ブラックスワンの経営学(5章)

【要約】
エクセレントカンパニーが「優良企業に条件」八つの条件を導き出した。しかし、これは「必要条件」に過ぎなかった。必要条件と十分条件を確かめるためには学の手順を踏む必要がある。これらを導出する手法は主に二つである。まずは、一致法である。これは同じ結果を示す複数の事例を比較して、そこに共通する要因を探るもので、共通の結果をもたらした要因を推論する方法。これは必要条件を明らかにするのに適している。次は裁縫である。これは十分条件を明らかにするのに適しているといえる。

 そこで、最優秀論文賞に選ばれた事例研究から一致法、差異法の用い方について学ぶ。この研究は二段階で行われている。一段階目は、考えられる要因を抽出する。それを基に仮説を設定する。そして、それに当てはまると考えられる事例を選び出す。この事例を分析した結果、仮説通りの結果にならなかった。本来ならここで、大きく方向を変えることが多いが、本研究では再分析することで新しい仮説を探した。
 
次に二段階目の分析である。ここでは一段階目の分析をもとに極端な結果を示した二つの事例に対して、差異法を用いて分析を行った。その結果一段階目で設定した仮説でなく、全く別の要因が結果に影響していることが判明した。また、この結果妥当性を確かめるために、ほかの事例にあてはめることで、妥当性の向上を図った。このように、仮説の研究に不利であっても事実と向き合い本当の原因を探ることが大切である。

 本研究で注目すべき点は二つある。一つは、定説通りにいくことはない。それを疑うことが必要であるということ。二つ目は、問題意識を見失わないことが重要である。どんなに仮説通りにいかなくても問題意識を見失わなければ、立ち直ることができる。失敗してしまったときに集めたデータを基に再び仮説を導出し分析をすることができる。

 事例研究におけるポイントについて説明する。それは二つある。一つ目は、問題意識を明確にすることである。問題意識を明確にすれば、どんなに仮説通りにいかなくても折れることなく新たな仮説を導き、分析を行うことができる。二つ目は、往復運動である。分析を行った結果導き出された要因を他の事例にあてはめる。果てはまれば仮説の妥当性を高めることができる。

【DP】
中野ゼミナールで行われるディスカッションではすべての参加者が発言することができる。しかし、上の学年が意見を言い合っているとき(特に4年生)、2年生が発言しづらいのは往年の課題であると考えられる(少なくとも去年、今年はそのような状況が想起される)。本書ではイノベーションの普及には専門家集団の間にある「社会的・認知的境界」が障壁になっていたと述べられている(第二段階の調査P.185~)。しかし、この「社会的・認知的境界」は専門家集団に限らず、我々の中にも存在すると考えた。それがディスカッションにおける障壁になっていると考える。そこで、今回ディスカッションポイントを「ディスカッションにおける2年と4年の間にある社会的・認知的境界を乗り越えるためにはどうすればよいか」とし、ディスカッションを行った。

 今回のディスカッションにおける条件は以下のとおりである。

・タコツボ化
→内部で変革を促すのは得意とする。しかし、外部からの刺激を受用するのが苦手。
*内部=同期内
*外部=ほかの学年

・社会的・認知的境界
社会的境界(「社会的距離」p.192の表現を借用)=集団間の紐帯の強度
→特に学年、年齢による距離感を想定する
認知的境界(広辞苑の定義と元論文の「Knowledge Boundary」との兼ね合いより)=知ること、知識を持つこと。特に直観的でなく推理、思考に基づく。

・今回のディスカッションにおいて、発言をする意見を持ち合わせていないとなると、それで議論が終了してしまうと考えられる。そこで、あくまで言いたいことがあっても言えないときの壁の乗り越え方について議論するものとする。
・今回期待する意見として、二年生主体の意見を期待する。その理由として、ディスカッションに参加する成員は一度二年生を経験していることから、様々な意見が出ると考えるから。一方四年生側の意見は、四年生になったことのない人が多いので、非常に限られたメンバーのみが主張することになると考えるためである。また、四年生は現状ディスカッション中に、発言を促すような言動をとるので、一旦それで良いと考えたから。

