マニーがより多くの市場で競争優位を確立するために

 武田・藤村・高槻・広岡(2018)によると、大企業に負けない隠れ高収益企業の利益率の源泉の一つとして、ニッチを貫き通す点があげられている。その一つの例として、栃木県宇都宮市の医療機器メーカー、マニーがある。マニーは1956年に創業され、2018年8月期の売上高は200億円、営業利益は50億円である(マニー, 2018)。マニーは経営方針として、ニッチ市場(年間世界市場5,000億円程度以下)以外に参入しないことを挙げており、武田 他(2018)はその利点としてライバルの持っている技術を研究し尽くしていることを挙げる。

 その具体例が、マニーの品質へのこだわり(マニー, 2019)である。マニーは製品の特性毎に、常に「世界一の品質」を保持した製品であるかを検証することを業務の中核に据え、年2回「世界一か否か会議」を開催している。この会議ではマニー製品および競合他社製品を市場から入手し、製品の特性毎に試験を行い、マニー製品の品質を確認する。「世界一の品質」を逃した特性に対しては世界一を奪還できるようにアクションプログラムを作成し、次回までに執念を持って改良に取り掛かる。約一年の改良を続けても世界一にならなければ「撤退もやむなし」と判断する決まりがある。

 しかし、約一年間の改良を行っても世界一の品質にならなかったからという理由のみで、撤退を決めるべきであろうか。

 私は、この決まりのみで撤退を決めるべきではなく、現在のように約一年間の改良期間を経た上で、マニー製品の品質の向上具合が競合他社のなかで一番であれば今後も改良を続け、一番でなければ撤退を決めるべきであると考える。なぜなら、品質の向上具合が競合他社よりも勝っていれば、確実にどこよりも成長していることを意味し、今後マニーが世界一を奪還できる可能性が高いと考えるからである。逆に、品質が向上していない、あるいは向上具合が他社に比べて劣っている場合は、今後世界一になる可能性が低いと考えるため、撤退するべきであると考える。現在のマニーは、改良期間後の一時点で世界一でないのならば撤退を決める。しかしこれでは、どんなに品質が向上したとしても世界一でないのならば撤退することになるので、近い将来世界一を奪還できる可能性のある製品でさえも撤退してしまう可能性が高くなる。従って、一定期間内での品質の向上具合を見て撤退するか否かを決める必要があると考える。

 このとき、再度改良を続けることを決めた製品は、撤退せずに今後も研究を行っていくため、マニーが抱える開発製品数が増え、研究開発コストが増加してしまうのではないかという懸念がある。確かに、製品数が増えるとコストは増加するだろう。しかし増加分のコストは、大量生産を行い、規模の経済や経験効果がうまれることで補うことができると考える。顧客にとってマニーの取り扱う小物医療用消耗品は一度にたくさん必要であるため、マニーは大量生産をする必要がある。加えて、マニーの売上高は平成26年から平成30年にかけて海外での販売を強化したことにより増加傾向である。また、製品の増産が軌道に乗ったことで営業利益が増加している。医療機器業界においては、先進医療の導入が進み、新興国では人口の増加及び経済発展に伴う医療インフラの整備が進んでいるため、全体としては引き続き市場の拡大を見込んでいる(マニー, 2018)。このことから、今後もマニー製品の需要は伸びていくと考えられるため、大量生産することになる。大量生産をすることで、研究開発費や設備費などの固定費的な支出に関して1個当たりのコストが下がり、規模の経済がうまれる。また、製品を多く作ることにより、生産ノウハウが蓄積され、製造コストが下がることによって経験効果がうまれる(和田, 2011)。故に、増加分の研究開発コストは、規模の経済や経験効果がうまれることで補うことができると考える。

 このように、従来のように改良期間後の一時点で世界一か否かを判断してしまうと、今後世界一になる可能性のあるものも撤退を決めてしまうかもしれないので、マニーは「世界一か否か会議」において、改良期間内の品質の向上具合をみるべきであると考える。改良期間内の品質の向上具合をみることで、マニーは今までよりも多くの世界一の製品を開発していくことができるだろう。つまり、マニーがより多くの市場で競争優位を確立するためには、多数の世界一の製品を持つことが必要だ。

【参考文献】
マニー株式会社 (2018) 「2018年8月期有価証券報告書」 https://ssl4.eir-parts.net/doc/7730/yuho_pdf/S100EMX4/00.pdf 2019年7月7日閲覧.
マニー株式会社 (2019) 「品質へのこだわり」http://www.mani.co.jp/research/quality.html 2019年1月15日閲覧.
武田健太郎, 藤村広平, 高槻芳, 広岡延隆 (2018) 「隠れ高収益企業」 『日経ビジネス』 1959, 22-39.
和田剛明 (2011) 『よくわかる経営管理』 詐, ミネルヴァ書房.

