マナボが教育の地域格差解消に貢献する

 スマートフォンなどを用いた教育ビジネスを行っているマナボという会社がある。西(2017)によると、マナボのサービスは、これらの機器を介しているので時間や場所の制限がなく、いつでもどこでも必要なときに指導を受けられるという家庭教師サービスだ。授業は、生徒が分からない問題を質問し、先生がその問題を解説するというものである。先生には、東京大学や一橋大学など難関大学の学生2500人が登録しており、24時間365日体制で質問を受け付けている。つまり、勉強をしていて分からない問題にぶつかってしまったその瞬間に好きな先生から解説を受けられ、解決できるのが特徴だ。

 小林・榎戸・戸田・築家(2016)によると、首都圏には多くの予備校や難関大学の受験経験を持つ家庭教師が多くいるが、地方では予備校や家庭教師が不足していてまだまだ手に届くところにない。さらに東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策研究センター(2009)によると、子どもの受ける教育や進学率が、親の所得差によって影響され、「教育格差」につながっていることが明らかになっている。上記のようなサービスで、マナボは地域格差と所得格差の課題を解決し、学習機会の均等化を目指しているが、今のビジネスモデルで本当に地域格差と所得格差の課題を解決し、学習機会を均等化することはできるのだろうか?

 教育における地域格差は、学習機会の地域格差と所得の地域格差の二つに分けられる。一つ目の学習機会の地域格差については既に解決されている。なぜなら、マナボは周りに予備校や家庭教師が不足している地方の人でも、都心の人と同様にスマホで授業を受けることを可能にしたからである。しかし、所得の地域格差についてはどうだろうか。

 私は、今のマナボのビジネスモデルでは所得の地域格差を解決することはできないと考える。厚生労働省(2013)によると、都道府県平均年収ランキングで1位は東京都の580万円、最下位は沖縄県の333万円という結果が出た。この結果から、住んでいる地域によって大きな所得格差があり、特に地方の人の方が都心の人に比べて平均所得が少ないことがわかる。では、この地域の所得格差は学力となにか関係があるのだろうか。文部科学省(2015)によると、公立学校に通う中学3年生を対象とした通塾率(家庭教師の先生に教わっている場合も含む)の調査を行ったところ、1位は神奈川県の74.1%、最下位は秋田県の30.1%であり、偏差値に関しても全く同じ順位という結果が出ている。つまり、所得の地域格差を解決しない限り、地方の人が都市部の人よりも学力が低いという現状は変わらないのである。
 
 文部科学省(2008)によると、中学生の保護者調査を行ったところ、学習塾に通わせない理由で多かったのが「学習塾の経費が家計を圧迫するから」という意見だった。この調査から、学習塾に通っていない子供たちの中には、通いたいと思っていても家計が苦しいために諦めている者もいるということが考えられる。たとえマナボの授業料金が安価だとしても、塾に通わせる余裕がない家庭の子供たちが利用できないという現状は変わらない。つまり、今のマナボのビジネスモデルでは所得の地域格差を解決できないのである。

 学習塾に通う余裕がない子どもたちを対象に、無料の学習会・キャリア支援活動などの教育支援事業を行っているNPOは多数ある。これらのNPOは、主に学生・社会人などから講師になってくれる人をボランティアで募り、行政や民間の施設を会場にして活動を行っている。しかし、自分の志望する高校・大学に進学するための受験対策を目的とする活動を行っているNPOは少ない。その理由としては、運営資金や人手の不足、そして受験科目の全てを教えられる講師を集めるのが難しいといったことが考えられる。また、地方の町に来てもらう場合、移動の時間が多くかかってしまうので講師の確保が難しいのである。

 では、所得の地域格差がある中で学習機会の均等化を図るにはどうすれば良いのだろうか。私はマナボが教育支援活動を行っているNPOと積極的に提携し、家庭の経済状況などの理由から塾や予備校に通うことができない学生に向けた学習サービスを提供することを提案したい。この学習サービスは、難関大学に合格することを目指して勉強したいが、塾や予備校に通うことができない人に向けた受験対策を目的とするものである。その使用料金については、NPOがマナボに支払い、学生は無料で利用できるものとする。では、どのようにこのサービスを実施していくか説明していこう。まず、NPOはセンター試験や大学入試の過去問題を過去に受験を終えた大学生などから寄付してもらう。次に、行政や民間の施設を会場にして、その集めた大学入試の過去問題を学生に解かせ、解答・解説を見ながら自己採点をさせる。その際、過去問題に付いている解答・解説を見てもわからなかった問題についてはマナボを利用することになる。始めにマナボでその問題に関する解説動画があるかを探す。次に解説動画がある場合はそれを利用し、ない場合にはマナボの講師に直接教えてもらう。

 このようなサービスを行うことは、学生・マナボ・NPOの三者にとってメリットがあると私は考える。まず、家庭の経済状況や住んでいる場所などの理由で塾や予備校に通うことのできなかった学生が、受験校の過去問題の解説授業を無料で利用可能になる点だ。これにより、今までは難しかった志望校の対策を十分にできるようになるのである。次にマナボにとっては、多くのNPOと提携することで、過去問題の解説動画を蓄積することができる点だ。蓄積された動画を有効活用することで、今までは全ての質問に対して先生が答えていたが、先生の介在なしにその動画で指導することが可能になると見込める。そのため、将来的に先生の人件費を削減することができるのである。最後にNPOにとってのメリットは、マナボを利用することで人手不足の問題を解消できる点だ。マナボの使用料を払うことにはなるが、代わりにマナボが講師を集めて授業をしてくれるため、人件費を削減することができる。その結果、NPOが抱える人手不足の問題を解消でき、子供たちに向けて安価に継続的な活動を行うことが可能になると私は考える。

 今の日本は、あらゆる面で様々な格差が広がっている。その中でも、親の所得や住む場所によって子供の教育格差が生まれ、しかも世代を超えて格差が継承されてしまう状況は深刻だ。しかし、マナボの現状のサービスでは、首都圏と地方での教育の地域格差を解消することは非常に難しい。それでも子供たちが夢や目標に向かって自由に勉強できる環境を作るため、マナボがNPOと提携することで、所得や住んでいる地域に関係なく、学習機会を均等化していくことができると私は考える。

[参考文献]
小林雅, 榎戸貴史, 戸田秀成, 築家まき (2016)「”スマホ家庭教師”は教育の地域格差を解決する−注目のベンチャー特集『マナボ』(1)【K16C-MNB #1】」2017年5月17日閲覧,
https://industry-co-creation.com/recommend/6982
厚生労働省 (2013)「平成25年賃金構造基本統計調査」2017年5月24日閲覧, http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2013/
文部科学省 (2008)「子どもの学校外での学習活動に関する実態調査報告について」2017年6月13日閲覧, http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/08/08080710.htm
文部科学省 (2015)「全国学力・学習状況調査」2017年5月24日閲覧, http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/
西雄大 (2017)「いつでもどこでも家庭教師」『日経ビジネス』.1888, 64-65.
東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策研究センター (2009)「高校生の進路と親の年収の関連について」2017年6月7日閲覧, http://ump.p.u-tokyo.ac.jp/crump/resource/crump090731.pdf

やまもと(2年)

たばこコミュニケーションの代わりとなるもの

 近年、飲食店や会社で全面禁煙を求める声が高まるなど、禁煙政策を巡る議論が盛り上がっている。五十嵐(2017)によると、たばこがもたらすデメリットは、経済的なものと疫学的なものの二つである。五十嵐氏の推計では、1人の喫煙者が禁煙すると、禁煙しなかった場合に比べて大幅な医療費削減とQALY(余命とQOLの双方への影響の評価を可能にするもの)の増大が見込めることが明らかになっている。以上のことから、五十嵐氏は、たばこ対策は財政と公衆衛生の双方の観点から優先されてしかるべき政策である、と述べている。

 私は、五十嵐氏のたばこ対策を優先すべきだ、という考えに賛成である。なぜなら、たばこは喫煙者本人のみでなく、私たち非喫煙者にも大きなデメリットとなるからだ。国立がん研究センター(2010)によると、受動喫煙による肺がんや虚血性心疾患により、国内で年間おおよそ6800人が死亡している。また、医療経済研究機構(2010)によると、喫煙者が一消費者として負担しきれずに属している共同体に負担させている経済的損失は、健康面、施設・環境面、労働力損失の3つの点において、1年間で総額約4兆3000億円にものぼる。しかし、これらの喫煙によるコストは、すべて喫煙率を下げることにより将来的に減少させることが可能なものである。

 現在、多くの企業がこのコストを抑えようと、全社禁煙へと進んでいる。星野リゾートグループでは、「喫煙者は採用しておりません」という採用サイトに掲載された文字が話題を呼んだ。代表の星野氏は、「全社禁煙を進めることで、作業効率、施設効率、職場環境の3つの要素において競争力を高めることができる」と述べている(星野グループ採用サイト)。また、規模や事業範囲が異なるようなその他の企業も、全社禁煙への取り組みを行っている。

