世界標準の経営理論(第33,34章 pp608-642)

【要約】

 第1部から第4部までは経済学、心理学、社会学などそれぞれのディシプリンに基づいた理論が解説されてきた。しかし、実際のビジネスの世界では現象に焦点があてられる。そこで、第5部では、思考の軸となる経営理論を見つけやすくするためそれぞれの現象に相性の良い理論を整理する。 33章で対象とする領域は戦略。戦略の研究領域は大きく分けて、戦略コンテンツ(競争戦略、企業戦略)と戦略プランニングに分かれて、応用される理論が異なる。競争戦略は経済学ディシプリンSCP理論やRBVが応用されてきた。しかし、環境変化の激しい現代では持続的な競争力に着目してこれらの理論ではなく、認知心理学のダイナミックケイパビリティを応用する見方も台頭してきた。企業戦略ではRBVを含む経済学ディシプリンや取引費用論を内包する社会学ディシプリンなど、さまざまな理論が応用されてきた。一方、戦略プランニングの研究は現在、下火になっている。しかし、もともとは「計画派」と「学習派」といった派閥に分けられ、戦略論として学習されていた。

 このような特徴のある戦略だが、最近では、連続する変化への対応からイノベーション分野との融合が前提となってきている。そのため、心理学ディシプリンのイノベーション理論が重要視されるようになった。実務の世界で考えると、経済学ベースのSCPで戦略をとって得た資金を使って、認知心理学ベースの視点で新たな分野に投資していく、このように複数の競争の型と経営戦略を組み合わせ、そこで事業と資金を循環させる企業がこれからのグローバル社会では生き残っていける。

 33章で対象とする領域は組織行動と人的資源管理(OB&HRM)。これらは理論との関係においてユニークな点を3点ほど持つ。[琉茲細かい、多くの分野に分化されている。現象分野ごとに独自の理論があることが多い。M論がミクロ心理学に集中している。このような特徴を持つOB&HRMは個人、チーム、組織の三階層に分けることができる。また、階層ごとに様々な理論が応用されているが、全体的にミクロ心理学の理論が特に使われている。

 しかし、筆者はそんなOB&HRMが今後大きな転換を迎えるはずと予想していて、特に、HRM(人事)が変わると述べている。ここでは、.ぅ離戞璽轡腑麝論との融合▲咼奪データとAIの浸透7从儚悗箸僚伝慍臭ぜ匆餝悗箸僚伝慍臭ゥ潺ロ心理学理論の質的の五つが挙げられている。これはつまり、従来はミクロ心理学中心だったHRM部門において、マクロ心理学ディシプリン、経済学ディシプリン、社会学ディシプリンのあらゆる理論を応用する未来が来るということである。

 

【ディスカッション】

 本章において、筆者は、「経済学ベースのSCPで戦略をとって得た資金を使って、認知心理学ベースの視点で新たな分野に投資していく、このように複数の競争の型と経営戦略を組み合わせ、そこで事業と資金を循環させる企業がこれからのグローバル社会では生き残っていける。」と主張していた。しかし、そこには、すでに企業の事業活動がSCPによって持続的な競争力を獲得している前提があった。そこで、私たちは、まだ持続的な競争力を獲得できていない企業を前提に置いたときには、SCPで資金を増やすのが先か、今ある資金で新規事業を行うのが先かを議論することにした。

 今回話し合う上では、例として国内市場6位のシェアを誇る自動車会社を設定し、そこの社長という立場で、どのような事業に力を入れていくのかについかを話し合った。また、現在取り組んでいるのが、電気自動車やガソリン車、AI技術であり、企業の現状のタイプは市場の型はチェンバレン型で戦略はRBVを基本にしているというのを設定。その他、1〜5位企業の動きについても設定した。また、共通認識のもと話し合うためにも、既存事業を行う場合は今持っているリソースを生かして海外シェアを獲得しに行く。新規事業の場合は完全自動運転やMaasを行うということで設定した。