 今回のディスカッションによって、各学年で行えるアプローチが導き出された。まず二年生である。二年生は臆さずなんでも言うことが重要である。しかし、それを行うことは簡単なことではない。その時、同期と競争意識を持つことやどんなに意見を否定されても人格までは否定されていないと考えることがあげられた。さらに、上の学年が何を言っても冷静アになること。学年が上だからと言って正しいとは限らない。一度冷静になって意見を聞いてみることも重要である。また、どんなにアプローチの方法があっても結局個人がどれだけ勇気を振り絞ることができるかに依存する部分が大きいことも分かった。
 
次に四年生である。四年生に求められるのは環境づくりである。心理的安全性という言葉があるように、みんながなんでも言える環境を作り出すことが重要なのではないか。所かまわず否定するのではなく、同調することも時には重要になると考える。また、直接アプローチをすることで、下級学年の背中を押すことができるということも分かった。

最後に三年生である。残念なことに三年生にできることはほとんどない結果になってしまった。三年生が背中を押すことが提案されたが、そこに学年の差はなく四年生にされようが三年生にされようが関係ないという。それ以外の意見が出なかったので、本当に社会的、認知的境界があるのは三年生なのかもしれない。今回のディスカッションを設定した私は三年生なので大変皮肉めいた結果になってしまった。今回の結果を踏まえて今後のディスカッションの処方箋として利用していただきたいと考える。

にしむら(3年)

OXの車いすが選ばれるためには

 吉野(2018)によると、オーエックスエンジニアリング(以下、OX)は、車いすの製造、販売を行っている企業である。特に、競技用車いすにたくさんの投資を行っており、競技用車いすにおいて5割というシェアを獲得するトップメーカーだ。また、OXの日常用車いすに関しては、この競技用車いすの技術を活かして製造されているため、他メーカーの車いすよりも軽量で俊敏性に優れており、小回りの効く製品となっている。そして、剛性にも優れており、「強く軽い車いす」であることが特徴だ。さらに、デザイン性にもこだわっており、スタイリッシュな車いすを販売している。しかし、日常用車椅子においてOXはトップメーカーとは言えない。何故なら、一般財団法人自転車産業振興協会技術研究所(2016)によると、日常用車椅子のシェアの8割はOX以外の4つの大手メーカーが占めているからである。

 車いすの販売方法は少し特殊である。車いすを購入する際、「車いす判定会」というものがある。「車いす判定会」では、医師立ち合いの元、一人一人の顧客にどのような車いすがあっているのかが判定される。また、それぞれの顧客に必要と判定された機能に対しては、国から助成金が出る。そして最終的に顧客がどこのメーカーの車いすを購入するかは、顧客の金銭的な要望などと必要な機能を考慮して、医師が決定するとのことだ。OX関東VIVIT店店長古谷様の話によると、金銭的に助成金内で抑えたいと要望を出す顧客が多いとのことだった。しかし、OXの車いすはどのモデルも高価である。よって、顧客の選択肢の中からはじかれてしまうとのことであった。このように、なかなか顧客の選択肢に入るのが難しい中で、OXは本当にこのまま高価格帯の車いすの販売を貫くべきなのだろうか。

 私は、広く一般の顧客には選ばれない現状ではあるが、工夫した販売促進を行えば、高価格帯の製品を貫いたままでも将来的に顧客を獲得できると考えている。何故ならば、OXの車いすがこだわり消費をもたらす製品であると考えるからだ。

 清水(2007)によると、こだわり消費とは、商品購入に際して、単に価格のみを重視するのではなく、様々な要素を選択条件とし、その中で自らの価値基準に従い、多面的な評価で購買を決定させる消費者行動のことを指す。清水(2007)では、消費者はただ安いものをとにかく購入するのではなく、「こだわり消費」を行う性質があると述べられている。そこで、顧客はOXの車いすにこだわりを持って購入するのではないだろうか。