 では、たばこにはメリットはないのだろうか。私は、たばこはデメリットだけではなく、メリットももたらしていると考える。松岡(2014)によると、喫煙者は「喫煙所内で他部門とのコミュニケーションが取れている」と実感していて、社内のヒエラルキーに関係なくたばこを吸うというだけで部門を超えたコミュニケーションが進んでいる、とされている。たばこを一本吸うのにかかる約5分という短い時間で、役職や年齢関係なく、非公式コミュニケーションを手軽にとれることが、たばこの唯一のメリットだと私は考える。普段話すことのないような人と対面でコミュニケーションがとれる喫煙所は、情報交換や意見交換の場となり、デスクでは出ないようなアイデアが生まれる貴重な機会となっている。では、たばこ以外でこの非公式コミュニケーションの機会を作ることはできないのだろうか。

 そこで私は、全社禁煙が進められ各フロアの喫煙所が撤去されることにより生まれる新たなスペースを、コミュニケーションスペースとして活用することを提案する。具体的には、喫煙タイムをエクササイズタイムに変えるということである。例えば、各フロアのスペースにフィットネス用のトランポリンを導入し、「トランポビクス」(日本トランポビクス協会ホームページ)を5分程度行う。「トランポビクス」とは、一人用の小さなトランポリンの上で行う運動で、地面や床の上で運動するよりも身体にかかる負担が軽減されるため、年齢・能力を問わず健康増進運動を楽しむことができる。大きな効果として、トランポビクスでの大きな上下運動が血液やリンパの流れを活発にするため、生活習慣病の予防・改善も期待されている。また、トランポリンは優れた運動効果をもっており、ランニングの1.7倍のカロリーを消費でき、五分程度跳ぶことで一キロのジョギングに相当する(jump oneホームページ)。日比野(1976)によると、トランポリンは老若男女すべての人を満足させる全身運動であることから、今日では職場でもレクリエーションとして取り入れられており、職場での発展も期待できる、とされている。共通のエクササイズをすることで、その楽しさや辛さから連帯感が生まれ、さらに普段話すことのないような人との会話の糸口になると考える。

 このように問題を解決することの更なるメリットは、以前までは非公式コミュニケーションをとる場が少なかった非喫煙者もその機会を得ることができる点だ。日本たばこ株式会社(2017)によると、2017年5月の時点で国内の喫煙者率は、男性で28.2%、女性で9.0%となっており、男女合計でも18.2%と低い。つまり、たばこによる非公式コミュニケーションの機会は、会社の約2割の人々のみしか得ることができないのである。それに比べてエクササイズはどうだろうか。株式会社インサイト(2009)によると、「運動することが好きですか」という質問に、「好き・どちらかというと好き」と答えた人は男性で70%、女性で49%、男女合計で59%ということが分かっている。また、「どちらともいえない」と答えた人を加えると、男女合計で79%にまで上り、喫煙者の4倍の人々が非公式コミュニケーションの機会を得ることができると考えられる。また、非喫煙者は身体にも悪影響を及ぼすたばこを高い壁に感じるだろうが、健康にも良いエクササイズならば運動嫌いな人々もあまり壁を感じず、「試してみよう」と思えるのではないか。

 20年ほど前は社内での喫煙は普通とされていて、全社禁煙など考えられなかったが、現在は多くの企業が禁煙対策に取り組んでいる。こういった変化はたばこのメリットである非公式コミュニケーションの機会を奪ってしまうこともあり、気づかぬうちに企業へ損失をもたらす危険をはらんでいる。しかし、たばこではなく誰でも行えるエクササイズで代替することで、喫煙所で行われていたコミュニケーションより健康的に、より多くの人が非公式コミュニケーションの機会を得ることができるだろう。これからの時代、様々な環境の遷移が非公式コミュニケーションの機会を奪うかもしれない。しかし、今あるその機会が失われないような代替案を模索することで、環境の遷移をプラスの力に変え、会社の更なる発展に繋げられるだろう。

【参考文献】
五十嵐中 (2017) 「財政と健康の双方に寄与、より積極的なたばこ対策を」 『日経ビジネス』 1896, 92-93. 2017年6月28日閲覧,
独立行政法人国立がん研究センター (2010) 「受動喫煙による死亡数の推計について」
2017年6月28日閲覧, http://www.ncc.go.jp/jp/information/pdf/20101021_tobacco.pdf
日比野朔郎 (1976) 「トランポリン運動の体育学側面からの考察()」 『京都府立大学学術報告(理学・生活科学)』 27, (B), 43-48 2017年7月5日閲覧, https://kpu.repo.nii.ac.jp/index.php?action=repository_action_common_download&item_id=5300&item_no=1&attribute_id=19&file_no=1&page_id=13&block_id=17
星野グループ採用サイト 2017年7月5日閲覧, http://recruit.hoshinoresort.com/tabacco/tabacco.html
医療経済研究機構 (2010) 「禁煙政策のありかたに関する研究 〜喫煙によるコスト推計〜 報告書」 2017年7月12日閲覧, https://www.ihep.jp/publications/report/search.php?dl=26&i=1
jump oneホームページ 2017年7月5日閲覧, https://www.jumpone.jp/
株式会社インサイト (2007) 「運動/スポーツについてのアンケート」2017年7月27
日閲覧, http://www.insearch.jp/sapporo/report/Report_090928.pdf
松岡利昌 (2014) 「理想の分煙環境を考えるvol.2」 『日経BPインフラ総合研究所リポート』 2017年7月27日閲覧, http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/infra/pdf/bunen01.pdf日本たばこ株式会社 (2017) 「全国たばこ喫煙者率調査」 2017年7月27日閲覧, https://www.jti.co.jp/investors/library/press_releases/2017/0727_01.html
日本トランポビクス協会ホームページ 2017年7月27日閲覧, http://www.trampobics.jp/

くまざき(2年)

コンビニの人手不足解消に向けて

 千葉・内藤(2017)によると、厚生労働省が発表した2017年4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.48倍であり、これはバブル期の1990年7月に記録した1.46倍を超える高水準である。これは、労働需給のギャップが有効求人倍率を押し上げ、人手不足感が強まっているということだ。それはコンビニも同様である。和気・伊沢・新宅(2017)によると、ファミリーマートで加盟店の8割が人手不足を訴えている。そのため、留学生の採用に注力しており、全国約20万人のアルバイトのうち約1万人が外国籍となっている。

 これに対して、コストを抑えて店舗の作業を減らす切り札として、電子タグを使う方式が有望視されている(杉原・藤村, 2017)。実際、2017年4月に経済産業省とコンビニ大手5社は、2025年までの目標として「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を公表した。これは、店舗で取り扱う年間1000億点の商品すべてにRFIDという電子タグを取り付けるというものだ。RFIDは無線通信技術に対応しており、バーコードを読み取らなくても金額が計算できる仕組みである。メリットとして、レジ打ち要員が不要となること、在庫状況も即座に把握できるようになること、品出しや棚卸しの負担を減らすことが挙げられる。

 以上のように言われているが、電子タグの導入は本当にコンビニの人手不足解消につながるのだろうか。私は現在のところはつながらないと考える。理由は2つある。1つ目は電子タグの実現可能性である。杉原・藤村(2017)によると、現在、パッケージに直接印刷するタイプのタグは存在しないので、シール状のタグを1枚ずつ手作業で付けなければならないといった課題がある。これを解決するためには、商品を作っているメーカーが多額の開発・設備投資を行わなければならない。しかし、電子タグの導入により、人手不足解消などのメリットを享受できるのは小売りであるコンビニである。メーカーにとって協力するメリットが少なすぎるので、現実的ではないと考える。また、単価が安い商品にもタグを付けるので、現時点で電子タグが1枚10円程度であることを考えると、コスト面でも問題が残る。

 2つ目は、電子タグのメリットであるレジの無人化についてである。コンビニでは商品の購入だけでなく、公共料金の支払いや宅配便の受け取りなどのレジ打ち以外の業務もある。また、切手やタバコ、ライブのチケットなど店頭に置いていない商品、おでんや肉まん、フライドチキンなどタグを付けられない商品もある。これらのことから、タグを導入したとしても、結局はレジに人手が必要なことに変わりはないため、タグのメリットがあまり活かせないと考える。よってコンビニに電子タグを導入しても、人手不足は解消されないのではないのだろうか。

 さらに最近、電子タグとは違う方法で無人レジを実現するものとして、「Amazon Go」が注目されている。加谷(2016)によると、これはスマホに専用アプリをダウンロードしておくと、店内で手に取った商品が自動的にアプリの買い物カゴに入り、そのまま店を出ればアマゾンのアカウントで課金されるという仕組みである。しかし、これはアマゾンがコンビニ業界に進出するという話であるため、現在問題になっている既存のコンビニの人手不足解消にはつながらない。

 では、コンビニの人手不足を解消するにはどうすればよいのだろうか。私は、従来のバーコードを用いたセルフレジの導入とAI(人工知能)・ロボットの導入の2つを用いて、この問題に取り組むべきだと考える。まずは、セルフレジの導入について考えてみる。セルフレジとは、顧客が自分で商品のバーコードをスキャンし、会計を済ませる仕組みだ(川又, 2008)。これは、既存のバーコードで利用できるので、セルフレジ用の機械を導入するだけで済む。つまり、電子タグの導入と比べてコストがあまりかからない。また、電子タグのセルフレジにも当てはまることだが、レジが複数あったとしても、レジ打ち以外の仕事をする店員が1人いれば十分だと考えられる。セルフレジなのでレジ打ち要員は不要であり、常に複数台のレジが使われているわけでもなく、またレジ打ち以外の業務がいつもあるわけでもないからだ。よって、レジ前の人手を削減することができる。セルフレジは、コンビニ業界ではすでにNewDaysが導入しているので、他のコンビニ各社も続くべきだ。

