プラットフォーム企業のグローバル戦略 (第1章&第2章:p3〜p34)

【要約】
 本書は、新しい産業環境下でなぜプラットフォーム企業が抜きん出た競争力を持つことができるのかを解き明かそうとしたものである。そして、そのような驚くべき競争力を持つプラットフォーム企業の台頭が、国際的な産業構造にどのような影響をもたらすのか探ったものである。本書で言う新しい産業環境下とは、「オープン化」のことである。これは企業間で情報を共有することで、「標準化」とも言う。この標準化には3つの種類がある。それが、.妊侫.ト標準化、▲妊献絅衂現牴宗↓コンセンサス標準化である。特に、コンセンサス標準化は欧米や欧州の標準化政策の変化によって生まれた新たな標準化なのだ。また、標準化はしばしばビジネス・エコシステムという概念によって分析が行われている。ビジネス・エコシステムは、産業構造を生態系のアナロジーで捉えたものである。この概念から、産業進化を主導するような企業を「プラットフォーム企業」と呼び、それらを取り巻く補完財企業を「共存企業」と呼んでいる。この2つの関係は運命共同体である。また、プラットフォーム企業の特徴は、複数の市場間を結びつけてネットワークを構築している。そこにはネットワーク効果が発生しており、そのネットワーク効果を用い、複数の市場間の関係を利用して戦略を行うことをプラットフォーム戦略という。この時において、プラットフォーム企業は複数市場の橋渡し役、つまりハブとしての機能を持っており、情報を操作し競争優位を確立することができるのだ。

【ディスカッション】
 今回のディスカッションは「デファクト標準とコンセンサス標準のどちらを選択すれば、自社(A社)が市場において今よりも多く利益を獲得することができるか」を議論した。なぜなら、本書ではオープン標準化には3つの種類が存在すると述べている。その中でも、コンセンサス標準は他のデファクト標準とデジュリ標準を組み合わせたハイブリッド的な標準化であり、他の標準化を選択するよりも、コンセンサス標準を選択した方が市場全体の拡大を促すことが可能である。しかし、私たちは情報の共有を行うことから自分たちが得られる利益は他の標準よりも少ないだろうと考えたからだ。その際のプレイヤーとして、自社(A社)とその子会社a社、a社の競合であるB社がいる。自社(A社)はゲーム用ハードディスクを生産・販売しており、ゲーム業界の中でシェア1位に位置している。また、自社(A社)にはa社というDVDディスクを生産・販売している子会社を抱えている。業界の状況として、自社(A社)は売り上げ強化のため、a社のDVDディスクも使用できるゲーム用ハードを作るため、DVD市場内のDVD規格を変更しようと考えている。つまり、自社(A社)はDVD市場内で、デファクト標準かコンセンサス標準を行うのだ。

 まず、デファクト標準化の意見は、自社で開発・資金繰りができることや特許を取得してフィーを得るなどの意見が出た。一方でコンセンサス標準化の意見では、コンセンサス標準化の利点であるネットワーク効果拡大を生かせるや市場利益拡大ができる、といった市場の拡大が自社利益の拡大に結びつく意見が出た。ここでは、コンセンサス標準化を選択する意見が多かった。しかし、フロアから「市場シェアがどのくらいかによって自社(A社)が取る選択が変わるのではないか」という指摘を受けた。

 そこで、今までの前提に市場シェアを加えて議論を行った。市場シェア率は以下の通りである。ゲーム市場シェアは、自社(A社)が1位(50%)、2位(30%)、その他(20%)とした。市場シェアの情報を加えたことで、デファクト標準化の意見が多く出るかと思ったが、依然コンセンサス標準化有利であった。デファクトの意見は、市場シェア50%ということで根強いファンがいると予想できる。その際に、DVDディスク規格を変更したとしても売り上げが下がることはない、であった。反対に、コンセンサス標準化側からすでにDVDハードの規格があるからわざわざ新たな規格製品を買う必要がないという意見も出た。また、コンセンサス標準化は、DVDディスク規格を統一することで規格が変わったとしても他のDVD規格で使用することができることやDVDシェア1位のB社と同じ規格ならB社の顧客も取り込める可能性があるといった意見が出た。しかし、依然としてコンセンサス標準化優勢のままであった。私達はデファクト標準化の意見をもっと出してもらって議論の活性化を図りたいと考え、新たにDVD市場シェアのデータを加えた。