 OXの車いすは、上記で述べた通り競技用車いすの技術を活かし高い性能を持ち合わせている。まず、フレームなどの車いすの素材にはカーボンプレートを用いている。カーボンプレートとは、鉄に比べて10倍の強度を持ち、それでいて1/4の軽さを特徴に持つ素材だ。この素材を車いすのメインフレームを始めとする各部品に用いることで、従来の車いすよりも軽量且つ剛性に優れた車いすとなっている。次に、「クロスメンバー」という部品を用いていることも特徴の1つだ。これは車いすの左右のメインフレームを繋ぐことによって剛性をさらに強くする補強部品である。この部品があることによって、操作する力が最大限に路面へと伝えられ、軽く漕ぐことが出来るようになる。さらに、メインフレームが安定し、うねりや起伏を感じさせない乗り心地を実現させるのだ。このように、上記の素材や部品は、剛性や操作性と言った面で高い性能をもたらしており、車いす利用者の毎日の移動をより快適にしているのである。さらに、他メーカーの車いすよりも軽量であるため、長時間の移動で腕が疲れるといったようなことはなくタイヤを俊敏に動かすことが出来る。加えて小回りも効くため、自分の行きたい方向へ素早く移動することが可能である。つまり、車いすを自分で漕ぐ際に、より体への負担を減らし、楽に動かすことが出来るようになるのだ。

 また、従来の車いすは細いパイプで直線的に作られているが、OXの車いすは太いパイプで曲線を描いた作りになっており、他メーカーよりも見た目にこだわっている。このようなスタイリッシュな車いすを利用することによって前向きな気持ちになれる顧客が一定数いるのではないかと考えられる。それは、通常の車いすでは気分が上がらず、「カッコ悪い車いすでは出掛けたくない」と考える顧客である。そのような顧客は、OXの車いすを利用することによって、積極的に外へ出掛けたいという気持ちを抱くことが出来るのではないだろうか。

 このように、OXの車いすを選べば他メーカーの車いすでは得られないような操作性やスタイリッシュさを毎日享受することが出来る。従って、消費者は、機能性とデザイン性を追求しているOXの車いすにこだわりを持って購入するはずだ。しかし現状として、多くの顧客は車いすの購入にこだわりを持たず、判定会の時点で「安価な車いすで十分だ」と思ってしまっている。そのため、こだわりを持っているからこそ高価格でも購入したいと考える消費者はまだ少ない。重要なのは、この判定会より前に顧客へOXの車いすの優れた機能性やデザイン性を訴えかけ、車いすにこだわりを持つ顧客を多く獲得していくことではないだろうか。

 そこで私は、OXの車いすの特別な乗り心地に気づいてもらうために、病院での試乗イベントの実施を提案したい。その際には、様々なメーカーの車いすと比較して試乗させる。何故なら、顧客は、OXの車いすと他メーカーの車いすの両者に乗り比較することで、OXの車いすが「圧倒的に機能性や乗り心地に優れており、他メーカーよりもスタイリッシュで外に出かけたくなるデザイン」ということに気づくことができるからだ。特に機能性に関しては、顧客は乗って試してみてこそ、他メーカーよりも頑丈で尚且つ小回りが効くということを感じられる。乗り心地の違いに気づけば、元々は安価な車いすで良いと思っていた消費者であっても、車いすにこだわりを持つことの重要性を感じるのではないだろうか。また、このイベントは、病院の中、もしくは入り口付近で開催することを提案する。何故なら、車いすの購入を検討している人々にとって、少しでも遠いところへわざわざ出向くのは負担となるからだ。イベントに足を運ばせるのではなく、通院のついでに立ち寄れる場所で開催することによって、車いすの購入を検討している方が少しでも参加しやすいイベントとなり、より多くの顧客が車いすにこだわるようになるきっかけを作ることが出来るのである。

 このように判定会前に顧客へアプローチをかけて、特別な乗り心地に気づいてもらうことが出来るとすれば、車いすの購入にこだわりを持つ顧客は多くなり、結果的にOXの車いすを選ぶ人が増えると考えられる。そのためにも、コストをかけてでも他メーカーにない優れた機能性やデザイン性を捨てることなく追求していくべきだ。たとえ高価格帯の車いすの販売を貫いても、機能性やデザイン性を追求しそれらを顧客に感じてもらうことが出来れば、こだわって選んでくれる顧客を増やすことが可能ではないだろうか。よって私は、OXは高価格帯の車いすの販売を貫くべきだと考える。


【参考文献】
一般財団法人自転車産業振興協会技術研究所(2016)「車いす技術課題調査 報告書」
http://www.jbpi.or.jp/report_pdf/2016_1.pdf 
オーエックスエンジニアリングHP「製品紹介」http://www.oxgroup.co.jp/wc/products/products_syudou.html 
清水英範 (2007)「生活者の意識から「こだわり消費」を考える」『情報誌CEL』52,66-77.
吉野次郎(2018)「五輪に挑む車いすのフェラーリ」『日経ビジネス』1953, 62-63.