 もう1つの解決策のAI・ロボットの導入についても考えてみる。島津・武田・小笠原・山崎(2017)によると、ローソンが2015年10月までに発注業務をAIで支援する「セミオート発注システム」を導入したそうだ。これは各店舗の販売実績や天候、顧客情報などを基にAIが分析し、発注すべき品目と商品数を算出するものである。これにより廃棄ロスの削減だけでなく、業務時間の短縮につながるので、人手不足を解消する一手となるだろう。さらに日本経済新聞(2017)によると、産業技術総合研究所は、AIとロボットを駆使したコンビニエンスストア向けのシステムを開発している。AIが購買履歴から売れ筋商品を発注して管理する。一方で、商品の補充や陳列棚への配置などの作業をロボットが担うというものだ。AIはセンサーやカメラを使って店内の様子や客の行動を学習し、ロボットが効率的に動くルートなども探す。2018年までに実証実験し、改良を進めて20年の東京五輪で披露する計画である。これによって、発注業務の短縮だけでなく品出しの仕事がなくなり、人手を削減できる。

 冒頭で述べたように、人手不足はコンビニ業界だけでなく小売業界全体の問題だ。私は、今回提案したセルフレジの導入やAI・ロボットの導入は、スーパーマーケットでも可能であると考える。スーパーマーケットはコンビニと同様、多品種・低価格の商品を取り扱っているからだ。そして実際、スーパーマーケットでもセルフレジとAIの導入がすでに始まっている。まずはセルフレジの導入についてだが、こちらはすでにスーパーマーケットではよく見かけられる。だがコンビニと異なる点は、NewDaysが導入しているフルセルフレジだけでなく、会計のみを顧客が行うセミセルフレジを導入している店舗もあるということだ。スーパーマーケットに買い物に来る顧客はコンビニと比べてたくさんの商品を買う場合が多く、バーコードの読み取りで時間がかかりレジが混雑してしまう。そこで、手慣れた従業員が読み取りを行うことで、レジでの混雑を避けることができる。そのため、私はスーパーマーケットではフルセルフレジよりもセミセルフレジの方が良いと考える。次にAIの導入についてだが、こちらも一部のスーパーマーケットでは既に導入されている。IT Search+(2016)によると、広島などでスーパーマーケットを展開するハローズが2016年4月時点で、tdiの需要予測型自動発注ソリューション「SINOPS-R」を70カ所の店舗および物流センターで導入した。スーパーマーケットの発注は、コンビニと比べてバックヤードが広いので発注の頻度は少ない一方で、店舗が広いため発注の量は多い。そのため、1回にかかる発注の時間も長くかかるので、AIの導入によって発注にかかる人手も時間も削減できる。最後にロボットの導入についてだが、店舗の広いスーパーマーケットでは通路も広いので、ロボットが動くスペースも確保しやすいのではないかと考えられる。ロボットを導入すれば、品出しや棚卸しの人手を削減できるだろう。特に、商品の中には重くて人の負担が大きいものもあるので、ロボットで代替したほうがよい場合もあると考える。ロボットはコンビニでもまだ実用段階ではないが、実用化に向けて開発していくべきだ。このように導入していけば、スーパーマーケットでも人手不足解消につながるだろう。

 コンビニでは、レジ打ち、発注、品出しなど、店員のやらなければならない仕事が多い。そのため、仕事量に対して人手が足りていないのが現状だ。この問題を解決するために新技術を導入したとしても、莫大なコストがかかるし、新技術のコストを抑えられるようになるまでも時間がかかる。そこで、従来のバーコードを用いたセルフレジやAI・ロボットを導入すれば、コストを抑えつつ人手や時間を削減できる。人手不足を人以外で補うことも、問題解決の一手となりえるのではないだろうか。

【参考文献】
千葉卓朗、内藤尚志 (2017)「人手不足、各業界が危機感 求人倍率1.48倍、バブル期超え」『朝日新聞』2017年5月31日朝刊,6.
IT Search+ (2016)「スーパーマーケットのハローズ、需要予測型自動発注システムを導入 [事例]」 https://news.mynavi.jp/itsearch/article/bizapp/1451 2017年7月9日閲覧.
川又英紀 (2008)「セルフレジ」『ITpro』http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Keyword/20071026/285626/?rt=nocnt 2017年6月29日閲覧.
加谷珪一 (2016)「アマゾンがコンビニ進出! Amazon Goは小売店の概念を 180度変える」『ニューズウィーク日本版』http://www.newsweekjapan.jp/kaya/2016/12/amazon-go180.php 2017年6月13日閲覧.
日本経済新聞(2017)「AIが発注・ロボが陳列 産総研、コンビニ向けにシステム」 2017年2月26日. http://www.nikkei.com/article/DGXLZO13400200W7A220C1TJM000/ 2017年6月13日閲覧.
島津翔、武田健太郎、小笠原啓、山崎良兵 (2017)「AI世界制覇の攻防」『日経ビジネス』1892,39.
杉原淳一、藤村広平 (2017)「人手不足の救世主、普及に壁」『日経ビジネス』1893,14-15.
和気真也、伊沢友之、新宅あゆみ (2017)「人手不足、各業界が危機感 求人倍率1.48倍、バブル期超え コンビニ、留学生頼み/パナ、介護事業見直し」『朝日新聞』2017年5月31日朝刊,6.

ことう(2年)

少子化対策と託児推進の矛盾について

 現在日本の人口は約1億2000万人であるが、厚生労働省(2010)の推計から、2060年には9000万人に割りこむとされている。方野坂・青野(2017)によると、この人口減少で問題となるのが労働力不足の問題である。そのため様々な企業で労働力不足についての対策が迫られている。

 その1つの案として、青野氏は近年働く女性が増えていることから、女性が主に担うことの多い家事・育児は外部の力であるベビーシッターを活用すべきであると主張する。「男は仕事」という古い考えの人は今でも多く、青野氏はこの男性の意識の改革には時間がかかるという。それよりも、公費や補助金を投入し、安価な託児サービスを利用できるようにし、個人の利用負担を少なくすることで、家庭内の家事・育児が軽減され、少子化対策につながっていくのではないかと主張している。

 私は、少子化対策のためにベビーシッターのような外部の力を利用する、という青野氏の考えには賛成である。厚生労働省(2015)によると、有配偶女性(25〜44歳)の就業率は年々増加しており、平成26年には60%以上の有配偶女性が就業している。不安定な所得のため共働きせざるを得なくなっている夫婦が増え出産に踏み切れないために、出生率が低下しているのだ(加地,2009)。しかし、ベビーシッターを利用することで、女性の家事・育児の負担を少しでも減らすことができれば、女性が子どもを産み育てる余裕が出て、そしてそれが出生率の増加へとつながる。また、女
性が外で働きやすくなるので、現在問題となっている労働力不足を補うこともできると私は考える。

 このように家事・育児に外部の力を活用するにはお金がかかる。しかし、すべての家庭に外部の力を利用するためのお金を出す余裕があるわけではない。そこで国や自治体など公益資金による援助が必要となってくる。その資金の投入先として、2つのパターンがある。1つ目は資金がサービスを利用する側に投入される場合であり、2つ目は資金がサービスを行う側の方に投入される場合である。

 1つ目のパターンは、児童手当のように、サービスの利用援助を目的とした利用者側への資金の投入である。実際内閣府の子育て支援制度では、ベビーシッターを利用する側の金銭的負担を減らすことができるよう、サービス利用時に使うことができる割引券を配布している。利用者は国が指定した託児サービス所ならば、この割引券を使用することができる。この場合、確かに利用者側の金銭的負担は少なくなるであろう。

 しかし、私はこの資金の投入の仕方では少子化を止められないと考える。なぜなら、今後女性の社会進出が進み、子どもを預けたいという親が今より増えた場合、子どもを預かる側の人手がさらに足りなくなると考えるからである。資金があっても子どもを預ける場所がなければ、結局親は子どもを預けることができず、こうした不安から少子化はさらに加速するのではないだろうか。現在でも託児サービスを行う人の数が十分に足りているわけではない。厚生労働省(2015)によると、平成27年4月時点の保育所(1)待機児童数は、23,167人である。これは現在国が確認できている待機児童数であり、実際託児サービスを受けられていない子どもはもっと多くいる。託児サービスが充実しないと女性が子どもを産んでも働こうと思ったときに預けることが難しく、こうした不安が少子化をより進むと考える。

 ではどのように資金を投入すれば少子化対策につながるのであろうか。私はベビーシッターの人数を増やすことが必要だと考える。女性が今後さらに社会進出し、子どもを預ける人が増え、新たにサービスを利用しようとしても、ベビーシッターおよび保育に従事する人の数が十分ではないので、結局働くことができない。そこで人数を増やすべく、ベビーシッターの賃金を上げるために資金を投入していくべきであると考える。賃金を上げることで、多くの人にこの業界の魅力を感じてもらうためだ。

 全国保育サービス協会(2015)によると、2015年における1時間あたりのベビーシッターの賃金の平均は1,332円である。これは、私たち大学生がしているアルバイトの自給とほとんど変わらない。ベビーシッターは小さな命を直接的に預かるという点で責任の重い仕事であるにもかかわらず、十分な給料がもらえていないのである。