 DVD市場シェアは、a社30%、B社20%、その他50%とした。DVD市場とゲーム市場のデータを出して状況を細かくしたことで、デファクト標準化に意見が傾くかと考えたが、むしろコンセンサス標準化の意見が多く出た。その中には、自社(A社)だけ規格を変更しても、他の70%は今までの規格によるかもしれないや他の企業も同じ規格にすれば自社(A社)がとるリスクは少なくて済む、失敗する確率が少ないなどがあった。

 以上から、今回のディスカッションにおいてはコンセンサス標準化を選択するほうが望ましいという結果になった。なぜなら、コンセンサス標準化の方が市場拡大を見込めるため、企業の利益もデファクト標準かより得られるという考えがあったからだ。また、他社も同じ行動をとることで、自社が取るリスクを軽減することもできる。しかし、設定条件をより詳細にすることで意見が変わったのではないかと考える。今回の議論では、企業の位置関係しか定義しなかったため、市場内の強さや競合との関わりなども予め設定していればより議論が深まっただろう。また、今回はDVD市場とゲーム市場を例にとってディスカッションを行ったが、フロア側にイメージが伝わり切っていなかったため意見の幅を広げることができなかった。さらに、今回のディスカッションに無かった視点として、市場内のステークホルダーとの関わりが挙げられた。補完財企業でも独自で動いていたり、抱えている著作権や版権が異なる。この補完財企業の行動を議論に加えることができれば、ネットワーク効果での議論を行うことが可能であっただろう。

あらき (4年)

高級ホテルヒルトンのおもてなしのデジタル化

 北西(2018)によると、米国の大手ホテル会社ヒルトンが、デジタル技術を生かした新たな接客を日本のホテルで開始した。スマホのアプリを使うことで顧客がフロントでのチェックインやチェックアウトの手続きを簡単に済ますことができたり、部屋の設備を操作できるという仕組みである。つまり、ホテルの従業員が面と向かってもてなすのではなく、スマホを用いて間接的にもてなすということである。この仕組みによるホテル側のメリットは、スマホを介して宿泊客とつながることで、顧客ごとにきめ細やかなマーケティングが可能になるほか、フロント業務の軽減化といったものが挙げられる。

 北西(2018)によると、ヒルトンはこのようなスマホによる「おもてなし」で、競合との違いを打ち出そうとしている。では、ヒルトンはスマホによるおもてなしで本当に競合との差別化を図れるのだろうか。

 私は、スマホによるおもてなしは他のホテルとの差別化に繋がると考える。その理由は、現在深刻な人手不足に陥っているホテル業界において、スマホによるおもてなしは業務を効率化し、他社が行えていない違った価値の提供を可能にすると考えるからである。

 具体的には、スマホによるおもてなしを行うことで、ホテルでの2つの業務を効率化できると考える。まず、1つ目はフロントでのチェックイン手続きの効率化である。ホテルでのチェックインの際はフロントで必要事項の記入を行わなければならない。宿泊客は面倒さを感じ、また、従業員は記入する間手持ち無沙汰なこともある。さらに、複数人の宿泊客に対応するためにフロントには多くの従業員が配置されているが、宿泊客が並んでいなければ人員余剰のことも少なくなかった。しかし、宿泊客はヒルトンのアプリを用いれば、事前にチェックイン手続きが可能になる(ヒルトン, 2019)ので、フロントでの業務は事前に入力されていた情報の確認作業だけになる。したがって宿泊客がチェックインにかける時間を減少させることができるだけでなく、従業員の作業時間も短くなり、配置人数も減らせるようになる。2つ目に、清掃業務の効率化である。これまで清掃員は事前に部屋内部の状況がわからないため、掃除をする際に宿泊客が部屋にいるかフロントに確認を取っていた。これにより、何回もフロントに確認する手間や、部屋に人がいるかどうかわからないために作業が進まないなどの問題が生じていた。しかし、このアプリの情報を活用することによって宿泊客が今部屋に滞在しているのかわかるので、フロントに確認する作業がなくなる。したがって作業時間が短縮するのだ。

