層にも情報が拡散していく。そして、他の観光客がまだあまり行ってない中で、そのようなマイナーな場所に自分は行ったぞという優越感を得たい富裕層が京都に訪れるのである。そうして、多くの富裕層が来京し、彼らが京都にお金を落とすことで、税収が増え、回りまわって京都市の税収が増え、財政難脱却につながっていく。これが京都市にバックパッカーも呼び込む必要があると考えた理由である。

 だが、バックパッカーは比較的長期滞在者が多いため、リッツ・カールトンのような高級ホテルだけでなく、低予算で泊まれる施設も必要である。そこで、低予算でも宿泊できる施設を整えるにはどうしたらよいのだろうか。飯田(2016)は、「現在、京都市には旅館が5000室ある。その内、旅館の稼働率が約7割と、まだ余裕がある。そこで、稼働できていない旅館を利用していく。」と述べている。たしかに旅館を利用していくことも有効だが、旅館の稼働率も約7割とそこまで低くないので、限界がすぐにきてしまうと考えられる。そこで、私はまだあまり使われていない民泊を利用していくべきだと考える。民泊を利用する行政側のメリットとしては、年々増え続ける空き家など使われていない施設や建物を利用できるということが挙げられる。実際に京都市の空き家は、2008年は110,290戸、2013年は114,500戸(Kyotobnb 2014)と5年間で4,210戸増えているという現状がある。そこで、これらの空き家を利用し民泊に使うことで空き家問題の対策にもつながる可能性がある。そしてバックパッカーの民泊を利用することでのメリットとしては、仝獣呂琶襪蕕垢茲Δ並攤澆できる、現地の人や旅人との交流ができる、I當未任惑颪泙譴覆い茲Δ文沈的な場所に泊まれる、じ獣呂梁慮海できる(Travel.jp 2016)ということが挙げられる。しかし、一番のメリットは値段の安さである。大半の民泊では、かつて寮として使われていたものを利用しているため、比較的値段がリーズナブルで低予算でも泊まれるものとなっている。実際に民泊を提供しているAirbnbのサイトを見てみても平均して4000~5000円程度の価格帯となっている。以上のことから、空き家にも活用でき、またバックパッカーにも多くのメリットがあるので、私は民泊の利用を提案したい。

 しかし、民泊にも安全性の問題が存在する。京都新聞(2016)によると、「京都市は(2016年1月16日)に民泊実態調査を行った。最大手の仲介サイトに2542件が登録されているが、所在地を特定できたのは679件にとどまり、その大半が旅館業法に基づく市の許可を受けていない。」という。このような状況があると旅行者は安心して民泊を利用できない可能性がある。そこで京都市は、観光や衛生、消防などの担当職員でプロジェクトチームを作り、2015年12月から8つの仲介サイトに掲載された情報を調査し始めた(波多野 2016)。そして、京都市は認可した民泊の営業だけを認める方針であり、旅館業法上の許可がない違法なケースが見つかった場合は営業を中止させ、悪質な場合は刑事告発も視野に入れる(波多野 2016)という。また、安全性の問題を解決していくためにホームページで市が認可した民泊の情報を掲載し、より安全に宿泊できるための情報を提供している。さらに、通報専用窓口「民泊通報・相談窓口」を開設(2016年7月12日)し、民泊のトラブルに早急に対応できるように備えている。このように着々と民泊の安全性を解決する取り組みが行われ始めているので、バックパッカーのような低予算で旅行を考える観光客も安心して宿泊できるのではないだろうか。

 現在、京都市は財政が厳しい状況である。そこで観光客の中でも富裕層をターゲットにし、京都市の税収を増やしていこうとしている。現在は観光人気都市世界1位だが、いつこの人気が落ちてくるかは分からない。そこで、さらなる観光客を集めるためにはバックパッカーの呼び込みも必要だと考える。バックパッカーの情報拡散力を利用し、世界の富裕層の観光客をさらに呼び込んでいくことで、一人一人の所得が増え、回りまわって京都市の税収も増えていく。このような正のスパイラルを回すことで京都市は財政難から脱却していけるのではないだろうか。

【参考文献】
Airbnb (2016)「京都の民宿を探すなら−現地に溶け込む旅を体験」 https://www.airbnb.jp/s/%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%B8%82--%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%BA%9C/?          af=6968636&c=search_d_jpn_jpn_dom_p2_txt_irep&dclid=CPWQ2YL80s4CFcEcvAodONkDYg&s_tag=XZVzGRXd 2016年8月21日閲覧.
新井克弥 (2013) 「バックパッカーの情報行動」『関東学院大学文学部紀要』129,17-42. http://library.kanto-gakuin.ac.jp/webopac/bdyview.do?bodyid=Nl30000521&elmid=Body&lfname=link/005.pdf 2016年6月22日閲覧.
波多野陽 (2016) 「京都市『民泊110番』開設へ」『朝日新聞』2016年5月25日 http://www.asahi.com/sp/articles/ASJ5S6S09J5SPLZB065.html 2016年6月27日閲覧.
Kyotobnb (2014) 「京都市の空き家が年々増加」http://www.kyoto2.jp/entry/2014/11/25/190048 2016年7月5日閲覧.
京都市 (2010) 「市税収入の確保」 http://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/cmsfiles/contents/0000086/86441/6_siryo3.pdf 2016年5月30日閲覧.
京都市 (2014a) 「京都総合観光調査平成26年」
https://kanko.city.kyoto.lg.jp/chosa/image/kanko_chosa26.pdf 2016年5月16日閲覧.
京都市 (2014b) 「平成25年度決算概況について」
http://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/cmsfiles/contents/0000172/172480/260731kessanngaikyou.pdf 2016年5月30日閲覧.
京都市 (2015) 「門川市長記者会見2015年7月30日」
http://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000186841.html 2016年5月30日閲覧.
京都市 (2016) 「民泊通報・相談窓口」http://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000201777.html 2016年7月18日閲覧.
京都新聞 (2016) 「無許可民泊大半か 京都市調査、サイト登録一万人分」『京都新聞』2016年1月19日
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20160119000017 2016年5月30日閲覧.
飯田展久 (2016) 「文化庁移転を起爆剤に」『日経ビジネス』 1804, 64-67.
Travel.jp (2016) 「民泊のメリット」http://www.travel.co.jp/minpaku/about.html 2016年7月8日閲覧.

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