 実際、保育者の賃金を上げることで人材の確保に成功した例もある。千葉県船橋市では、保育士の人数を確保するために、2016年より市から保育士に対する金銭的支援を行い始めた。そのメニューは、「月々の家賃補助」、「修学資金の貸付」、そして船橋市が独自で行っている「ふなばし手当」の3つである。このふなばし手当とは、船橋市内の私立保育園、認定こども園、小規模保育事務所に勤務すると、給与の上乗せとして月額32,110円、期末手当71,460円(年間計456,780円)の手当が受けられる。この支援制度を導入した結果、船橋市は今まで集められなかった保育士の人材を確保することに成功した。

 このことから、賃金を上げることは業界に人を集めることにおいて即効性があったと言える。このように賃金を上げることで保育に従事する人が増えれば、今でも十分に需要を満たせておらず、今後さらに足りなくなるであろう保育に従事する人が増える。親が確実に子どもを預けられるようになることで、女性は安心して子どもを産み育てていこうと思え、出生率は上がる。こうして少子化対策につながっていくのである。

 ただ、このようなベビーシッターの賃金上昇のための補助金には、多くの税金を投入しなければならないと考えられる。日本は高齢化問題など様々な問題を抱えており、資金を必ずしも子どもや子育てのためだけに使えるわけではない。しかし、こうした厳しい状況でも少子化対策のために資金を投入している地域はある。例えば、福井県は都市部に比べ高齢者も多く、様々な財政的問題を抱えているが、子どものために資金を投入することを強く進めている。その結果、厚生労働省(2014)によると現在出生率は他県に比べ高い。また、福井県は25〜44歳の育児をしている女性の都道府県別有業率が全国2位と、高水準を保っている(総務省統計局,2012)。この福井県の対策のように、日本全体でも少子化対策を最優先に資金を投入することが必要である。

 このように少子化対策には、賃金を上げ、ベビーシッターの人数を確保することが必要である。そしてそのためには、国や自治体などが資金を援助していくことが重要となってくる。保育に従事する人の数を確保し、子どもを預かる側の供給が増えることで、親が子どもを産み育てていくことができ、出生率は上がる。また、女性が外へ出て働く余裕ができるため、今ある労働力不足の問題にも即効性があるといえるであろう。未来を担っていく子どもを増やすこと、子どもを育てやすい且つ子どもが育ちやすい環境を形成していくこと、またそれを支えるための親の負担を減らす援助をしていくことは、喫緊の課題である。

 (1)ここでいう保育所とは、2015年4月に施行した「子ども・子育て支援新制度」において新たに位置づけられた幼保連携型認定こども園などの特定教育・保育施設(幼保連携型認定こども園、幼稚園型認定こども園、地方裁量型認定こども園)と特定地域型保育事業(小規模保育事業、家庭的保育事業、事業所内保育事業、居宅訪問型保育事業)(うち2号・3号認定)の数値を含んだものとなる。

 
【参考文献】
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ふじさわ(2年)

シェフ型ビジネスにおける社内ベンチャーの有効性

 林(2016)によると、大手化学メーカーは自動車・電機メーカーなどの大口顧客の要望に応じた素材・技術を供給するスタンスをとるのが一般的であるが、三井化学は大量発注を見込みづらいベンチャー企業に自らアプローチをかけている。このように、三井化学が目指す戦略の転換は「農場型研究からシェフ型研究」への転換と言われている(林2016)。これは、樹脂やゴムなどの部品を開発するだけではなく、顧客との複数回のやりとりを行い、好みに合わせて改良し、提供することである。そして、三井化学は自ら企業にアプローチをかけて製品の開発や技術の提供を行い、一般の化学メーカーがあまり取引しない業界の相手が訪れる見本市に出展するなどの活動を行っている。
 
 私は、このように三井化学がベンチャー企業に自らアプローチをかけていく戦略には賛成である。その理由は2点ある。1点目はトップの強いリーダーシップ、2点目は今後発展が見込める市場を対象とした事業展開である。ベンチャー企業は大企業と比べると簡素な組織で意思決定が迅速に行われる(経済産業省2008)。このようなベンチャー企業のスピード感によって、シェフ型研究を行っている1つのプロジェクトに対する時間の削減が見込まれる。また、大企業は規模が大きい市場で事業を展開していることが多く、収益の見込みづらい規模が小さい市場では事業を展開しにくい。その点、ベンチャー企業は、規模の小さな市場でも収益を上げやすい。従って、三井化学にとってベンチャー企業と協同することは、規模は小さいが成長の見込まれるような市場において、仮に大企業が参入して来た際、競合他社よりも先に供給先としての権利を得やすくなると考える。

 また、ベンチャー企業の側から考えても、豊富な資源を保有する三井化学と組むことができれば、経営資源の不足というベンチャー企業の弱み(経済産業省2008)を解消することができる。さらに、林(2016)で挙げられているように、三井化学のシェフ型ビジネスは、顧客であるベンチャー企業の要望に応えて部品・製品開発を行うので、ベンチャー企業が抱えている技術面の問題を大企業の豊富な経営資源を用いて解決することができる。そして、三井化学と共同で開発することができれば、ベンチャー企業自身のブランドだけでなく、共同で開発した三井化学のブランドも用いることができる。このことにより、商品の信頼度を向上させることができ、商品を展開していく際にプラスに働くと考える。これらの理由から、ベンチャー企業も三井化学と共同で開発するメリットがあると考える。

 しかし、三井化学はベンチャー企業と組むことで、必ずしも安定的な収益を上げられるというわけではない。なぜならば、ベンチャー企業は大企業と比べて規模や生産高の面で劣るので、大口顧客のような安定した供給先には成りえないからである。では、三井化学はどのようにして収益を獲得していけなければならないのだろうか。

 そこで、私は三井化学がベンチャー企業だけではなく、大企業の社内ベンチャーに積極的にアプローチをかけていくことを提案したい。なぜなら、ベンチャー企業にない強みを社内ベンチャーが保持しているからである。ベンチャー企業にはない社内ベンチャーの強みとは、大企業の一部であることのブランド力、資源の豊富さ、研究開発の面でのリスクの小ささ(原山・氏家・出川2009)である。例を挙げると、大企業の社内ベンチャーはベンチャー企業よりも経営資源が豊富であり、このことは三井化学にとって有利に働くと考える。仮に共同開発した製品の需要が高まった時、ベンチャー企業では資金調達に時間がかかるが、大企業の社内ベンチャーであれば、迅速に投資を受け市場の需要に合わせて製品を生産できる可能性が高い。このことから、三井化学は社内ベンチャーと組むことで、ビジネスのチャンスを拡大できる可能性が高まるのではないだろうか。

 加えて、三井化学は大企業の社内ベンチャーと協同で研究・開発をすることで、単独のベンチャー企業と行うよりも、より多くの販売先を確保できる可能性が高まると考える。ベンチャー企業と開発を行った場合、販売先と成り得るのはベンチャー企業単独になることが多く、販売先を広げるのは困難だ。しかし、大企業の社内ベンチャーと開発を行った場合、開発した素材の販売先として、大企業の社内ベンチャーだけでなく、その大企業と取引をしている企業も販売先として見込むことができるのではないだろうか。これによって、シェフ型研究の問題である、収益の確保が困難である点を解決することができるだろう。

 そして、この提案は三井化学だけでなく開発系のメーカーにもメリットになると考えている。仮に、開発系のメーカーが安定した供給先を確保していたとしても、それは成長ではなく、顧客の維持にすぎない。企業が長期的に成長していくためには、新規事業で収益を確保していく仕組みを作っていかなければならないのである。私はその手段として、オープンイノベーションを活用することが適していると考える。なぜなら、イノベーションを起こすのに役に立つ知識は広く分散(Chesbrough,Vanhaverbeke,West 2008)しており、社外にあるその知識を利用することはイノベーションを起こして新規事業を生み出していく上で有効であるからである。

 このように、自社だけでなく社外にも重きを置いている点はシェフ型ビジネスとオープンイノベーションの考え方双方が類似している。しかし、シェフ型ビジネスはオープンイノベーションと比べて自らアプローチをする点で積極的である。自ら社外にアプローチをしていくことで、受け身の姿勢でいるよりも多くの社外のリソースを活用する機会が増加し、新規事業の獲得につながると考える。そのため、シェフ型ビジネスを活用することは、三井化学だけでなく開発系のメーカーにとっても企業の長期的な成長と新規事業の獲得の点で有効な手段になるだろう。実際に、日本企業は今、「外」に活路を求め、従来の殻を打ち破る必要がある(日本経済新聞 2014)と言われており、研究解発にもかつてないほどのスピードが求められている(星野 2015)。今後、開発系のメーカーにとって、資源が豊富でスピード感溢れる大企業の社内ベンチャーへシェフ型ビジネスの様に自ら積極的にアプローチをしていくことが必要になってくるのではないだろうか。

【参考文献】
原山優子,氏家豊,出川通 (2009) 『産業革新の源泉:ベンチャー企業が駆動するイノベーション・エコシステム』白桃書房
林英樹 (2016) 「三井科学 素材を「発明の友」に」『日経ビジネス』1850, 58-62
Henry Chesbrough,Wim Vanhaverbeke,Joel West (2006).Open Innovation : Reserching a New Paradigm 邦訳,長尾高弘 (2008) 『オープンイノベーション;組織を超えたネットワークが成長を加速する』 英治出版
星野達也 (2015) 「研究開発の自前主義に訪れた限界」 『日経テクノロジーonline』
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20150701/425842/?P=1 2017年4月5日閲覧
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http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD02H77_S7A200C1DTB000/ 2017年2月5日閲覧