 このように人員や時間の効率化をうまく行うことができれば、今まで行えていなかったきめ細やかな接客という部分に注力することが可能になる。では、余剰人員を用いて競合他社とは違った価値を提供するにはどうすれば良いだろうか。

 私は、効率化によって余剰になった人員を用いてバトラーサービスを行うことを提案したい。バトラーとは、宿泊客をチェックインからチェックアウトまでサポートするのが役割であり、宿泊客一人一人に専属で付いて身の回りの世話から些細な要望に応えるのがその仕事である。よくコンシェルジュと混同されることもあるが、コンシェルジュは定位置に配置され宿泊客の案内やサポートをする仕事であり、バトラーはお客様に付き添い自ら積極的にもてなす仕事である。ヒルトンでは以前にも「お花見」や「ビアガーデン」といったイベントの際にもバトラー付きのVIPラウンジというものを提供してきたが、バトラーがつくのは特別なイベントの際だけであった。そこで、スマホのアプリ等デジタル化を用いたバトラーサービスを提供することで、宿泊客に対してよりきめ細やかなおもてなしができると考える。

 バトラーに求められるものは、宿泊客が求めていることを先読みし、柔軟に対応し接客することである。高度な技術が求められ、離職率の高いホテル業界(厚生労働省, 2018)では、なかなかそういった人材を育てることは難しい。しかし、ヒルトンが進めているデジタル化によって宿泊客の詳細なデータを蓄積・管理することができれば、高度な技術を必要とするバトラーサービスを補完し、提供することができるのではないだろうか。具体的には、ヒルトンが提供しているアプリを用いて、宿泊客の食事、寝具の素材などの嗜好や宿泊する際のスケジュール調整などの要望といったデータを集めることが可能になる。そして、今までは一人の宿泊客に対し何回も同じ担当者が付くことによって得られていた情報を、担当者が異なる場合でも容易に共有することが可能になり、従業員間の情報共有にかかる情報伝達コストを抑えることができる。このように、おもてなしのデジタル化によってコストを抑え、人員や情報をうまく利用することで、専門性の高いバトラーという役職を専門性の高くないスタッフでも担うことができるようになる。そうすることで、宿泊客に対し比較的安い価格でバトラーサービスを提供していくことができるようになるのだ。

 今後ホテルを含む宿泊業界全体では、オリンピックや観光客の増加により、さらに市場の拡大が見込まれる。しかし、ホテル業界では人手不足の問題を抱えているため、競合のホテルとの差別化が難しい。その中でヒルトンは独自のデジタル化を用いた戦略により、人手不足の現状の中でも、業務の効率化を行い、得られた宿泊客の情報の共有、活用をすることで、よりきめ細やかなおもてなしを提供できるようになる。レッドオーシャンとなった市場で、業務効率化を行い他社とは違った価値提供をすることが可能になれば、既存顧客の維持に加え、さらなる顧客を獲得できるようになると私は考える。

【参考文献】
ヒルトン (2017)「ヒルトンDigital Key(デジタルキー)」2019年6月24日閲覧. https://hiltonhonors3.hilton.com/ja_JP/hhonors-mobile-app/digital-key.html
北西厚一 (2018) 「スマホで『おもてなし』の勝算」『日経ビジネス』 1958, 18.
厚生労働省(2018)「平成30年雇用動向調査結果」2019年9月12日閲覧. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/19-2/dl/gaikyou.pdf

ただ(3年)

マニーがより多くの市場で競争優位を確立するために

 武田・藤村・高槻・広岡(2018)によると、大企業に負けない隠れ高収益企業の利益率の源泉の一つとして、ニッチを貫き通す点があげられている。その一つの例として、栃木県宇都宮市の医療機器メーカー、マニーがある。マニーは1956年に創業され、2018年8月期の売上高は200億円、営業利益は50億円である(マニー, 2018)。マニーは経営方針として、ニッチ市場(年間世界市場5,000億円程度以下)以外に参入しないことを挙げており、武田 他(2018)はその利点としてライバルの持っている技術を研究し尽くしていることを挙げる。