よしだ(3年)

ブラックスワンの経営学(第7章)

【要約】
 第7章の目的は、ここまで紹介してきた受賞論文から、ビジネスの実務に役立つ知的作法として、ケーススタディの方法を学び、いかにして実務に役立てるかというきっかけをつかむことである。実践に生かすというのは、学術の事例研究を実務に応用するということだ。学術の世界と実務の世界の調査には同じ部分と異なる部分があるため、実務の調査であっても「こだわるべき部分」もあれば、実務の調査であるからこそ「わりきってよい部分」もある。

 はじめに、「こだわるべき部分」について述べる。学術の作法の中で「こだわるべき部分」は、事例研究の骨格に関わるところだ。本書で紹介した学会賞受賞論文だと、各章のメインテーマに関わる部分である。各章のメッセージを振り返ると、|碓譴了例であっても分析を工夫することで、十分な示唆を引き出すことができる(第2章)、調査デザインを工夫して、仮説の検証を試みる(第3章)、8従譴剖瓩鼎ことで思いがけない「気づき」を得る(第4章)、と羈喨析の限界を踏まえて追加的な分析を行い、仮説の精度を高める(第5章)、δ敢座仂櫃鯆廟廚靴董因果メカニズムを解きほぐす(第6章)、である。
 
 ,涼碓貉例については、はずれ値という言葉を用いて説明されている。はずれ値は、平均的なパターンを観測する際に邪魔なため、統計分析では集計対象から除外される。しかし、事例研究においては、そのはずれ値が先端事例や逸脱事例である可能性があるため、注目して研究するのだ。△猟敢坤妊競ぅ鵑砲弔い討蓮同一コンテキストにおいて、「ある条件を満たしている事例」と「その条件を満たしていない事例」を選び出して比較することが大切であると述べられている。の現場に近づくというのは、インタビューの際に相手の空間に入り込んで行なうことで、本音を聞き出すことができるようになるということだ。い砲弔い討蓮比較分析には限界があるため、その限界を理解し、必要に応じて比較分析の至らないところを補完するために追加分析を行う必要がある、ということが述べられている。イ蓮調査対象を追跡することで、因果関係を解きほぐすことができるということを述べている。例で挙げられている研究の場合、最初の実験から12年後に追加調査、そして40年後にもさらなる調査が行われている。
 
 次に、「わりきってよい部分」について考えるために、学術調査と実務調査の違いについて述べる。まず、使命と基本前提だ。学術の場合は、より確かな真実の探求と学術世界での新発見であるのに対し、実務の場合は、自社にとっての解決や発見である。次に、調査期間である。学術の場合は時間をかけでも確かな結論が求められるが、実務の場合は、仮説めいた結論でもよいのでスピードを重視する必要とされる。次に、調査体制だ。学術の世界では、学術コミュニティでの蓄積が前提であり、学会の共通言語を用いる必要がある。一方、実務の世界では、社内での蓄積も重要だが、時々の発見が大切である。最後に、知見の汎用性について、学術の場合は一般化志向が強く、抽象的で曖昧でも許容される。しかし、実務の場合は、限定的一般化で十分である。つまり、極論を言うと自社に当てはまれば十分なため、より具体的で明確なものであるほうがよい。

 最後に、事例研究を実務の中で取り入れているKUMONの例を紹介する。KUMONでは、子供から教育者が学ぶという姿勢によって、現場を大切にするという考えのもと事例研究が盛んに行われいている。また、全社をあげての研究として「指導者研究大会」があり、各自の普段の事例研究を通した「自主研究」を全国規模で発表し合っている。これらの取り組みを行う彼らがこだわったのは、教材の名前などを徹底して社内用語を用いるということだ。これにより、大会など大勢が集まる場でも、瞬時に全員が共通で教材のコンテキストを思い浮かべることができるため、議論が活発になる。また、意味をはき違えたり、言葉に振り回されることがなくなるといったメリットもある。

