世界標準の経営理論(第16,17章 p.285-314)

【要約】
16章では、進化理論について述べられている。進化理論とは、限定された合理性を基礎に「組織の進化」のメカニズムを説き明かす理論である。この理論の核心となるのは「ルーティン」という概念であり、組織メンバーが同じ行動を繰り返すことで共有する暗黙知と形式知を土台にした行動プロセスのパターンのことを指す。安定化・記憶・進化の効果があり、漸進的な変化・経路依存性・硬直化という進化の特性が挙げられる。しかし、硬直化を進める要因として、繰り返し行動の頻度・行動パターンの一定性・時間プレッシャーなどの外部プロセスが挙げられ、組織は事業環境の大きな変化が起きた際に、ルーティンをゼロベースから作り直す覚悟が必要である。

 17章では、進化理論をベースとして出来た未完の理論であるダイナミックケイパビリティについて述べられている。これは、現在の将来予見が十分にできないハイパーコンペティションの時代に「企業の変化」を説明する理論である。企業は共食いを恐れるが、これを促すことがダイナミック・ケイパビリティの形成につながる。また、ダイナミックケイパビリティにはティース型とアイゼンハート型があり、センシングやサイジング・シンプルルールという要素や、変化のための力が経営者個人のケイパビリティなのか組織ルーティンに埋め込めるのか、そのバランスはどこにあるのかはまだ明かになっていない。

【ディスカッション】
本書では、企業が既存事業と新規事業のカニバリ(共食い)を恐れるが、ハイパーコンペティションの時代では推奨すべきであると言われている。しかしカニバリとはChandy&Tellis(1998)によると自社の新製品によって既存製品の売上が奪われる現象を意味し、通常それは避けるべきものである。では、カニバリは本当に推奨されるものなのかと疑問を持ったため、ケータイ市場を例に話し合いを行った。

事例の詳しい内容として、格安SIMの登場によりケータイ市場でシェア3位である自社の顧客が流出してしまう可能性がある。そのような変化の激しい業界の中で、経営者である私たちが「顧客流出防止、更なるシェアの拡大」を目標に、カニバリを恐れない新規事業を立案するのか、はたまたリソースを用いてカニバリの起きない新規事業を立案するのかということを設定した。

カニバリを恐れない新規事業を立案するという意見では、格安SIM事業への参入を行う当意見があり、理由としては以下のような点が挙げられた。まずは顧客の確保をすべきである。今のケータイも格安SIMのケータイも基本的な機能が変わらないからこそ、顧客が流出しやすい。そのため、全体的に顧客を確保したほうが良い。カニバリしてもすでに持っているものも生かせるので、顧客が流出する前に格安SIMに参入すべき。持続的競争優位は難しいが、参入によって一時的でもいいから競争優位をもつべき。顧客が流れるのはさける。等だ。反対にカニバリの起きない新規事業を立案では、顧客の幅はそんなに変わらないため、電子決済やQR決済などを作り、顧客の囲い込みをすべきである。別の事業も選択肢にあるならわざわざカニバリのリスクを背負う必要は無いのではないか。自社がすでに持っているノウハウを別に活用した方が利益に繋がる。顧客の流出を防ぐだけではシェア率の向上にはつながらないと考えるため、それなら別のことをしたほうがいいのではないかという意見が挙げられた。

ディスカッションのまとめとして、カニバリを避ける新規事業では、具体的な例が想像しにくいという意見があったものの、更なるシェアの獲得のためには顧客の囲い込みをすべきという意見が挙げられた。しかし、全体としては、まず顧客の流出を防ぐために、本書の事例にあったようにカニバリを恐れない新規事業の立案のほうが多く挙げられた。


【最後に】
この事例は実際に2016年に格安SIMが登場したときの話である。ここで挙げていた自社は、格安SIMに参入したことによって自社の5割以上の顧客がそちらに流れてしまい、自社内で深刻なカニバリが起こってしまったのである。一方で競合他社は参入を避け、回線のみを提供するという戦略をとっていた。この事例のように、理論に則っていれば成功するとは限らず、今回は必ずしもカニバリが推奨されるとは限らないのではないかという結論に至った。これからのハイパーコンペティションの時代には理論を知っていることはもちろん重要だが、自分の置かれた状況、センシングやサイジングによる進化、つまりダイナミックケイパビリティを持っていることが重要であると考える。ハイパーコンペティションの時代に就職活動をしていかなければならない私たちにとって、企業の変化する力だけではなく、個人のダイナミックケイパビリティも必要なのではないか。