のきぐち(3年)

現在の教育現場にロボットは必要か

 最近、企業の受付で人型ロボットのペッパーを見かけることが多々ある。斉藤(2016)によると、2015年6月にソフトバンクグループから誕生したペッパーは、感情認識ロボットである。収集したデータにより自律的学習を行い、声や表情に反応して、自身の感情や対応を変えることができる。そしてこの感情は胸にあるパネルに色で表示される。これまでもiPhoneやiPadに対応していたが、2016年5月には米グーグルと組んで「アンドロイド」に対応させると発表した。これにより、iPhoneだけでなくアンドロイド向けのアプリがペッパーでも使えたり、個人や企業によるアプリの提供を促すことができるようになった。この結果アプリが増加し、ペッパーのできる可能性が広がるので、より人間に身近な存在になると期待されている。

 そんなペッパーの活用として、2016年3月に豪州のクイーンズランド州政府と了解覚書を締結した。これによりクイーンズランド州の小学校など教育の現場にペッパーを導入することなどが想定されている。つまり教育現場にロボットが進出してきているのである。

 教育現場には大きく2つの問題点があると私は考える。1つ目は集団教育についてである。集団教育のデメリットについて、文部科学省(2016)は教師が生徒の学習・行動把握することの難しさを指摘している。学習把握について私の経験では、勉強に追いついていけず分からないままの状態が続き、テストをカンニングすることによって理解度をごまかす生徒が周りにいた。また行動把握については、先生が問題のある子に関して構い過ぎてしまい、それ以外の子に目が届かず、不登校の生徒を生み出してしまった。教師からは、生徒の理解度のばらつきが大きいのでどの層を中心に教えれば良いのか分からないといった声や、子供1人に使える時間が少ないので、生徒の家での様子など把握できないという声もある。このように教師が学習把握や行動把握の難しい状況が続いては、文部科学省の期待する教育の質の向上は出来ないのではないだろうか。2つ目は人件費についての問題である。学校法人が経営破綻に陥る原因として、学校法人活性化・再生研究会(2007)は、経営費用が多く掛かってしまうことを挙げている。経営費用の中で大きな比率を占めているのは人件費である。まず精神疾患による休職者は、文部科学省のデータによると年々増加傾向にある。要因として、生徒指導の際に生徒が話を聞かない、またその指導に関して保護者が苦情を言うといった生徒と保護者の多様化が一番に挙げられている。これにより教師の負担が増加し、場合によっては精神疾患になってしまうというのだ。教師の中でも高齢になるほど休職者の人数の割合は多い(文部科学省,2014)。給料が高い高齢の教師が精神疾患になることによって、休業せざるを得ない状況にある高給教師への費用負担と、代替の新任教師を探さなければならない費用の二重負担が生まれてしまう。これでは人件費を削減することは出来ない。

 ではロボットが教育現場に進出すればこの2つの問題は解決できるのだろうか。例えばペッパーで解決することを考えてみたい。

 まず1つ目の集団教育についてである。学習把握については、ペッパーがインターネットとつながっているため、人間よりも多くの情報を収集し、その妥当性を高めながら教えることができる。また生徒が分からなかった問題を人工知能で把握し分析することによって、生徒個々に合った課題の作成をすることができる。行動把握については、感情認識の機能がついているため、生徒の表情によって理解度や日々の態度の変化についても把握することができると考えられる。2つ目については、ペッパーを導入することで人件費を削減することができる。ペッパーの本体価格が約20万円。メンテナンス費用が年に30万円で、通信費用などが年に約50万円。合計で年に100万円である。一方高校教師の年収は約706万円で、ペッパーを7体購入できるのだ。

 これらのことより、私はペッパーの教育現場への進出を推奨したい。しかし、教師の行うこと全てをペッパーで代替することは出来ないと考える。その理由は3つある。1つ目は、ペッパーはその場の表情や行動から感情認識するため、因果関係などを理解できないからである。人間は物事の因果関係などを理解して感情を認識する。しかし、ペッパーはその時の情報しか分からないため、感情認識の方法が一方的である。実際にペッパーが感情認識を行う際には、「相手によって千差万別、定量化やパターン化が十分にはなされていない。たくさん会話をして、相手が笑ったり怒ったり落ち込んだりするのを認識・分析する」(神崎,2015)。つまり、初対面の人に対して反応したり、急に感情が変わることに対応したりすることができない。これは人間にある洞察力と傾聴力が不足しているということだ。2つ目は、即時対応ができないからである。実際に新宿のSoftBankでペッパーと会話をしてみたところ、プログラミングされているような内容には対応できるが、子供の「抱きついてほしい」という要望には答えられなかった。また、私が話しかけても返事が返ってくるのに時間が掛かってしまった。つまり、急な行動の変化に現在のペッパーの情報処理能力では対応できないのである。3つ目は、同時認識に限界があるからである。ペッパーが同時に認識可能な人数は10人程度である。そのため、集団教育で1クラス40人程度の場合、ペッパー1体が全員を同時に認識することは不可能だ。以上よりペッパーが教育全部を担当するというのは難しいことと私は考える。

 それではどのようにペッパーを教育現場で利用するのが良いのだろうか。私は、教科担当補助としての利用が望ましいと考える。なぜならば、ペッパーは学習の多様性に対応できるからである。例えば数学の因数分解で考えてみよう。因数分解は公式が多く、また解き方も多様である。そのため現状の集団教育では生徒1人1人の理解度に対応できないため、途中で分からなくなってしまう生徒と分かる生徒の理解度の差が広がる。しかし、ペッパーは人工知能により生徒が以前解いた問題から間違えの傾向を割り出すことができるし、生徒個人の苦手を認識できる。したがって生徒1人1人に解き方についてのヒントを提示することができる。このように学習把握をペッパーに行わせることによって、問題のある子に対して教師がかけられる時間が多くなり、行動把握を行えるようになる。しかも、人件費を考えてもペッパーが三体いた方が教師を1人雇うよりも安価である。これによって現状で行えていなかった教育の質の向上につながるのではないだろうか。

 現在の集団教育が行われている状況では、保護者と生徒の多様化により教師の負担が大きく、教育の質の向上を求めることは難しい。しかし、ロボットを導入すれば、即時に情報収集を行ったり、生徒1人1人の理解度を把握したりして対応することができる。その分人間は、ロボットが対応できない人間関係の構築や心情の問題に対応する時間を確保できる。このように両者が得意なことを行い、教育現場で助け合っていけばお互いに足りない部分を補完することができるようになる。つまり教育現場にロボットは必要なのである。

【参考文献】
神崎洋治(2015) 「Pepperの衝撃!パーソナルロボットが変える社会とビジネス」http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20150604/1065043/ 2017年1月15日閲覧.
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斉藤美保(2016)「脱ガラパゴスへ、海を渡るペッパー」『日経ビジネス』1843,16.

おの(2年)

日本自動車メーカーの将来に向けて

 清水(2016)によると、トヨタ自動車やGMといった世界の大手自動車メーカーやグーグルやアップルなどの自動運転車の製造に取り組んでいる企業は、自動運転車に必要不可欠なAIやロボットに関する優秀な技術者の囲い込みを行っているという。また、斉藤(2016)は、日本の企業から、AIやロボットに関する優秀な人材が世界の企業に引き抜かれているという。その要因として、日本の雇用形態や報酬制度を挙げている。

 島津(2016)によると、トヨタ自動車は米国でAI技術の研究・開発を行うトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)を設立し、CEOにAI分野で「米国の至宝」とまで言われているギル・プラット氏を採用することで、次々に著名なAI研究者の引き抜きに成功しているという。さらに、島津(2016)によると、プラット氏は「トヨタは製造業では世界トップ。カイゼン文化やトヨタ生産方式などの宝物を持っている。ただし、ソフトウェアの開発には別のプロセスが必要。トヨタはそれに気付き、より迅速に動ける子会社(TRI)を作った。ソフトウェアの開発に必要な、迅速な文化を採用したのだ」と述べているという。トヨタ自動車は、グーグルやマイクロソフトなどの大手IT企業が優秀なIT人材の囲い込みを行っているなか、豊富な資源と業界内の地位を活かして優秀な人材を獲得していたのである。また、日本の雇用形態や報酬制度の問題を、アメリカに子会社をおくことで解決していた。

 一方、スバルやスズキなどの日本の自動車メーカーは、ギル・プラット氏の言うようなAI技術のみを扱うような海外子会社を持っていない。したがって、自動運転化の流れに迅速に対応できるプロセスといった環境は整っていないのである。一般に大規模なソフトウェア開発はアウトソーシングで行われているといわれる。しかし、将来自動運転化が進むなかで、ソフトウェア開発というコア・コンピタンスとなりうる部分を他社に委託してしまっては、現在のような業績を得ることは難しくなるだろう。以上のことから、スバルやスズキなども優秀なIT人材を確保していかなければならない。