 実際に議論をしていく中で最初は、新規事業を行うのがいいという意見が多かった。その理由としては、現在6位ということで新規事業を行うための資金もあり、それならば、先発者優位の獲得を目指した方がいいという意見のためである。しかし、中には法律などの強制的圧力を懸念して、先発者ではコストがかかりすぎてしまうといった理由や、後発者優位を考える理由での反対意見もあった。ここから議論は、既存事業に力を入れる意見が多くなった。理由としては、やはり新規事業をやってもうまくいくのかどうかわからず、今あるリソースを生かして既存事業に力を入れて海外のシェアを取りに行く方が、確実性が高いという意見が多かった。やはり、みんなの中で新規事業をやる際には不確実性が高いのが、大きな懸念点となっていた。そこで、後半からは議論のテーマを変え、新規事業を行う際に不確実性を少しでも減らすためにはどうしたらいいのかを話し合った。その中で出た意見としては、本書で学んだオプション理論を活用して失敗したときのリスクを減らしたうえで取り組み、とにかくサイクルを回していくという意見や、強制的圧力に対抗するために、非市場戦略に取り組むという意見があった。

【まとめ】

 今回の議論では、結果的に不確実性の問題から既存事業を進めていくという結論に収束した。この結論はテキストで書いてあるものと一致しており、やはりテキストのようにまずは既存事業に取り組み、資金を獲得した方がいいという意見に至った。しかし、それだけでは終わらせず、新規事業を少しでもやりやすくするための意見を出すことによって、少しでも学びを生かせるようにした。しかし、今回の議論では既存事業で海外進出をすればシェアが取れるという暗黙の認識があり、もっと具体的に考えるためにも自社のもつリソースで本当に戦えるのか、海外の外部環境はどのようになっているのかをもっと考える必要性があった。また、新規事業を行うにしても本当に6位の資金力でやっていけるのかという問題があり、現実的に考えたときにはかなり厳しい。したがって、今回の議論の中では出なかったが、自社だけで本当に行うのか、アライアンスの可能性や事業売却の可能性なども考えられた。本章は今まで学んできた理論を実際に実務に生かすというのがテーマとしてあった。そのため、このような今までの知識を生かせる議論を設定した。結果として、その狙いに沿った意見なども出ており、インプットした知識をアウトプットする場として少しは力になったと考える。

やざわ(4年)


世界標準の経営理論(第35,36章 pp643-685) 

【要約】  

 

 第35章では企業ガバナンスの経営理論について説明されている。企業ガバナンスは取締役会や株主構成など企業内部におけるガバナンス分野、そして法制度や外部の監査機関といった外部のガバナンス分野が存在する。本章ではこの企業ガバナンスを説明する上で、本書でも今まで扱ってきたエージェンシー理論は必修理論であると言われている。エージェンシー理論を用いることで株主の経営陣の関係や、経営陣へのインセンティブ付けの在り方などを説明することができる。またエージェンシー理論とは対極に位置するスチュワードシップ理論での説明もされている。これら2大理論では企業ガバナンスの難しさ、複雑さを示唆している。つまり企業ガバナンスの在り方は必ずしも一様ではなく、経営者を始め企業を取り巻く当事者たちが世界をどう見ているかが企業ガバナンスを構成する上で重要なのである。

 

 第36章ではグローバル経営と経営理論について説明されている。グローバル経営において企業が海外に進出する際の「進出タイミング」「進出先の選択」「進出形態」を説明するために独自の「理論のようなもの」が存在する。それはOLIパラダイムとウプサラモデルである。前者では企業が固有に持つ強みをまず理解し、その強みを活かせる進出先を選択、そして企業内で「内部化」する構造をつくるという3つの要素を考慮して海外進出に関して説明されている。後者のウプサラモデルでは、「企業の学習」がベースとなっており、どの企業も始めは距離的に近い国、進出形態としてはライセシングといったような形態をとり徐々に拡大していくという説明がされる。この2つの理論は意思決定を異なる視点で説明しているが今まで本書で扱ってきた理論を用いて説明ができただの応用にすぎないものである。またこれらは「理論のようなもの」であり、グローバル経営において「独自の理論」は存在しない。それは「国境」が大きく関係してくる。従来は「国境を超えること」=「グローバル経営」と捉えられてきたが、実際は「ビジネス環境が異なること」=「グローバル経営」であると筆者は主張しており、このように考えるとビジネス環境が異なる際には今まで扱ってきた理論を応用することで十分に説明することができるのである。つまり今後は「国境とは何か」を深く考えることが企業にとって重要なのである。

 

 【ディスカッション】

 