たちばな(3年)

世界標準の経営理論(第14,15章 p.251-284)

【要約】
14章では、組織の記憶の理論について述べられている。日本企業の課題である個人に知が保存されているのにそれが組織として引き出せていないということに焦点を当て、それを解決するためSMMとTMSを高めるべきであると筆者は主張する。実際に世界的にイノベーティブな企業では、これらを高めるための工夫がなされている。あとは、このメタ知を誰に持たせるかということについてだが、これに関してはインフォーマルな交流を通して全員で共有することや専門職個人に任せるかである。

 15章では、組織の知識創造理論であるSECIモデルについて扱った。このモデルは、野中郁次郎によって提唱された、暗黙知と形式知を通して行われる組織の知識創造プロセスを描くものだ。これらの知識がダイナミックな相互作用を起こすことによって、組織は新しい知を生み出していくのだ。このモデルは、AI化が進む現在大変有効なものとなり得る。なぜなら、人工知能が持っていない暗黙知を用いることによって、知識の創造になぜ生身の人間が必要なのかを説明するからである。

【ディスカッション】
 今回のディスカッションでは、組織内で共有された暗黙知の流出に焦点を当て、それを防ぐにはどうしたら良いのかについて議論をした。本書では、知の創造のために暗黙知を如何にして共有するのかについて述べられていた。しかし、その暗黙知が外へ流出してしまったらどうなるのか。自身にとって不利益を被りかねない。このような事態を未然に防ぐために考えられる対策方法について話し合った。

 議論をするに当たって、車の製造を行う二社間での事例を設定した。自社内で共有された暗黙知を、自社に不満を抱いた社員がライバル社へ持ち出してしまうという事例だ。このことによって、自社はライバル社に製品の模倣をされシェアを奪われてしまうことにも繋がる。この危機を念頭に置き、議論を進めた。

 ディスカッションで行われた議論は大きく二つに分けることが出来る。1つ目は、暗黙知を全社的に共有した上で対策を練ることだ。全社的な共有は実際難しいことであるが、これを実現出来れば知の創造の活性化に繋がる。このことを考慮した上で、自社内での規則や秘密保持契約を結ぶ・従業員との密なコミュニケーションをとる・自社でしか製造することが出来ないような製造プロセスを組むなどの意見が主張された。一方の2つ目は、暗黙知の共有を部分的なものにするということである。全社的に暗黙知の共有を行うよりも、その流出のリスクの軽減が出来るはずだ。この具体的は意見としては、コアな部分とそうでない部分とでオープン、クローズにする・事業や部品ごとに暗黙知の共有を分ける・ある程度の知識のブラックボックス化を試みるというものであった。しかし、こちら側の意見は本書と反する部分もあり、意見としては出にくかった。

 これらの意見をまとめると、暗黙知の共有は組織にとって必要なことである。しかしそれと同時に流出等のリスクを伴う。これを防ぐためには、事前に自社内でしっかりと対策をとるべきであるという考えとなった。敢えて共有の範囲を狭めるのではなく、暗黙知を共有した上で、対策方法を整えるべきであるというのが今回のディスカッションのまとめになる。

 最後に今回のディスカッションに関して、自身の反省点を挙げる。私が改善すべき点は2点あったと考える。まず、偏りのない意見の出得るディスカッションポイントにするべきであったということだ。議論を活性化させるためにも工夫が必要であったと考える。次に、前提条件を現実味のあるものにするべきであったことだ。飛躍した内容であると、意見が出にくく、ディスカッションの有用性が薄れる。これらのことを踏まえて、ディスカッションポイントの選定を行いたいと考えた。

きじま(3年)

世界標準の経営理論(第11,12,13章 p.200-250)

【要約】
 本書の第2部はマクロ心理学―主に認知心理学―をベースとする理論を解説し、それらは特に組織学習やイノベーションについて高い説明力を持つ。

 第11章のBTFは経済学への批判をもとに、組織の行動のメカニズムについて展開している。人・組織の認知には限界があるからこそサーチ活動を行い、満足度が高まると慢心してしまう傾向がある。だからこそうまくいっているときにも、目線を高く保つことが重要なのだ。