 その具体例が、マニーの品質へのこだわり(マニー, 2019)である。マニーは製品の特性毎に、常に「世界一の品質」を保持した製品であるかを検証することを業務の中核に据え、年2回「世界一か否か会議」を開催している。この会議ではマニー製品および競合他社製品を市場から入手し、製品の特性毎に試験を行い、マニー製品の品質を確認する。「世界一の品質」を逃した特性に対しては世界一を奪還できるようにアクションプログラムを作成し、次回までに執念を持って改良に取り掛かる。約一年の改良を続けても世界一にならなければ「撤退もやむなし」と判断する決まりがある。

 しかし、約一年間の改良を行っても世界一の品質にならなかったからという理由のみで、撤退を決めるべきであろうか。

 私は、この決まりのみで撤退を決めるべきではなく、現在のように約一年間の改良期間を経た上で、マニー製品の品質の向上具合が競合他社のなかで一番であれば今後も改良を続け、一番でなければ撤退を決めるべきであると考える。なぜなら、品質の向上具合が競合他社よりも勝っていれば、確実にどこよりも成長していることを意味し、今後マニーが世界一を奪還できる可能性が高いと考えるからである。逆に、品質が向上していない、あるいは向上具合が他社に比べて劣っている場合は、今後世界一になる可能性が低いと考えるため、撤退するべきであると考える。現在のマニーは、改良期間後の一時点で世界一でないのならば撤退を決める。しかしこれでは、どんなに品質が向上したとしても世界一でないのならば撤退することになるので、近い将来世界一を奪還できる可能性のある製品でさえも撤退してしまう可能性が高くなる。従って、一定期間内での品質の向上具合を見て撤退するか否かを決める必要があると考える。

 このとき、再度改良を続けることを決めた製品は、撤退せずに今後も研究を行っていくため、マニーが抱える開発製品数が増え、研究開発コストが増加してしまうのではないかという懸念がある。確かに、製品数が増えるとコストは増加するだろう。しかし増加分のコストは、大量生産を行い、規模の経済や経験効果がうまれることで補うことができると考える。顧客にとってマニーの取り扱う小物医療用消耗品は一度にたくさん必要であるため、マニーは大量生産をする必要がある。加えて、マニーの売上高は平成26年から平成30年にかけて海外での販売を強化したことにより増加傾向である。また、製品の増産が軌道に乗ったことで営業利益が増加している。医療機器業界においては、先進医療の導入が進み、新興国では人口の増加及び経済発展に伴う医療インフラの整備が進んでいるため、全体としては引き続き市場の拡大を見込んでいる(マニー, 2018)。このことから、今後もマニー製品の需要は伸びていくと考えられるため、大量生産することになる。大量生産をすることで、研究開発費や設備費などの固定費的な支出に関して1個当たりのコストが下がり、規模の経済がうまれる。また、製品を多く作ることにより、生産ノウハウが蓄積され、製造コストが下がることによって経験効果がうまれる(和田, 2011)。故に、増加分の研究開発コストは、規模の経済や経験効果がうまれることで補うことができると考える。

 このように、従来のように改良期間後の一時点で世界一か否かを判断してしまうと、今後世界一になる可能性のあるものも撤退を決めてしまうかもしれないので、マニーは「世界一か否か会議」において、改良期間内の品質の向上具合をみるべきであると考える。改良期間内の品質の向上具合をみることで、マニーは今までよりも多くの世界一の製品を開発していくことができるだろう。つまり、マニーがより多くの市場で競争優位を確立するためには、多数の世界一の製品を持つことが必要だ。

【参考文献】
マニー株式会社 (2018) 「2018年8月期有価証券報告書」 https://ssl4.eir-parts.net/doc/7730/yuho_pdf/S100EMX4/00.pdf 2019年7月7日閲覧.
マニー株式会社 (2019) 「品質へのこだわり」http://www.mani.co.jp/research/quality.html 2019年1月15日閲覧.
武田健太郎, 藤村広平, 高槻芳, 広岡延隆 (2018) 「隠れ高収益企業」 『日経ビジネス』 1959, 22-39.
和田剛明 (2011) 『よくわかる経営管理』 詐, ミネルヴァ書房.