 今回のディスカッションではグローバル経営の今後の展望についての部分に着目した。本書では今後取引コストが下がればスタートアップ企業(中でも創業間もなくグローバル展開を行うボーングローバル企業)が台頭すると言われていた。では同様に取引コストが下がれば大企業もグローバル展開を行うことができるのかということについて議論を行った。しかし今回初めに持ってきたディスカッションでは「できる」「できない」という形でフロアに投げかけてしまったため、議論の進展がすぐには見られなかった。そこで「大企業はグローバル展開ができない」と仮定し「グローバル展開できない」理由をまずは挙げてもらった。その挙がった意見に対し、では「グローバル展開するためにはどうするか」について再度議論する流れとなった。グローバル展開ができない理由としては、意思決定のスピードが遅いであったり、リスクを取りたがらない、社内で反対意見が出てくるなどの意見が挙がった。そこで対策としては、スタートアップ企業や進出先の企業を買収を行ったり、国内で今まで取引してきた繋がりを利用する、海外にまずは現地調査を行い検証するなどといった意見が見られた。

 

 これらディスカッションをまとめると、取引コストが下がればスタートアップ企業と同じように大企業がグローバル展開を行えるのではなく、実際にグローバル展開を行うかどうかの意思決定のスピードがスタートアップ企業と比べ遅かったり、また現状シェアが国内で高ければリスクをとることに社内で反発が起きるなどの障壁も存在する。このような障壁を乗り越えるためにソーシャルキャピタル理論で説明されていたように、国内で取引していた今までの繋がりを通じて進出先の企業との繋がりを見つけたり、センスメイキング理論で説明されていたように経営者がビジョンを示しリスクを取ることを社員に納得させるなどといった施策が必要となる。以上が本ディスカッションの結論である。

 

【まとめ】

 

 今回のディスカッションでは実際にボーングローバル企業と言われている「テラモーターズ」の海外進出の成功事例を基に事例作成を行った。「テラモーターズ」では取引コストの低下が海外進出する上でプラスに働いたこと要素でもあるが、他にも企業の組織構造であったり、リスクを恐れない行動などが影響したとある記事では言われていた。本ディスカッションでもこの部分について少しでも触れることができたのは良かった。実際、中小企業、大企業に就職するゼミ生が多い中、今一度グローバル展開を行う体制がその企業にはあるかどうかを見つめなおすきっかけになったら幸いである。また今回は「できる」か「できない」かの問いの立て方ではなく、グローバル展開を行ったうえで今後活躍していくためにはどうするか、など具体的な部分について問いを立てれていたらフロアからの意見ももう少し出たかもしれない。是非次回はこの反省を活かすようにしていきたい。

 

すずき(4年)


世界標準の経営理論(第28,29章 pp.518-555)

【要約】  28章では、社会学ベースの制度理論について解説されている。人は、「合理性」よりも「正当性」で行動するという特徴がある。そのため、同じフィールド内には常識が存在しており、同質化していくのである。この常識が形成される過程には、強制的・模倣的・規範的圧力が加わる事が関係している。あるフィールド内での常識は、実は他のフィールドでは非常識である場合もあり、それによって国際化をする際などに障壁となりかねない事がある。そこで、この常識に対抗するためには、非市場戦略で制度に働きかける方法やインスティテューショナル・アントレプレナーとして既存の常識を変容させる方法、他のフィードの常識に従う方法などが挙げられる。どの手段を取るのかは自分次第なのである。  29章では、資源依存理論(RDT)についてだ。企業はそれぞれ、取引や交渉の際に自分が相手に及ぼすパワーがある。そのパワーには、材料や情報、金銭、正当性などの資源が大きく関係している。パワーの弱いつまり、資源面で相手への依存度の高い企業は思うような交渉、金額設定、契約が出来ず苦しむ事になる。RDTではこれを外部抑圧という。この外部抑圧に対抗するためには、抑圧の軽減・抑圧の取り込み・抑圧の吸収等の手段がある。しかし、1990年代に入るとこのRDTを研究する流れは沈静化した。なぜなら、これまでの研究はデータ・分析手法の粗さから吸収命題を支持する結果を得ていたが、精巧に分析するとむしろこの命題は支持できないという研究結果が得られたからである。しかし、2000年代に入った現代、理論面と現象面でブレークスルーがもたらされたのである。これによって、再びRDTは注目されるようになったのである。このように、RDTは時に「小」が「大」を活かし、翻弄し、外部抑圧を抑え込んで飛躍する道標となる事を証明しているのである。 【ディスカッション】  今回のディスカッションでは、28章のテーマに注目し、日本というフィールドにおける常識に対抗するためにはどうすれば良いかという事について話し合った。具体的には、現在、日本国内では原付と同じ扱いをされている電動キックボードのシェアリングサービスを展開するベンチャー企業が、そのサービスを全国に普及させるためにはどのような施策を取るべきかについて議論を交わした。  議論では、非市場戦略やインスティテューショナル・アントレプレナーの視点から様々な意見が発せられた。特に多かった意見としては、政府を説得するために自社内の社員が使用したり、消費者に試乗してもらうなどして、電動キックボードの利便さや知名度を挙げていく事が必要であるというものであった。しかし、実際に電動キックボードを利用した事のある生徒からは、日本の狭い行動において誰もが使用する事は危険であり難しいのではないかという意見も出た。この事から、海外では気軽に移動手段として用いられている電動キックボードであるが、日本でも同じように規制なしに利用する事は困難である可能性も考えられる。  電動キックボードは、現在新型コロナウイルスの影響で懸念されている3密避ける移動手段ともなり得る。日本なりに規制を設け、今よりも利用者が増える事が切なる考えである。 きじま(3年)