 次に12,13章で取り扱うのは、イノベーションと組織学習に多大な貢献を与えた「知の探索・知の深化の理論」である。知の探索により新しい知を追求し、知の深化により既知を活用する。多くの組織は知の深化ばかりに傾斜してしまうため注意が必要である。

 知の探索・知の深化を同時に行うのが両利きの経営で、それを促すのはオープンイノベーション・組織の構造的な両利き・ダイバーシティ、などが知られる。

【ディスカッション】
 知の探索のオープンイノベーション戦略に関して、日本で期待したいのは、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)であるという。従来型のCVCであるスタートアップと大企業が相互に連携する形態は、主に欧米で取り入れられている。一方で日本では「知の探索の源泉である知は、日本の大企業に活用されないまま埋もれている人材にある」という仮説をもとに、独自の知の探索も出てきている。ここで、日本の大企業には、知を持つ人材が埋もれてしまうのかについて疑問を抱いた。そこで今回はこの仮説が正しいと仮定し、
 ,覆次崙本の大企業で活用されないまま人材が埋もれてしまっているのだろうか」
 △海譴蕕陵由(課題)に対して、どのように解決すればいいのだろうか
というディスカッションを、企業で人材を管理できる立場として考えて行った。

 理由について出た意見は、まず会社の業務に関する制度面での問題が挙げられた。例えば分業制について、分業されてしまっているから決まった仕事しかできず、コミュニケーションも決まった人としかとらなくなってしまっているというのだ。或いは年功序列であることから、若手が任せてもらえる仕事の範囲が限定されてしまっているという意見が出た。

 また理由について社員が声を挙げづらく、たとえ挙げたとしても実行されづらいことも挙げられた。その背景にあるのは年功序列であることや成果主義でないこと、評価の仕方が短期的であることがある。それらの意見に対して批判も出た。例えば成果主義である場合より短期的な思考に陥ってしまったり、そもそも声を挙げるインセンティブが給料なのかといった意見である。

 理由はその他にも、まず企業の軸にイノベーションを置いていないこと、それに対してイノベーションを行う意識はすでに持っていることや、そもそも人材が埋もれてしまう理由になっていないという反対意見が出た。また大企業だから人材が多く人材の能力の把握が難しく、企業の下層から上層までの間で役職が多く分断されてしまっているという意見が出た。それゆえ末端の意見が上まで上がるのが遅かったり、そもそも上がってこないという意見出て、それに対して意見が上がりにくいのは大企業に限った話なのかという疑念や問いと同義反復になっているのではという反対意見も出た。

 次に上記の理由を解決する方法についてである。まず声を上げづらいことや短期的思考に陥っていることなどを解決する意見として挙げられたのは従業員にモニタリングコストをかけプロセスを評価することである。ただしモニタリングをかけすぎるとかえってプレッシャーになり萎縮して声を挙げない可能性もあるため、方法には注意が必要である。次に出たのはトップの下に現場の声を聴くチームを作るという現場と上をつなぐ機会を設けることである。また評価制度の問題点に対して、全体の活動内容をチェックすることで適切な評価を下す解決方法、それに対し経営層側がそれを行えるのかという懸念点も出た。さらに大企業だから人材を把握するのが難しいことを解決するために、経営者と従業員がインフォーマルなコミュニケーションを行ったり、どのような意見を持っているか徹底的な話し合いを行ったりすること、これはトップが行うことは莫大な労力が必要ではないかと指摘されていた。加えて分業制の課題に対してジョブローテーションの推進、頻度を高め、能力に見合った職を見つけてもらうことが挙げられた。

 ディスカッションの結論は、日本の大企業に人材が埋もれている理由には、主に声を挙げづらいことや業務の制度面の問題点が挙げられ、それらを解決する方法として社内の声を拾うシステムの構築が考えられたが、指摘があったように、いずれも日本企業がすでに取り組んでいる内容であろう。すなわち、人材が埋もれていることに気が付いても、それを発掘することを考えることは難しい。しかし、それでもイノベーションが足りないといわれている日本において、いかに人材を発掘するかが重要であるため、さらに考える価値はある。片や自分が社員の立場でアイデアを持っていた時に、いかに発掘してもらうかが重要で、そのためにも声を挙げ続ける必要もある。