よしだ(3年)

ブラックスワンの経営学(第7章)

【要約】
 第7章の目的は、ここまで紹介してきた受賞論文から、ビジネスの実務に役立つ知的作法として、ケーススタディの方法を学び、いかにして実務に役立てるかというきっかけをつかむことである。実践に生かすというのは、学術の事例研究を実務に応用するということだ。学術の世界と実務の世界の調査には同じ部分と異なる部分があるため、実務の調査であっても「こだわるべき部分」もあれば、実務の調査であるからこそ「わりきってよい部分」もある。

 はじめに、「こだわるべき部分」について述べる。学術の作法の中で「こだわるべき部分」は、事例研究の骨格に関わるところだ。本書で紹介した学会賞受賞論文だと、各章のメインテーマに関わる部分である。各章のメッセージを振り返ると、|碓譴了例であっても分析を工夫することで、十分な示唆を引き出すことができる(第2章)、調査デザインを工夫して、仮説の検証を試みる(第3章)、8従譴剖瓩鼎ことで思いがけない「気づき」を得る(第4章)、と羈喨析の限界を踏まえて追加的な分析を行い、仮説の精度を高める(第5章)、δ敢座仂櫃鯆廟廚靴董因果メカニズムを解きほぐす(第6章)、である。
 
 ,涼碓貉例については、はずれ値という言葉を用いて説明されている。はずれ値は、平均的なパターンを観測する際に邪魔なため、統計分析では集計対象から除外される。しかし、事例研究においては、そのはずれ値が先端事例や逸脱事例である可能性があるため、注目して研究するのだ。△猟敢坤妊競ぅ鵑砲弔い討蓮同一コンテキストにおいて、「ある条件を満たしている事例」と「その条件を満たしていない事例」を選び出して比較することが大切であると述べられている。の現場に近づくというのは、インタビューの際に相手の空間に入り込んで行なうことで、本音を聞き出すことができるようになるということだ。い砲弔い討蓮比較分析には限界があるため、その限界を理解し、必要に応じて比較分析の至らないところを補完するために追加分析を行う必要がある、ということが述べられている。イ蓮調査対象を追跡することで、因果関係を解きほぐすことができるということを述べている。例で挙げられている研究の場合、最初の実験から12年後に追加調査、そして40年後にもさらなる調査が行われている。
 
 次に、「わりきってよい部分」について考えるために、学術調査と実務調査の違いについて述べる。まず、使命と基本前提だ。学術の場合は、より確かな真実の探求と学術世界での新発見であるのに対し、実務の場合は、自社にとっての解決や発見である。次に、調査期間である。学術の場合は時間をかけでも確かな結論が求められるが、実務の場合は、仮説めいた結論でもよいのでスピードを重視する必要とされる。次に、調査体制だ。学術の世界では、学術コミュニティでの蓄積が前提であり、学会の共通言語を用いる必要がある。一方、実務の世界では、社内での蓄積も重要だが、時々の発見が大切である。最後に、知見の汎用性について、学術の場合は一般化志向が強く、抽象的で曖昧でも許容される。しかし、実務の場合は、限定的一般化で十分である。つまり、極論を言うと自社に当てはまれば十分なため、より具体的で明確なものであるほうがよい。

 最後に、事例研究を実務の中で取り入れているKUMONの例を紹介する。KUMONでは、子供から教育者が学ぶという姿勢によって、現場を大切にするという考えのもと事例研究が盛んに行われいている。また、全社をあげての研究として「指導者研究大会」があり、各自の普段の事例研究を通した「自主研究」を全国規模で発表し合っている。これらの取り組みを行う彼らがこだわったのは、教材の名前などを徹底して社内用語を用いるということだ。これにより、大会など大勢が集まる場でも、瞬時に全員が共通で教材のコンテキストを思い浮かべることができるため、議論が活発になる。また、意味をはき違えたり、言葉に振り回されることがなくなるといったメリットもある。