世界標準の経営理論(第30, 31, 32章 pp.556-605)

【要約】
 今回は理論編の締めくくりとして、3つの社会学ディシプリンの経営理論を扱った。まず組織エコロジー理論は、ビジネスという生態系で、個体である企業の生死のメカニズムを探る。前提としているのは企業の本質が変化しない点・企業の多様化→自然環境による淘汰選択・超長期視点である。同理論から示唆されるポイントは、事業ポートフォリオを入れ替えることが重要な点である。一方で日本企業はメリハリのないポートフォリオ構成のまま低い利益率を維持してしまっている。その対策に欧州企業が取り入れているメガトレンドの視点がある。

 次にエコロジーベースの進化理論は、組織が変化しにくいことを前提に組織内部のメカニズムを紐解く。企業は多様化→選択→維持→苦闘のフェーズを経、これをVSRSメカニズムと呼ぶ。企業の創業初期には多様な人材が集まりやすく、一方で人は同質の人を好むホモフィリーという性質があるため企業の成長に伴い人材は同質化しやすい。他方で戦略には多様な情報が重要であり、そのために例えば共進化のダイナミズムの取り入れが有効である。

 最後にレッドクイーン理論は、企業の共進化のメカニズムを解き明かす。本来企業は競争を避けるべきと言われてきたが、同理論は企業間の生存競争が進化の源泉の一部であることを主張する。切磋琢磨によりサーチがなされるからである。しかし競争が目的になるとコンピテンシートラップに陥るリスクがあると、新レッドクイーン理論が提唱した。逆説的だが環境が大きく変化するほど目的を競争にすべきでなく、自社のヴィジョンを目指すことがポイントとなる。


【ディスカッション】
 組織エコロジー理論より、「事業ポートフォリオを入れ替え生態系を渡り歩くことが重要だが、日本企業の多くがメリハリのないポートフォリオ構成のまま低い利益率を維持している」と筆者は述べる。そこで今回のディスカッションポイントを

  •  なぜ日本企業はメリハリのないポートフォリオ構成のまま低い利益率を維持しているか
  • また,陵由に対してどのようにすれば、日本企業のポートフォリオ構成にメリハリをもたせることができるか

とし、以上2点について大企業の経営者の視点から、さらに本書の理論の締めくくりとしてこれまでの内容を踏まえて、と設定し議論してもらった。なお、メリハリのないポートフォリオ構成の定義を、抱える事業の多くが成長性のない市場に位置し、それらの事業を手放せず、さらに知の探索を怠り知の深化に傾倒していることとした。