【ディスカッション】
 今回のディスカッションポイントは、「実務であればどのような場合でも、確かさよりスピードが優先されるのか」である。前提となるシチュエーションは、文京区白山にある個人経営のラーメン店だ。ここは、店長(60代)、パート(50代)、アルバイトのあなた(アルバイト歴5年の経営学部生)の5人で運営している。しかし、最近になって客が減り、一日10人になっていしまったため、今後この店をどのように運営していくのか早急に検討する必要があった。そこで、店長は「ラーメン店をやめて今流行りのタピオカ屋をはじめることで売り上げ回復できるのではないか」という仮説を立て、経営学部に通うあなたに判断を委ねている。

 この議論で前提となる「スピード」とは、仮説の正しさを検討した結果、タピオカ屋をはじめた場合の売上が回復する可能性75%であることが明らかになるという状態をさす。「確かさ」とは、仮説の正しさを検討するが、売上が回復するかはわからないという状態である。両者の検討の度合いについては、前者はタピオカの売れている理由を解明できているが、ラーメンが売れない理由は分かっていない状態、後者はタピオカの売れている理由が解明でき、さらにラーメンの売れない理由まで調査するという状態であると定義する。

 議論においては、「スピード」を優先するという意見と「確かさ」を優先するという意見のどちらの主張も多く出た。スピード派の意見としては、今流行しているから、一旦出して改善していくほうがよい、設備投資などあまりかからないためやってみてもいい、追加で検討している間に店がつぶれてしまうから早くやるべき、追加調査にもコストがかかるのでそこにかけるよりは早くやるべき、などの意見が出た。一方、確かさ側の意見は、大学で新規事業をはじめるにはリスクがあるということを学んだので、追加調査をして確実にしてから実行すべきという意見や、ラーメン店失敗の要因によってタピオカが失敗しては意味がないのでしっかり調査するべき、今後何年も店を続けたいという思いでアルバイトの私に相談している店長の気持ちを考えるとスピードよりも確かさを優先してしまうという意見が出た。
 
 今回は、スピード派も確かさ派もどちらにも言い分があり、なかなか決着がつかない平行線のままの議論であった。原因として、この議論は当初、検討の度合いを具体的には示していなかった。そのため、人によって検討期間や内容にばらつきが出てしまい、その段階での議論に多くの時間を使ってしまった。この条件をもっと早い段階で提示できていれば、スピードをとるか確かさをとるかという決着がついていたかもしれない。

たけおか(3年)




 

ブラックスワンの経営学(5章)

【要約】
エクセレントカンパニーが「優良企業に条件」八つの条件を導き出した。しかし、これは「必要条件」に過ぎなかった。必要条件と十分条件を確かめるためには学の手順を踏む必要がある。これらを導出する手法は主に二つである。まずは、一致法である。これは同じ結果を示す複数の事例を比較して、そこに共通する要因を探るもので、共通の結果をもたらした要因を推論する方法。これは必要条件を明らかにするのに適している。次は裁縫である。これは十分条件を明らかにするのに適しているといえる。

 そこで、最優秀論文賞に選ばれた事例研究から一致法、差異法の用い方について学ぶ。この研究は二段階で行われている。一段階目は、考えられる要因を抽出する。それを基に仮説を設定する。そして、それに当てはまると考えられる事例を選び出す。この事例を分析した結果、仮説通りの結果にならなかった。本来ならここで、大きく方向を変えることが多いが、本研究では再分析することで新しい仮説を探した。
 
次に二段階目の分析である。ここでは一段階目の分析をもとに極端な結果を示した二つの事例に対して、差異法を用いて分析を行った。その結果一段階目で設定した仮説でなく、全く別の要因が結果に影響していることが判明した。また、この結果妥当性を確かめるために、ほかの事例にあてはめることで、妥当性の向上を図った。このように、仮説の研究に不利であっても事実と向き合い本当の原因を探ることが大切である。

 本研究で注目すべき点は二つある。一つは、定説通りにいくことはない。それを疑うことが必要であるということ。二つ目は、問題意識を見失わないことが重要である。どんなに仮説通りにいかなくても問題意識を見失わなければ、立ち直ることができる。失敗してしまったときに集めたデータを基に再び仮説を導出し分析をすることができる。