ほりいけ(3年)

ブラックスワンの経営学(第6章)

【要約】
 NHKスペシャルの過去を追跡して「不思議」 を解き明かしていく方法は事例研究に似ており、とても参考になる。本書ではその中の「女と男」という作品を紹介している。この作品は男と女のそれぞれの立場から、恋愛において何を相手に求めるのかを解き明かした作品である。男と女は一見、相思相愛であっても、男は容姿で相手を決めるのに対し、女は中身で相手を決めており、男性と女性では視点が全く異なるというのである。

 このように、異なる立場に着目し、過程を追跡しながら、不思議が発生するメカニズムを解き明かした論文がある。それは、テキサス大学准教授メリッサ・グラブナーによるベンチャー企業のM&Aにおける売却/買収の意思決定のプロセスを調査した論文である。グラブナーは、1999年から2000年代にかけてのインターネットバブルの時代のM&Aの事例8個を対象にした。その8つの事例のうち6つについてはリアルタイムで情報取集を行い、残りの2つについても交渉成立の6か月以内に情報を聞き出した。また、グラブナーは売却/買収のプロセスを売り手と買い手、双方の視点から調査を行った。調査の結果、売却/買収のプロセスは5つのフェーズに分かれており、それぞれのフェーズにおいて、売り手の経営者と買い手の経営者とでは信頼の重みの認識が基本的にちがうということが判明したのである。M&Aの際、基本的に売り手は買い手が信頼できるかどうかを最重要視し、信頼できるのではあれば、本来やるべきはずの確認や準備を怠ってしまっていた。一方の買い手は売り手が信頼できるかどうかはほとんど気にしていないため、入念に確認や準備を行い、自分が有利になるように交渉をすすめていった。さらに、その信頼の認識に対するずれは双方にとって想定外の結末をもたらすということまで明らかとなったのである。買い手は、売り手が自分たちのことを信頼している利用し、交渉の際、欺きを活発に行う傾向がみられたのである。その欺きが明るみにでると、売り手は相手に裏切られたと思い、その会社を去って行ってしまった。その後、買い手は重要な資産を失ったことに気づいたのである。

 この研究から私たちが学べることは何だろうか。それは、ある事象の過程をリアルタイムで様々な視点から追跡することで、その事象が発生した本当の原因を探ることができることではないだろうか。事例研究で陥りがちなバイアスが3つある。それは、^貶的な視点からにバイアス⊃兇衒屬蠅離丱ぅ▲広M尭嚇な質問から生じるバイアスである。グラブナーは、売り手と買い手双方の企業に入り込み、リアルタイムで情報収集をした。このことにより、,鉢△離丱ぅ▲垢鯣鬚韻襪海箸棒功している。しかし、全ての調査対象をリアルタイムで追跡することはコストもリスクもあるので難しい。そこで、著者は「リアルとレトロの組み合わせ」を提案している。このやりかたは、結果がわかっている事例をうまく活用することで、調査方法を適切に決めることができ、また、重要なポイントだけをインタビューできるため、効率的である。

【ディスカッション】
 本章では、M&Aの際、買い手は売り手のことを入念に調べると述べられていた。つまり、買い手は誰よりも売り手のことを理解しているはずである。しかし、買い手は売り手の経営陣の価値については失うまでは気づかなかったと本章では述べれられていた。また、グラブナーの論文にも、技術系のベンチャー企業におけるM&Aでは従業員と経営陣の関係性は非常に重要であり、経営陣が従業員のモチベーションになっているとも述べられていた。しかし、買い手は売り手の経営陣の価値については失うまでは気づかなかったと本章では述べれられていた。そこで、私たちは「なぜ、買い手の企業のリーダーは売り手の経営陣が去る前に、その経営陣の価値に気づけないのか」というテーマでディスカッションを行った。