【おわりに】
 人材が埋もれている理由と解決方法は複数挙げられ、それらの反対意見も出て、議論らしい議論を繰り広げることができた。議論のまとめとして意見を収斂させることは難しかったが、後日談として議論が楽しかったという意見をいただいた。それはフロアの意見の活発さやファシリテーターとしても反対意見を出したことに加え、下記URLに添付したようなツールを使用したからと考えている。このツールには意見をメモするばかりでなく、発言者の名前や反対意見も書くように設計した。その理由はゼミの議論が、ただ意見を出して終わりになったり誰の意見かわからないと議論として盛り上がりに欠けることが課題と考えたからである。そこに反対意見や名前を参照するというタスクSMMを共有する工夫をしたのだ。ただし人の認知には限界があり知の深化によって改善をする或いは、知の探索でさらによいツールを模索することも可能だろう。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1_z93ABjtCChRgqP-fUleYV4rGmERbfEg20FyrX8SPYE/edit?usp=sharing

すみた(3年)

世界標準の経営理論 (第9,10章 p167〜198)

【要約】
 9章では8章に引き続きゲーム理論について解説している。8章のゲーム理論は、プレイヤーの意思決定を行うタイミングが同じである「同時ゲーム」におけるゲームについての説明であった。9章は意思決定のタイミングに先手と後手の関係が生まれる「逐次ゲーム」のゲーム理論について主に解説されている。この先手と後手のは関係が生まれることによって、ゲームの結果同時ゲームと異なるナッシュ均衡が採択される可能性が生まれる。この逐次ゲームで先手がとるべき戦略は補完的、もしくは代替的かで変わってくるがそれは市場さの競争の特性から読み取る必要がある。また、先手プレイヤーは信頼性のある戦略提示である必要がある。
 
 最終的にこのゲーム理論を通して人や組織は他者を信頼するとき、それは経済学的考え方から合理的に信頼しているか、はたまた、本来の性善的な心のメカニズムが人には存在するから信じているのかという、人の心理について考える視点を与えてくれる。
 
 次に10章である。10章はリアルオプション理論についての解説である。リアルオプションは本来金融工学の元から生まれた考え方であるが、それを経営学的観点から捉えて本書では説明している。経営学のリアルオプションには不確実性の高い環境をマイナスとして捉えるのではなく、チャンスとして考えていく。
 
 しかし、不確実性に関しても様々な種類があり、リアルオプション的な考え方を経営学に活用するには「不確実性を見抜く力」を養っていく必要がある。しかしその力を養うには経済学では限界があり、認知心理学の領域について学ぶ必要がある。

【ディスカッション】
 本書の10章の最後で、事業環境の不確実性を見抜く力が必要であり、それは認知心理学の領域を触れる必要があると述べられている。しかし、私たちが認知心理学を学んで見抜く力がついたとしても、経済学ディシプリンの経営理論を活用する力を持っていなければ逆質問で意味がないのではないか。つまり、認知以前にこれまで学んできた理論を事業環境について考える時に応用していく必要があると考えた。
 
 そこで私たちはディスカッション内容として、「実際に経済学ディシプリンの経営理論を、私たちはどのように普段の活動に活かすことができるか」というものを持ってきた。当初は1章〜10章の全範囲で考えていく事を予定していたが、範囲が広すぎるという指摘があり10章のリアルオプション理論に限定したディスカッションに変更することになった。
 
まず、このディスカッションでリアルオプションのように不確実性を駆使した行動の意見が出た。就活で選考にまで進んでしまうと、自分にその企業や業界がマッチしているのかわからないという点で不確実性が高いので、選考が始まる前になるべく多く他の業界を見ておくという意見や、合否の不確実性があるので、その時に備えて他の企業の先行も受けておく。というような意見である。また、どんなインターンかわからないが、とりあえずやってみるというコールオプションの考え方をそのまま活かすというような意見も出た。また、このリアルオプション理論を知っているからこそ、行動だけでなく、企業を見る際にどういう資産運用をしているかという部分に着目し、どういう意図のもとそのような運用をしているのかという予想や憶測が可能である。この考えを常に持っておくと、就活での逆質問などにも応用が可能であるという意見も出た。また、普段ゼミナールの活動で英語の論文を読んだりもするが、最初から全て読むのではなく、まず要約や結論を読む事で理解も速くなるという意見も挙がった。さらには、研究との時も就職の時でも、その企業の投資の仕方から逆算して、その企業の安定性という部分にまで考えることができるという意見もあった。
 