 事例研究におけるポイントについて説明する。それは二つある。一つ目は、問題意識を明確にすることである。問題意識を明確にすれば、どんなに仮説通りにいかなくても折れることなく新たな仮説を導き、分析を行うことができる。二つ目は、往復運動である。分析を行った結果導き出された要因を他の事例にあてはめる。果てはまれば仮説の妥当性を高めることができる。

【DP】
中野ゼミナールで行われるディスカッションではすべての参加者が発言することができる。しかし、上の学年が意見を言い合っているとき(特に4年生)、2年生が発言しづらいのは往年の課題であると考えられる(少なくとも去年、今年はそのような状況が想起される)。本書ではイノベーションの普及には専門家集団の間にある「社会的・認知的境界」が障壁になっていたと述べられている(第二段階の調査P.185~)。しかし、この「社会的・認知的境界」は専門家集団に限らず、我々の中にも存在すると考えた。それがディスカッションにおける障壁になっていると考える。そこで、今回ディスカッションポイントを「ディスカッションにおける2年と4年の間にある社会的・認知的境界を乗り越えるためにはどうすればよいか」とし、ディスカッションを行った。

 今回のディスカッションにおける条件は以下のとおりである。

・タコツボ化
→内部で変革を促すのは得意とする。しかし、外部からの刺激を受用するのが苦手。
*内部=同期内
*外部=ほかの学年

・社会的・認知的境界
社会的境界(「社会的距離」p.192の表現を借用)=集団間の紐帯の強度
→特に学年、年齢による距離感を想定する
認知的境界(広辞苑の定義と元論文の「Knowledge Boundary」との兼ね合いより)=知ること、知識を持つこと。特に直観的でなく推理、思考に基づく。

・今回のディスカッションにおいて、発言をする意見を持ち合わせていないとなると、それで議論が終了してしまうと考えられる。そこで、あくまで言いたいことがあっても言えないときの壁の乗り越え方について議論するものとする。
・今回期待する意見として、二年生主体の意見を期待する。その理由として、ディスカッションに参加する成員は一度二年生を経験していることから、様々な意見が出ると考えるから。一方四年生側の意見は、四年生になったことのない人が多いので、非常に限られたメンバーのみが主張することになると考えるためである。また、四年生は現状ディスカッション中に、発言を促すような言動をとるので、一旦それで良いと考えたから。

 今回のディスカッションによって、各学年で行えるアプローチが導き出された。まず二年生である。二年生は臆さずなんでも言うことが重要である。しかし、それを行うことは簡単なことではない。その時、同期と競争意識を持つことやどんなに意見を否定されても人格までは否定されていないと考えることがあげられた。さらに、上の学年が何を言っても冷静アになること。学年が上だからと言って正しいとは限らない。一度冷静になって意見を聞いてみることも重要である。また、どんなにアプローチの方法があっても結局個人がどれだけ勇気を振り絞ることができるかに依存する部分が大きいことも分かった。
 
次に四年生である。四年生に求められるのは環境づくりである。心理的安全性という言葉があるように、みんながなんでも言える環境を作り出すことが重要なのではないか。所かまわず否定するのではなく、同調することも時には重要になると考える。また、直接アプローチをすることで、下級学年の背中を押すことができるということも分かった。

最後に三年生である。残念なことに三年生にできることはほとんどない結果になってしまった。三年生が背中を押すことが提案されたが、そこに学年の差はなく四年生にされようが三年生にされようが関係ないという。それ以外の意見が出なかったので、本当に社会的、認知的境界があるのは三年生なのかもしれない。今回のディスカッションを設定した私は三年生なので大変皮肉めいた結果になってしまった。今回の結果を踏まえて今後のディスカッションの処方箋として利用していただきたいと考える。

にしむら(3年)

OXの車いすが選ばれるためには

 吉野(2018)によると、オーエックスエンジニアリング(以下、OX)は、車いすの製造、販売を行っている企業である。特に、競技用車いすにたくさんの投資を行っており、競技用車いすにおいて5割というシェアを獲得するトップメーカーだ。また、OXの日常用車いすに関しては、この競技用車いすの技術を活かして製造されているため、他メーカーの車いすよりも軽量で俊敏性に優れており、小回りの効く製品となっている。そして、剛性にも優れており、「強く軽い車いす」であることが特徴だ。さらに、デザイン性にもこだわっており、スタイリッシュな車いすを販売している。しかし、日常用車椅子においてOXはトップメーカーとは言えない。何故なら、一般財団法人自転車産業振興協会技術研究所(2016)によると、日常用車椅子のシェアの8割はOX以外の4つの大手メーカーが占めているからである。