 ところが、トヨタ自動車のような企業に比べて経営資源の少ない自動車メーカーが、優秀な人材を確保していくことは難しい。なぜなら、トヨタ自動車と同じようにアメリカに子会社を置きソフトウェア開発の環境づくりをしようとしても、報酬の面で経営資源の差が顕在化してしまうからである。しかも、トヨタ自動車のような自動車メーカーだけでなくグーグルなどのソフトウェアの研究開発を専門とする企業に対して人材の確保の競争で優位に立つことは難しい。世界中の優秀なIT人材が最先端の技術を持つアメリカに流れている中、アメリカで人材の確保ができないということは自社の競争力の低下になりかねない事態である。しかしながら、このままソフトウェア開発に向けての環境づくりをせずにいると、優秀なIT人材の確保だけでなくIT人材自体の確保にも苦しむことになってしまうと考える。なぜなら、「2030年には国内のIT人材数が85.7万人なのに対し、不足数は78.9万人に上ると予測している」(経済産業省 2016)というからだ。したがって、なにも行動を起こさないままでいると、トヨタ自動車に比べて経営資源の少ない自動車メーカーは衰退の一途をたどりかねない。

 そこで、私は将来のIT人材の確保を見据えて、トヨタ自動車以外の日本自動車メーカーに、ソフトウェア研究・開発専門の子会社をインドに設立することを提案したい。

 インドである理由は4つある。1つ目は圧倒的に人件費が安いからである。インド日本商工会(2012)によると、インド人上級エンジニアの平均月給は38,142ルピーだという。これを日本円に換算すると(2016年10月3日14時現在1ルピー=1.52円)約5万円である。DODA(2015)によると、日本の社内エンジニアの平均年収が512万円であり、単純に計算すると彼らの平均月収は約42万円となる。したがって、インド人上流エンジニアと日本の一般エンジニアを比べたときに報酬にかなりの差があるといえる。さらに今回獲得しようとするインドの一般エンジニアを考えた場合、彼らを雇用するには上記に記載した上級クラスの報酬よりもずっと少なくなると考えられる。

 2つ目は、日本よりもインドのほうが圧倒的にIT人材の数が多いからだ。IPA(2010)によると2009年時点でインドには約145万人のIT人材がいるのに対し日本には約75万人しかいない。近年のインドのIT産業のすさまじい発展と日本のIT産業の現状を見ると、2016年現在ではもっと人数の差は開いているだろう。ここに他社よりも早く進出しておくことで、将来足りなくなってしまうエンジニア自体の確保を先に行うことができるだろう。

 3つ目は、報酬形態を日本型のものから変えやすいからである。現在日本では年功序列型の賃金形態が一般的であり、国内で急に変えることは難しいと考えられる。一方、これから需要の高まっていくIT人材を獲得するうえで人件費の高騰が予想されるが、日本型の報酬形態のままでは若く優秀なインド人を高額で獲得するのは難しい。しかし、日本ではなくインドに子会社を置くことで、そのような人件費の高騰に対応可能な報酬形態を採用しやすいといえるだろう。また、為替も現在ルピーに対して円高であることから、日本企業は現地で高額な報酬でも払いやすいだろう。

 4つ目は、雇用形態を日本型のものから変化させやすいからだ。濱口(2013)によると、日本の雇用形態の特徴は「職務も労働時間も勤務場所も契約で限定されておらず、無限定、すなわち使用者の命令でいくらでも変えられてしまう」メンバーシップ型であり、異動や転勤が多い。しかし、研究者に異動や転勤をさせてしまっては、それまでの知識やノウハウをその研究から奪ってしまうことになるこれでは専門性の高いソフトウェア技術の研究・開発の遅れが出てしまうという弊害をもたらすこととなる。これでは、急速に進むソフトウェア研究・開発の中で遅れをとってしまうことになるのではないだろうか。そこでインドに子会社を置き、メンバーシップ型とは異なった雇用形態を採用することで、研究・開発をスムーズに行うことができるのではないだろうか。

 最後にソフトウェア研究・開発専門である理由だ。IPA(2010)によると、インドはオフショア市場が発達したため、ソフトウェア開発技術に長けているという。また、スズキやスバルといった企業群は、すでに製造に関わる拠点をインドに持っている。子会社を独立させてしまうと最後にはソフトウェアとハードウェアの接合部分で問題が起きることもある。しかし、すでに生産拠点を持っていれば幾分か研究・開発のフロントローディングを可能にし、生産コスト削減につながるのではないだろうか。

 IPA(2016)によると、「近年、ソフトウェアの大規模化と複雑化、急変な社会環境変化に伴う開発期間の短縮化、さらには社会システムの役割の増大により、ソフトウェア開発の信頼性、生産向上に対するニーズはますます高まっている」という。このような状況下において開発期間を短縮化し、なおかつ生産性を向上するためには、限られた優秀な人材よりも、一定程度以上の人員の確保が必要となるはずだ。なぜならば、ソフトウェア開発は人が行うものであり、人間の生産性には限界があるからだ。したがって、「自動車」の時代から「自動運転車」の時代に変わっていく中で、歴史のある日本の自動車メーカーが経営資源の差を補い業界内の競争に加わり続けていくために、インドでソフトウェア開発専門の子会社を設立し安価な労働力を確保することが1つの手段になると私は考える。

【参考文献】
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みかだ(2年)

空き家ゼロの未来に

 林(2016)によると、2033年には、日本の住居人のいない空き家が総住宅数の30%を占めるようになると予測されている。国土交通省(2013)によると、ここ20年で空き家は倍増している。空き家にも、売却用の住宅、賃貸用の住宅、二次的住宅、その他の住宅の4つの分類がある。この中でも、賃貸または売却の予定がなく、別荘等でもない「その他の住宅」が増加している。その他の住宅は、使い道がないので、管理が不十分になってしまう。このように空き家の管理が不十分となると、倒壊、屋根・外壁の落下、火災発生のおそれなどの防災性の低下、犯罪の誘発などの防犯性の低下、ゴミの不法投棄、衛生の悪化、風景、景観の悪化などの外部不経済が生まれる。
 
 これに対して国も対策をしていないわけではない。その目玉の一つが、空き家の物件情報を提供する「空き家バンク一元化」である。空き家バンクとは、空き家の賃借・売却を希望する人から申し込みを受けた情報を、空き家の賃貸や購入を希望する人に紹介する制度である。これまで、この空き家バンクは自治体ごとに運営されてきたが、新たに民間の不動産情報提供会社と提携することで、ネット上で一か所に空き家情報を集約することになった。これにより住宅購入希望者とのマッチングを強化する狙いがある。
 
 しかし、空き家バンク一元化だけでは不十分だと私は考える。なぜなら、空き家というのは中古住宅になるのだが、そもそも中古住宅の購入を考えていない人が多いからである。実際、平成23年から24年にかけての中古住宅の成約件数が約1万件(公益財団法人東日本不動産流通機構 2016)なのに対して、同年の新築住宅着工数が約84万件(国土交通省 2011)。すなわち、日本では中古住宅市場というのは活性化していないと言える。したがって、空き家バンク一元化をしても空き家問題は解決されないのだ。さらに、2013年の総住宅数は6063万戸、既に総世帯数の5245万戸(総務省統計局 2013)を大幅に上回っている。加えて、年90万戸の住宅が新たに造られ続けている。このような供給過剰問題を解消しない限り、空き家問題を解決に導くことは出来ないのだ。
 
 では、この空き家問題をどのように解決していけばいいのだろうか。私は空き家になれば、その家屋は解体するべきだと考える。その理由は、中古住宅市場が活性化していないからである。住宅を売ろうと思っても中古住宅の購入を考えている人は少なく、売却が難しい。そのため、空き家が増えてしまう。
 
 しかも、空き家の解体は高額だ。通常は解体代を自分で支払うが、払えない人がいる。このような時に行う行政代執行では、法律上は行政が所有者に解体費用を請求できるが、多くの対象者は支払い能力を持たないので、現実的には支払われることがない。このように、今の日本の制度では解体費用が回収出来ない場合、個人の所有物を解体するために税金が使われている。つまり、自分で解体をする人が損をしている状況にある。これでは不公平感があるので、解体が進んでいないのではないか。
 
 そこで私は、すべての人から解体費用を回収するために、住宅を建てた時とその後毎年、地方税として解体費用を所有者から回収するという方法を提案したい。その仕組みとしては、まず住宅を新築する際、その住宅の建築確認時に解体費用の一部を徴収する。また、残りの解体費用として毎年一定額を徴収する。もちろん、家の造りによって解体費用は異なるので、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート、長期優良住宅など、その造りに合わせた税率でお金を徴収することになる。そして、徴収した税金は地方自治体が管理し、空き家となった際には解体代金として用いることになるのだ。徴収した税金で解体費用がまかなえない場合、不足額については、他の空き家の解体の際に余ったお金で補う形にするのである。これによって新築の建物は個人費用を用いることなく解体できる。
 
 また、税金の徴収方法としては、賦課方式で行いたいと考える。なぜなら、賦課方式は納める税金が経済状況に応じたものなので、解体費用が高額になったとしても対応することが出来る。反対に積立方式は、将来の解体のために現時点で一定の額を積み立てておいても、急激なインフレや給与水準の上昇があると、その額の価値が減少してしまう可能性がある。(厚生労働省 2014)この税金は空き家を全て解体するということ目的としているため、価値が減少し空き家を解体することが出来ないというような積立方式のリスクを無視することは出来ない。そのため、賦課方式で徴収する方が望ましいと考える。