 以上のディスカッションの意見をまとめると、リアルオプションの考え方は、何も経営学だけではなく、私たちの実際の行動にまで新たな考え方をもたらしてくれるということがわかった。事業の、不確実性だけではなく、日々を過ごす中で直面する不確実性にもリアルオプションの考え方は有効である。不確実性と言うものを、マイナスとして考えるのではなくチャンスであると考えることができれば、自分たちの活動の幅も広げることができるのではないかと考えた。

 ディスカッションに関しては、まずブレインストーミーング型のディスカッションになってしまい、議論にならなかったという点が反省点である。この件に関しては、ディスカッションの内容や前提が当日変わったとしても、その時に新たに打つ手を考えておくという必要があった。しかし、今回の失敗もリアルオプションのように、失敗した時のリスクを減らすような考え方を持って準備できていれば、さらに、ディスカッションはいい方向に動いたのかもしれない。リアルオプションは様々な場面で活用できると言えるだろう。

おかがわ(3年)



世界標準の経営理論(第7,8章 p.133〜166)

【要約】
 第6章においては、近代経営学においても影響力を持つ取引費用理論(Transaction Cost Economics:以下TCE)を紹介した。TCEは、「人は限定された合理性の元で動いており、機械主義の下、不測自体の予見困難性、取引の複雑性、資産特殊性が高い時、市場での取引コストがかかりすぎるので、取引相手のビジネスを自社内に取り込んでコントロールすべき」という理論である。
また、TCEは取引を外部で行うか、内製化するかを扱うため、古典経済学では説明できなかった「企業の範囲」を説明できるともしている。
 第7章では、多くの理論の背景に存在している「ゲーム理論」を説明する。本章では大きく分けて2つのゲームに焦点を当て、数量面の決断が企業の関心ごとである「クールノー競争」、価格設定がより重要である「ベルトラン競争」の2つを挙げた。これらは同時ゲームと呼ばれ、相手の行動を読み合い、自社の最適な戦略を探し出すことで定まる結果を「ナッシュ均衡」と呼んだ。

【ディスカッション】
 TCEにおいて、その主張を実証する研究は多く蓄積されており、おおむねTCEを支持する結果が多く得られている。しかし、TCEについての論文の中には、企業の範囲を決める際に、TCEが実際に企業の意思決定基準として十分であるかについて議論は成熟していないと主張するものも存在した。そのため、中野ゼミにおいてもこの議論を行いたいと考え、開発設計から販売などまでのサプライチェーンの中に存在する製造業を営む企業において、TCEは企業の取引の範囲を決める要因として十分なのか、という議論を行った。なお前提として、現状では、生産。流通を担う企業であり、場合によっては取引を内製化する余裕を持つ企業を想定することとした。
 意見としては十分である、十分でないともにいくつか見られた。十分でないという意見では、「取引関係において、第3者の技術革新も考慮する必要がある」「内部化したときに予想しなかったコストが発生するかもしれないため、十分でない」「内製化が差別化の要因になるのなら、例えコストが高くても企業は行動を起こすのでは?(TCEとは逆の行動をとる)」などが見られた。一方で、十分であるという意見に多く見られたのが、十分でないという意見に見られた要因が、よく考えるとTCEで言われていたコストに該当するのでは、という意見である。例えば、第3者の技術進歩や、内部化したときの予想できないコストなどが挙げられ、これらはTCEで言及された「不測の事態」に該当するのでは、というものである。
 本来であれば、あくまでTCEで述べられた条件を他の要因と検討し、TCEの意思決定基準としての妥当性について議論を行いたかった。しかし、ディスカッションの中盤からは、十分でないという意見に見られた要因が、TCEで言及された条件に当てはまるかどうか、という議論に傾いてしまったため、反省点と言えるだろう。
 その点を反省点とした上で今回のディスカッションをまとめると、TCEは第3者の技術進歩や内部化したときの予想不可能なコストなども「取引における不確実性」としてTCEの要因の一つだと説明できるものであり、よってTCEは企業の範囲を決める際の意思決定基準として十分なのではないか、となるだろう。
 今後さらにディスカッションを深めていくのならば、今回の私たちのディスカッションにおいてTCEの要因の一つとされた内部化したときの予想不可能なコストなどが、本当にTCEに当てはまるものなのか検証する必要があるだろう。

こじま(3年)

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