 車いすの販売方法は少し特殊である。車いすを購入する際、「車いす判定会」というものがある。「車いす判定会」では、医師立ち合いの元、一人一人の顧客にどのような車いすがあっているのかが判定される。また、それぞれの顧客に必要と判定された機能に対しては、国から助成金が出る。そして最終的に顧客がどこのメーカーの車いすを購入するかは、顧客の金銭的な要望などと必要な機能を考慮して、医師が決定するとのことだ。OX関東VIVIT店店長古谷様の話によると、金銭的に助成金内で抑えたいと要望を出す顧客が多いとのことだった。しかし、OXの車いすはどのモデルも高価である。よって、顧客の選択肢の中からはじかれてしまうとのことであった。このように、なかなか顧客の選択肢に入るのが難しい中で、OXは本当にこのまま高価格帯の車いすの販売を貫くべきなのだろうか。

 私は、広く一般の顧客には選ばれない現状ではあるが、工夫した販売促進を行えば、高価格帯の製品を貫いたままでも将来的に顧客を獲得できると考えている。何故ならば、OXの車いすがこだわり消費をもたらす製品であると考えるからだ。

 清水(2007)によると、こだわり消費とは、商品購入に際して、単に価格のみを重視するのではなく、様々な要素を選択条件とし、その中で自らの価値基準に従い、多面的な評価で購買を決定させる消費者行動のことを指す。清水(2007)では、消費者はただ安いものをとにかく購入するのではなく、「こだわり消費」を行う性質があると述べられている。そこで、顧客はOXの車いすにこだわりを持って購入するのではないだろうか。

 OXの車いすは、上記で述べた通り競技用車いすの技術を活かし高い性能を持ち合わせている。まず、フレームなどの車いすの素材にはカーボンプレートを用いている。カーボンプレートとは、鉄に比べて10倍の強度を持ち、それでいて1/4の軽さを特徴に持つ素材だ。この素材を車いすのメインフレームを始めとする各部品に用いることで、従来の車いすよりも軽量且つ剛性に優れた車いすとなっている。次に、「クロスメンバー」という部品を用いていることも特徴の1つだ。これは車いすの左右のメインフレームを繋ぐことによって剛性をさらに強くする補強部品である。この部品があることによって、操作する力が最大限に路面へと伝えられ、軽く漕ぐことが出来るようになる。さらに、メインフレームが安定し、うねりや起伏を感じさせない乗り心地を実現させるのだ。このように、上記の素材や部品は、剛性や操作性と言った面で高い性能をもたらしており、車いす利用者の毎日の移動をより快適にしているのである。さらに、他メーカーの車いすよりも軽量であるため、長時間の移動で腕が疲れるといったようなことはなくタイヤを俊敏に動かすことが出来る。加えて小回りも効くため、自分の行きたい方向へ素早く移動することが可能である。つまり、車いすを自分で漕ぐ際に、より体への負担を減らし、楽に動かすことが出来るようになるのだ。

 また、従来の車いすは細いパイプで直線的に作られているが、OXの車いすは太いパイプで曲線を描いた作りになっており、他メーカーよりも見た目にこだわっている。このようなスタイリッシュな車いすを利用することによって前向きな気持ちになれる顧客が一定数いるのではないかと考えられる。それは、通常の車いすでは気分が上がらず、「カッコ悪い車いすでは出掛けたくない」と考える顧客である。そのような顧客は、OXの車いすを利用することによって、積極的に外へ出掛けたいという気持ちを抱くことが出来るのではないだろうか。

 このように、OXの車いすを選べば他メーカーの車いすでは得られないような操作性やスタイリッシュさを毎日享受することが出来る。従って、消費者は、機能性とデザイン性を追求しているOXの車いすにこだわりを持って購入するはずだ。しかし現状として、多くの顧客は車いすの購入にこだわりを持たず、判定会の時点で「安価な車いすで十分だ」と思ってしまっている。そのため、こだわりを持っているからこそ高価格でも購入したいと考える消費者はまだ少ない。重要なのは、この判定会より前に顧客へOXの車いすの優れた機能性やデザイン性を訴えかけ、車いすにこだわりを持つ顧客を多く獲得していくことではないだろうか。