 まず,砲弔い撞鵑った意見は、日本企業がボンディング型のネットワークが強く、古い事業を切り捨てられないという意見が挙がった。また社長の人気が短くリスク回避的になりがちという、エージェンシー問題が起こっている点、不確実性を許容できなく保守的すぎる点やコンピテンシートラップに陥っている点、株主に新規事業を理解してもらえない点、人材に流動性がない点が挙げられた。さらに模倣的圧力が働いて、戦略をコンサルに丸投げしてしまったり、戦略を入れ替えにくくなったりしている、一方で前者に対して外部の視点を取り入れたほうがよい戦略を実行できると反論も出た。またセンスメイキングをする力が経営者になく変革を説得できないという意見が挙がった一方で、日本の企業の経営者は労働者から地続きだからこそ労働者の考えを優先するのではという指摘があった。

 次に△任蓮⊆卍垢稜ごが短い点について長くすればいいと意見が出たが、そのように簡単にできるとは限らないと反論が出た。次に全体的にリスク回避的な傾向や保守的な組織体制に対して、リスクに寛容な組織づくりをすることが重要と言われ、そのために撤退オプションの利用や、年功序列・終身雇用の廃止が必要、それらを達成するためにストーリーテリングを通して意思共有を図ることが有効という意見が挙げられた。ただし急に年功序列・終身雇用を廃止することは困難で、撤退オプションの利用も海外では日本より難しい点で注意が必要なのも事実である。他にはメガトレンドを考える部門を作り意識を高めることについて、経営者が考えるからこそメガトレンドの勝ちがある指摘、加えてTFL×SLを実行して組織全体で方針を決める点、人材を社外に出し知の探索を行わせる点が挙げられた。

 ディスカッションのまとめとして、日本企業は保守的でそれを変革する十分な力がないという意見が主として挙がり、それに対して本書の内容を踏まえた様々な解決方法が挙げられた。ただし、今回のディスカッションポイントに対し、ただポートフォリオを入れ替えればいいのではない点が指摘された。いずれにせよ今後はDXなどにより環境の変化が更に激化する時代であり、その流れにはどの業界であれ飲み込まれるのが確実だ。だからこそ長期的視点で渡り歩く生態系を見極めることも重要となってくるのではないだろうか。

 

【おわりに】
 今回は本書で経営理論を紹介する最後の章であった。経営理論を思考の軸とすることが本書の主眼の一つであり、最初の輪読でもどのようにすれば経営理論を思考の軸にするかについて議論した。しかし蓋を開けてみると、経営理論を思考の軸としてディスカッションをしている様子があまり見受けられず、その点に問題意識を持った。そこで経営理論を思考の軸とするべくいくつか工夫をした。まず経営理論を援用しやすくするため、ディスカッションポイントを抽象的に設定し、さらに今までの内容を踏まえというヒントを出した。結果、様々な章の知見を援用し日本企業の現状について議論できていたと思われる。このようにディスカッションやその他様々な活動を通して、人類の英知を思考の軸とすることができれば、それすなわち自身の最大の武器となりうるのではないだろうか。最後にドイツの鉄血宰相と呼ばれたオットー・フォン・ビスマルク(1815-1898)が残した言葉を紹介して締めとする。


−愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ−

 

すみた(3年)


世界標準の経営理論(第24・25章 p.439-478)