【ディスカッション】
 今回のディスカッションポイントは、「実務であればどのような場合でも、確かさよりスピードが優先されるのか」である。前提となるシチュエーションは、文京区白山にある個人経営のラーメン店だ。ここは、店長(60代)、パート(50代)、アルバイトのあなた(アルバイト歴5年の経営学部生)の5人で運営している。しかし、最近になって客が減り、一日10人になっていしまったため、今後この店をどのように運営していくのか早急に検討する必要があった。そこで、店長は「ラーメン店をやめて今流行りのタピオカ屋をはじめることで売り上げ回復できるのではないか」という仮説を立て、経営学部に通うあなたに判断を委ねている。

 この議論で前提となる「スピード」とは、仮説の正しさを検討した結果、タピオカ屋をはじめた場合の売上が回復する可能性75%であることが明らかになるという状態をさす。「確かさ」とは、仮説の正しさを検討するが、売上が回復するかはわからないという状態である。両者の検討の度合いについては、前者はタピオカの売れている理由を解明できているが、ラーメンが売れない理由は分かっていない状態、後者はタピオカの売れている理由が解明でき、さらにラーメンの売れない理由まで調査するという状態であると定義する。

 議論においては、「スピード」を優先するという意見と「確かさ」を優先するという意見のどちらの主張も多く出た。スピード派の意見としては、今流行しているから、一旦出して改善していくほうがよい、設備投資などあまりかからないためやってみてもいい、追加で検討している間に店がつぶれてしまうから早くやるべき、追加調査にもコストがかかるのでそこにかけるよりは早くやるべき、などの意見が出た。一方、確かさ側の意見は、大学で新規事業をはじめるにはリスクがあるということを学んだので、追加調査をして確実にしてから実行すべきという意見や、ラーメン店失敗の要因によってタピオカが失敗しては意味がないのでしっかり調査するべき、今後何年も店を続けたいという思いでアルバイトの私に相談している店長の気持ちを考えるとスピードよりも確かさを優先してしまうという意見が出た。
 
 今回は、スピード派も確かさ派もどちらにも言い分があり、なかなか決着がつかない平行線のままの議論であった。原因として、この議論は当初、検討の度合いを具体的には示していなかった。そのため、人によって検討期間や内容にばらつきが出てしまい、その段階での議論に多くの時間を使ってしまった。この条件をもっと早い段階で提示できていれば、スピードをとるか確かさをとるかという決着がついていたかもしれない。

たけおか(3年)




 

ブラックスワンの経営学(5章)

【要約】
エクセレントカンパニーが「優良企業に条件」八つの条件を導き出した。しかし、これは「必要条件」に過ぎなかった。必要条件と十分条件を確かめるためには学の手順を踏む必要がある。これらを導出する手法は主に二つである。まずは、一致法である。これは同じ結果を示す複数の事例を比較して、そこに共通する要因を探るもので、共通の結果をもたらした要因を推論する方法。これは必要条件を明らかにするのに適している。次は裁縫である。これは十分条件を明らかにするのに適しているといえる。

 そこで、最優秀論文賞に選ばれた事例研究から一致法、差異法の用い方について学ぶ。この研究は二段階で行われている。一段階目は、考えられる要因を抽出する。それを基に仮説を設定する。そして、それに当てはまると考えられる事例を選び出す。この事例を分析した結果、仮説通りの結果にならなかった。本来ならここで、大きく方向を変えることが多いが、本研究では再分析することで新しい仮説を探した。
 
次に二段階目の分析である。ここでは一段階目の分析をもとに極端な結果を示した二つの事例に対して、差異法を用いて分析を行った。その結果一段階目で設定した仮説でなく、全く別の要因が結果に影響していることが判明した。また、この結果妥当性を確かめるために、ほかの事例にあてはめることで、妥当性の向上を図った。このように、仮説の研究に不利であっても事実と向き合い本当の原因を探ることが大切である。