 では、既存の6063万戸の解体はどうすればよいのだろうか。私は、これらについても税金を徴収してまかなうべきだと考える。その理由としては、既に建てられている住宅なので、これから建てられる新築よりも早く空き家になる可能性が高い。そのため、先に既存の住宅を解体できるだけの費用は回収しなければならないからである。既にある住宅に対しては、建築年数の記録は地方自治体に残っているので、建築年数に応じた税率で金額を法律制定以降回収すれば、その住宅の解体費用も回収することが出来る。また、賦課方式で税金を徴収するため、あと数年で解体するような家屋でも不足額は賄うことが出来る。そして、今空き家となっているところをこの税金の回収のタイミングで一掃することが出来る。

 今後さらに問題となっていくであろう空き家問題。国が対策として行っている空き家バンクの一元化だけでは、問題を解決するには限界がある。解体費用をあらかじめ徴収しておけば、その住宅がもし空き家となったとしても解体できる。このように、空き家となったら徴収した税金で解体する、この提案が空き家問題の根本解決につながるのではないかと私は考える。
 
 〔参考文献〕
林英樹 (2016)「空転する国交省の空き家対策」『日経ビジネス』1846, 10-11.
公益財団法人東日本不動産流通機構 (2016)「首都圏不動産流通市場の動向」
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_201504-201603.pdf 2016年12月5日閲覧
厚生労働省 (2014) 「公的年金の財政」
http://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/finance/index.html 2016年1月7日閲覧
国土交通省 (2011)「建築着工統計調査報告」
http://www.mlit.go.jp/common/001129725.pdf 2016年12月5日閲覧
国土交通省 (2013)「空き家問題の現状と取組みについて」9-10
file:///C:/Users/PCUser/AppData/Local/Microsoft/Windows/INetCache/IE/JW5AK71F/1akiyamondai.pdf 2017年2月1日閲覧
総務省統計局 (2013)「住宅・土地統計調査」
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/pdf/nihon01-1.pdf 2016年12月5日閲覧

つばき(2年)

ターゲット別コマーシャル戦略

 日清食品の販売するカップヌードルは、「ブランド・ジャパン」2016において2015年の24位から7位へと大幅に順位を上げた。岩野(2015)によると、日清食品の調査ではカップヌードルを一番食べない世代が18〜22歳であり、この理由として、「自分達の商品だと思っていないからではないか」と社長が述べている(水野・河原・松浦・染原, 2016)。このように、日清食品の社内では「カップヌードルが時代と共に年を取ってしまい、今の若者には自分たちのブランドという認識がなくなってきている」という危機感が広がっている。そういった危機感から、日清食品は橋本環菜をテレビコマーシャルのモデルに起用するなど若者向けのコマーシャルを開始した。日清食品のズナイデン取締役は、「大人には理解できなくても、若者の心に響くコマーシャルを作れば支持されると思った」(水野・河原・松浦・染原, 2016)と述べている。特に最近の橋本環菜が出演しているテレビコマーシャルは、本人が制服を着た姿で出演しており、学校の教室のような場所で撮影がされている。つまり、明らかにその世代の人々をターゲットとしていることがわかる。

 このような若者向けのコマーシャルが成功する前提として、コマーシャルが良いものでなければならないと私は考える。良いコマーシャルとは他のコマーシャルとの間に差異が存在するもの(土田, 2007)であり、また、効果のある広告である(百瀬, 2009)。効果のある広告とは、キャンペーンを通して訴求対象にメッセージが理解され、好感をもたれることによって売上増に結びつき、利益の拡大に貢献する広告のことである(百瀬, 2009)。当たり前のことだが、他のコマーシャルと似たようなものになってしまっては、差別化ができず消費者に対してインパクトが残せない。また、そのコマーシャルが消費者から好意を抱いてもらえることも重要である。仁科・田中・丸岡(2007)によると、コマーシャルへの好意度は、ブランドへの好意度・消費者の感情喚起・ブランドへの購買意欲と相関関係があるという。つまり、若者に好感を抱かれたカップヌードルのコマーシャルは、ブランドへの好意度やカップヌードルを購買しようという意欲にも影響を及ぼすことができるのである。日清食品のカップヌードルのコマーシャルにおいては、若者という対象に「カップヌードルは自分たちの世代も食べる商品だ」というメッセージを伝えるために、若者に人気のあるタレントを用いた。そのことによってその世代の人々にカップヌードルが自分達の身の回りにある商品だという好意を抱かれた。その結果、若者の購買意欲の向上、さらに売り上げの増加にもつながったと考えられる。したがって「効果のある広告」、つまり良い広告であったと言えるだろう。

 私は、このような若者にターゲットを絞り、そのターゲットに人気のある人物を用い、その人々の生活とリンクした環境を設定したコマーシャルの戦略は有効であると考える。なぜなら、若者がそうした人気のあるタレントも自分達と同じような環境に置かれていると感じれば、親近感が沸き、ブランドや商品に対して好感を抱くと考えるからである。この結果、自分達の身の周りにない商品だと感じていた人たちが、その商品を身近にある商品だと認知することによって、購買行動時におけるその商品の選択可能性が高められると私は考える。

 実際、消費者は自分達がほとんど知らないような商品の安全性や品質に、不安を抱くこともある。このように、商品やサービスに対する良いイメージであったり、悪いイメージとしての認知が広まることにより、消費者はそれらに対して「態度」を持つようになる(杉本, 1997)。その態度は「なんとなく嫌だ」といったような気分的なものや、「理屈じゃなく、目にすると買ってしまう」という行動的要素も含んでおり、消費者の購買行動にも関係するものである。このことから、その商品に対する「態度」が良い方向へ形成されれば、消費者は商品に好感を抱くのだ。つまり、商品に好感を抱いてもらうことによって、消費者の購買意欲を向上させることができるのである。

 しかし、本当に若者向けに作成したコマーシャルの影響のみでこの戦略が成功したのであろうか。私は、コマーシャルの影響に加えてSNSの影響が強くあったのではないかと考える。総務省(2015)によると、20代以下のフェイスブック利用率が49.3%、ツイッターが52.8%であり、おおよそ2人に1人がSNSを活用しているということになる。若者向けのインパクトある広告を打ち出し、それがSNSによって急速に広まる。この流れにうまく乗ることができたからこそ、日清食品のコマーシャルは成功したのだと私は考える。実際にツイッターのツイートを調べてみたところ、橋本環奈が出演していたコマーシャルの反響は大きく、「橋本環奈が出ているカップヌードルのCMかわいい」「カップヌードルの橋本環奈のCMマジで癒される」などといったものが数多くツイートされていた。この事例のように若者に人気のあるタレントを用いることによって、そのコマーシャルの話題性は上昇し、さらにそれがSNSを通してコマーシャルを見ていない同世代の若者へ認知されていったのである。確かに、最近若者はあまりテレビを見ないと言われているが、その状況の中でもSNSという媒体を通してコマーシャルを見た人々の感想が広まっていくのだ。

 これらのことから日清食品のコマーシャルが成功した理由を3点にまとめた。1点目は日清食品がターゲットを絞ったことである。若者にターゲットを絞ったことによって、その世代の人々に理解されるコマーシャルを作成することができた。2点目は日清食品が良いコマーシャルを作ったことである。橋本環奈を用いることにより、ターゲットの世代に好感を抱かれ、幅広く認知された結果、売上の増加につながった。3点目はそのコマーシャルを見た消費者たちがSNSで話題にし、同世代の共感を得たことである。SNSにおいて、橋本環奈の出演するコマーシャルについての感想が話題となり、同世代の人々から注目を集めた。この3つの条件がそろったからこそ、日清食品は商品の認知を上げ、「ブランド・ジャパン」において昨年よりも大幅に順位を上げることができ、売上も向上させることに成功したのだと私は考える。

 以上のように、ターゲティングを行い、そのターゲットに効果のあるコマーシャルを作り、SNSで反響を呼ぶという日清食品が行った戦略は、他の日用消耗品を取り扱う企業においても用いることができると考える。「ターゲットを絞る」と「良いコマーシャルを作る」は、どの世代に向けても実行可能である。そのターゲットに好感を抱いてもらえるような撮影環境の整備や、その世代の人々に人気のあるタレントを用いて、売上の増加につながるコマーシャルを作成すればよい。しかし、SNSにおいて反響を呼ぶというのは必ずしもすべての世代において成功するとは限らない。そこで、若者以外のターゲットの場合にはどのような形で反響を呼ぶことができるのだろうか。

 ここでは一例として、高齢者世代をターゲットとした場合を考える。NHK(2015)によると、50歳以上の人々は休日になれば9割もの人が一日に4時間以上もテレビを見ている。そのため高齢者にとってのTVコマーシャルは、他の世代よりも高い効果が得られる。高齢者世代をターゲットとしたコマーシャルは、その世代特有の体の悩みや生活習慣病などを解消できるということをアピールし、その世代に人気のあるタレントを用いて作成することで、好意を抱いてもらえる可能性がある。消費者にとって体の悩みが解消されることはもちろん好ましいことである。それに加えて、高齢者世代に人気のあるタレントがその商品を宣伝していれば、あの人が使っているなら私も使ってみようという気を消費者に起こすことができ、さらに好意を抱いてもらえる可能性があると私は考えた。高齢者の間で反響を呼ぶためには、会話の中でそのコマーシャルが話題とならなければならない。そういった会話が、高齢者の集まる場、例えば病院などの場所で行われることにより、反響を呼ぶことにつながる。つまり、その場が若者の利用しているSNSと同様の効果をもたらすのである。