【要約】
 第24章からは、社会学ディシプリンの経営理論について解説されている。ビジネスにおける社会学的な研究はエコノミック・ソシオロジーと呼ばれ、経済学への批判として、ビジネス環境における人と人とのつながりを捨象している点、意思決定メカニズムが常に一様化されている点を挙げた。
 本章で解説されるエンベデッドネス理論(別称:埋め込み理論)は、「人は他者とのつながりのネットワークに埋め込まれており、その範囲内でビジネスを行い、したがってその関係性に影響を受ける」ことを基本主張とする。つながりには〃从儚愿な意思決定をしがちになるアームス・レングス(浅い関係)なつながり⊂綮覆班下などのヒエラルキー上のつながりヒューリスティック(経験に基づく直感的な)意思決定に頼る埋め込まれたつながりがある。本理論は特に埋め込まれたつながりにおいて、人は他の2種類とは異なる意思決定を行う、と考える。埋め込まれたつながりには、関係性の埋め込み、構造的な埋め込み、位置的な埋め込み、意思決定の促進、私的情報交換、という5つの法則が存在し、どれも埋め込まれたつながりによる様々な効能を説明している。このような埋め込まれた人と人とのつながりは従来の企業・市場とは異なる次元の強さ、しなやかさを持っているため、これまでの企業の存在意義は薄れ、埋め込まれた人のつながりのネットワークが台頭する、とされる。
 第25章では、弱いつながりの強さ(Strength of a weak ties: 以下SWT)理論について解説される。つながりの強い、弱いに絶対的な定義はない。ビジネスで例えるなら、強いつながりは10年仕事を共にするような同僚、弱いつながりは異業種交流会で何度か会いメールする程度の相手、となる。カギとなるのは、ソーシャルネットワークには伝播、感染(ビジネスで伝播、するのは情報、アイデア)する力に差があることだ。SWT理論において欠かせない概念が、ブリッジ(Bridge)だ。一般に2つの点をつなぐ唯一のルートがある時、それをブリッジと呼ぶ。ブリッジはつながりが弱い時に限り、それはつながりが強い際、仝鯲の頻度⊃翰的効果N犹性が高くなってしまい。ブリッジが存在しなくなってしまうからである。多人数で構成されるソーシャルネットワークにおけるブリッジの効能は、「ブリッジのある、弱いつながりから成るソーシャルネットワーク(希薄なネットワークと呼ぶ)は、ネットワーク全体に多様な情報が素早く、効率的に、遠くまで行き渡る」ことである。この効能はイノベーションにおいても役立ち、弱いつながりを持つ人は幅広い知と知を組み合わせ、新しい知を生み出せるのだ。これからはソーシャルネットワークのさらなる発展により、遠くの人とつながりやすくなるため、世界は狭くなっていくだろう。

【ディスカッション】
 本章において、イノベーション知の探索も知の深化も、アイデアの創造も実行も必要なため強いつながり、弱いつながりの両方が必要となる、としている。しかし、筆者は日本では圧倒的に弱いつながりが不足しているという。理由としては、終身雇用制による社外との弱いつながりの乏しさ、大企業での事業部間の交流の少なさ等を挙げている。この筆者の主張が正しいとして、「あなたが大企業の経営者なら、どのようにして弱いつながりを作るだろうか?」というディスカッションポイントを立てた。企業の条件として従業員300人以上、事業部が5個以上ある企業を想定し、またフロアからの意見から、食事会等の交流会、副業や兼業、共同ワークスペースの利用、と施策あらかじめ設定し、この中からより効果的な方法を議論していく運びとなった。
 まず、交流会においては、事業部間や企業間ををまたいでの開催をすることが必要という意見が出る中、実際に開催するだけでは人が集まらないため、参加するだけのインセンティブが必要になる、という意見が見られた。また、交流会を会社のカフェテリアなどのスペースで開催することで、参加しやすくなるだけでなく、コストも削減できるという意見も見られた。副業、兼業においては、企業外に出て行うことで、弱いつながりを作れるのではないか、という意見が出た。また、大企業であれば事業所が別の場所にあるため、企業内でも十分な効果が見込めるのではないか、という意見も見られた。また、副業兼業においても、作った弱いつながりの結果、生まれる知を企業に還元できるような動機づけがなければ、弱いつながりを作るのは難しい、という意見も挙がった。共同ワークスペースにおいては、企業の境界に関わらず様々なビジネスマンが集まるという性質から、利用するだけでも弱いつながりを作ることができるため、共同ワークスペースを利用することそのものの促進が必要、という意見が出た。

【まとめ】
 上記の意見から共通点を探っていくと、2つ共通する点があると考える。まずは、インセンティブの設定が必要であることだ。今までもこれらの施策は弱いつながりに関係なく行われてきたものである。しかし、それでも弱いつながりを作れていないという現状があるため、大企業の経営者はその施策を行う上で、従業員が弱いつながりを作ろうとするようなインセンティブ、動機づけを行うことが必要となるだろう。2点目は、どの施策においても、弱いつながりを作っていく上では企業や事業部の「境界」を超えて行動を起こすことが必要となる点だ。本章においても、これから人とのつながりという点においては、人々が企業などの境界を越えてネットワークを構築していくことが述べられていた。弱いつながりを作っていく上では、積極的に境界を越えることが必要となるのではないだろうか。自らがイノベーションを起こす立場になった時、今回見られた共通点を思い出し行動を起こして頂ければ幸いである。

こじま(3年)

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