 本研究で注目すべき点は二つある。一つは、定説通りにいくことはない。それを疑うことが必要であるということ。二つ目は、問題意識を見失わないことが重要である。どんなに仮説通りにいかなくても問題意識を見失わなければ、立ち直ることができる。失敗してしまったときに集めたデータを基に再び仮説を導出し分析をすることができる。

 事例研究におけるポイントについて説明する。それは二つある。一つ目は、問題意識を明確にすることである。問題意識を明確にすれば、どんなに仮説通りにいかなくても折れることなく新たな仮説を導き、分析を行うことができる。二つ目は、往復運動である。分析を行った結果導き出された要因を他の事例にあてはめる。果てはまれば仮説の妥当性を高めることができる。

【DP】
中野ゼミナールで行われるディスカッションではすべての参加者が発言することができる。しかし、上の学年が意見を言い合っているとき(特に4年生)、2年生が発言しづらいのは往年の課題であると考えられる(少なくとも去年、今年はそのような状況が想起される)。本書ではイノベーションの普及には専門家集団の間にある「社会的・認知的境界」が障壁になっていたと述べられている(第二段階の調査P.185~)。しかし、この「社会的・認知的境界」は専門家集団に限らず、我々の中にも存在すると考えた。それがディスカッションにおける障壁になっていると考える。そこで、今回ディスカッションポイントを「ディスカッションにおける2年と4年の間にある社会的・認知的境界を乗り越えるためにはどうすればよいか」とし、ディスカッションを行った。

 今回のディスカッションにおける条件は以下のとおりである。

・タコツボ化
→内部で変革を促すのは得意とする。しかし、外部からの刺激を受用するのが苦手。
*内部=同期内
*外部=ほかの学年

・社会的・認知的境界
社会的境界(「社会的距離」p.192の表現を借用)=集団間の紐帯の強度
→特に学年、年齢による距離感を想定する
認知的境界(広辞苑の定義と元論文の「Knowledge Boundary」との兼ね合いより)=知ること、知識を持つこと。特に直観的でなく推理、思考に基づく。

・今回のディスカッションにおいて、発言をする意見を持ち合わせていないとなると、それで議論が終了してしまうと考えられる。そこで、あくまで言いたいことがあっても言えないときの壁の乗り越え方について議論するものとする。
・今回期待する意見として、二年生主体の意見を期待する。その理由として、ディスカッションに参加する成員は一度二年生を経験していることから、様々な意見が出ると考えるから。一方四年生側の意見は、四年生になったことのない人が多いので、非常に限られたメンバーのみが主張することになると考えるためである。また、四年生は現状ディスカッション中に、発言を促すような言動をとるので、一旦それで良いと考えたから。

 今回のディスカッションによって、各学年で行えるアプローチが導き出された。まず二年生である。二年生は臆さずなんでも言うことが重要である。しかし、それを行うことは簡単なことではない。その時、同期と競争意識を持つことやどんなに意見を否定されても人格までは否定されていないと考えることがあげられた。さらに、上の学年が何を言っても冷静アになること。学年が上だからと言って正しいとは限らない。一度冷静になって意見を聞いてみることも重要である。また、どんなにアプローチの方法があっても結局個人がどれだけ勇気を振り絞ることができるかに依存する部分が大きいことも分かった。
 
次に四年生である。四年生に求められるのは環境づくりである。心理的安全性という言葉があるように、みんながなんでも言える環境を作り出すことが重要なのではないか。所かまわず否定するのではなく、同調することも時には重要になると考える。また、直接アプローチをすることで、下級学年の背中を押すことができるということも分かった。

最後に三年生である。残念なことに三年生にできることはほとんどない結果になってしまった。三年生が背中を押すことが提案されたが、そこに学年の差はなく四年生にされようが三年生にされようが関係ないという。それ以外の意見が出なかったので、本当に社会的、認知的境界があるのは三年生なのかもしれない。今回のディスカッションを設定した私は三年生なので大変皮肉めいた結果になってしまった。今回の結果を踏まえて今後のディスカッションの処方箋として利用していただきたいと考える。

にしむら(3年)

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