前提条件

    買い手(大企業) 売り手(ベンチャー企業)
創業年数  60年      3年
従業員数  1500人  50人
経営陣の人数  5人      3人
経営者の特徴 雇われ経営者  若い(20代)

・技術系(ネットのソフトウェア)のM&A
・買い手はシナジー効果を見込んで買収に取り掛かっている
・M&Aの価格は400億円
・売り手の従業員のほとんどが創業メンバー
・M&A後、重大な欺きが明るみに出て、まず経営陣が去り、その後従業員の過半数が去ってしまった。
・本章の5つフェーズを追ってM&Aが行われた

 議論の中ででた意見としては、売り手を技術や売り上げなどの数字でしか見ていない、売り手側の従業員の働く要因(経営陣のビジョン、人柄など)を買い手側が理解できなかった、売り手側の経営陣と従業員の関係性を軽視した、重大な欺き➡買い手側の交渉力が高いので、自分に有利になるように交渉を進めた結果、利益などを追い求めすぎた、技術が欲しくて焦った、などの意見が出た。

 このディスカッションをまとめると、買い手側がM&Aの際、売り手の経営陣の価値に気づくことを阻害する要因というのは、主に3つあると考えられる。それは、’磴ぜ蠅技術や売り上げなどの数字しか見ていない⊇抄醗と経営陣の関係性を軽視した8鮠栂呂売り手より高まっていた、である。さらに、今回の議論ではこの3つの中でもっとも根源的な要因は,任△襪箸いΨ誅世忙蠅辰拭なぜなら、利益や技術ばかりを追い求める結果、経営陣と従業員との関係性が見えなくなったり、利益や技術を追い求めるために買い手は交渉力を高めようとするからである。つまり、本ディスカッションの結論は、なぜ、M&Aの際、、買い手の企業のリーダーは売り手の経営陣が去る前に、その経営陣の価値に気づけないのかというと、買い手のリーダーが利益や技術などの数字で判断できる部分しか重要視していなかったからであるということとなった。

 私たちは今後、様々な場面で、企業にとってのM&Aのような重要な決断を下さなければいけない時があるだろう。そのときに、買い手のようにある側面だけをみて判断を下すと後々後悔することになる。そのようなときは多面的に物事を捉えて判断を下さなければならない。このことがわかっていただければ、本ディスカッションは意義のあるものになったのではないのだろうか。

とみざわ(3年)

ブラックスワンの経営学(第3章)

【要約】
 まずキティ・ジェノヴィーズ事件という事例が取り上げられている。この事件は、ある女性が刺されても周りの人が警察に通報しなかったということで、当時のニューヨークでもありえないことであった。この事例を実験室実験と自然実験の2つ実験検証している。一つ目の実験室実験とは、環境を人為的に作り出し行う実験であり、脈格(コンテキスト)をコントロールできるという点が強みである。二つ目の自然実験とは、事件そのものの事例のことである。前者の方法は当時と同じ環境を人為的に作り出すためどうしても普段の生活における自然の反応や行動を観察することが難しい。しかし、後者の方法はその事件そのものを事例としても挙げることで似たようなコンテキストの事例を加えていくことで有益な知見を得ることができる。
 続いて、ギルバードの組織慣性の研究である。これは、組織がこれまでにない大きな変化に直面し、その脅威を感じ取ったとき、どのような反応をするのかを研究したものであるこの研究結果として2つの見解が見られている。1つ目は脅威を感じとると、組織慣性はまって変革が促される。2つ目は脅威を感じ取ると、組織慣性は強まって変革が妨げられる。この2つの見解は正反対である。これについてギルバードは何について慣性かをしっかり整理していないから相違が起きると指摘している。この見解が異なることを本書では、「ねじれ現象」と呼んでいる。そこで組織慣性には2種類あると述べられている。資源頑強性とルーチン頑強性である。このどちらの慣性がどのように変化するのかをギルバードは新聞業界を事例に研究を行った。結果として有益な知見が得られたのであるが、その理由としてギルバードは、状況をコントロールしつつ、比較できる理想的な事例選定を行い十分な情報を集めて、厳格な手続きを行うことによって「ねじれ現象」を明らかにした。また何度も反復実験を行うことによって信憑性を高めていったのである。
 以上の研究から得られることとして筆者は2つ指摘している。1つは自然実験発想で反復実験をすることの大切さである。ここで事例の数にこだわるのでなく、仮説明確にしたうえで事例を観察していくことが確かな結論を導くことができる。2つ目に反復実験がうまくいかなかった場合の考察である。仮説を明確にしてもその仮説あてはまらない事例もでてくる。そのような事例に対して、徹底的になぜそのような結果になったのかを考えることが必要である。どのような時と場合にこの結果が得られ、このような時と場合にはこの結果は得られないといった具合に場合分けが重要なのである。
 