 ここで、ただただ商品名を連呼したり、商品の機能だけを伝えるコマーシャルでは、反響を呼ぶことは難しいと私は考える。なぜなら、どの世代においても自分自身の体に不自由を感じている場合、そのことを他人には話そうとはしないと私自身考えているからである。たとえ他人に話すことがあっても、それはごく一部の信頼できる人であり、大勢に打ち明けることはないだろう。したがって、普通では話題に出しづらいようなテーマを重苦しくなく話すことができるように、綾小路きみまろのようなタレントを用いたコマーシャルにすることを提案する。彼の芸風である、あえて高齢者世代特有の体の不自由な点を皮肉り、笑いにつながるような言い方をすることにより、話にくさの軽減につながる。その結果、高齢者の集まる場においてそのコマーシャルの内容についての会話を行う可能性が上がると私は考えた。

 このように、年代別にセグメントを分け、その世代をよく把握し好感を抱かせるような昔から利用されているマーケティングの手法は、どのように反響を呼べるのかを考え実行すれば、現在でも利用可能である。ただし、世代ごとに反響を呼ぶ手段は異なっていることを忘れてはならない。作成者が、消費者の反響を呼ぶ手段を理解した上で、消費者がその内容を周囲に広げたくなるようなコマーシャルを作ることができれば、それはどの世代においても売り上げを上昇することができるような、よい広告となるのである。全ての年代において反響を呼ぶ手段が理解できれば、どんな日用消耗品でも消費者にアプローチすることができ、企業全体の売り上げを増加させることにつながるのである。

【参考文献】
岩野孝祐 (2016) 「カップヌードル、6年ぶり「なぞ肉」復活で若者開拓』日本経済新聞. http://www.nikkei.com/article/DGXMZO86181750X20C15A4000000/ 2016年5月25日閲覧.
国土交通省 (2010) 「鉄道の利用状況」『大都市交通センサス 首都圏報告書』 172. http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/daitoshicensus/h22cencus-shuto.pdf 2016年7月11日閲覧.
百瀬伸夫 (2009) 『良い広告とは何か』 ファーストプレス.
NHK (2015) 『2015年国民生活時間調査報告書』 8-9. http://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20160217_1.pdf 2016年7月6日閲覧.
水野孝彦,河野紀子,松浦龍夫,染原睦美 (2016) 「サービスの進化と深化でアマゾンが初の首位」『日経ビジネス』. 1837, 50-55.
仁科貞文,田中洋,丸岡吉人 (2007) 『広告心理』 電通.
日清食品 (2016) 「連結財務データ 連結業績の推移」 https://www.nissin.com/jp/ir/financial/consolidated/ 2016年6月1日閲覧.
杉本徹雄 (1997) 『消費者のための心理学』 福本出版.
総務省 (2015) 「ソーシャルメディアの普及がもたらす変化」『情報通信白書 平成27年度版』 194-214. http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/pdf/n4200000.pdf 2016年5月25日閲覧.
土田米一 (2007) 『効告。 企画をヒットさせるために広告クリエイターたちが考えること』 インプレスジャパン.

はらざき (2年)

「フェースマスクは毎日使える」を常識に

 島津(2016)によると、グライド•エンタープライズの販売するスキンケア用フェースマスク「ルルルン」シリーズは2016年、発売から5年目にして累計販売が3億万枚を超えた。2011年、あまり需要がなかったフェースマスクという商品に目を付けた同社社長山口道元氏は、もっと手ごろな価格の商品があれば一般消費者向けにさらに売れると考え、低コストで生産できる委託先を探した。結果、フェースマスク本体とそれに浸す化粧水を作る工場に生産を委託することができ、42枚入りで1,500円(税別)、1枚あたり36円という安さで発売することが可能となった。

 ここでフェースマスクの利点を挙げていこう。最も大きな利点は、長時間肌の上に浸透させることである。フェースマスクは顔の形に切り抜かれており、通常洗顔をし、化粧水をつけた後に型に沿って顔に貼り、10〜15分使用する。これによって肌の角質をふやかすことにより、成分の肌なじみがよくなるので、ただ化粧水や美容液を塗るよりも浸透しやすい状態を作り上げることが出来るのである。

 同社のフェースマスクが人気を誇る理由は2つあると島津(2016)は指摘している。1つは市場そのものを拡大させる戦略を掲げたことである。市場拡大戦略に関しては、フェースマスクを毎日使ってもらえることを目的とし、購入する1回目を大切にした。価格が安価であることはその1回目を大切にするための戦略である。その結果、市場拡大は成功し、コーセーやクラシエホームプロダクツなどといった大手化粧品メーカーも同種製品の発売を開始している。もう1つの理由は、ギフト需要を発掘したことである。一般にスキンケア商品はこだわりが強いので、ギフトには適さないとされてきた。しかし、フェースマスクに関してはまだ商品も少なく、嗜好性はそこまで強くない。そこでギフト用として地域限定商品等を展開したのである。その結果、旅行者の心をつかみ、グライド・エンタープライズの売上高の12%を占めるまでになった。

 このように島津(2016)は、上記の2つをフェースマスクが人気を上げた理由としている。しかし私は、日常生活の中で使用することを重視していない「ギフト需要」よりも、「市場拡大」をしたことが大きな理由だと考える。当初から発売されている「ルルルン」は、毎日使えるように基礎化粧品として考えられ作られている。つまり、安価な価格で毎日使うことのできる基礎化粧品として市場拡大をしていったことが、人気を上げた理由ではないだろうか。

 実際に私自身、2015年からルルルンのフェースマスクを使用している。ルルルンを購入した一番の決め手は、値段の安さであった。仮に肌に合わなかったとしても許容範囲内だろうと思ったのだ。また、例え1枚当たりの値段が500円以上するフェースマスクで良い効能が出たとしても、本当に特別な時にしか使用ができない。しかし、ルルルンは1枚あたり40円前後といった値段設定がされており、価格が抑えられている。

 だが、「フェースマスクが毎日使えるもの」ということはあまり認知されていない。そこで私は、「毎日使えるフェースマスク」という新常識を当たり前のことにし、化粧品を使う多くの人に広げるため、商品をより手に取りやすくすることを提案したい。

 まず、「値段が高くフェースマスクに手を出しにくい」という常識をなくすため、1,500円(税別)の42枚入りよりも300円(税別)の「ルルルン7枚入り」シリーズを増加させる。現状、42枚入りで1,500円(税別)、1枚あたり36円という驚愕の値段で購入、使用することができるのは確かだ。しかし、自分の肌の状態に対し良い効能があるのか分からず、場合によっては肌を痛めてしまう可能性がある商品に、この商品のターゲットだと思われる女子大学生やOLなどが、いきなり1,500円(税別)を費やすだろうか。実際私は、初めてルルルンを買う前まで、フェースマスクには抵抗があった。その原因は4年ほど前の失敗が大きく関わっている。当時、興味本位から試しに1枚入りのフェースマスクを購入し、使用した。「肌が潤い、多少美白になる効能がある」と記載があったので期待していたのだが、付け始めて1分経ったかというくらいで肌に沁みてきてしまったのだ。これがきっかけで、1枚しか封入されていないのにもかかわらず、500円以上もし、しかも自分の肌に合わないものがフェースマスクだと決めつけてしまったために、もうフェースマスクは買わないと思ったことを覚えている。

 だからこそ7枚300円(税別)という手を出しやすい値段、枚数で販売することが重要となってくる。この手を出しやすい価格で7枚、つまり1日1枚なら1週間試して使えることが、次のルルルンシリーズ商品への購入動機となるのである。結果、手を出しやすい状態になったルルルンは、今までのフェースマスクとはさらに異なる、安価で毎日使うことのできる点を顧客へ伝えることができる。

 フェースマスクのように、肌に合うかどうかが重要になってくる商品を長期にわたって消費者が購入する時は、一か八かであることが多い。例えばシャンプーは、購入時に試すことが出来るわけではない。実際に使ってから頭皮に合う、合わないが分かるものである。実際に合わなかった時には、頭皮へのダメージや髪自体へのダメージが大きくなってしまう。このように肌に使うものを長期にわたって使用してもらうには、試供品のように一度きりで使い切ってしまうものではなく、お試し期間として効果が出る期間分用の商品を手に取って使ってもらうことが重要となる。そうすることにより、消費者にとっては商品の効き目が出るまでの期間を安価に試せること、企業にとってはまず商品を手に取ってもらうことで、将来の購入にも繋げることができるため、お互いに不利益を被ることが少なくなる。肌に使う商品をまとまって販売するだけではなく、効用が出る期間分を少量に分けて販売することで、手に取りやすくする。それこそが、肌に用いる商品にとって大切な1回目の購入動機を顧客に抱かせるうえで重要なものであると私は考える。

【参考文献】
グライド・エンタープライズ(2016) 「商品一覧」『フェイスマスクルルルン公式サイト』 http://lululun.com/product/ 2016年8月16日閲覧
グライド・エンタープライズ(2016) 「ルルルンの化粧水のお話」『フェイスマスクルルルン公式サイト』 http://lululun.com/labo/?p=106 2016年8月31日閲覧
島津翔(2016)「3億万枚売れた美顏マスク」『日経ビジネス』1850,68-69.


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