 そこで私は、OXの車いすの特別な乗り心地に気づいてもらうために、病院での試乗イベントの実施を提案したい。その際には、様々なメーカーの車いすと比較して試乗させる。何故なら、顧客は、OXの車いすと他メーカーの車いすの両者に乗り比較することで、OXの車いすが「圧倒的に機能性や乗り心地に優れており、他メーカーよりもスタイリッシュで外に出かけたくなるデザイン」ということに気づくことができるからだ。特に機能性に関しては、顧客は乗って試してみてこそ、他メーカーよりも頑丈で尚且つ小回りが効くということを感じられる。乗り心地の違いに気づけば、元々は安価な車いすで良いと思っていた消費者であっても、車いすにこだわりを持つことの重要性を感じるのではないだろうか。また、このイベントは、病院の中、もしくは入り口付近で開催することを提案する。何故なら、車いすの購入を検討している人々にとって、少しでも遠いところへわざわざ出向くのは負担となるからだ。イベントに足を運ばせるのではなく、通院のついでに立ち寄れる場所で開催することによって、車いすの購入を検討している方が少しでも参加しやすいイベントとなり、より多くの顧客が車いすにこだわるようになるきっかけを作ることが出来るのである。

 このように判定会前に顧客へアプローチをかけて、特別な乗り心地に気づいてもらうことが出来るとすれば、車いすの購入にこだわりを持つ顧客は多くなり、結果的にOXの車いすを選ぶ人が増えると考えられる。そのためにも、コストをかけてでも他メーカーにない優れた機能性やデザイン性を捨てることなく追求していくべきだ。たとえ高価格帯の車いすの販売を貫いても、機能性やデザイン性を追求しそれらを顧客に感じてもらうことが出来れば、こだわって選んでくれる顧客を増やすことが可能ではないだろうか。よって私は、OXは高価格帯の車いすの販売を貫くべきだと考える。


【参考文献】
一般財団法人自転車産業振興協会技術研究所(2016)「車いす技術課題調査 報告書」
http://www.jbpi.or.jp/report_pdf/2016_1.pdf 
オーエックスエンジニアリングHP「製品紹介」http://www.oxgroup.co.jp/wc/products/products_syudou.html 
清水英範 (2007)「生活者の意識から「こだわり消費」を考える」『情報誌CEL』52,66-77.
吉野次郎(2018)「五輪に挑む車いすのフェラーリ」『日経ビジネス』1953, 62-63.

ほりいけ(3年)

ブラックスワンの経営学(第6章)

【要約】
 NHKスペシャルの過去を追跡して「不思議」 を解き明かしていく方法は事例研究に似ており、とても参考になる。本書ではその中の「女と男」という作品を紹介している。この作品は男と女のそれぞれの立場から、恋愛において何を相手に求めるのかを解き明かした作品である。男と女は一見、相思相愛であっても、男は容姿で相手を決めるのに対し、女は中身で相手を決めており、男性と女性では視点が全く異なるというのである。

 このように、異なる立場に着目し、過程を追跡しながら、不思議が発生するメカニズムを解き明かした論文がある。それは、テキサス大学准教授メリッサ・グラブナーによるベンチャー企業のM&Aにおける売却/買収の意思決定のプロセスを調査した論文である。グラブナーは、1999年から2000年代にかけてのインターネットバブルの時代のM&Aの事例8個を対象にした。その8つの事例のうち6つについてはリアルタイムで情報取集を行い、残りの2つについても交渉成立の6か月以内に情報を聞き出した。また、グラブナーは売却/買収のプロセスを売り手と買い手、双方の視点から調査を行った。調査の結果、売却/買収のプロセスは5つのフェーズに分かれており、それぞれのフェーズにおいて、売り手の経営者と買い手の経営者とでは信頼の重みの認識が基本的にちがうということが判明したのである。M&Aの際、基本的に売り手は買い手が信頼できるかどうかを最重要視し、信頼できるのではあれば、本来やるべきはずの確認や準備を怠ってしまっていた。一方の買い手は売り手が信頼できるかどうかはほとんど気にしていないため、入念に確認や準備を行い、自分が有利になるように交渉をすすめていった。さらに、その信頼の認識に対するずれは双方にとって想定外の結末をもたらすということまで明らかとなったのである。買い手は、売り手が自分たちのことを信頼している利用し、交渉の際、欺きを活発に行う傾向がみられたのである。その欺きが明るみにでると、売り手は相手に裏切られたと思い、その会社を去って行ってしまった。その後、買い手は重要な資産を失ったことに気づいたのである。