【ディスカッション】
 本書では、組織において、ある種の慣性は脅威によって緩和されるが、別の種の慣性は脅威によって強化されると述べられている。このような事態を本書では、「ねじれ現象」と呼んでいる。この慣性には2つの種類がある。1つ目は経営資源の配分の仕方にかかわる慣性である(資源頑強性)。この慣性が強いと新しい資源配分パターンを実施することができない。2つ目は業務のオペレーションについての慣性だ(ルーチン頑強性)。これが強いと業務プロセスの変革が妨げられる。それではゼミのチーム研究という組織において「ねじれ現象」が起きてしまった場合。どのように解消するのかディスカッションをおこなった。

「前提」
 あるゼミナールのチームである1班は3年生3人、2年生2人でチーム研究をおこなっていた。そこで、3年生がスーパーマーケットのテーマを出し、研究を進めることになった。チーム研究は、3年生が主導で行い、2年生の意見を聞き入れてもらえない(テーマに対して不満)現状があった。3年生と2年生の意思疎通はあまりはかれていなかった。1班は2週に1回進捗情報を発表しなければならなかった。1班では、発表に間にあわせれば良いという考えが3年生の中で強かった。2年生は十分な情報収集を行い、チームで話し合いながら研究を進めていきたいと考えている。
そしてこの場合、資源頑強性を「知識・時間・労力をかけること」とし、ルーチン頑強性を「今まで通りテーマを決め方、活動の仕方」とし、脅威を「リサーチクエスチョンがこのままではいけない」こととする。

 議論の中で出た意見として、まず人間関係の意見として、2年生の意見を聞いてみる、試しに2年生主体でやってみる、チーム全員が主体となれる環境をつくること、他のゼミ生からの意見を活用することがあげられた。次に時間に関しての意見として、あえて時間を短くしてみる、個人でできる作業はあらかじめ済ましておくことがあげられた。最後に研究のテーマについての意見として、ルーチンを変えてみる、フィールドワークからテーマを見つける、なぜこのテーマではいけないのか考える、研究の穴からテーマを決めることがあげられた。

 今回の議論をまとめると、チーム研究においてねじれ現象が起こってしまったときの解消法として、2つのことが重要であることがわかった。1つは時間を有効的に活用することである。もう1つはテーマを決める・変える際に工夫を凝らしてみることである。このことから、チーム研究においてねじれ現象が発生してしまったら、上記の2つのことを意識してみては良いのではないだろうか。

やまざき(3年)

ブラックスワンの経営学 (第4章)

【要約】
 創刊男の異名をとる起業家、くらたまなぶ氏は、インタビューの際に必ず相手の生活空間に飛び込むそうだ。生活空間というのは、その人が自然体でいられるコンテキストである。くらた氏流のマーケティングのポイントは、ものごとの本質を見極めるときには、堅苦しいインタビュー調査ではなく、相手が心を開いてくれるような環境と設定で行うべきだということだ。相手がいつも通りにふるまえるような現場の環境でなければ見つけられないブラックスワンもいるようである。このことは、学術についても同じだ。学術研究においても現場で観察し、それと並行するようなかたちでインタビューを行うのが理想的である。本章では、現場の調査を通じて意外な事実を見出す方法について紹介する。

 本章で紹介する研究論文は、理想的な現場観察とインタビュー調査の一つのお手本である。エルズバッハとクラマーはハリウッドで、実際のピッチミーティングを間近で観察し、インタビューすることで、脚本家の創造性がどのように判断されるのかの実態に迫った。アカデミー・オブ・マネジメントは、彼らの研究を非常に高く評価して、最優秀論文賞を授与した。

 この最優秀論文賞受賞論文から学べることは何だろうか。それは一言で言えば、現場から情報を収集し、コンテキストを大切にしながら解釈して分析を行うことの大切さであろう。エルズバッハとクラマーは、コンテキスを大切にして調査をしている。ここでは2つのポイントに沿ってコンテキスの大切さを確認する。1つ目のポイントは、現場で聞き出すということである。現場でなければ確かめられないことはたくさんある。インタビューや観察も然りだ。現場だと、言葉になりにくい暗黙知なども聞き出せるのである。2つ目のポイントは、仮説を持ち込みつつも執着してはならないことである。現場が宝の山だからだと言って、闇雲に飛び込めばいいというものではない。仮説があるからこそ「その通り」「違う」ということが明確になる。違うにしても、何が違うのか、考えを深めることができるのだ。ただし、実際の調査では、そもそも、最初に持ち込んだ仮説が全く的外れであったということも少なくない。それゆえ、特定の仮説に執着するのは得策ではないのだ。事例研究の一つの特徴は、厳密な検証にこだわり過ぎることなく、柔軟に、本質を探索することができる点である。予期しない形で、思いもしなかった本質にたどり着くことができるのだ。

【ディスカッション】
 本章では、インタビューを行う際に、相手の生活空間に入り込むことが大切であると述べられている。企業でよくあるインタビューで、白い壁と事務用デスクの会議室に招いて向き合って聞くという光景があるが、これは最悪の対面インタビューである。なぜなら、現場から遠い特殊な環境で意見を聞き出そうとしても、なかなか本音を聞き出せるものではないからである。しかし、実際に企業にインタビューを行う際、本章で最悪と言われている、会議室に招かれインタビューを行うことが多いと感じる。そこで、「チーム研究のインタビューで、白い壁と事務用デスクの会議室に招かれた場合、どのようにインタビューを行えば、相手の本音を聞き出せるか。」というディスカッションを行った。

 設定として、我々のチームは「農業参入した企業の多くは撤退しているが、なぜマサヤファームは事業継続できているのか」ということを明らかにしたいと考えており、株式会社マサヤファームの代表取締役社長のマサヤ様(45)にインタビューを行う。マサヤファームは農業事業を行っており、ほうれん草の生産及び販売をしている。従業員数は30名であり、代表取締役社長であるマサヤ様も従業員とともに農業を行っている。また、マサヤファームは各メディアで注目されており、本も出版している。インタビュー時間は60分で、こちらからのインタビュー参加人数は1〜5名を予定している。ちなみに、今回現場となる農地は遠い場所にあるため、インタビュー日に行くことができない。インタビューの主な質問項目として、「なぜマサヤファームは事業継続ができているのか」「どのようにノウハウを得たのか」等についてインタビューを行おうと考えている。

 議論を行う中で出た意見として、相手を褒める、事前に本を読んだりしてマサヤ様がどんな人なのかを調べる、少々オーバーリアクションをする、お土産を持っていく、相手が言ったことを反復するなどの意見がでた。また、本章で言われているように仮説をあらかじめたてる、事前に農家の方にもお話を伺う、相手に共感した上で自分の考えを言う、なぜを繰り返すという意見もでた。おもしろい意見として、マサヤファームに興味を持っていることをアピールするためにマサヤファームのほうれん草を事前に食べたり、実際にほうれん草を持っていくという意見をあった。

 今回の議論をまとめると、相手の本音を聞き出すためには2つのことが重要であることが分かった。1つ目は、相手を褒める、共感するなど、相手がもっと話したいと思える雰囲気をつくることである。2つ目は、事前に本を読む、農家の方にお話を伺う、なぜを繰り返すなど、主体性をもって事前準備や当日のインタビューを行うことである。以上の2点が相手の本音を聞き出す際に重要な点になると考えた。

 我々はチーム研究や卒業論文などの調査で実際にインタビューに行くことが多い。また、社会人になれば、様々な人と話す機会も多くなるだろう。その際に今回の議論が活かせれば、この議論は非常に意味のあるものになったのではないかと考える。

よしだ(3年)

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