 この研究から私たちが学べることは何だろうか。それは、ある事象の過程をリアルタイムで様々な視点から追跡することで、その事象が発生した本当の原因を探ることができることではないだろうか。事例研究で陥りがちなバイアスが3つある。それは、^貶的な視点からにバイアス⊃兇衒屬蠅離丱ぅ▲広M尭嚇な質問から生じるバイアスである。グラブナーは、売り手と買い手双方の企業に入り込み、リアルタイムで情報収集をした。このことにより、,鉢△離丱ぅ▲垢鯣鬚韻襪海箸棒功している。しかし、全ての調査対象をリアルタイムで追跡することはコストもリスクもあるので難しい。そこで、著者は「リアルとレトロの組み合わせ」を提案している。このやりかたは、結果がわかっている事例をうまく活用することで、調査方法を適切に決めることができ、また、重要なポイントだけをインタビューできるため、効率的である。

【ディスカッション】
 本章では、M&Aの際、買い手は売り手のことを入念に調べると述べられていた。つまり、買い手は誰よりも売り手のことを理解しているはずである。しかし、買い手は売り手の経営陣の価値については失うまでは気づかなかったと本章では述べれられていた。また、グラブナーの論文にも、技術系のベンチャー企業におけるM&Aでは従業員と経営陣の関係性は非常に重要であり、経営陣が従業員のモチベーションになっているとも述べられていた。しかし、買い手は売り手の経営陣の価値については失うまでは気づかなかったと本章では述べれられていた。そこで、私たちは「なぜ、買い手の企業のリーダーは売り手の経営陣が去る前に、その経営陣の価値に気づけないのか」というテーマでディスカッションを行った。

前提条件

    買い手(大企業) 売り手(ベンチャー企業)
創業年数  60年      3年
従業員数  1500人  50人
経営陣の人数  5人      3人
経営者の特徴 雇われ経営者  若い(20代)

・技術系(ネットのソフトウェア)のM&A
・買い手はシナジー効果を見込んで買収に取り掛かっている
・M&Aの価格は400億円
・売り手の従業員のほとんどが創業メンバー
・M&A後、重大な欺きが明るみに出て、まず経営陣が去り、その後従業員の過半数が去ってしまった。
・本章の5つフェーズを追ってM&Aが行われた

 議論の中ででた意見としては、売り手を技術や売り上げなどの数字でしか見ていない、売り手側の従業員の働く要因(経営陣のビジョン、人柄など)を買い手側が理解できなかった、売り手側の経営陣と従業員の関係性を軽視した、重大な欺き➡買い手側の交渉力が高いので、自分に有利になるように交渉を進めた結果、利益などを追い求めすぎた、技術が欲しくて焦った、などの意見が出た。

 このディスカッションをまとめると、買い手側がM&Aの際、売り手の経営陣の価値に気づくことを阻害する要因というのは、主に3つあると考えられる。それは、’磴ぜ蠅技術や売り上げなどの数字しか見ていない⊇抄醗と経営陣の関係性を軽視した8鮠栂呂売り手より高まっていた、である。さらに、今回の議論ではこの3つの中でもっとも根源的な要因は,任△襪箸いΨ誅世忙蠅辰拭なぜなら、利益や技術ばかりを追い求める結果、経営陣と従業員との関係性が見えなくなったり、利益や技術を追い求めるために買い手は交渉力を高めようとするからである。つまり、本ディスカッションの結論は、なぜ、M&Aの際、、買い手の企業のリーダーは売り手の経営陣が去る前に、その経営陣の価値に気づけないのかというと、買い手のリーダーが利益や技術などの数字で判断できる部分しか重要視していなかったからであるということとなった。

 私たちは今後、様々な場面で、企業にとってのM&Aのような重要な決断を下さなければいけない時があるだろう。そのときに、買い手のようにある側面だけをみて判断を下すと後々後悔することになる。そのようなときは多面的に物事を捉えて判断を下さなければならない。このことがわかっていただければ、本ディスカッションは意義のあるものになったのではないのだろうか。

とみざわ(3年)

calendar
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
<< August 2019 >>
selected entries
categories
archives
links
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM